漠然と「瞑想はいい」と思っているあなた、瞑想の本当の良さを知っていますか? 実は、巷にあふれる瞑想の話は誤解でいっぱい。そこで、本当の良さを知ってもらうために、瞑想にまつわる神話の嘘をあばいてみたいと思います。
神話その1:瞑想とは、心を無にすることである
確かに瞑想とは、究極的には無への集中を意味します。でも、必ずしもそれを目指す必要はありません。雑念をできるだけ減らすだけでも、瞑想の効果があるのです。
いちばん取っつきやすい瞑想の方法は、おそらく、マインドフルネスではないでしょうか。心理学者のMike Brooks氏が言うように、マインドフルネスの目的は、心を無にすることではなく、心を何か1つのことに集中させることにあります。
一般には瞑想の目的は心を空にすることと認識されています。しかし実は瞑想とはそういうものではなく、1つのことに集中するためのものです。また心がふらふらしたとしても、瞑想が失敗ということでは無いのです。我々の脳は気まぐれな子犬のようなもので、コントロールできないのです。そうした脳の動きをとらえ、1つの目的に集中できるようにする、これが瞑想なのです。
シンプルに、呼吸に集中するだけでも構いません。筆者は、それがいちばん取っつきやすい瞑想のテクニックだと考えています。カウント1で息を吸いこみ、2で吐きだす。この動作を繰り返します。呼吸をしていると、心が揺れ動いて雑念が入ってくることがありますが、それでいいのです。それらの雑念に悩まされるのではなく、意識的に集中を呼吸に戻す努力をしてください。
神話その2:瞑想には宗教が必要
瞑想のルーツは、仏教やヒンズー教の哲学にあります。だからといって、それらの宗教を信じる必要はありません。ダライ・ラマ法王でさえ、「信じる信じないにかかわらず、瞑想は可能である」と述べています。New York Timesの記事より:
瞑想のコンセプトは仏教、ヒンズー教、中国の伝統に端を発するとはいえ、実験心理学の観点から見た瞑想は、スピリチュアルなものではなく、集中力に関するものだと言えます。すなわち、心を静かにする能力、いまに気持ちを集中させる能力、降りかかる雑念を振り払う能力を意味するのです。
古代の慣習と同じように、マントラなどの宗教的要素が入ることもありますが、言葉の内容はそれほど重要ではありません。『The Relaxation Response』という本を書いたハーバード大学の心理学者、Herbert Benson教授の研究によると、内容を問わず、何らかの言葉を繰り返すことに意味があるのだとか。瞑想ガイドのOlivia Rosewoodさんは、同教授のアイデアをこのように説明しています。
これらの研究でおもしろいのは、言葉の内容を問わないことです。アヴェマリアでも、梵語のマントラでも、母親の旧姓でもいいのです。何らかの言葉を20分以上唱え続けることで、心身の安らぎという明確な効果が現れます。
宗教を信じていて、瞑想で神の近くに行けるのなら、それは素晴らしいことです。逆に、宗教を信じていなくても、瞑想で心の平穏を得ることができるのなら、それも素晴らしいこと。ダライ・ラマ法王によると、瞑想のポイントは心の変化であって、宗教ではないのです。
神話その3:瞑想には、時間、空間、お香、音楽、その他もろもろのグッズが必要
エクササイズをする場合、時間をあらかじめ決め、ジムのような空間があって、手袋や音楽などの決まったグッズがあるのがいいかもしれません。でも、それらは本当に必要かと言われると、必ずしもそうではないはずです。瞑想も同じこと。時間、空間、お香、音楽、その他の身の回り品があった方がいいと言う人もいますが、それらは必需品ではありません。
必要なのは、自分だけ。雑念を振り払って集中することができれば、あとは何でも構わないのです。クルマの運転や楽器の演奏が瞑想になる人もいます。私は、外部からの刺激にあふれた通勤途中に瞑想状態に入ることがあります。仕事中のちょっとした休憩時間や、エレベーターに乗っている間でも、瞑想をすることができます。つまり、どんな要素でも、瞑想に利用することができます。例えば、「Buddhify」は瞑想について学べるアプリ。いつでもどこでも使えるのが便利です。私は、Nick Drakeの作品を聴くと、魔法にかかってしまいます。Eckhar Tolle氏の「瞑想可視化テクニック」を勧めている知人もいます。でも、あまりそれらのものに頼り過ぎないように。何もなくても、瞑想はできるのですから。
神話その4:瞑想の恩恵を得るには、何年もの修業が必要
瞑想には、「たった○カ月で○kgやせる!」のようなわかりやすい効果がありません。それでも、研究によって、8週間の瞑想で脳が強化されるという結果が示されています。瞑想による脳への効果はたくさんあるのです。瞑想の何がいいのかを考えることはやめて、とにかく始めてみるといいでしょう。定量的な結果が得られなくても、定期的に続けることが大切です。
定期的に続けているうちに、どんどん瞑想がうまくなります。ここで言う「うまい」とは、より早く瞑想状態に入れることを意味します。雑念の影響を受けにくくなり、かんたんに心を無にできるようになってきます。平穏とは、心の状態です。瞑想を繰り返すことで、短時間で平穏が得られ、長時間それを持続できるようになりますが、「より平穏」になることはありません。
神話その5:瞑想は瞬間的なものであり、終わったらいつもの生活が待っている
マインドフルネスの効果は、瞑想をしている時間だけにとどまりません。でも、その持続期間は極めて主観的です。ダライ・ラマ法王も言うように、瞑想後の期間こそ重要なのです。
瞑想で人生のストレスや不安がそっくりなくなることはありませんが、それらへの対処はうまくなります。自己認識を高め、心を落ち着かせることで、厳しい人生を乗り越えていくことができるのです。私はよく、例として、隣人との関係を挙げます。あなたは今、隣人との交流がほぼ不可能な地域に住んでいます。でも、お互いに無視するよりは、交流した方がいいのは明らかです。そのためには、隣人の性格を理解しておくのがいちばんでしょう。例えば、隣人が機知に富むのであれば、フレンドリーに話しかけるのがいいでしょう。でも、その人が、心の奥底ではとてもズルい性格だったとしたら? 交友関係を維持するには、そのような知識が不可欠です。あなたは、騙されないように用心する必要があるのです。
瞑想もそれと同じです。瞑想によって実在の本質を深く理解したら、その後の現実の世界において、以前よりずっと的確かつ現実的な方法で、他人や物事とかかわれるようになるでしょう。
瞑想が初めてという人は、こちらのビギナー向けガイドをご覧ください。もっと深く知りたい人には、ダライ・ラマ著の『ダライ・ラマ大乗の瞑想法』がオススメです。
Mihir Patkar(原文/訳:堀込泰三)
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