アバンでは、眠そうな鈴の姿が描かれています。
デジャブを感じませんか?第3話の中で描かれた、「眠そうな真人」を思わせるんですよね。あの、6月20日を延々と繰り返していた先の、倦怠感のある描写が…。
この世界もまた、「夢の中」みたいなものなんでしょうか?
…いや、結論はまだまだ先ですね。自重自重。
前回に引き続き、今回もまたある程度のことには触れていくことになると思います。でっかいネタばれはしないように気を付けていますが、「一切何も事前情報を入れたくない!」という方には全力退避をご推奨。いや、そう言わずちょっと読んでみません?(どっちだよ)
というわけで、今話のレビューでは「渋め」のところをいくつか、ピックアップしていきたいと思います。
~~~
姉御も、クドも、美魚もいない。ここでは言及されていないけど、恐らくは葉留佳も。
自分の役割を終えたかのようなセリフを残して、前回葉留佳たちは去っていきました。しかし、小毬は残っているんですよね。自分の問題解決を経ているメンバーの中では唯一、まるで「まだ自分の役割は終わっていない」かのように。
だとすると、今ここにいる小毬の行動こそが、彼女がここに残っている理由なんじゃないか?とも思えるわけです。今話における小毬の主な行動を追ってみましょう。
まず一つ目。県議会の人の案内役に尻込みする鈴を励ましています。そのために、前向きマジックの「ようし」のおさらいを、しかもパフォーマンス付きで。「頑張れ鈴ちゃん!鈴ちゃんならきっと、だいじょーぶだよ」と。
次に二つ目。理樹が鈴のことで思い悩んでいる夜、一人で屋上のあの場所に上って、夜の星空を見上げています。両手を胸の前で組み合わせて、まるで何かに祈りでも捧げているかのように。
そして三つ目。理樹から併設校に行くように諭され、困っている鈴に対して、後押しするような言葉をかけてあげています。「わたし…わたしはどんなことがあっても、鈴ちゃんの友達だよ?どんなに遠く離れても、ずっと鈴ちゃんのこと、毎日毎日思ってるよ?」と。
…二つ目の行動の真意が、ちょっとわかりづらいですが…他の二つは明白ですね。鈴を励ましているんですよ、小毬は。どちらも、小毬だからできた、小毬にしかできない方法で。鈴を抱きしめて、目に涙をいっぱい溜めて、上記のセリフを言うところとか、グッと来ますよね。小毬にとって鈴はすごく大切な友達であり、鈴にとっての小毬もまた、かけがえのない友達ってことなんです。
小毬は、そんな大切な鈴を、恐らくは「これから何かの困難にあたっていく」鈴を、このままにしては去れないんですね。鈴を支え、励ましてあげたい。それが、小毬がここに残っている理由のように思われます。
理樹が思い描く、「歩んでいく鈴」のイメージの構図も、小毬が鈴を支えていることを裏付けていますね。
鈴は、一歩ずつ成長してきた。
内気で人見知りだったころとは見違えるように。
これからも、色んな体験をして、前へ進むべきなんだ。
歩む鈴の、すぐ後ろにいるのが小毬です。理樹が思い描いたイメージゆえに、理樹自身は一番後ろに控えめについていますが…理樹以外のメンバーの中で、鈴の一番近くにいて、鈴と一緒に歩んでいるのが小毬なんです。
小毬も、理樹と鈴が知らない何かを知っています。それが世界の秘密に関わることなのかどうかは、まだ何とも言えないところですが…。
~~~
「ずっと」。
違和感のある言葉です。「ずっと」。
辞書によれば、「同じ状況が長く続いているさま」という意味だそうです。長く、って、いつから、いつまでなのでしょうか。
Bパート冒頭で、理樹から鈴のことで相談を受けた真人は、こんなことを言います。
わりぃがオレは、このことについては思っていることがあっても何も言わない。
そう決めてんだ…ずっと。
……………「ずっと」?
そう決めていた、ずっと。一体いつから?
鈴が併設校に行くかどうか、話題が出たのはその日の日中です。その夜に、真人の口から出た言葉が、「(このことについては何も言わないと)決めてたんだ…ずっと」って…。
真人は、鈴が併設校に行くかどうかを思い悩むこの日が来ることを、知っていた、ってことになりませんか。それこそもう「ずっと前」から、この日が来ることを知っていた。だけど、その時が来ても、自分が思っていることを口にはすまい、と。理樹の、そして鈴の判断に任せようと。そういうことなんですよね。
その後、理樹から併設校に行くように諭された鈴が、小毬に相談した時にも、小毬のセリフの中で「ずっと」が使われます。先にも挙げたものですが、再掲しましょう。
わたし…わたしはどんなことがあっても、
鈴ちゃんの友達だよ?
どんなに遠く離れても、ずっと鈴ちゃんのこと、
毎日毎日思ってるよ?
こちらは「未来」に向かう「ずっと」です。まあ、それならいいじゃないか、と思うかもしれませんが…ちょっと待ってください。今のところ、鈴が併設校に行く期間は決まっていません。「最低でも一学期の間」と言われていますが、仮にそれが一年くらいだとしても…何か違和感あるんですよね。その一年が「ずっと」なのでしょうか?何か、ちょっとおおげさじゃね?
併設校に行くことを指しているわけじゃ、ないのか?
そう言えば、「どんなことがあっても」とか、鈴が併設校に行って寂しい思いをするような範疇の言葉に聞こえませんし…こうして違和感はポロポロと数珠つなぎに出てきます。
ここの小毬は、何を知っていて、何のことで涙を流しているのか。鈴へ向かう「励ましてあげたい」と願う以外の気持ちは何だったのか。すごく深いシーンなんです。もちろんこれ、「理樹視点のシーン」ではありませんから、アニメオリジナルのシーンです。グッジョブと言わざるを得ないでしょう。アニメがお初の方は、全部分かった上でもう一度見直して頂きたいシーンですよ…知ってたらガツンと来るから!
~~~
最後に、理樹の心情や運命に関わっていると思われる描写について、挙げておこうと思います。
理樹と鈴が、二人きりで対話をするシーンは、今話で三か所描かれています。一つ目は冒頭でも挙げた、アバンのシーン。彼らは部屋の中で、鈴が眠そうで、まるで夢の中みたい、と思ったのは前述のとおりです。ただ、ここは理樹の心情や運命に深く関わるような描写には見えないんですね。
でも、残りの二つは実に鮮烈な印象をこちらに与えます。Aパートラストの、夕暮れの川べりのシーン。赤く染まったこの色の中には、「愛を深めていく」という言葉に赤面する二人のように、淡い思いを表す側面もあるのでしょう。ですが、この夕日は「斜陽」という言い方もあるように、この選択が先が無いものであることを暗示しています。
鈴…二人で、ずっとここにいよう。
また出てきましたね、「ずっと」が。でも、理樹は真人や小毬と違い、何かを知っているわけではありません。単に、併設校には行かせず、このまま鈴と一緒がいい、ということを言葉に出しているに過ぎません。
でも、その「ずっと」には、恐らくは先が無いのです。併設校に行かない選択をしても、明るい未来にはならない。
それと対比する形で描かれる、翌朝の正反対の選択のシーンが、すごく眩しいです。辛い選択なんですよ?涙を流してでも、自分の気持ちをなだめてでも、「鈴を前に進ませてあげたい」という決意の表れなんですよ?そこに、この眩しいくらいの日の光と、輝く世界を描写してくるってことは…この辛い選択が、先の未来に繋がるものであることを暗に示しているとしか思えません。
もちろん、それがストレートに幸せにつながるわけではないんですが…。
もう一つ。
理樹が、二人で対峙する、印象的なシーンがあります。鈴とではなく、恭介と。
時は夜、月が世界を照らす、何かが秘されているような場面で。
太陽が照らす世界が「表の世界」なら、月が照らすのは「裏の世界」です。そこには、表立っては出てこなかった隠された真実、何かの秘密が存在することが強く暗示されます。そして理樹が恭介へと問う、「レノンの手紙の真意」ですが…本当の真実はそこにはなく。
先を走る恭介の手を離してしまった理樹は、月の光さえ見えない、暗がりの中に膝をつくのです。まだ理樹には、世界の秘密も、先のことも、一切見えないままで…。
次回のサブタイトル、「逃亡の果てに」…って、次回の30分弱で、一体どこまでやらかす気なんだろう?!噂では第6話までが鈴シナリオ、みたいにも聞き及びますが…どのように描いて下さるか、実に楽しみですね。
ようやくSPYxFAMILY二期見始めた (2022/10/03)
ご注文の発送 (2008/05/18)
電脳コイル 第23話「かなえられた願い」 (2007/11/11)
無幻少年・煉獄篇(違 (2021/04/09)
9回目。 (2010/06/26)
Kanon 第1話「雪の少女」 (2007/02/15)
ムントさまOVA2nd~TV版4~5話雑感 (2021/09/25)
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)