大海原の小さな光

私が興味深いと言っているのは、敵の目標が世界をバッドエンドにすることで、主人公がハッピーエンドを望んでいること、というところである。一見するとどうということも無い二元論に見える。しかしよく見るとこのような二元論は珍しい。凡その作品においては、敵の目標はそれだけでエンドでありバッドなどと態々付かない。それに対して主人公側は永遠に続くこととか、その辺を目標とするものだ。

しかし、ここで話が急に変わるようであるが、現実に於けるもののあり方を見てみよう。全ての人間はいずれ死ぬ。否、全ての動物、否否、全ての生物はいずれ死ぬ。形あるものはいずれ必ず壊れる。物語も必ず終わる。どれほどグダグダであっても、それこそ未完であったとしても、それはそういう物語なのだと言える。無限だとか永遠だとかは論理として考えることは出来るが、現実には無い。

現実には終わること、エンドは前提なのだ。むしろ、人生は死があるからこそ、物語は終わりがあるからこそ、その他様々なものも終わりがあるからこそ、それを考えることが出来るのではないだろうか。よく、人の死とか、連載漫画やTV番組の終了をそれだけで、まるで悪いことでも起きたかのように嘆く者がいるがずれた話だ。終わりはあくまでも前提であり、それ自体は良くも悪くもない。終わりをどのように迎えたか、こそ重要であるはずだ。

そして、ここでようやくプリキュアの話に戻ってくるわけだが、主人公も敵もエンドは前提として、ハッピーとして迎えるかバッドとして迎えるかという話をしている。それが現実のありようを見据えているにも感じられて、私にはとても興味深く見えた。


こう考えたところ、他にも興味深い点が二点ある。一点目。次回予告で二人目の戦士になることが分かった赤い人、日野あかね。彼女はオチを求めたがる性格だそうで、第一声が主人公星空みゆきの自己紹介に対してオチを求めるものであった。実際のところみゆきの自己紹介は中身が無いというか一言言っただけだがちゃんとした自己紹介ではある。それに対してオチを求めた。

彼女がオチを求めるというのはただ終わらせることではなく、より良いものであれ、より面白いものであれ、と求めることではないだろうかなどと思う。ならばそれはやたらとハッピーを求めるみゆきに似てとても今回のプリキュアらしい考えだと思う。

興味深い点、二点目。マスコットのキャンディは敵の目論むバッドエンドを悪い未来だと説明した。いい加減というか大雑把なようで中々上手い説明である。考えてみればエンド、終わりは未来にある最たるものだ。こんな変に見えて的を射た説明をする辺り実に興味深い。


くどくど書いたが、変身ヒーローものとしては王道というかそこまで変なことの無い第１話である。初変身で力に慣れておらずまともな戦いにならないところとか、すぐ必殺技を撃たないことへのフォローであろうか必殺技を撃つのに気合が必要だったり撃つとすごく疲れたりするところとかが特徴か。前者は『ハートキャッチ』が既にやったことだがあれと違って今回で終わった。後者はすぐ有名無実になりそうな気がする。

作品としては、まず『５』や『フレッシュ』同様最初数回を人数集めで潰すようですな。全５人とキャンディが指定したが、こういうのはすぐ覆るのであまり信用できない。というか、変身アイテムの中に同形同大色だけ違う物体が７個あるとか怪しすぎるだろ。

あと、敵幹部のデザインが二足歩行して人語を喋るけど絶対に人間ではない怪物って辺りも結構久しぶりだな。極端にスマイル(プリキュア)を強調するOPの歌詞といい、色々と昔のプリキュアを思わせる。

昔を思い出すといえば、キャンディのデザイン。『ハートキャッチ』の連中と良く似ている。心の大樹が生んだ新しい妖精だと言われれば信じてしまいそうだ。声優も『ハートキャッチ』劇場版のゲストだし。