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2018年4月11日 (水)

自民党文科部会議員・文科省による教育現場への介入に抗議する

政府行政機関を政権政党が自らの道具視し、行政機関の側もそれに進んで忖度する歪んだ構造が、また一つ白日の下に晒された。 

この2月、名古屋市立中学校で、前文部科学省事務次官の前川喜平氏が、「総合的学習の時間」で講演したことについて、文科省が名古屋市教育委員会に対して、30にものぼる質問項目を送り、前川氏を呼んだ理由や講演内容、謝礼の有無などを執拗に質し、さらには録音データの提供まで求めたことが明らかになった。

この調査に関して文科省は当初、前川氏の講演は報道で知った、質問は「自らの判断」とのみ主張していたが、319日になって、自民党文部科学部会会長の赤池誠章・同会長代理の池田佳隆両議員が、前川氏の講演を知って文科省に照会したことによって、この問題が浮上したことが明らかになった。さらに、文科省は、質問項目を事前に池田議員に見せ、その意見を反映させたものを市教委に送っていた。

その本質は、あきらかに加計学園獣医学部新設問題で「行政が歪められた」などの発言を続ける前川氏をやり玉に上げ、政権の意に沿わない人物に発言の場を与えることを躊躇させ、現場を萎縮させる効果を狙った行為にほかならない。明らかに、自民党文教族と文部官僚による事後検閲であり、学校現場への不当な介入であることははっきりしている。
 戦前・戦中の教育のありかたに対する反省にもとづいて制定された旧教育基本法は、第一次安倍政権のもとで、「公共」や日本の「文化伝統」を強調する方向で「改正」されてしまったが、現行の教育基本法においても、その第16条で「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」と規定している。その主旨が、時の政治権力による教育内容への介入から現場を守るための規定であることは明らかである。 

池田議員はかつて、「教育で大切なことは、日本人が長年培ってきた道徳的価値観を教えること」と述べ、安倍政権の進める道徳教科化を後押しした。ここにあるのは、内心の自由に属する個々人の価値観に、上から一定の枠をはめることが教育の役割であるとする思想である。私たち日本出版者協議会は、内心の自由、言論表現の自由を擁護する立場から、権力者によってひきおこされた前川氏と学校現場に対する言論弾圧事件に対して強く抗議する。

 

 

 

 

 

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