消費減税は「金持ち減税」その混乱は食料品非課税で大きくなる

いま消費減税は最大の話題である。野党は消費減税の要求で一致し、内閣不信任案も出せる情勢だ。石破首相は減税を否定したが、森山幹事長は「勉強会」を始めた。

党内の旧安倍派グループや公明党からも減税要求が強いので、与野党の妥協点として維新や立民の提案する食料品の非課税が出てくる可能性が高い。そこでチャットGPTにシミュレーションしてもらった。

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子供は「刺激の貧困」の中でどうやって急速に言葉を覚えるのか

ことばをつくる―言語習得の認知言語学的アプローチ
20世紀の哲学や人文科学の潮流を言語論的転回と呼んだのはローティだが、その言語中心主義の頂点がチョムスキーの生成文法だった。そこでは言語の本質は人類に共通の普遍文法で、それを発見することが言語学の使命だったが、それから70年たっても普遍文法は見つからない。

子供の言語習得については刺激の貧困と呼ばれる問題があり、子供が親の貧困な語彙を聞くだけで短期間に話せるようになるのは、脳内にあらかじめ普遍文法をもっているからだというのがチョムスキーの仮説だった。しかしトマセロはこの仮説を多くの実験結果をもとにして全面的に否定する。

子供の刺激は貧困ではない。与えられる音声や映像の刺激は膨大で、子供はそこから家族の顔や習慣などを覚えていく。言葉もそういう習慣の一つである。それは体系的な普遍文法を応用するのではなく、多くの試行錯誤の中で断片的な言葉を徐々に長い文にしてゆく

試行錯誤で正解に近づく上で重要なのは、意図の共有である。最初はカタコトを発している子供が、1歳ぐらいで空気を読んで親の言葉をまねるようになる。これは他の霊長類にはない能力で、大規模言語モデル(LLM)で言葉の意味を文脈から推測するのと似ている。

もう一つはパターンの発見である。親の言葉を繰り返し聴いているうちに、そこに同じパターンを見つけてまねるようになる。ここには句構造や生成規則などのルールはなく、繰り返しの中から共通のパターンを推測する。これもLLMがパターンを見つけるのと同じだ。

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消費減税の財源は「永久国債」で出せる(アーカイブ記事)

消費減税は貴重な社会保障財源を減らす愚策だが、財源には対応策がある。日銀のバランスシートから国債を消せばいいのだ。その方法として今まで提案されたのは次の3つである。
  1. 日銀が償還を求めないと宣言する
  2. 政府が国債を永久債で借り替える
  3. 政府が財政赤字を増やしてインフレ税をかける
1は日銀が保有国債の償還を求めないで、すべて塩漬けにするものだ。これは国債を日銀券に置き換えるだけなので、国民がすべて合理的なら、ほとんど何も起こらない(ややインフレになる)というのがブイターの理論である。

日銀が正式に債権放棄すると減損処理が必要になるので、暗黙の約束でいい。今でも満期までに売却することはないので、これは日銀が正直になるだけだ、というのがターナーの黒田総裁への提案だった。

「ヘリコプターマネー」は永久国債と同じ

2はターナーがヘリコプターマネーという奇抜な名前で提案して話題になったが、これはもともとフリードマンの言葉で、それほど奇想天外な話ではない。玉木氏の提案も論理は同じである。

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消費減税で「日本版トラスショック」は起こるか

超長期国債の市場に異変が起こっている。売買の過半数が海外ファンドになったのだ。

40年物国債(13回債)の価格は史上初めて50円を切った。
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日本の労働者はなぜ30年間も賃上げを自粛したのか



長期金利が連日、史上最高を更新し、きょうは40年債の価格が50円を割った。この原因は消費減税の大合唱で、遠からず石破政権も減税を検討するという観測が出ているからだろう。インフレのとき全野党が減税を大合唱する光景をみると、日本は資本主義の後進国だと痛感する。

物価を考える デフレの謎、インフレの謎 (日本経済新聞出版)
本書も黒田総裁以来の異次元緩和を振り返り、日本の特殊性を強調している。日本の「デフレ」が20年以上も続いた原因は、資本主義の常識では理解できない。その原因は、ひとことでいうと自粛だという。

デフレの中で賃上げすると企業収益が悪化するので、労働組合は賃上げ要求を自粛する。このため企業は値上げを自粛し、横並びの価格より少しでも値上げするとパッタリ売れなくなるので値上げしない…という悪循環になる。

これはよくある説明だが、そもそも労組がなぜ賃上げ要求を自粛するのかがわからない。労働生産性が低いならわかるが、日本の労働生産性上昇率はG7の平均程度だ。これが河野龍太郎氏も取り組んだ「デフレの謎」である。

著者の答は財界の賃上げ自粛要求である。1995年に日経連が出したレポート「新時代の日本的経営」では、日本の賃金がドルベースで世界最高になったことを指摘し、中国に比べて日本の賃金が高いことが日本企業が国際競争力を失った原因だと主張して賃上げの自粛を求めた。これは事実だが、その悪循環が30年も続いたという説明には無理がある。

河野氏はその原因は資本家の「収奪」だというが、これも根拠薄弱だ。答はもっと単純だと思う。正社員ギルドである労組は雇用を守るために賃上げを自粛し、企業は中高年の正社員の雇用を守るために新規採用をやめてパートを雇ったのだ。それが就職氷河期の悲劇を生んだ原因でもある。

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左右ともに「属国ルサンチマン」を卒業しよう

江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす
石破首相が「戦後80年談話」を出すつもりらしい。自民党内では反対が強いので「個人的なメッセージを出す」というが、首相が8月15日に出したら個人的なメッセージと思う人はいない。論理的にはいつまでも「戦後」だが、当事者でもない世代が戦争を反省する悪習は打ち止めにすべきだ。

江藤淳は60年安保のころは左翼だったが、アメリカに留学して押しつけ憲法に目ざめ、占領軍の言論統制を告発した。押しつけは事実だが、占領が終わって何十年たっても日本人が「WGIPに支配されている」というのは被害妄想である。

他方、加藤典洋は『敗戦後論』でこういう被害者意識を批判し、左翼が憲法を保守する一方、右翼がそれを革新しようとする「ねじれ」を指摘した。両者が共有していたのは日本が敗戦でアメリカの属国になったというトラウマだった。

左翼が陰謀史観をくり返す一方、右翼が男系天皇や夫婦別姓などの些細な問題にこだわるのも、こういう昭和老人のルサンチマンに迎合するつもりだろうが、今の若い世代には何のことかわからないだろう。

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消費税の5%減税は「インフレ大増税」になる

国民民主党が先頭を切った消費税の減税ブームは維新から立民にも拡大し、全野党が(タイプは違うが)消費減税の大合唱になった。石破首相もその波には抗しきれないだろう。遅くとも参院選までには石破政権が減税を示唆する可能性が高い。

問題はそのとき日本経済がどうなるかである。税法を改正して実際に減税するのは、早くても2026年4月だが、臨時国会で減税が決まった瞬間に毎年13兆円の歳入欠陥が確定する。この財源は今のところどの党も具体的に言及していないので、これはすべて赤字国債でファイナンスされると考えよう。そうすると何が起こるか。

これは史上最大規模の減税なので予想は困難だが、インフレのとき減税したら、インフレが加速することは明らかだ。インフレになると長期金利=自然利子率+予想インフレ率なので、長期金利が上がることも確実である。

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日銀当座預金にはなぜ金利がついているのか

はじめての日本国債 (集英社新書)
橋下徹さんの「通貨発行益」をめぐる謎理論には批判が殺到しているが、これは日本の財政・金融を勉強するいい機会だ。本書は国債の入門書だが、日本の金融市場では国債のシェアが圧倒的に大きいので、金融システム入門でもある。

日銀当座預金は、一般人は使わないのでわかりにくい。まず引っかかるのは、当座預金になぜ金利がつくのかという疑問だ。これは準備預金であり、もともと金利はついていなかった。2008年にFRBがリーマン危機のあと大量に長期国債を買い、その資金が準備預金として戻ってきたので、法定準備率を超える超過準備に付利(IOER)をつけたのが始まりである。

かつて政策金利は短期国債の買いオペ・売りオペの公開市場操作でコントロールしていたが、長期国債が増えると短期国債だけでは操作できない。そこで日銀も超過準備に金利をつけ、短期金利の誘導目標としたのだ。付利を0.5%とすると、短期金利(オーバーナイト)との間に裁定が働き、金利を0.5%に誘導できる。

法定準備率以内の金利はゼロなので、日銀当座預金という名前はおかしくなかったが、超過準備に金利がつくようになっても名前を変えなかったので、リフレ派が「銀行へのお小遣いだ」などと難癖をつけ、橋下さんのような誤解も生まれる。当座預金という名前は変えたほうがいい。

法定準備率は日銀政策委員会が20%まで上げられるが、今は0.05~1.3%と非常に低い。海外の中央銀行では準備率の引き上げは普通だが、銀行の資金が日銀に固定されるので引き締め効果をもつ。このため引き上げには銀行業界が反対するが、日銀が1991年から上げていないのはよくない。

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通貨発行益について

きのう橋下徹さんが噛みついてきて、Xでたくさんリプライをもらったので、簡単にまとめておく。彼のツイートは間違いだらけで反論する意味もないが、彼の話は維新の政策に影響を与えるので、間違いを指摘しておく意味はあるだろう。

まず「政府の赤字国債を日銀が通貨発行益で発行した日銀券で買ったらどうなる?」という文が意味不明である。通貨発行益とは日銀ホームページによると

日本銀行の利益の大部分は、銀行券(日本銀行にとっては無利子の負債)の発行と引き換えに保有する有利子の資産(国債、貸出金等)から発生する利息収入で、こうした利益は、通貨発行益と呼ばれます。

つまり通貨発行益とは国債などの利息収入のことで、すべて国庫納付金として政府に納める。したがって「通貨発行益で発行した日銀券」という日本語は意味をなさない。

日銀の買った国債が日銀の資産になるというのは正しいが、その見合いに市中銀行に対する日銀当座預金という負債が発生するので、日銀は得も損もしていない。「通貨発行益のマジック」なんてないのだ。

問題は民間金融機関が日銀に政府赤字国債を売却した対価の日銀券を、日銀当座預金に積んだ付利

これも日本語として意味をなさない。日銀当座預金は銀行が日銀に預けることを義務づけられている準備預金で、法定準備を超える超過準備には金利がつく。これを付利と呼び、政策金利(今は0.5%)の誘導目標である。

ところが橋下さんは日銀当座預金は負債ではないので、付利をゼロにしろという。そんなことをしたら、市中銀行は超過準備を取り崩して貸し出しに回し、政策金利がコントロールできなくなる。

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維新は河野太郎氏と連携して「国民年金保険料の廃止」を打ち出せ

維新が迷走している。吉村代表は「党運営の力が不十分」と言ったが、問題はそれだけではない。総選挙で惨敗してからも党の建て直しができず、予算案でも前原共同代表が与党の窮地を救ってしまった。


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