どんな気持ちも、どこからともなくふってきて感じるもので、感じたらあとはどうすることもできないというものではありません。

気持ちは、理解し、練習することで、上手につき合うことができるようになります。

練習して、上手につき合えるようになると、たとえ感じたくない気持ちになったとしても、その気持ちにふり回されることはなくなります。(中略)

イライラすることは、悪いことではありません。

大切なことは、イライラした後で、どうその気持ちと上手につき合えるかです。(「はじめに」より)

12歳から始めるイライラしない技術』(安藤俊介 著、秀和システム)の冒頭にあるこの文章からは、ふたつの気づきを得ることができます。まず最初は、タイトルいからもわかるとおり、子どもを対象としたものであること。そしてもうひとつは、ビジネスパーソンにとっても役立つ内容であることです。

ちなみに著者は、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会ファウンダーであり、新潟産業大学客員教授。2003年に渡米してアンガーマネジメントを学び、日本に導入し第一人者なのだそうです。

私が専門とし、この本の土台を成しているアンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれた「怒りの感情と上手につき合うための心理トレーニング」です。

「怒り」と言っても、声を上げたり、顔を赤くして怒ったりするようなものばかりが「怒り」ではありません。

じつは「怒り」は、とてもはばが広い気持ちです。

「これも怒り?」と思うような気持ちも、本の中で説明をしています。(「はじめに」より)

きょうはそんな本書のなかから、第5章「自分の気持ちを理解するのは何のため?」に焦点を当ててみたいと思います。

アンガーマネジメントってなんのためにやるの?

「自分は別に怒りっぽくないし、アンガーマネジメントなんて不要だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、アンガーマネジメントは誰にも必要なのだと著者は強調しています。

アンガーマネジメントとは「怒らなくなること」ではなく、「怒る必要のあることと、ないことを分けられるようになること」だというのです。また、最大の目的は自己理解を深めることにあるようです。

アンガーマネジメントは、怒りのあつかいが専門ですが、怒りだけではなく、うれしい、楽しい、悲しいといったほかのあらゆる感情についてもあつかいます。

アンガーマネジメントでは、怒りだけをあつかうわけではないのです。(199ページより)

いうまでもなく怒りとは、大切なものを守るための感情です。したがって“自分にとってなにが大切なのか”を理解するにあたっては、まず最初に怒りを客観視する必要があるのです。

しかし同時に忘れるべきでないのは、私たちには怒りだけではなくいろいろな感情があるという事実。つまり自分のことを本当に理解するためには、怒り以外の感情についても理解を深めなければならないわけです。

だからこそ、怒りっぽい人にも、怒りっぽくない人にも、あるいは怒れない人にとっても、アンガーマネジメントは必要だと著者はいうのです。

私は、よく「アンガーマネジメントをして何がよかったですか?」と聞かれます。その際、自分の人生に集中できるようになったこと、と真っ先に答えています。(199ページより)

著者によれば「自分の人生に集中できるようになった」とは、「自分が心から望むこと、したくないことを理解し、自分が望むことに全力で情熱を傾けることができるようになった」ということ。また、したくないことがわかっていれば、そうしたことに関わらずに済むわけです。

ただし、アンガーマネジメントにどれだけ取り組んだとしても、怒りはなくならないのだそうです。しかし、怒りに負けて自暴自棄になることもなければ、選択を間違うことも少なくなるようです。

なぜなら、自分が本当に何をしたいのか、どこへ行きたいのかを深く理解しているので、自分を見失うことがないからです。(201ページより)

いわばアンガーマネジメントに取り組むということは、自分を理解することなのかもしれません。(198ページより)

自分の気持ちはどう表現したらいいの?

著者は本書で「自分の気持ちを素直に表現する」ことの重要性を説いているのですが、はたしてその気持ちはどうやって表現すればいいのでしょうか?

この点についての答えを探る際には、「自分にとって、まわりの人にとって、長い目で見たときに、健康的か?」という問いを意識すべきだといいます。これはアンガーマネジメントにおける「ビッグクエスチョン(大事な質問)」と呼ばれるものだそう。

アンガーマネジメントは、怒らないことではありません。怒る必要のあることは上手に怒れ、怒る必要のないものは怒らなくてすむようになることです。

ですから、自分が怒りを感じたら、それを素直に表現すればいいのですが、その表現方法にはルールがあります。

そのルールとは、自分が言おうとしていること、しようとしていることが、このビッグクエスチョンにそったものでなければいけないというものです。(207ページより)

つまり、こういうことです。

自分が怒りを表現しようとするとき、その表現方法は自分自身を責めるものではなく、まわりの人に当たることでもなく、「長い目で見たときプラスな表現になっている必要がある」ということ。

人が怒らなくなることはありません。怒りを感じることは問題ではなく、悪いことでもないのです。重要なのは、怒りを感じたときに、それをどう表現するかということ。したがって、その方法をつねに指揮しておく必要があるわけです。(206ページより)


大人も子どもも、なにかに怒りを感じることはあるもの。そして、その怒りの感情をどう処理したらいいのかについて悩むこともあるはず。だからこそ本書を活用し、怒りとうまくつきあうための術を学びたいものです。

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Source: 秀和システム