誕生から90年、持続可能な自然を次世代に 観光公害対策など住民と模索続ける国立公園
日光や瀬戸内海など8カ所の国立公園が1934年に次々と誕生してから12月4日で90年を迎える。現在、35カ所まで増えたが、オーバーツーリズム(観光公害)など課題も浮上。指定100年を見据え、自然を持続可能な形で次世代に残そうと、行政と地域住民の模索が続いている。(共同通信=神谷龍)
国立公園法は自然の保護と利用増進を目的に1931年に制定された。1934年には春から冬にかけて8カ所が指定され、1936年2月に最初期の12園体制が整った。
環境省によると、2023年の国立公園内の宿泊者数は延べ3271万人。新型コロナウイルス感染拡大前の約9割まで回復した。政府が掲げる、2030年にインバウンド(訪日客)6千万人誘致の達成に向け、外国人の旅先として人気がある国立公園は、魅力向上に向けたてこ入れが図られている。
ただ、観光客の増加が園内の自然に悪影響を及ぼす側面もある。霧島錦江湾国立公園では、登山道の傷みやごみ投棄の増加など問題が表面化。そこで同園では2024年4月、行政だけで進めていた登山道整備を登山者や地域住民とともに行った。
参加者は、登山道が雨で削られないよう、木材や小石で補強して回った。参加した60代女性は「山を守る意識につながった」と汗をぬぐった。
北海道の大雪山国立公園では2022年度から4年間の計画で、行政がクラウドファンディング(CF)を実施。目標を上回る寄付金が集まり、腐食の激しい木道を官民一体となって補修している。
長崎、熊本、鹿児島の3県にまたがる雲仙天草国立公園では、樹木や雑草が繁茂し、ツツジの一種で長崎県花のミヤマキリシマが減少。同県雲仙市は2024年度から地元ボランティアと連携し、十分日光が当たるよう、周辺で雑木の伐採を進めている。
雲仙市の地域おこし協力隊員で、ミヤマキリシマの保全活動に取り組む山本哲也さん(33)は「1年で結果が出るものではない。行政と民間が一体となった、長期的な保全の取り組みが重要だ」と強調した。