当時12歳の少女(以下「A」)に対して性行為を行ったとして、大阪地裁は2024年12月、不同意性交等罪に問われた20代男性(事件当時は特定少年)に対し、懲役3年・保護観察付執行猶予5年(求刑:懲役3年)の判決を下した。
同世代の子を持つ親であれば、事件の内容だけで憤りを感じるかもしれないが、本件はそれだけではなかった。よりによって被告人は、事件が発覚した後のAの母親とのやり取りで「警察、警察と言ってますが、これくらいじゃ警察は動きませんよ」などと、まるで挑発するような態度を見せていたことが法廷で明らかにされた。(裁判ライター・普通)
●12歳の少女の首を絞めて性交
起訴状によると、被告人は大阪府内のホテルで12歳のAと性交をした。事件当時、被告人は特定少年(18~19歳)であったため、少年審判に付された後、検察官送致を経て本件の起訴に至った。
法廷で取り調べられた証拠によると、被告人とAは、LINEで友だち交換をしていなくてもやりとりができるオープンチャット機能で知り合った。
Aの年齢も把握していた上でやり取りを続ける中、被告人がAの住む大阪に旅行で訪れることになり、「大阪に来てるんだけど会わない?」「もう近くにいる」などとAに連絡して会うことになった。
Aはカラオケに行くものと思っていたが、「ラブホテルにもカラオケはある」などとそそのかされ、事件現場となったホテルへ連れて行かれた。被告人は避妊具を使わず3度性交を行った。その際、過去にどこかで「感度が上がると聞いた」ことがあるという被告人は、Aの首に触れる程度の力で絞めたという。
弁護人が提出した被告人作成の謝罪文はAの親に対して宛てられていた。起こした行為の謝罪や、Aの将来を心配するような言葉が並べられていた一方、「自分にとっても学ぶ機会と感じました」などとも書かれていた。
●被告人の父親「被害者、そのご両親にはすまなかったと思っている」
証人として被告人の父親が出廷した。事件当時、被告人と同居していたが、事件から被告人が逮捕されるまでの3カ月、事件のことは何も聞いていなかった。現在はAの家族に示談交渉を行っているが、金額面で折り合いがつかず合意に至っていない。
12歳の少女と性交した事実について聞かれると、「常識外れのことをやらかしたと思っている。被害者、そのご両親にはすまなかったと思っている」と話した。今回の事件の原因など、被告人と事件についてどのように向き合っているかについては、尋問の中では明らかにされなかった。
今後も同居を続ける中で、スマートフォンを定期的にチェックすることなどを監督指導として誓約した。ただ、事件のきっかけになったチャットについては内容を把握できておらず、多様なアプリについても他の家族にもサポートしてもらいながらチェックすると話すにとどまった。
●被告人が母親に対し「これくらいじゃ警察は動きませんよ」
弁護人からの被告人質問が行われた。事件当日は、旅行で訪れたことを伝えると返信が来たので、車で迎えに行き、駐車場で1時間ほど過ごした後、ホテルへ向かったという。どのようにホテルへ誘うことなったのか、その際のAの反応などは明かされなかった。
事件後の心境などについても語られた。
弁護人「逮捕まで約3カ月ありましたが、どう考えていましたか」
被告人「最初はひたすら逮捕されると思ってましたが、LINEでAの母親とやり取りして大丈夫かなと」
弁護人「Aの母親はなんと言っていたのですが」
被告人「『これ以上関わったら通報する』と」
弁護人「その後LINEのやりとりを止めたのは何故」
被告人「僕が、『警察、警察言ってますが、これくらいじゃ警察は動きませんよ』と言って、以降しなくなりました」
犯行については「軽はずみで、恥ずかしいことをした。被害者に迷惑をかけてしまい申し訳ない」と反省の言葉を口にした。現在は、示談条件の金額となるまで、仕事の給料を半分貯める生活をしているという。
●「妊娠の危険性考えなかった」
検察官からはAの年齢を踏まえ、低年齢者が好意の対象か問われると「若い子だから好きなのでなく、Aが12歳だった」と供述。性行為を行った際の心情について聞かれると「これくらい、いいだろうと軽薄な考えだった」「避妊具をつけることは考えてなかった」「妊娠の危険性も考えなかった」などと答えた。
裁判官からは示談金の準備について聞かれた。
裁判官「毎月、どれほど貯めようと思っているんですか」
被告人「給料の半分です」
裁判官「目標まで、どれくらいかかるんですか」
被告人「(数秒の沈黙の後)3~4年?」
裁判官「いくらを相手に提示してるんですか」
被告人「給料の半分を貯めて、相手の希望額になるまで…」
裁判官「だから、それがいくらかを聞いてるんです」
証言台の被告人は、チラチラと弁護人の方を見た上で、不安そうに目標額を答えた。その不安な口ぶりは、示談のやりとりを口にしていいと悩んでいるのか、示談交渉の状況を被告人が把握していないためなのか、傍聴席から判断することはできなかった。
●執行猶予されたワケとは?
被告人に下された判決は懲役3年・保護観察付執行猶予5年だった。
判決は、性欲を満たすために、避妊もしない犯行態様は身勝手極まりないと被告人を非難。その一方で、執行を猶予した理由について、犯行時特定少年であったことや、当日のAとのやりとりが脅迫などを用いず比較的穏当であったと認められることから、犯行は軽視できないがただちに実刑ともいえないと述べた。
そして、誓約している示談金の支払のためなど就労の継続が求められること、安易な考えが認められること、性犯罪の再犯防止などから公的機関の監督が必要として、保護観察を付した理由を述べた。
決められた日時に保護司と面会し、生活状況や仕事の報告をするなど保護観察期間中に関する説明はすべての被告人に行われる。長らく傍聴を続ける筆者であるが、特にその遵守事項を守るよう強く説明しているように感じられた。