土間は万能空間
日本の伝統的な住まいでは、「土間」は玄関、炊事場、裏口、通路など、さまざまな空間で利用されてきました。その使い勝手のよさから、最近は一戸建て、マンションを問わず、新しい形で活用されています。現代の住まいに取り入れられた事例から、「土間」の万能性を改めてとらえ直します。
Naoko Endo
2023年12月8日
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
個人ブログ「a+e」http://a-plus-e.blogspot.jp/
出版社、不動産ファンド、代理店勤務を経て、フリーランス・ライター。
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日本の住まいの出入口には、 その成り立ちの違いによって大きくふたつの流れがある。ひとつは武家の時代になって生まれた玄関で、格式を重んじる。もうひとつはさらに古く、農家の居住形態を受け継ぐもの。人だけでなく場合によっては家畜も出入りし、農閑期や雨天時の作業場にもなる広さを備えた土間(どま)である。伝統的な三和土(たたき)と呼ばれる土間以外にも、今日ではモルタル、コンクリート、タイルなど現代の建材が使われている。
都会の集合住宅で生まれ育った人には、土間って何? とピンとこないかもしれない。また、家の新築やリノベーションの際、ただでさえ限られたスペースなのだから、玄関を広くとるなんてもったいない、と考えるの人もいるだろう。でも、ちょっと待って。色も見かけもちょっと地味な土間だが、住まい手たちが"十人十色"さまざまに使いこなしている事例がHouzzには数多く登録されている。万能ともいえるその魅力についてお伝えしたい。
都会の集合住宅で生まれ育った人には、土間って何? とピンとこないかもしれない。また、家の新築やリノベーションの際、ただでさえ限られたスペースなのだから、玄関を広くとるなんてもったいない、と考えるの人もいるだろう。でも、ちょっと待って。色も見かけもちょっと地味な土間だが、住まい手たちが"十人十色"さまざまに使いこなしている事例がHouzzには数多く登録されている。万能ともいえるその魅力についてお伝えしたい。
旧家の伝統を受け継いだ土間
比叡山の麓、延暦寺の門前町として知られる以前から栄えた歴史ある町の通りに面した、地域の庄屋を代々務めてきた旧家の玄関である。離れに続いて、江戸時代末期から明治の頃に建てられた母屋をリノベーションする際、施主は美しい町並みに調和し、住まいに色濃く残る時間も受け継いでいきたいと希望した。
襖を取り払えば52畳もの大広間に切り替わる、伝統的な"田の字型"をした母屋の間取りはモダンに一新されたが、写真にみられる玄関まわりは大きく手を加えず、埋め込まれた敷石もそのままに、改修前の雰囲気を残した。式台から続く和室には、改修時に床の間が設えられたが、庄屋として武家の役人を接待していた時代の名残りを今にとどめている。
写真には写っていないが、こちらの玄関には靴を脱ぎ履きする専用の下足室も付属している。右側の空間はさらに広い土間で、昭和の時代まで使われていたという大きな竃(かまど)がふたつ、家と台所の記憶として残された。敷地内に建つ大きな蔵と共に、リノベーションによって新と旧、和と洋が融合した住まいとなっている。
《坂本の家(第2期)》
設計:大西憲司設計工房
先ず最初に、昔ながらの土間のリノベーション事例を挙げた。現代の住まいでの新築事例もいくつかみてみよう。
比叡山の麓、延暦寺の門前町として知られる以前から栄えた歴史ある町の通りに面した、地域の庄屋を代々務めてきた旧家の玄関である。離れに続いて、江戸時代末期から明治の頃に建てられた母屋をリノベーションする際、施主は美しい町並みに調和し、住まいに色濃く残る時間も受け継いでいきたいと希望した。
襖を取り払えば52畳もの大広間に切り替わる、伝統的な"田の字型"をした母屋の間取りはモダンに一新されたが、写真にみられる玄関まわりは大きく手を加えず、埋め込まれた敷石もそのままに、改修前の雰囲気を残した。式台から続く和室には、改修時に床の間が設えられたが、庄屋として武家の役人を接待していた時代の名残りを今にとどめている。
写真には写っていないが、こちらの玄関には靴を脱ぎ履きする専用の下足室も付属している。右側の空間はさらに広い土間で、昭和の時代まで使われていたという大きな竃(かまど)がふたつ、家と台所の記憶として残された。敷地内に建つ大きな蔵と共に、リノベーションによって新と旧、和と洋が融合した住まいとなっている。
《坂本の家(第2期)》
設計:大西憲司設計工房
先ず最初に、昔ながらの土間のリノベーション事例を挙げた。現代の住まいでの新築事例もいくつかみてみよう。
ブランコのある土間
この写真を見たとき、「この家に子になりたい!」と思った。さらに聞けば、ブランコが揺れる玄関土間に接した、写真手前の板の間が子ども部屋だという。好きな時に乗り放題とは、なんとも羨ましい。
《大船の住宅》
設計:LEVEL Architects / 中村和基+出原賢一
「ご主人の趣味はアウトドア。お子さんたちと一緒にキャンプの準備をしたり、自転車も乗り入れられるインナーテラスを提案しました。土間との境に設けた40cmの段差はベンチにもなります。緩やかに空間を仕切りながら、さまざまな場面で機能的に使えるようにデザインしました」(事務所の共同代表を務める出原氏談)。玄関は小さな中庭に接し、子ども部屋からはささやかでも緑まで見渡せる。いわく、「玄関であり、子どもたちのセカンドリビングでもあります」。
竣工から3年半が経った今でも、一家はフレキシブルに住みこなしている。お子さんが大きくなったこともあり、子ども部屋と玄関土間との間に、目隠しとして大きめの建具を取り付けたばかりとのこと。
この写真を見たとき、「この家に子になりたい!」と思った。さらに聞けば、ブランコが揺れる玄関土間に接した、写真手前の板の間が子ども部屋だという。好きな時に乗り放題とは、なんとも羨ましい。
《大船の住宅》
設計:LEVEL Architects / 中村和基+出原賢一
「ご主人の趣味はアウトドア。お子さんたちと一緒にキャンプの準備をしたり、自転車も乗り入れられるインナーテラスを提案しました。土間との境に設けた40cmの段差はベンチにもなります。緩やかに空間を仕切りながら、さまざまな場面で機能的に使えるようにデザインしました」(事務所の共同代表を務める出原氏談)。玄関は小さな中庭に接し、子ども部屋からはささやかでも緑まで見渡せる。いわく、「玄関であり、子どもたちのセカンドリビングでもあります」。
竣工から3年半が経った今でも、一家はフレキシブルに住みこなしている。お子さんが大きくなったこともあり、子ども部屋と玄関土間との間に、目隠しとして大きめの建具を取り付けたばかりとのこと。
広い土間をリビングに
立地と作品名から、 “うなぎのねどこ” と呼ばれる京町家を踏襲した住まいで、通りに面した土間が家の片側を奥まで走っているのかと思いきや、さにあらず。広い土間はこの家のリビングであり、帰宅した家族が必ず通り、顔を合わす大事な空間である。
《福王子の家 -通り土間の家-》
設計:岸研一建築設計事務所
敷地は京都の風致地区にあり、北と西側を道路に接した角地である。黒い石貼りのポーチを北面の壁に沿って西に進み、壁の端部で折り返すと、外壁に隠れるようにして玄関ドアが現われる。ドアを開けると、細長い土間が奥へと続いている。この"通り土間”の途中で、床が石からタイルに、色も黒からベージュに切り替わるのだが、小さな段差もついていて、ここで靴を脱いであがるというサインになっている。外部から内部への誘導は緩やかに、北側の暗い空間から徐々に色と光が明るくなって、広い土間のリビングに導かれるという劇的なアプローチがこの家の大きな特徴だ。
タイル貼りの土間は夏はひんやりとして素足に心地良く、冬は床下暖房(スラブヒーター)によって暖かい。写真の反対側、リビングの東南はウッドデッキのテラスと繋がっており、L字の掃き出し窓を開け放てば、テラス、リビング、さらにダイニングまで連続した大空間に。写真のように椅子を置いたり、ダイニングの床との境に設けた段差に腰掛けたり、ゴロリと横になったり、一人でも大人数でも、さまざまな場面で快適に過ごせる空間となっている。
土間リビングの事例画像を見る
立地と作品名から、 “うなぎのねどこ” と呼ばれる京町家を踏襲した住まいで、通りに面した土間が家の片側を奥まで走っているのかと思いきや、さにあらず。広い土間はこの家のリビングであり、帰宅した家族が必ず通り、顔を合わす大事な空間である。
《福王子の家 -通り土間の家-》
設計:岸研一建築設計事務所
敷地は京都の風致地区にあり、北と西側を道路に接した角地である。黒い石貼りのポーチを北面の壁に沿って西に進み、壁の端部で折り返すと、外壁に隠れるようにして玄関ドアが現われる。ドアを開けると、細長い土間が奥へと続いている。この"通り土間”の途中で、床が石からタイルに、色も黒からベージュに切り替わるのだが、小さな段差もついていて、ここで靴を脱いであがるというサインになっている。外部から内部への誘導は緩やかに、北側の暗い空間から徐々に色と光が明るくなって、広い土間のリビングに導かれるという劇的なアプローチがこの家の大きな特徴だ。
タイル貼りの土間は夏はひんやりとして素足に心地良く、冬は床下暖房(スラブヒーター)によって暖かい。写真の反対側、リビングの東南はウッドデッキのテラスと繋がっており、L字の掃き出し窓を開け放てば、テラス、リビング、さらにダイニングまで連続した大空間に。写真のように椅子を置いたり、ダイニングの床との境に設けた段差に腰掛けたり、ゴロリと横になったり、一人でも大人数でも、さまざまな場面で快適に過ごせる空間となっている。
土間リビングの事例画像を見る
住まいを貫く立体土間
敷地面積は369.95平米(約112坪)と広いが、南北に長い。間口に対して奥行きは3倍ほどある。似たような敷地条件である京町家の長所を取り入れ、坪庭と土間を内包した住まいである。京町家と違うのは、立地は広島で、盆地ではなく一級河川の三角州であること。万が一の水害に備える必要があった。このため、住居部分の地盤は高く盛られ、写真に写っている1階のリビングとダイニングキッチンの床も、グランドラインより135cm高くなっている。住居の中に生じた段差は、住まいを貫く土間が吸収している。
《#00a497》
設計:アルキプラス建築事務所 / 髙志俊明
南から北に住まいを通り抜けてみよう。靴を脱ぎ履きする玄関は道路に面しておらず、アプローチはガレージの脇から始まる。屋内土間をL字に進み、茶室の横を通り過ぎ、右手奥に坪庭(中庭)がみえてくると、日中はトップライトから、夜は照明の光に照らされた小さな階段が現われる。5段ほど上がったところが玄関で、写真にみられる玉砂利洗い出し仕上げの土間に接続している。茶室に通じる中庭に面したリビング、さらに開放的なダイニングキッチンを右手に、最深部に設えられた和室の手前で土間は終わる。土間の掃き出し窓から庭に降りれば、北側の道路に出ることができる。敷地の端と端、空間の内と外とを緩やかに繋ぐ立体土間である。
なお、作品名の「#00a497」はあおみどり(ピーコックグリーン)の色記号。町名についた「翠」に由来する。
敷地面積は369.95平米(約112坪)と広いが、南北に長い。間口に対して奥行きは3倍ほどある。似たような敷地条件である京町家の長所を取り入れ、坪庭と土間を内包した住まいである。京町家と違うのは、立地は広島で、盆地ではなく一級河川の三角州であること。万が一の水害に備える必要があった。このため、住居部分の地盤は高く盛られ、写真に写っている1階のリビングとダイニングキッチンの床も、グランドラインより135cm高くなっている。住居の中に生じた段差は、住まいを貫く土間が吸収している。
《#00a497》
設計:アルキプラス建築事務所 / 髙志俊明
南から北に住まいを通り抜けてみよう。靴を脱ぎ履きする玄関は道路に面しておらず、アプローチはガレージの脇から始まる。屋内土間をL字に進み、茶室の横を通り過ぎ、右手奥に坪庭(中庭)がみえてくると、日中はトップライトから、夜は照明の光に照らされた小さな階段が現われる。5段ほど上がったところが玄関で、写真にみられる玉砂利洗い出し仕上げの土間に接続している。茶室に通じる中庭に面したリビング、さらに開放的なダイニングキッチンを右手に、最深部に設えられた和室の手前で土間は終わる。土間の掃き出し窓から庭に降りれば、北側の道路に出ることができる。敷地の端と端、空間の内と外とを緩やかに繋ぐ立体土間である。
なお、作品名の「#00a497」はあおみどり(ピーコックグリーン)の色記号。町名についた「翠」に由来する。
新建材で伝統を再現
1年を通して国内外の観光客で賑わう京都・清水寺の門前で茶わん屋を営む京町家の土間である。店の三和土(たたき)の一部に、表面が削れることで生じる微妙な段差(不陸)ができてしまい、お客様が安心して品物を選べるよう、平らな土間に改修する必要に迫られた。
三和土とは、日本の伝統的な床の仕上げである。土、砂利、石灰など三種類の土を練って混ぜた材の表面をたたき固めて強度を出す。土が主成分なので、コンクリートやアスファルトに比べて表面温度が上がりにくい。家の外の玄関アプローチ部分などに施工された場合、打ち水をすれば生じる気化熱によって冷却作用も期待できる。
《三田源栄堂 改修》
販売・施工:株式会社中藏
さて、茶わん屋の土間の改修だが、 店主としてはあまり長く休みたくない。陳列品も極力動かさずに済ませたいと、明治創業の地元の工務店である中藏に相談した。採用されたのが、同社が環境に配慮した舗装建材として開発した「京たたき」。従来より強度を増したセメント系固化材で、工事期間も短縮できる。旧地盤の解体、ところどころに黒い玉石による意匠も施し、24平米の京たたき施工と養生までを約4日で完了した。伝統的な三和土の風合を残しつつ、工期および職人の数も約半分で済んでいるとのこと。
1年を通して国内外の観光客で賑わう京都・清水寺の門前で茶わん屋を営む京町家の土間である。店の三和土(たたき)の一部に、表面が削れることで生じる微妙な段差(不陸)ができてしまい、お客様が安心して品物を選べるよう、平らな土間に改修する必要に迫られた。
三和土とは、日本の伝統的な床の仕上げである。土、砂利、石灰など三種類の土を練って混ぜた材の表面をたたき固めて強度を出す。土が主成分なので、コンクリートやアスファルトに比べて表面温度が上がりにくい。家の外の玄関アプローチ部分などに施工された場合、打ち水をすれば生じる気化熱によって冷却作用も期待できる。
《三田源栄堂 改修》
販売・施工:株式会社中藏
さて、茶わん屋の土間の改修だが、 店主としてはあまり長く休みたくない。陳列品も極力動かさずに済ませたいと、明治創業の地元の工務店である中藏に相談した。採用されたのが、同社が環境に配慮した舗装建材として開発した「京たたき」。従来より強度を増したセメント系固化材で、工事期間も短縮できる。旧地盤の解体、ところどころに黒い玉石による意匠も施し、24平米の京たたき施工と養生までを約4日で完了した。伝統的な三和土の風合を残しつつ、工期および職人の数も約半分で済んでいるとのこと。
機能と美しさを兼ね備えた土間
《書斎茶藝館》
設計:アトリエハコ建築設計事務所 / 七島幸之+佐野友美
喫茶店のような作品名だが、東京郊外に新築された個人邸の玄関内部である。「施主夫妻からの要望のひとつは、それぞれの自転車を保管したり、園芸道具などを手早く片付けられる、大きな外部収納が欲しいというものでした。ヒアリングを進めていくと、共働きなので日中はあまり家にいないけれども来客が多いこと。ならば収納を兼ねた広い玄関にすれば、敷地を無駄なく使えますよと提案しました」(アトリエハコ共同代表の七島幸之氏、佐野友美氏談)
通りに面した玄関としての体裁と、目隠しも兼ねて、ガラス戸の外側は木製の縦格子で覆った。シックな墨入りモルタルの金ゴテ押さえの土間から30センチほど浮かせた分だけ収納の容量は減ったが、壁一面とするよりも圧迫感が軽減され、下部に照明を組み込んでいる。日没後の夜間は格子越しに光が洩れて、行灯のような情緒ある佇まいになるという。
Houzz に登録されたそのほかの写真にも、玄関を駐輪場としている事例は多い。野ざらしにならず、盗難の心配もない。さらに壁が大きければ、ディスプレイとしても吊るせる。愛着もさらに増す。
土間玄関のアイデアを見る
《書斎茶藝館》
設計:アトリエハコ建築設計事務所 / 七島幸之+佐野友美
喫茶店のような作品名だが、東京郊外に新築された個人邸の玄関内部である。「施主夫妻からの要望のひとつは、それぞれの自転車を保管したり、園芸道具などを手早く片付けられる、大きな外部収納が欲しいというものでした。ヒアリングを進めていくと、共働きなので日中はあまり家にいないけれども来客が多いこと。ならば収納を兼ねた広い玄関にすれば、敷地を無駄なく使えますよと提案しました」(アトリエハコ共同代表の七島幸之氏、佐野友美氏談)
通りに面した玄関としての体裁と、目隠しも兼ねて、ガラス戸の外側は木製の縦格子で覆った。シックな墨入りモルタルの金ゴテ押さえの土間から30センチほど浮かせた分だけ収納の容量は減ったが、壁一面とするよりも圧迫感が軽減され、下部に照明を組み込んでいる。日没後の夜間は格子越しに光が洩れて、行灯のような情緒ある佇まいになるという。
Houzz に登録されたそのほかの写真にも、玄関を駐輪場としている事例は多い。野ざらしにならず、盗難の心配もない。さらに壁が大きければ、ディスプレイとしても吊るせる。愛着もさらに増す。
土間玄関のアイデアを見る
中庭に面した開放的な土間
北西の角にある玄関ドアを開けると目にする光景である。豆砂利の洗い出し仕上げの屋内土間が真っすぐに伸びて、ヤマモミジを植えた中庭越しに、庭に面して開かれた明るいリビングとダイニングが見える。
《ヤマモミジの家》
設計:森建築設計室 / 森哲哉
アウトドアやガーデニング用品、板張りの壁に吊るした自転車や、ベビーカーの管理と出入りにも便利な土間をと希望した施主には、祖父母が暮らす古い家で過ごした記憶がイメージとしてあったという。広い屋内土間は、晴れても雨でも子どもたちにとって格好の遊び場だ。ダイニングやリビングからの見通しも良いので、親としても安心して遊ばせておける。休日になると、ご主人が庭を眺めながら、自転車の手入れやキャンプの用意をする。リビングに設えられた薪ストーブの薪の保管場所としても重宝されている空間だ。竣工から3年半が経過し、冬場は土間と居住空間とを建具で仕切ることを検討中とのこと。
風を通してくれる土間は夏季は涼しいが、大空間ゆえに、冬季の冷え込み対策が必要になる。だが、逆に土間を活用して断熱効果を上げることも可能。そんなリノベーション事例を次に紹介する。
北西の角にある玄関ドアを開けると目にする光景である。豆砂利の洗い出し仕上げの屋内土間が真っすぐに伸びて、ヤマモミジを植えた中庭越しに、庭に面して開かれた明るいリビングとダイニングが見える。
《ヤマモミジの家》
設計:森建築設計室 / 森哲哉
アウトドアやガーデニング用品、板張りの壁に吊るした自転車や、ベビーカーの管理と出入りにも便利な土間をと希望した施主には、祖父母が暮らす古い家で過ごした記憶がイメージとしてあったという。広い屋内土間は、晴れても雨でも子どもたちにとって格好の遊び場だ。ダイニングやリビングからの見通しも良いので、親としても安心して遊ばせておける。休日になると、ご主人が庭を眺めながら、自転車の手入れやキャンプの用意をする。リビングに設えられた薪ストーブの薪の保管場所としても重宝されている空間だ。竣工から3年半が経過し、冬場は土間と居住空間とを建具で仕切ることを検討中とのこと。
風を通してくれる土間は夏季は涼しいが、大空間ゆえに、冬季の冷え込み対策が必要になる。だが、逆に土間を活用して断熱効果を上げることも可能。そんなリノベーション事例を次に紹介する。
バッファーゾーンとしての土間
冬季の累計降雪量はおよそ7mにもなる、秋田県内陸部の豪雪地帯に、約150年前に建てられた木造民家。厳冬期でも快適な家に住みたいと、施主の当初の希望は解体しての建て替えだったが、同県出身の建築家である納谷学、新の兄弟は、現地を調査した後にリノベーションを提案。その経緯はHouzzツアー記事が詳しくレポートしている。
《湯沢の住宅》
設計:納谷建築設計事務所
この家のHouzzツアー記事を見る
150年を経た民家を生まれ変わらせるリノベーション
施主の望みを叶えた最大のポイントは、気密性を高め、断熱効果を上げたこと。地面から伝わる冷気と湿気を遮断すべく、家屋を持ち上げて、コンクリートで基礎部分を打ち直し、床下には断熱材を入れた。そして、度重なる改修で分断していた土間と廊下を繋げて回廊とした。上の写真は、この回廊のコーナーからの見通しである。寒々しく見えるかもしれないが、ペアガラスの断熱性能が高いように、空気層が厚く、大きくなるほど、熱伝導は小さくなり、冷気も伝わりにくくなる。外周部に設けたこの回廊が断熱層としてのバッファーゾーン(緩衝空間)となり、居住空間を温かく保ってくれるのだ。
外周部の大きな開口部にはペアガラスを採用。ただでさえ日照が少ない冬季でも、室内に光をもたらしてくれる。夏季には窓を開け放ち、家の中を自然に風が抜け、心地良い涼を。小さな子どもがこの家を訪れたら、大喜びで走り回るのは間違いない。
冬季の累計降雪量はおよそ7mにもなる、秋田県内陸部の豪雪地帯に、約150年前に建てられた木造民家。厳冬期でも快適な家に住みたいと、施主の当初の希望は解体しての建て替えだったが、同県出身の建築家である納谷学、新の兄弟は、現地を調査した後にリノベーションを提案。その経緯はHouzzツアー記事が詳しくレポートしている。
《湯沢の住宅》
設計:納谷建築設計事務所
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150年を経た民家を生まれ変わらせるリノベーション
施主の望みを叶えた最大のポイントは、気密性を高め、断熱効果を上げたこと。地面から伝わる冷気と湿気を遮断すべく、家屋を持ち上げて、コンクリートで基礎部分を打ち直し、床下には断熱材を入れた。そして、度重なる改修で分断していた土間と廊下を繋げて回廊とした。上の写真は、この回廊のコーナーからの見通しである。寒々しく見えるかもしれないが、ペアガラスの断熱性能が高いように、空気層が厚く、大きくなるほど、熱伝導は小さくなり、冷気も伝わりにくくなる。外周部に設けたこの回廊が断熱層としてのバッファーゾーン(緩衝空間)となり、居住空間を温かく保ってくれるのだ。
外周部の大きな開口部にはペアガラスを採用。ただでさえ日照が少ない冬季でも、室内に光をもたらしてくれる。夏季には窓を開け放ち、家の中を自然に風が抜け、心地良い涼を。小さな子どもがこの家を訪れたら、大喜びで走り回るのは間違いない。
海外事例「マッドルーム」
ところで、海外にも似たような土間がある。「mud room(マッドルーム)」と呼ばれる空間をご存知だろうか。直訳すると「泥の部屋」。文字通りの用途で使われる小空間である。
例えば、酷い雨降りの日に、外出先から帰宅したら、先ずこの部屋で靴底についた泥をはらい、濡れたレインコートを脱ぐ。室内には持ち込まない。土足でそのまま室内を歩き回る海外の住まいでは、このようなバッファーゾーンが必要になるのも当然の理だ。
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玄関まわりがすっきりと片付く、マッドルームをとりいれよう
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海外では自宅にゲストを招くことも多いため、ホールとしての表玄関とは別に、家の裏手やガレージに直結したマッドルームを設けるのだと思われる。左の写真のように、家族それぞれ個別の収納スペースが用意され、水場や洗濯機を併設しているのも珍しくない。
マッドルームの事例は、このほかにもHouzzサイトの部屋別カテゴリー:玄関に多数登録されている。玄関まわりを豊かに使いこなした海外の事例についても、これを機会にいろいろと探してご覧いただきたい。
それでは仕切り直して、日本のさまざまな土間の事例紹介に戻ろう。
マッドルームの事例は、このほかにもHouzzサイトの部屋別カテゴリー:玄関に多数登録されている。玄関まわりを豊かに使いこなした海外の事例についても、これを機会にいろいろと探してご覧いただきたい。
それでは仕切り直して、日本のさまざまな土間の事例紹介に戻ろう。
外の路地と景観を室内に引き込む
都内の住宅密集地に建てられた2階建ての住まいである。敷地面積は88.59平米(26,79坪)。三方を隣家に囲まれ、外部に対して唯一開いていたのは北東側のみで、さらには目の前で2m幅の道路がT字に交差していた。真っすぐ伸びる道から丸見えとなる敷地だったが、逆の発想をすれば、高い建物が見当たらない北東方面の"抜け感"は抜群といえた。とはいえ、設計する側には難題である。
《上目黒の住宅》
設計:川辺直哉建築設計事務所
「T字の路地に対して住まいをどう向き合わせるかが全てのカギでした。そこで、敷地に向かって直進してくる道の正面にあえて玄関を設けて、上層を最大で高さ6.4mの吹き抜けとし、玄関ドア以外はガラスとすることで、外の路地を室内に引き込むようにしました」(川辺氏談)。玄関から家の中に入ると、黒いタイル貼りの土間がそのまま真っすぐ家の奥へと続いていく。壁は左官仕上げで、壁床どちらも外装としても使われる素材。"路地感"を演出した意匠だ。
寝室やリビング、水まわりなどは全て片側に寄せられている。吹き抜け空間を利用した室内階段には蹴込み板がなく、明るい光と"抜け感"を遮らない。土間の最深部から玄関側を見返すと、ガラスを突き抜けて視界が外へと拡がる。三方を囲まれた住宅密集地であることを忘れてしまう、開放的なホールの雰囲気がそのまま家の個性となっている。
都内の住宅密集地に建てられた2階建ての住まいである。敷地面積は88.59平米(26,79坪)。三方を隣家に囲まれ、外部に対して唯一開いていたのは北東側のみで、さらには目の前で2m幅の道路がT字に交差していた。真っすぐ伸びる道から丸見えとなる敷地だったが、逆の発想をすれば、高い建物が見当たらない北東方面の"抜け感"は抜群といえた。とはいえ、設計する側には難題である。
《上目黒の住宅》
設計:川辺直哉建築設計事務所
「T字の路地に対して住まいをどう向き合わせるかが全てのカギでした。そこで、敷地に向かって直進してくる道の正面にあえて玄関を設けて、上層を最大で高さ6.4mの吹き抜けとし、玄関ドア以外はガラスとすることで、外の路地を室内に引き込むようにしました」(川辺氏談)。玄関から家の中に入ると、黒いタイル貼りの土間がそのまま真っすぐ家の奥へと続いていく。壁は左官仕上げで、壁床どちらも外装としても使われる素材。"路地感"を演出した意匠だ。
寝室やリビング、水まわりなどは全て片側に寄せられている。吹き抜け空間を利用した室内階段には蹴込み板がなく、明るい光と"抜け感"を遮らない。土間の最深部から玄関側を見返すと、ガラスを突き抜けて視界が外へと拡がる。三方を囲まれた住宅密集地であることを忘れてしまう、開放的なホールの雰囲気がそのまま家の個性となっている。
マンションの土間
土間は一戸建ての玄関まわりに限った空間ではない。マンションのリノベーションで土間を設けることも可能だ。こちらの事例の施主はプロの設計士。まだリノベーションという単語が一般的でなかった2004年に、築30年の自宅マンションのリノベーションに挑んだ。99平米に二間の和室を含む3LDKという間取りを、玄関とベランダを13.2mの土間で繫ぎ、キッチン、ダイニング、リビングとも連続した大空間に一新させた。
《13.2mの土間の家》
設計:リノベエステイト / 松山真介
長い土間を設けたのは、前述してきたような利便性を集合住宅において再現しただけでなく、マンションの11階という立地条件も活かすためだ。眺望を損なわないよう、玄関との仕切りには透明な強化ガラス戸をたて、明るい光を玄関先まで届ける、モルタル仕上げの土間に沿って、壁側一列に並んでいるのは収納スペースだが、施主がホームパーティを開いたときにはベンチとして重宝されている。下部には照明も組み込まれており、夜間の雰囲気はムーディーに変わる。
土間は一戸建ての玄関まわりに限った空間ではない。マンションのリノベーションで土間を設けることも可能だ。こちらの事例の施主はプロの設計士。まだリノベーションという単語が一般的でなかった2004年に、築30年の自宅マンションのリノベーションに挑んだ。99平米に二間の和室を含む3LDKという間取りを、玄関とベランダを13.2mの土間で繫ぎ、キッチン、ダイニング、リビングとも連続した大空間に一新させた。
《13.2mの土間の家》
設計:リノベエステイト / 松山真介
長い土間を設けたのは、前述してきたような利便性を集合住宅において再現しただけでなく、マンションの11階という立地条件も活かすためだ。眺望を損なわないよう、玄関との仕切りには透明な強化ガラス戸をたて、明るい光を玄関先まで届ける、モルタル仕上げの土間に沿って、壁側一列に並んでいるのは収納スペースだが、施主がホームパーティを開いたときにはベンチとして重宝されている。下部には照明も組み込まれており、夜間の雰囲気はムーディーに変わる。
ホームオフィスの土間
リノベーションを前提に、築27年のマンションを購入した施主夫妻は、フリーで仕事をしている奥様のアトリエとしても使いたいと考えた。オフィシャルとプライベート、職と住の空間が、床の仕上げによって緩やかに仕切られている。
写真の右側、コンクリートブロックと曇りガラスの向こうが、奥様のアトリエ兼ミーティングルームでもある。打合せに訪れたお客様が靴を脱がずにそのまま入れるよう、モルタル仕上げの土間が玄関から連続している。北西に面したミーティングルームのバルコニーからの外光は、曇りガラスを通して、暗くなりがちなマンションの玄関をほのかに照らしてくれる。
《KOTESASHI-HOUSE》
設計:TATO DESIGN / 大山 啓
夫妻が生活するプライベート空間は、土間との境に設けた上がり框の先にある。グレーのオフィシャル空間とは対照的に、キッチン、リビングダイニング、トイレ、洗面所、寝室の床は全て温かみの感じられるフローリングで、配置されているラグやクッションなどもカラフルだ。「奥様はインテリアのスタイリングやコーディネートの仕事をしていらしゃいます。コンクリートブロックなど素材感があるものがお好きで、玄関土間以外にも、キッチンの対面カウンターまわりにも採用されています。インテリアのプロらしいセンスと、夫妻のお気に入りのものが散りばめられ、ギュッと詰まった住まいになっています」(TATO DESIGN代表 大山 啓氏談)。
リノベーションを前提に、築27年のマンションを購入した施主夫妻は、フリーで仕事をしている奥様のアトリエとしても使いたいと考えた。オフィシャルとプライベート、職と住の空間が、床の仕上げによって緩やかに仕切られている。
写真の右側、コンクリートブロックと曇りガラスの向こうが、奥様のアトリエ兼ミーティングルームでもある。打合せに訪れたお客様が靴を脱がずにそのまま入れるよう、モルタル仕上げの土間が玄関から連続している。北西に面したミーティングルームのバルコニーからの外光は、曇りガラスを通して、暗くなりがちなマンションの玄関をほのかに照らしてくれる。
《KOTESASHI-HOUSE》
設計:TATO DESIGN / 大山 啓
夫妻が生活するプライベート空間は、土間との境に設けた上がり框の先にある。グレーのオフィシャル空間とは対照的に、キッチン、リビングダイニング、トイレ、洗面所、寝室の床は全て温かみの感じられるフローリングで、配置されているラグやクッションなどもカラフルだ。「奥様はインテリアのスタイリングやコーディネートの仕事をしていらしゃいます。コンクリートブロックなど素材感があるものがお好きで、玄関土間以外にも、キッチンの対面カウンターまわりにも採用されています。インテリアのプロらしいセンスと、夫妻のお気に入りのものが散りばめられ、ギュッと詰まった住まいになっています」(TATO DESIGN代表 大山 啓氏談)。
パートナードッグのために
土間を多様に使っているのは人間だけではない。《O邸》の施主は、建築家の大浦比呂志氏に自宅の新築を依頼した当初から、パートナーである犬たちも快適に過ごせることを第一に希望した。
《横浜 O邸》
設計:ネイチャーデコール / 大浦比呂志
「犬たちにストレスを与えないよう、玄関まわりはフラットな土間に。また、施主夫妻はそれぞれ海外での生活経験から、ホールのような広がりも感じられるようにとのことでした。」(大浦氏談)。黒い300mm角タイルを敷いた土間は、道に接した外のアプローチから始まり、玄関ドアを挟んで、家の内部に引き込まれ、南面のウッドデッキまで連続する。デッキからの光が差し込む洞窟のような屋内土間の一角に、ホワイトシェパードのハンク君(3才)専用の「ハウス」がある。冬の寒さには強いが暑さは大の苦手という彼のために、一畳半の「ハウス」の床も白い100mm角タイル貼り。夏場でもひんやりと涼しく、快適に過ごしている。タイル敷きならば飼い主の掃除もしやすい。
《O邸》にはハンク君のほかに、小型のトイプードルも暮らしている。犬たちが日々の生活でストレスを感じないよう、床材は彼らが歩きやすいものを選んでいる。外部のアプローチも含めて土間がほぼフラットに連続しているのもそのためだ。リビングやテラスがある2階への上り下りもスムーズにできるよう、階段の段差は低く抑えられ、表面はすべり止め効果のあるニス仕上げとなっている。「大事な家族の一員である犬と人、お互いの生活動線を考慮しつつ、それぞれの快適さとは何かを考えた住まいとなっています」(大浦氏談)。
土間を多様に使っているのは人間だけではない。《O邸》の施主は、建築家の大浦比呂志氏に自宅の新築を依頼した当初から、パートナーである犬たちも快適に過ごせることを第一に希望した。
《横浜 O邸》
設計:ネイチャーデコール / 大浦比呂志
「犬たちにストレスを与えないよう、玄関まわりはフラットな土間に。また、施主夫妻はそれぞれ海外での生活経験から、ホールのような広がりも感じられるようにとのことでした。」(大浦氏談)。黒い300mm角タイルを敷いた土間は、道に接した外のアプローチから始まり、玄関ドアを挟んで、家の内部に引き込まれ、南面のウッドデッキまで連続する。デッキからの光が差し込む洞窟のような屋内土間の一角に、ホワイトシェパードのハンク君(3才)専用の「ハウス」がある。冬の寒さには強いが暑さは大の苦手という彼のために、一畳半の「ハウス」の床も白い100mm角タイル貼り。夏場でもひんやりと涼しく、快適に過ごしている。タイル敷きならば飼い主の掃除もしやすい。
《O邸》にはハンク君のほかに、小型のトイプードルも暮らしている。犬たちが日々の生活でストレスを感じないよう、床材は彼らが歩きやすいものを選んでいる。外部のアプローチも含めて土間がほぼフラットに連続しているのもそのためだ。リビングやテラスがある2階への上り下りもスムーズにできるよう、階段の段差は低く抑えられ、表面はすべり止め効果のあるニス仕上げとなっている。「大事な家族の一員である犬と人、お互いの生活動線を考慮しつつ、それぞれの快適さとは何かを考えた住まいとなっています」(大浦氏談)。
震災を経て再生された土間と住まい
先祖代々、農業を営んできた旧家に、約250年にわたって受け継がれてきた母屋である。だが、住むには何かと不便なため、一家の暮らしは同じ敷地内に建てられた現代的な住宅に移って久しく、昔ながらの農家に特有の、農閑期でも作業ができる広さがある三和土の土間も、なかば物置となっていた。2011年3月11日、東日本を大きな地震が襲うまでは。
震源から離れていたが、地盤が液状化して敷地内に建っていた蔵(くら)は倒壊、住んでいた家も傾いて住めなくなってしまう。木造平屋の母屋も屋根と壁が大きく崩れ、だが全壊は免れた。奇跡的に、ではない。調べてみると、梁と柱に歪みがみられたものの、基本的な構造はしっかりしていた。このことに感銘を受けた当主は、修繕した母屋に戻り、住み継いでいこうと決心する。
《継承する家》
設計:けやき建築設計 / 畔上順平
19.5平米から半分以下に縮小した以外は、風格漂う古民家にふさわしい玄関として、三和土の土間はほぼそのまま残し、毎日のようにここで作業をしていた先祖の記憶を継承。土間と壁との境に敷かれる地覆石(じふくいし)と呼ばれる部分も、全壊した蔵の石材を再利用した。土間から板張りの床まで80cmと高いのは、かつて水害に見舞われていた地域であることを物語っている。立派な梁がみえる天井には、施主が買い求めたアンティークの照明器具を取り付けた。対となるステンドグラスが明かり取り窓に設えられ、モノトーンの土間に彩りを添えている。近所の人が訪れた際には、この空間はちょっとしたカフェのようになるという。
幾つもの苦難を乗り越えながら、これからも継承される住まいである。幾重もの記憶とともに。
こちらもあわせて
土間の写真・デザインアイデアを見る
先祖代々、農業を営んできた旧家に、約250年にわたって受け継がれてきた母屋である。だが、住むには何かと不便なため、一家の暮らしは同じ敷地内に建てられた現代的な住宅に移って久しく、昔ながらの農家に特有の、農閑期でも作業ができる広さがある三和土の土間も、なかば物置となっていた。2011年3月11日、東日本を大きな地震が襲うまでは。
震源から離れていたが、地盤が液状化して敷地内に建っていた蔵(くら)は倒壊、住んでいた家も傾いて住めなくなってしまう。木造平屋の母屋も屋根と壁が大きく崩れ、だが全壊は免れた。奇跡的に、ではない。調べてみると、梁と柱に歪みがみられたものの、基本的な構造はしっかりしていた。このことに感銘を受けた当主は、修繕した母屋に戻り、住み継いでいこうと決心する。
《継承する家》
設計:けやき建築設計 / 畔上順平
19.5平米から半分以下に縮小した以外は、風格漂う古民家にふさわしい玄関として、三和土の土間はほぼそのまま残し、毎日のようにここで作業をしていた先祖の記憶を継承。土間と壁との境に敷かれる地覆石(じふくいし)と呼ばれる部分も、全壊した蔵の石材を再利用した。土間から板張りの床まで80cmと高いのは、かつて水害に見舞われていた地域であることを物語っている。立派な梁がみえる天井には、施主が買い求めたアンティークの照明器具を取り付けた。対となるステンドグラスが明かり取り窓に設えられ、モノトーンの土間に彩りを添えている。近所の人が訪れた際には、この空間はちょっとしたカフェのようになるという。
幾つもの苦難を乗り越えながら、これからも継承される住まいである。幾重もの記憶とともに。
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