ライフハッカーでも度々紹介している瞑想。さまざまな利点のある「いいこと」というイメージがありますが、科学的にはどうなのでしょう。今回は、瞑想をしているときに脳の中で何がおきているのかを紹介します。
瞑想中の脳内の様子
科学者たちはfMRIスキャンなどの最新技術を使って、瞑想中の脳内でなにがおきているか、より深い理解を得ようとしてきました。
これまでの研究成果を大雑把にまとめると、瞑想中の脳は普段行っている「情報処理」が停止している状態であるとわかっています。
瞑想時には、脳が情報処理を行っていることを示す「ベータ波」が減少するそうです。この減少傾向は、生まれてはじめて瞑想を行った人にも見られます。
以下の画像をご覧ください。瞑想の間に、ベータ波(左の脳の明るい部分)が減少する様子(右の脳)が確認できます。
では脳内の各部位では何が起こっているのでしょうか。
前頭葉
前頭葉は、脳の中でもっとも進化している部分であり、論理的思考、計画、感情および自意識の機能を持っています。瞑想中には、「オフライン状態」になることが多いそうです。
頭頂葉
頭頂葉は、周囲を取り巻く環境についての知覚情報を処理し、時間と空間を把握します。瞑想中、頭頂葉の活動は緩やかになります。
視床
視床は、感覚の管理人です。入ってきた知覚データの一部を脳内深くに送り込み、他のシグナルの侵入を阻止することで集中力を高めます。瞑想によって、流れ込む情報量は大きく減少します。
網様体
脳の見張り番を務める網様体は、外部からの刺激を察知すると、応戦態勢を整えて警戒するよう脳を喚起します。瞑想することで、そういった警戒体制は解除されます。
瞑想がもたらす影響
瞑想中の脳内の様子がわかりましたが、具体的に健康にはどんな影響を及ぼすのでしょうか。調査研究を見ていきましょう。
集中力が向上する
瞑想とは「集中すること」、そして「集中が切れたことに気付くこと」の訓練であるため、瞑想をしていない時の集中力をも高められます。
つまり、瞑想を習慣づけることによって、持続的な効果も期待できるということです。
不安が和らぐ
瞑想をすればするほど不安が和らいでいくのは、ある特定の神経経路の結びつきが弱まった結果であることがわかっています。「弱まった」というと、何だか悪い知らせのように聞こえますが、実はそうでもありません。
瞑想をしない人には、次のようなことが起きます。私たちの脳には、自分自身および自らの体験にかかわる情報を処理する「自分中枢」(正確には内側前頭前皮質と言います)と呼ばれる場所があります。この場所は、身体感覚および脳の恐怖中枢と神経経路でしっかりと結びついているため、恐怖や動揺を感じ取ると、自分中枢で強い反応が起こり、恐怖心や危機感が生まれるようになっています。
しかし、瞑想することで、この神経経路の結びつきを弱くすることができます。つまり、以前であれば自己中枢が大騒ぎするような刺激を受けても、強い反応を起こさなくなるのです。この結びつきが弱まるなか、「判断中枢」として知られる場所(論理的思考の機能を持つ部分)と、身体感覚および恐怖中枢の間の結びつきは強くなっていきます。その結果、恐怖や動揺を感じても、冷静に判断を下すことができるようになるのです。
一例を挙げましょう。人は痛みを感じると不安を覚え、「どこか具合が悪いに違いない」と決めつけてしまいがちです。しかし、瞑想をしていれば、慌てたり不安になったりせずに、痛みの状態を見守ることができるようになるのです。
創造性がアップする
瞑想が創造性にもたらす影響についての研究はいくつか行われています。
オランダにあるライデン大学の研究者たちは、集中する対象物(自分の呼吸など)を決める「フォーカス・アテンション」瞑想と、集中する対象物を決めずその瞬間に移ろう思いなどを観察する「オープン・モニタリング」瞑想の研究を行っています。
実験では、これら2種類の瞑想を被験者に行ってもらい、その後の創造性の向上具合を確認しています。
その結果、フォーカス・アテンション瞑想を行なった被験者には明らかな変化が見られなかったものの、オープン・モニタリング瞑想を行った被験者では、新しいアイデアを問うタスクでパフォーマンスが向上していることが確認されました。
思いやりの気持ちが育まれる
これまでの研究から、瞑想を習慣とする人は、そうでない人より共感や思いやりの気持ちが強いことがわかっているようです。
瞑想をしていると、感情刺激の処理をつかさどる脳の扁桃体の活動が弱まっていきますが、「」の実践に基づいたある実験の一環として、被験者に「善人」「悪人」「普通の人」のうちどれかひとつの写真を見せたところ、扁桃体が並はずれた反応を見せたのです。
しかし、反応の大きさとは逆に、被験者たちは集中力を保ち、見せられた写真に対する感情的な反応を抑えることができたといいます。また、心をかき乱すような不快な画像を目にした時も、より強い思いやりを示しています。
2008年には、「他人が苦しんでいる声を聴かせる」という別の実験が行われました。その結果、瞑想しない人と比べて、定期的に瞑想する人のほうが、他者への共感に関連する部分である側頭頭頂接合部が大きく活性化していることがわかりました。
記憶力が向上する
記憶力向上も、瞑想と相関関係にあります。米マサチューセッツ州のMartinos Center for Biomedical Imaging(生体医学イメージングのマルティノス・センター)とハーバード大学医学部Osher Research Centerで研究を行なうCatherine Kerr氏は、マインドフルネス瞑想を実践する人は、しない人よりも、気を散らすものを遮断し、生産性を向上させる脳波を調整する力があることを発見しています。
邪魔な雑音を遮断するこの能力があるからこそ、「すばやくものを覚え、新しい情報が吸収できる」と同氏は言います。記憶力を劇的に伸ばすには新しい環境に身を置くことが効果的だという説に非常に近いと思いませんか。
ストレスを軽減できる
プレッシャーの大きい状態でもストレスに負けずに行動するには、マインドフルネス瞑想が効果的であることがわかっています。
2012年に、ある実験が行われました。
人事部マネージャーを3つのグループに分け、1つ目のグループはマインドフルネス瞑想、2つ目のグループは身体的なリラクゼーションをそれぞれ8週間にわたって実践してもらい、3つ目のグループには何のトレーニングも課しませんでした。実験の前後に、イライラするようなマルチタスクのテストを全員に対して行ったところ、実験後のテストで、瞑想を実践したグループは、他の2つのグループよりもテスト中のストレスが低かったことがわかったのです。
脳の灰白質を増やす
瞑想は、海馬および前頭野における灰白質密度の増加とも関係しています。はじめは何のことやらと思いましたが、実際はとても喜ばしいニュースです。灰白質が増えれば、感情は前向きになり、情緒も長期的に安定し、日常的な集中力も高まります。
さらに瞑想には、加齢による灰白質への影響を和らげ、認知機能の低下を抑える効果があることも明らかになっています。
The Power of Meditation and How It Affects Our Brains | Buffer
Belle Beth Cooper(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)