世界的にみても都市部への人口集中度が高まる日本。それに伴って大都市と地方の活力や生活環境はどう変わっているのか。いくつかのデータから、それぞれの魅力と課題を探ってみよう。
総務省の「住民基本台帳人口移動報告」によると、2014年に転入者数が転出者数を上回る「転入超」だったのは7都県だけ。うち4都県を東京圏が占め、愛知や宮城、福岡が続く。逆に「転出超」が多いのは北海道、兵庫、静岡の順だ。
長期の傾向をみると、大都市以外でも人口流入が増えている県がある。ここ10年間の転入・転出の累計では、滋賀県と沖縄県も転入超だ。「京都や大阪のベッドタウンとして移り住む人や、大学新設による学生の増加が背景にある」(滋賀県統計課)。また転出超は北海道のほか福島県や青森県が多くなっている。
多くの人を呼び込めれば、労働力や消費の恩恵は大きいはず。だが東京圏の経済力には陰りも見える。内閣府の「県民経済計算」によると、2012年の実質経済成長率は神奈川県や千葉県、東京都がマイナス。震災復興需要がある宮城や福島、産業基盤の強い愛知の成長率が大幅なプラスなのと対照的だ。
少子高齢化が進み総人口が減少していく日本で、それぞれの地域がいかに人を定着させ、活力を維持していくか。「暮らしやすさ」も重要な要素だ。
暮らしやすさの一端を「ゆとり」の違いでみてみよう。総務省の2011年「社会生活基本調査」によると、1日あたりの通勤・通学にかかる平均時間が最も長いのは神奈川県の43分。最も短い宮崎・愛媛県(20分)との差は2倍を超える。ほかに睡眠や趣味・娯楽に充てる時間にも地域差がある。
仕事や結婚、リタイアなどで都市部や地方に引っ越すと、実感するのが生活コストの違いだ。総務省の2013年「消費者物価地域差指数」(51市平均=100)では上位4都市を横浜市など東京圏が占める。逆に低いのは北九州市や宮崎市、秋田市で、横浜市と北九州市の差は9ポイントを超える。
しかし物価水準に所得が比例するとは限らない。総務省の2014年「家計調査」で2人以上の勤労者世帯の月間可処分所得をみると、上位を占めるのは富山市や宇都宮市、福島市など地方都市。物価の高い横浜市や東京都区部を大きく上回る。所得水準が高く、物価は安い地方での暮らしは「お財布に優しい」魅力がある。
実際に地方暮らしを希望する人たちに人気なのは、どんな都道府県なのか。NPO法人ふるさと回帰支援センターが調査した「ふるさと暮らし希望地域ランキング」によると、2010年は福島や長野、千葉が上位だった。2011年以降の結果も予想し、ボタンをクリックして確認してみよう。
各都道府県に移り住む日本人は、どこからどこに動いているのか。総務省の「住民基本台帳人口移動報告」(2014年)をもとにグラフ化した。左側の各都道府県の色ラベルをクリックするとどこに転出したか、右側をクリックするとどこから転入してきたかの分布をそれぞれ線で表示する。色ラベルの長さと左右を結ぶ線の太さは転出・転入者数の規模を示し、カーソルを合わせると具体的な人数も分かる。
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