日本IBMの退職強要&“正社員斬り”に東京地裁がお墨付き 2か月弱で1500人リストラの手口全容
原告の杉野憲作氏。JMIU日本アイビーエム支部組合員。 |
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- “退職強要の決起集会”で気勢をあげる管理職たち
- 退職強要プログラムの中身
- 2か月弱で約1500人を斬首した手口の全容
- 「ハイパフォーマンス・カルチャーにあなたは合っていない」
- クビ斬り手法にお墨付きを与えた一審判決
- 経団連がこの判決に乗じて13万人をクビ斬り中
“退職強要の決起集会”で気勢をあげる管理職たち
今年のお盆休み明けの8月22日の早朝8時半ごろ、筆者は所用があって東京高裁に入ろうとしたところ、入り口前でビラを配っている中年男性たちがいた。彼らの上着には「日本IBMの違法な退職強要を許すな!」と書いてあり、ビラには太字で「不当解雇・退職強要・減給 反社会的な施策を続ける日本IBM」「地裁の異常な判決を、高裁は是正すべきである」などと書いてある。
日本IBM(以下、IBM)といえば、11年5月の記事により、社員に対し執拗な退職強要で「新入社員以下の職位」に降格をしていたことが発覚している。次は一体、何を起こしたのか。後日、都内で原告4人のうち3人に取材した。原告の話と判決文などの裁判資料によると、事件は以下のようなものだった。
リーマンショック直後の08年10月14日、IBMの人事担当取締執行役員・坪田國矢氏は、各部門長(管理職の各ラインマネージャー)を召集した。それは「2008年4Qリソースアクションプログラム」(以下、RAプログラム)という名のリストラ策で、それは退職強要プログラムともいえるものだった。
この席で坪田氏は、会社全体で1,300人を退職させる予定であるとし、各部署ごとに、所属人数比で割り振りを行い、クビ斬り数のノルマを設定した。
坪田氏は「ラインの強いリーダーシップのもと、強力な推進と予定数の確実な達成をお願いするとともに、予定数の達成が一人ひとりのAccountability(結果責任)となります」と通告した。つまり、生首の数が目標に到達しなければ管理職の責任である、と威圧したわけである。
さらに同年10月27日には、管理職をグランドプリンスホテル高輪に集めて、「2008 Japan manager Summit」という名の“退職強要の総決起集会”まで開いた。この日を境に、全社的に一斉に退職強要を断行することになり、組合へのリストラ相談も激増することになるのだった。
退職強要プログラムの中身
IBMが管理職に号令をかけたリストラ策「RAプログラム」の内容を説明しよう。
東京高裁前で配られたビラ |
裁判資料によると、まず、RAプログラムの対象となる社員の定義は、大別して2種類。
一つは、「社内の評価が低い社員」。具体的には、「ボトム15%の社員のうち、IBMグループ外にキャリアを探してほしい社員」や、「継続的にPBC評価が3以下(5段階評価で下から2番目)の社員」など。
(※「PBC評価」とは、社員の業績評価を数値化したもので、上から順に、「1」(最大貢献度)、「2+」(平均を上回る貢献度)、「2」(着実な貢献度)、「3」(低い貢献度)、「4」(極めて低い貢献度)となる)
もう一つは、「平均以上の評価の社員」なのに難癖をつけられるケースである。具体的には、以下の三つだ
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東京高裁前でビラを配る組合員たち
この裁判にかかわる歴代社長3人。上が大歳卓麻氏(在任期間は1999年12月1日~2009年1月1日)。真ん中が橋本孝之氏(同2009年1月1日~2012年5月15日)。下はマーティン・イェッター氏(同2012年5月15日以降)
訴状、判決文、労組委員長の陳述書。記事末尾から全文ダウンロード可
上は経団連事業サービスの刊行物。一審判決を分析している。下がしんぶん赤旗
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生首の数が目標に到達しないと管理職の責任になる・・・
ふーむ
よくわからん。自主退職を強要するのは違法。だったら普通に解雇すればいいんじゃないの?IBMは外資系なのに日本的な企業だとは聞いていたが、こんなところまで日本的に陰湿にする必要は無い。
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読者コメント
最初に買ったパソコンはAptivaだったけど、IBMって今なんの商売しているの?リストラ問題しか聞く機会がないけれど・・・・あと盗撮か。
AIGの日本法人に勤務していた知人はアリコジャパンを買収した「メットライフ」へ横滑り。本人の政治力か能力か確認していないが、IT?産業と違い保険業界はまだ、のりしろがあったと言うべきか!?
ガースナーがCEOに就任する1993年まで、IBMは一度も
社員を不当に解雇することはなかった。
ここ10年は業績は回復するどころか悪くなるばかり。
経営陣は一切責任を追及されることはなく、現場の社員だけが犠牲にされる。こんな会社、敬意を払うべき企業には二度と戻れないだろう。IBMのリストラは日本だけではない。世界中でまだまだ続く。日本では自主退職か解雇か、二者択一。まさに究極の選択だ。
*当時は1、000人切りとして大きな話題となり、その後に続いたソニーやパナの巨大なリストラの影が薄くなった。
*法律上黒字の会社は原則首に出来ない。
*国の赤字を理由に裁判官も首にできるなら、逆の判決がでたかもしれない。
*金で辞めさせられる法制度は、それが自分に降りかかる場合も賛成しますかね?
*この時の人事担当は平を飛び級していきなり常務になれたそうです。
*理由は因縁みたいなものでしょ。
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