1/30/2014

MavericksでEPSON Scanが使えない


まず、2014年1月30日現在、EPSON Scan.appが使えない。新バージョンは出るのか否かも確認できてないが、とりあえずの回避方法を見つけた方がいらっしゃったので、助かった。

==> OSX 10.9 Mavericksでは起動しないEPSON Scanを使用する方法 - ソメログ




で、もうひとつ不具合。機能設定で「プリンターとスキャナー」を開こうとするとエラーが出て全く設定できない。これは、以前のプリンター設定を残したままMavericksにアップグレードすると発生するエラーのようで、これも解決策を見つけた方がいらっしゃる。

/etc/cups/printers.conf
/etc/cups/printers.conf.O
/Users/*username*/Library/Preferences/com.apple.systempreferences.plist
( *username*はログインしているユーザーネーム)

の3つのファイルを削除して、再起動の上、プリンターを再設定すれば復帰する。

==>OS X 10.9(Mavericks)で「プリンタとスキャナ」がエラーになる対応 - ちくちく日記


情報提供、感謝。


1/28/2014

Linotype の魅力 (4)

80年以上、約1世紀にわたって君臨してきたLinotypeの終焉もまたドラマチックだ。この終焉への過程とその後を知るほどに、Linotypeの歴史的面での魅力は増大する。

我が世誰ぞ常ならむ


1970年代の終盤、写真植字とオフセット印刷の進化が、Linotypeどころか活版印刷をまるごといっきに崖から突き落とす。

変化は急速であったが、写真植字もオフセット印刷も突然に現れたものではない。写真植字が開発されたのは1940年代だし、オフセット印刷技術はLinotypeより15年も前だ。1970年代の後半になるまで、どちらも活版印刷に比べてアドバンテージがなかったにすぎない。

写植による詰め打ち 斜体の例
写真植字は実に30年以上の時間をかけて進化し、電算処理と結びつくことでようやくLinotypeの生産性と品質を超える。写植により、各文字のマージンの取り方や表現には自由度が増した。オフセット印刷のための版下作成は、紙の切り貼り、熔けた鉛はいらない。あとはそれをフィルムにとって刷り用のアルミ版に焼き付ける。写真とほぼ同じ工程だ。品質やコスト・パフォーマンスも十分となり、熱くて重く、取り扱いのやっかいな鉛の活字の時代はあっという間に終わる。

一旦コスト・パフォーマンスで優位に立てば、もうLinotypeとその熟練オペレーターに行き場はない。Linotypeが登場した頃は安くて早い印刷物への需要が高まり、たくさんの雇用が創出された。今回はそれとは違う。印刷への需要の伸びは雇用の削減に及ばない。数年のうちにLinotypeは熟練オペレーターとともにスクラップとなってしまった。

浅き夢見じ


Linotype社の方は当然新しい技術を導入して生き残りを計る。1974年にはLinotron 505という写植機を市場投入している。ただクールに仕事をこなすためだけの、こじんまりとした人間味のない機械だ。これが動いている様子がYouTubeの動画で見られたとしても、何ひとつ面白く無い。以降、Linotype社が出すマシーンは、見て面白いものが無くなるが、ドラマは続く。

多くのLinotypeが破棄されてからまだ10年もたたない1984年、AppleのMacintoshが登場する。翌年、AppleはAdobeのPostScriptを搭載したLaserWriterを発表、同じ日にAldusが史上初のDTPソフト、PageMakerを送り出す。(この共に頭文字が"A"の3社のコラボレートも、時代の奇蹟としてドラマチックで、語り始めるときりがないが、この場はLinotypeの話。)

まだ天下をとって間もない写植機は、たった10年あまりのうちに、個人でも買えるこの小さなコンピューターに市場を脅かされることになる。Linotype社はMacintoshとAdobeのPostScript技術の将来性に気付き、1988年にPostScriptイメージセッターを市場投入する。イメージセッターは言わば高精細のパソコン用プリンターで、普通紙のかわりに印画紙やフィルムに出力する印刷のプロ用機材だ。

この時点で、活字は構成要素のデータのひとつとして、イメージと組み合わせてコンピューターで処理されて出力されるものになった。もはや金属に刻まれていたり、ネガ・フィルムに写されている物理的なメディアではなくなったわけだ。

Linotype社のイメージセッターはオフセット印刷のためのフィルム出力のスタンダードの地位を得るが、これも長くは続かない。やがてオフセット印刷はフィルムを必要としなくなる。コンピューターから直接、刷り用アルミ版を作る技術(CTP:Computer to Plate)が一般化し、イメージ・セッターの市場も10年ちょっとで無くなってしまうのだ。

レガシーは手のひらの中に


Linotypeの自動鋳造植字機が80年、写植機20年、イメージセッターが10年。近年の技術進歩の速さと雇用の縮小ぶりに驚く。LinotypeもMonotypeも今やフォント、つまりタイポグラフィーの提供会社としてひとつになった。そのフォントも、かつては数々の技術者の手によって届けられていたものが、現在はデザイナーとエンド・ユーザーが直結している。ハードウェアがすべてのアルゴリズムを処理していた時代から、ソフトウェアが中心の時代になった。

「活字離れ」なんてとんでもない。現代は活字の溢れる時代だ。「活字になる」という言葉があるように、つい20年ほど前まで活字は憧れの対象であり権威だった。Linotypeはそんな時代を象徴するマシンだ。Linotypeの有名なフォントHelveticaは、もはや「印刷」からも切り離され、ユーザーが手の中で日々の個人的コミュニケーションに使う道具のひとつである。



>Linotype の魅力 (1)
>Linotype の魅力 (2)
>Linotype の魅力 (3)

1/26/2014

Linotype の魅力 (3)

ここでまた、Linotypeの感動ポイントを整理してみる。


  • 活字を拾って配列させる作業を効率化させたいとう需要に対し、金型を並べて1行ごとに活字を鋳造してしまえばいいと発想したところ。
  • ひとつの金型から使い回しのできる鉛の活字を作っていたところに、金型を複数用意して使い回し、鋳造した活字は使い捨てに転換したところ。
  • 1行並べたらすぐに鋳造する仕組みを作ることで、鋳造している最中に次のタイピングができるように効率化したところ。
  • オペレーターがひとりで3つの作業を同時にこなせるようにしたところ。


さて、日本人の私にとってみて、Linotypeにはもうひとつ感動ポイントがある。これだけ世界中の印刷・出版に革命をもたらし、その後80年以上も一線で使われ続けた世紀の発明品が、日本語の組版にはクソの役にも立たなかったというところ。

取り残された日本


1970年代の中旬ごろだったか、今のマリオンの場所にあった朝日新聞に社会科見学に行った記憶がある。当然まだ活版印刷の時代で、輪転機にかける半筒形の鉛の版(ほぼ日刊イトイ新聞のこのページに写真が載ってる)が印象に残っている。活字の組み方も説明してもらったと思う。いくらなんでもその頃にはもうMonotype型の自動鋳植機が使われていたはずが、そんな機械を見た記憶は残ってない。活字の棚がならんでいて、そこから拾っているのを見たような気がするが、それは自動で拾えなかった分を人が補っているところだったのかもしれないし、そもそも記憶が混同しているかもしれない。

Linotypeは基本的にアルファベットを組むための機械だ。大文字(Capital)、小文字(Small)、小さい大文字(Small Caps)、数字・記号類(Punctuations)を合わせて90個の金型:マトリクス(Matrix)が用意されて、90個のキーがそれに1対1で対応する構造になっている。ひとつのマトリックスにはローマンとイタリックの2種類が切り替えて使えるようになっているので、1台で180種類の文字の母型が使える。

日本語の場合、平仮名だけで濁音など入れると80文字以上、片仮名、数字とアルファベット加えるともう間に合わない。漢字に関しては当用漢字で1850字。とても無理。Linotypeのアイディアで、日本語の組版は全く太刀打ち出来ない。逆に言えば、Linotypeの恩恵を、日本の印刷・出版業界はまったく受けることができなかった。

つまり日本の新聞社など、欧米圏の情報伝達のスピードに全くついていくことができてなかったわけだ、1970年代になっても!

MonotypeとLinotype


ところで、Linotypeの市場でのライバルは文字を1文字ずつ鋳造して配列するMonotypeだったが、こちらはLinotypeに比べてちょっと感動レベルが低い。利便性で両者はそれぞれに強みがあって、決して引けをとっているわけでないのだけれど、Linotypeと違ってMonotypeは文字の入力用と出力用とが別々の機械に分かれているところが印象的なマイナス点だ。

機械が2つに分かれているのは合理的ではある。でも、ツールとしてオペレーターとの一体感がない。タイプする人はひたすらキーボードに向かい、文字を鋳造する人は出力された活字を取っていくだけ。2つの機械に介在するのは穿孔紙テープのみで、その紙テープが完成するまでは文字の鋳造作業は進まない。あまり人間味のする機械ではない。

MonotypeはLinotypeから少々遅れて市場に登場したのだが、やはり20世紀になる前の話だ。文字数の多い日本では、このMonotype形式の自動活字鋳植機がなじみ、どうやら1950年ころに実用化されたらしい。半世紀遅れてる。大田区鵜の木にあった小池製作所の和文モノタイプが近年まで動いていた様子がYouTubeにあったが、やはり工場の生産ラインのよう。




小池製作所はMonotype社とクロスライセンスを結んでいたそうで、活版印刷の時代が去ったあとも機械のメインテナンスなどをしていたが、2008年に破産、現在跡地はマンションになっている。

一方、Linotype社は合併やスピンアウトを重ねてハードウェアから手を引いた形で名前を残していたが、同じくハードウェアを切り捨てたかつてのライバルMonotype社の末裔Monotype Imaging社に2006年買収され、今はそのひとつのブランドである。


>Linotype の魅力 (1)
>Linotype の魅力 (2)
>Linotype の魅力 (4)

1/25/2014

QuickTimeでノイズ noises on QT X

Maverickにして初めてYouTubeからダウンロードしたmp4ビデオをQuickTime X Playerで再生したら「ブツ、ブツ」っていう激しいノイズがのる。iTunesで再生したらノイズが出ない。

古いQuickTime 7 Playerで再生してもノイズは出ないので、QuickTime Xの不具合かと思ったけど、ふと気がついてsoundflowerを経由しないで再生させたらノイズはなくなった。

soundflowerのバージョンは1.6.6。Maverickとの相性の問題か、はたまたQuickTime10.3との相性の問題か...


On Maverick, I was playing a mp4 video downloaded from YouTube to hear crackling noises presenting with QuickTime X Player.   No noises from the same source were heard on iTunes.

On QuickTime 7 Player, no noises either.  So I thought something wrong with QuickTime X itself.  Next moment, I came to recalled I was using "soundflower" to route the sound output.   Direct routing of sound remedied the situation.

The soundflower version is 1.6.6.   I don't know if soundflower doesn't fit to either Mavericks or QuickTime X....

1/24/2014

Linotype の魅力 (2)

19世紀の終わりに登場した、この筆舌に尽くしがたい驚異的な自動鋳植機の驚異(wonder)の数々をあえて列挙してみたい。

活字製版の複数の課題をひとつの機械で解決している


よくもこれだけの機能をひとつの機械に集約したものだと驚愕する。しかもすべてハードウェア的に機能を実装しているのがすごい。

もともと、活字による組版は気の遠くなるような作業だ。使用される文字を予め鋳造して文字ごとに棚に並べておく。それを原稿に従って作業員が一文字ずつ指で拾っては、手元で正確に並べていく。誤ってひっくり返したら最初からやり直しだ。並べた活字に適度な隙間をとってインテル(interline / lead)とかクワタ(quadrat)と呼ばれる充填材で埋め、ゲラ(galley)に配置する。ここで一旦インクをつけて刷り(ゲラ刷り)、校正作業を行う。修正が終わったら紙面用に大きなレイアウトへの組み付け(imposing)を行う。これにインクをつけて紙に刷るのだが、さらに大量印刷する場合には、組み付けした版を紙型(しけい)に型取って、最終的な刷り用の鉛を流し込み、それを輪転機にかけて印刷する。使用済みの活字はばらばらにされ、洗浄した後、再び作業員の手により文字ごとにもとの棚に戻される。

時間も人手もかかるし、当然のことながら高コストだ。13世紀以来500年にわたって、おおよそこの一連工程が続いていた。いろんな効率化が試されたが、どれも決定的なものはなかった。

オットマー・マーゲンターラー(Ottmar Mergenthaler)は1876年にこれら業界がかかえる問題の解決を持ちかけられる。依頼からわずか10年後の1886年、彼は"Blower"という1台の機械により見事にほとんどの難題をクリアする。製品は"Linotype"として、このあと80年に渡りほぼ形を変えずに印刷・出版業界を席巻することになる。悲劇的にも、マーゲンダラーは20世紀にLinotypeが圧倒的な成功をおさめるのを見ずにこの世を去っている。

実装されているアイディア


活字ではなく金型を使いまわす
これまでの印刷工程の中では、あらかじめ鋳造された活字をぐるぐると使いまわしていた。Linotypeでは1文字ごとに用意されたマトリクス(matrix)という金型を短時間で使い回し、鋳造した活字は使い捨てにした。(鉛は融かして再利用する。)

使う活字の金型はタイプして並べる
タイプライターのようにタイプすれば、対応する文字の金型が自動的に選択され順番通り配列するようにした。この仕組で、活字をひとつひとつ指で拾う手間と、校正前の多くの間違いは排除できた。タイプ部分は金型種類と対応して90のキーが用意された。

文字ごとに幅の違う金型を用意
一方で、タイプライターの文字は等幅である。しかし、それだと「W」でも「i」でも同じ文字送りになってしまい、出版物としては見栄えが悪い上に書体も選べない。文字ごとに幅を変えることで、セリフ、サンセリフなどの美しい書体で文章を組めるようにした。

活字を1行単位で鋳造する
インテルなしに段落の送りを設定できる上、作業中に活字がバラけてしまう心配がなくなった。タイプした1行分の金型は、すぐに脇にある鋳造機に送り込まれ、次のタイプ作業をしている間に1本のスラグ(slug)として出来上がり、並べられていく。これにより組版の質とスピードが格段に向上した。

文章の両端揃え(justification)ができる
スペースバンドという、くさび形を組み合わせた特殊な充填用金型を用意することで、単語間のスペース幅が調整され、文字幅や文字数によらず、左右両端がピッチリとそろった段落構成を自動的に行えるようになった。

使用済みの金型を自動整理
金型は文字ごとに異なる鍵欠きがされており、鋳造が終わって使用済みとなった金型は自動的にもとの場所に整理される。

ひとつのモーターで全部が駆動する
これら一連の複雑な作業のすべてを、一機のモーターからの動力をベルトとギヤで振り分けることで実現している。



全体がひとつのハーモニーとなっている


金型による植字、一行分の活字スラグの鋳造、使用済み金型の仕分け。この一連の工程が見事にたった1台のマシーンに集約され、たったひとりのオペレーターにより運用される。

こうした複雑な機構を設計できたのは、マーゲンターラーが時計職人であったからこそだろう。まさにからくり時計である。ただ、からくり時計と違うのは、これが出版物を生産するマシーンであるということだ。時計はそれ自体で完結している。しかし、Linotypeは印刷・出版という産業を育てる原動力となった。この機械によって作られた出版物を含めて、ひとつの現象なのだ。

そしてこの機械はほとんど形を変えずに1970年代後半まで80年以上に渡り、世界の印刷工場の主役を担ったのだ。




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1/23/2014

Flashのインストールが途中でエラーになる

新バージョンのお知らせが表示されるので、MacBook ProにFlashのアップデートを導入しようとすると、インストールの途中でエラーになる。これ、たしかFlashのVer.10あたりから症状が出始めたんだけど、その後、Ver.11もインストールできなかったし、今回の最新版Ver.12でも同じくだめ。

具体的には、adobeの最新版ダウンロード・ページからディスク・イメージをダウンロードしてからマウント、"Install Adobe Flash Player.app"を起動するまではできる。起動すると、なにやらダウンロードが始まり、進捗バーが50%くらいのところまでくると「インストール中」となる。なにやらドックのところでFlashのインストーラのアイコンは2つ並ぶがすぐにひとつ消え、そこで「エラー」(確か「一般インストールエラー」)となってしまう。何が原因かは表示されないで、トラブル・シュートのためのページを見せられることになる。

毎度この調子。ところが同じことやってもMac Proの方では何事もなくインストールできてしまうから意味がわからない。

トラブル・シュートの指示に従って、一度Flashをアンインストールしてみたが結果は一緒。こうなるともう古いFlashすら入っていない状況となりお手上げ。



さらに別のトラブル・シュート(左図)を見てみると、インストーラ・アプリケーションの「パッケージの内容の表示」をさせて、Contents/Resourcesの中にあるAdobe Flash Player.pkgを起動させてインストールしてみろ、とのこと。ところが、Contents/Resourcesの中にはAdobe Flash Player.pkgというファイルが見当たらない。なるほど、このインストーラーはAdobe Flash Player.pkgをバックグラウンドでダウンロードしてインストールするためのものなのだな、と認識した。

ということは、Adobe Flash Player.pkgを含む、「完全版」インストーラーを入手する必要がある。ということであれこれ探っていると、ようやくadobeのArchived Flash PlayerというページにVer.12のWindows/Mac用のインストーラーを発見した。

Mac用のインストーラーの「パッケージの内容の表示」をさせて、Contents/Resourcesを覗いたところ、目的のAdobe Flash Player.pkgがあったのでダブルクリックしてインストールは無事終了。ようやくFlashが最新状態になった。

2015/3/22 追記
Flashのバージョンが上がる毎に、私のMacBook Proでは同じエラーに悩まされるのだが、最近のバージョン・アップでは、最新の完全版インストーラーがなかなか見つからない。
Ver.17のやつはここ(https://helpx.adobe.com/flash-player/kb/installation-problems-flash-player-mac.html)にあった。ページの最後のところ:Still having problem? にSafari/Firefox用とOpera/Chrome用。これだとContents/Resourceの中身みなくても、そのままインストールできちゃったね。
あんまり原因追求しても仕方ないのかもしれないけど、標準のインストーラーのエラーのログをコンソールで診てみると、なんかlanguage関係が影響しているのかも。Macのシステム設定ファイルの何かにアクセスできないみたい。

1/22/2014

Linotype の魅力 (1)

人類の創った技術と芸術の両面において至極の作品、Linotype(ライノタイプ)を讃えるにはそんな言葉でも足りない。発明王エジソンをしても「世界8番目の不思議 The Eigth Wonder of the World」と言わしめた。まさに筆舌尽くしがたい発明品だ。

Linotype、今日ではコンピューター用フォントのメーカーとしては知られているが、かつては世界中の新聞社、出版社、印刷会社に活字の自動鋳造植字システムの販売・メンテナンスをする一大企業だったことは、日本人にはあまり馴染みがない。私もほとんど知らなかった。しかし、この自動鋳造植字システムが稼働している様子を一度でも見てしまうと、もうその虜にならずにはすまない。おそろしく複雑でありながら全く仕組みに無駄がなく、またどこか人間的だ。私は偶然、2014年早々に、動くLinotypeをYouTubeで「発見」して強烈な感動をおぼえたのだった。

映画「LINOTYPE: THE FILM」


DTPが普及して、あらゆる場面で活字が使われる現代においても、125年前に発明されたこの機械に魅力を感じるのは若い世代でも同様なようで、2012年にはアメリカのDTP世代の若者3人組により、「Linotype, the Film」という映画が制作され公開されていた。さらに2013年にDVDとBlu-rayが発売されていた。ただし、日本国内では売ってない。あのAmazonにもない!

なんとアメリカでは、iTunesとAmazonでストリーミング鑑賞できるのだが、日本で見られる設定になっていない。結局、映画の公式ウェブサイトのオンライン・ショップで購入するしかないので、そこに注文。PayPalで送料14ドルを含めて38.95ドル − 約4,000円を支払った。PayPalでの手続きは簡単で、お届け先住所が英語表記になっていればいいだけ。



待ち遠しい1週間を経て、到着したDVDをプレーヤーにセットしたら、なんと日本語字幕付き! 後で知ったのだが、映画のクレジットなどで使われている文字のフォントのデザインを手がけたのが、イギリスのMonotype社の日本人デザイナー:大曲都市という方で、この方によって日本語字幕がつけられたとのこと。これは嬉しかった。英語での鑑賞覚悟だったからね。

映画はLinotypeをめぐる2つの人間ドラマを描き出す。ひとつはLinotypeを発明し、提供した人々と会社、もうひとつはLinotypeを使う人と社会。

19世紀、ニュースへの需要が高まるが、13世紀のグーテンベルグ(Gutenberg)以来、活字印刷はたくさんの人手と時間をかけなければいけない作業だった。そこで活字拾いや組版の作業の高速化に、数々の試行錯誤されるようになる。マーク・トウェイン(Mark Twain)などは、著作で得た金のすべてを自動植字機への投資にあてたがものにならず、破産したのだそうだ。たくさんの挑戦がなされる中、ドイツからのアメリカ移民で時計職人のマーゲンタラー(Mergenthaler)の発明したLinotypeが世界を変えることになる。文字をタイプするだけで、1行ずつ活字をまとめて鋳造するLinotypeは瞬く間に新聞社に普及し、新聞を日刊化させ、ページ数を増やし、その上コストを著しく下げた。

情報が安く提供されると、出版物への需要は増し、さらに雇用も増えるという好循環をもたらす。一方で、設立されたLinotype社は資本家に牛耳られて、心労からマーゲンタラーは身体をこわし、44歳で亡くなってしまう。

Linotypeを導入した会社では、この機械を操るために多くの人が雇われ、技術的に熟練し、やがて情報産業の担い手として仕事に喜びと誇りを持つようになる。Linotypeというどこか人間的な機械と1対1で向き合い、愛着を深め、自分の人生をつぎ込んでいく。

ところがその蜜月は唐突に終わりを迎える。1970年代後半、写真植字と電算処理技術が十分なレベルに達し、あっという間にLinotypeを駆逐してしまうのだ。Linotypeが雇用を生んだのとは対称的に、熟練したオペレーターは突然に行き場を失ってしまった。

古い機械は博物館にしか行き場はなく、ほとんどがスクラップにされ、人だけがとりのこされて思い出とだけ生きている。

Linotypeの時代は80年も続いた。しかし、電算写植は30年もたなかった。Linotype社は合併、買収が繰り返されるうち、ハードウェアからは手を引いて、現在はフォントを開発・販売している。

映画はこの2つのドラマを、Linotypeに関わった人々へのインタビューから紡ぎだす。皆がこの極めて「特異」な機械に対して愛情たっぷりである。映画でインタビューに応じた何人かはすでに故人となった。貴重な記録であり、良質のエンターテイメントだった。

>Linotype の魅力 (2)
>Linotype の魅力 (3)
>Linotype の魅力 (4)

1/17/2014

MacのプレビューでJPEGが保存できない

JPEG画像をプレビューで開き、解像度などをいじったり、ちょっとした編集した後保存しようとすると「保存できませんでした」っていうエラーが出る。とにかく何かしら編集した後、「書き出し」もできない。自動保存もエラーになる。こうなるともうこの編集結果は破棄するしかない。

 
Mavericksにしたせいかとも思ったけど、これSnow Leopardのときもあった。その時、どうやって回避したのか憶えてない。

いろいろ試行錯誤してみて、このエラーが起こるのは、プレビューで開いたJPEGファイルがCMYKだったからだってことに気がついた。Photoshopで編集してたときにCMYKにして、そのままJPEG出力するとCMYKのJPEGになってしまって、プレビューでは保存の処理ができないらしい。RGBに変換しなおしたらエラーは起きなくなった。

ちなみに、そのままでもPNGへの書き出しはできることもわかった。

1/13/2014

タイポグラファーの自伝

このところ、続けざまに自伝書みたいな本を読んだ。まぁ、徳田虎雄の本は「自伝」ではないけど、一代記みたいな内容。

Pete Townshendの自伝「フー・アイ・アム」は紛れもない自伝で、「Tommy」で成功をつかむまでの話や「Live At Leeds」制作の裏話など、なかなか面白い要素があった。だが、よくもまぁこれほど長々と自分のことを語るもんだな、って言うほどに人生を網羅しきっていて、正直疲れた。もともとインタビューとかでもベラベラとよく喋る人だけどね。謝辞とあとがきだけで10ページもありやがって。ファンだから我慢して読んだけどさ。

今日読み終えたのは、書体デザイナー「小塚昌彦」の自伝。自伝だと思う。内容的には自伝なのか、活字の歴史書なのか、フォント・デザインのコンセプト書なのか、あやふやな感じ。それでも、新聞が活版印刷だったころに毎日新聞に入社して、新聞用の活字のデザインを担った人なので、その後の印刷の進化、鉛の活字から写真植字、そして現在のデジタル・タイポグラフィーに至る流れを最先端で体験、いや体現してきた人の履歴、およびその仕事内容の解説なのだからちょっと興味深い。

最初の方は主に活版印刷に関すること。ここでは文字は鋳物として製造されるもので、種字のデザインから彫り出し、鋳造のための機械や記述など、専門家でなければなかなかイメージ出来ないような内容が描かれている。一般にはなじみのない活字鋳造の仕組みなどは、もう少し図入りで解説があってくれればよかったのにと思う。

中盤は写真植字のための文字デザインの話。この時代、労働集約的な工場の仕事だった印刷は一気にハイテク化してくる。種字は大きさごとに彫り出す必要がなくなり、活字を鋳造したり拾ったりする人たちも必要がなくなる。文字はデザインがよりフォーカスされてくるようになり、文字種へのニーズが高まる。

後半はDTPの時代の話。印刷もオフセットが主流となり、割り付けも校正も画面の上でできるようになる。横書きへのニーズも高まり、文字種量産の時代へと突入し、効率的なフォント・ファミリーの生産が求められる一方、どんどんと労働者の需要は減っていったのだ。

この本には印刷に関する産業的な側面はほとんど語られていない。ただ、感じられるのは、活字の技術が加速度的に進化する中で、先端を歩んできた小塚氏の周辺から、人の気配がどんどんと減っていくことだ。

かつて、新聞紙面を刷り上げるまでには、活字を組むところまでだけでもたくさんの人手を介していた。新しい文字種をひとつデザインしようものなら、たいへんな人員を数年にわたり動員させなくてはならないことになる。現在、小塚氏の周りには数人のデザイナーと十数人の作業員が仕事を分かち合っている。将来は、ひとりのタイポグラファーとコンピューター1台だけで、日本語の数千文字のフォントはどんどんと多品種量産されていくんだろう。