スタートアップのCEOの役割 - sudoken Blog
というエントリーを書いてから約9ヶ月が経ちました。
前回はシードラウンドからシリーズAに向かっていく手前を書きました。
その続編ということで、シリーズAからポストシリーズAのCEOの役割の変化を振り返ってみたいと思います。
ちなみに前回のサマリー
とにかく最初のステージでは、営業・採用・PR・資金調達の4つにシンプルにフォーカスしてました。
12月
実は、この時期に僕の中でシード後に達成したい目的は、ほとんど達成していました。
自分達のミニマムな
事業構造がどのように成立するかを最初の試金石においてました。
・きちんと売れるのか?
・きちんと収益が出るのか?
・きちんと効果が出るのか?
この3つの問いについての粗々の回答を自分の中で実感値を持って掴むことが出来たのが11月の後半です。
何よりも
資金調達を優先すると社内に宣言して投資家とのコンタクトをはじめます。
1月
私は、
資金調達に突入していくのですが、チームは別の問題と直面していきます。
実は、10月くらいから強化していた採用が花開いて1月 15名、2月27名、3月33名とKAIZENは大きく人数が増えていきます。
採用は約3ヶ月くらい遅れて結果が出てくるという風に良く言われますが、その通りの状況になりました。
最小の
事業構造は見えたので、次はどうスケーリングするかという課題へ取り組むフェーズになります。
スケーリングのフェーズは今迄、超俗人的にやっていたことを構造化して、チームをつくり、拡大再生産出来る状況をつくっていくという事になります。
ここで難しいのは、単なる人を増やすということではないということです。
ビジネスモデルを再度壊して、分解して組み立て直すというプロセスがどうしても入るということです。
それも、使って頂いているお客様にご迷惑をおかけしないように。
言わば、乗客を沢山乗せた新幹線を走らせながら、もっと速く走れる
リニアモーターカーの車体に作り変えていくというようなプロセスです。
これには、とにかく人が必要です。
それも超絶優秀な人がチーム一丸となって働くということが必要です。
そして振り返ってみると僕自身、覚悟していた以上に大変なプロセスでした。
実際まだ一部は、このプロセスの途中です。
チームの全員が、一度は悶絶したと思います。
それくらいスケーリングは、全ての仕事に変化をもたらしました。
スケールする開発。
スケールするバックオフィス。
スケールするセールス。
スケールする社内コミュニケーション。
ありとあらゆる難題に取り組みはじめたのが、この頃からです。
2月
1月から人が増えはじめ、はじめてヒューマンマネジメントに時間を使いはじめます。
これは、使いはじめたというか、あまり使いたくなかったけど使わざるを得なくなったというのが正直なところです。
資金調達は、タームシートからDDなどのディープなプロセスに入っていきます。
スケーリングという課題がいかに難しいかを思いしらされることが沢山起きました。
この時決めた事は、とにかく同時に取り組まないということでした。
開発も
セールスも
バックオフィスも
全部同時に進めて、全員炎上したらヤバイということは容易に想像出来たので、最初に大きな課題が顕在化した開発のスケーリングに着手しはじめます。
ここで具体的に決めた事は、ただ一つ。
新規開発を全部止めるということでした。
ただし、影響がデカ過ぎるので3月の一ヶ月間だけ。
その間はビジネス側が全力でサポートに回るという体制になりました。
この期間の全てを仕様の整理、開発フローの見直し、QAプロセスの自動化などに当てていくことになります。
3月
マネジメントは、徐々にシェアを上げていきます。
また、
資金調達は最終フェーズになってきたので、営業に再度時間を使いはじめます。
セールスチームが出来はじめたので、顔つなぎや引き継ぎがメインです。
次の段階で、米国の採用にまずフォーカスすることを決めていたので、ここからその準備を開始しました。
実際のこの時期は
資金調達は、大詰めを迎えとにかくこの時期は、皆を信じて弁護士や会計士とのやり取りに奔走していきます。
そして無事にシリーズAが完了します。
Fidelityを投資家に迎え、グローバルなスケーリングというテーマに挑戦していくことになります。
開発の立て直しプロジェクトは、「Good-bye! Negative Legacy」と命名され劇的な変化をもたらしました。
詳細は、
id:naoyaさんのspeakerdeckに詳しいことが書いてあります。
4月
時間を見て頂くとわかるように、米国の採用を開始します。
また、ここではじめてボードミーティングを設置します。
投資家とのコミュニケーションを含め、チームによる経営に移管することを、ここで開始しました。
チーム経営の確立は想像以上に時間がかかります。
KAIZENには、本当に優秀なキラ星のごときメンバーが沢山揃っています。
ただ、ソロではなくチームとして機能させていくというのは、全く別の難しさがあります。
それに全員で取り組みはじめたということです。
開発サイドは体制が整い、新機能開発と既存サービス強化のプロジェクトが立ち上がりました。
新機能の方は、「Voyager」
既存サービス強化は、「Sputnik」
と名付けられ開発スピードが思いっきり上がりはじめました。
余談ですが、2月の時点では8個の開発プロジェクトでアップアップだったところが、今では25以上のプロジェクトがほぼ同じ人数規模で常時回せるところまで来ました。
単純計算で、3倍以上ですね。
5月
米国採用と経営のシェアが大きくなりはじめます。
開発の次にスケーリングのフェーズに突入したのがセールスになりました。
最初に着手したのが、数字の整備でした。
とにかく、何の数字を出すのも苦労するという状況で、この頃チームはセールスフォースの整備を頑張るということにかなりの時間を使っていく状況になります。
開発は快調に進んでいきます。
6月
米国採用と経営だけではなく、マネジメントに大きく時間を使いはじめます。
結果論ですがチーム経営に移しながら、組織や役割というのを明確にし始める時期になりました。
そうしないと、上手く回らないほどに組織が大きくなり50名近い体制になったのもこの頃です。
セールスの課題は可視化されはじめて、課題が明らかになっていくと同時にセールスの体制、理想的なステップなどが定義されていきました。
実際この月から、売上の伸びが力強くなり90日間で売上が倍増していくことになります。
7月
経営とマネジメントに半分の時間を使っている状態です。
この頃出始めていたのが、セールスとバックオフィス間の問題です。
複雑なビジネスフローが多く、しっかり整備しないと、全然スケールしないということは自明でした。
つまり、スケーリングの問題がバックオフィスに顕在化し始めたという事です。
このビジネスオペレーションを他国同時にマネージするのは至難の技だなーとゾッとしたのもこの月でした。
それどころか、キャッシュフローの予想まで難易度が上がってしまって恐怖を感じたのもこの頃です。
米国でCOOとしてErikの採用が決まり、ここで課題だったビジネスオペレーションの構築をErikが選任で推進してくれる事で、またチームが大きく変わりはじめます。
ここで、経営と執行をはじめて分離し始めることになります。
またプロダクト開発は、かなり洗練されてきます。
8月
Erikのビジネスオペレーション構築によって、日本の
事業をより加速することになり、また採用とマネジメントに時間を使いはじめます。
ものすごく変化の早い組織ですが、それに対応するべく役割が明確になってきたのが今ということだと思います。
スケーリングのためのピースが実際は、まだまだ足りないんですが、おぼろげながら見え始めたという感じです。
それに伴い、全員でマーケットフォーカスだと定義し、顧客に一丸となって向き合うチームを再度つくりはじめています。
この約9ヶ月で11月当時から比べると大体3倍くらいの規模になりました。
提供社数 200→650
利用国数 6カ国→38カ国
従業員数 15名→50名
ただ、この3倍は単に規模が3倍になるということではなく
構造転換をしながら3倍の規模まで来たということです。
少しまとめて振り返ってみると、下記のようになります。
①資金調達に突入
シードラウンドと比べると、もう少し時間を使わざるを得ないということがよくわかります
我々の場合バックオフィスのチームが出来たのが2月後半からなので、それまでは全部僕がやってたので資料の用意なども含めてかなり時間かかりました
投資家と会ったりしてる時間より、ずっと多くの時間が資料作成や準備にかかります
逆に言うと、この時にチームが回り始めていないとCEOとしてはかなりキツイということになります
僕は、メンバーとタイミングに恵まれていました
②マネジメントが発生し始めた
メンバーが増えるとともに、組織やチームのために時間を使うことも増えはじめます
③米国の採用を開始
米国の中核人材を採用するために、時間の大半をここに使いました
④ボードミーティングを設置し、経営チームをつくりはじめた
これもとても時間とパワーをかける必要があります
⑤日本の採用も再強化
ビジネスオペレーションをしっかり組むことで、更なる成長を目指す体制が少しずつですが整いはじめましたので、再度採用を強化中です
そして、時間には中々現れないことなんですが、この時期本当に腐心しつづけているのは、組織の文化や風土づくりとそれを言語化するということです。
これについては、以前スクーでお話ししました。
というわけで、シリーズAからポストシリーズAまでのスタートアップCEOの時間の使い方を振り返ってみました。
何と言っても、この時期は会社が本当にチームとしてワークしていくかを試され続ける毎日で、CEOが事業全体に直接影響を及ぼせる範囲というのは、感覚値ですが15%くらいになってきた感覚を持っています。
その15%に魂を込め続けることと、あとは85%を支えてくれたメンバー全員に感謝することがCEOの本当に大事なことかもしれないなと振り返ると思います。
全く正解がない領域ですので、ああ15%くらいの話ねという感覚で受け止めて頂ければ、幸いです。
何かのご参考になれば。
そしてKAIZEN platformでは、ビジネスサイドの採用を強化しております。
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