シリーズ連載①長く愛されるキャラクターの秘密
普遍性のあるストーリーとデザイン性の組み合わせ
「くまのがっこう」の仕掛け人は、「キャラ研」代表の相原博之氏。絵本の作者「あいはらひろゆき」その人である。
キャラ研の前身は、バンダイ内のキャラクター研究所で、ガンダムをはじめとするテレビアニメのキャラクタービジネスを手がけてきたバンダイが、「オリジナルキャラクターを開発する」ことをミッションに、2000年に新設した部署だ。
当時アサツー ディ・ケイのマーケターだった相原氏は、この新しい部署にヘッドハントされ、バンダイの新規ビジネスを担当することになった。偶然、自身にも子どもが生まれたばかり。子育てを通じて絵本の世界に接したことがきっかけとなって、絵本のレーベルを立ち上げた。第1弾は大人の女性向けに出したものの、サブカルチャー色が強く出てしまい不発だった。
だが、戻ってきたいくつかの読者ハガキの中にヒントを見つける。若い母親たちが「こんな絵本を待っていた」とエールを寄せてくれたのだ。「母親という予測していなかったターゲットを見つけたんです。そこから、働く母親が子どもに絵本を読み聞かせるとき、忙しい毎日の中で、せっかくなら自分も好きな本を読み聞かせたいと考えるんじゃないか…と思ったのが『くまのがっこう』が生まれたきっかけです」。
「くまのがっこう」は、12匹のくまのぬいぐるみの子どもたちの日常を描いた物語だ。11匹の「おにいちゃんくまのこ」の中に、1匹だけいたずらできかんぼうな「くまのおんなのこ」の主人公がいる。この12匹による、何でもないけれどあたたかな毎日が絵本の中では展開される。「自分に子どもができるまで、子どもにも絵本にも、正直興味はなかったんです。
でも、保育園にお迎えに行くと、そこには明るくてあたたかい子どもたちの日常の暮らしが広がっていた。それまで知らなかった世界に触れて、これってすごくいいな、と素直に感じて、そのあたたかさをそのままテーマに絵本を開発できないかと考えました」。
イラストは、絵本のレーベルをそれまで一緒にやってきたデザイナーのあだちなみさんにお願いした。イラストレーターとしてのキャリアはなかったが、テディベア好きだと知っていた相原さんは「くまの絵を描いてみないか」と持ちかけたのだ。あだちさんが持ってきたのは、くまのぬいぐるみの子どもが並んだ絵。「くまのがっこう」の設定はそこから生まれた。
完成した絵本は、当時『リサとガスパール』などの人気絵本を出していたブロンズ新社に制作を依頼し、1作目の『くまのがっこう』が誕生。これが35万部(2014年4月現在)のヒットとなったのである。ヒットの理由は、仲間や兄弟愛といった「普遍的な要素」とあだちさんが描くデザイン性の高いイラストの組み合わせにあったと相原さんは分析する。
主人公が身につけている小物や洋服の可愛さに、まず反応したのは子どもたちよりも母親だった。実際、絵本は生協やフェリシモなどの“こだわり”を強く持つ母親たちが利用する直販ルートから売れはじめ、その後、人気モデルの雅姫さんがバックアップしてくれるチャンスを得て、女性誌『LEE』でのタイアップを機に人気が爆発。ヒット路線に乗った。
絵本を基軸としたキャラクターブランドの売上は、12年間右肩上がりを記録。
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株式会社キャラ研
http://bears-school.com/(くまのがっこう公式サイト)
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