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2005/08/09

郵政解散は「叡山焼き討ち解散」か?

 関係ないエントリのコメント欄にしきりと前回の僕の野次馬評に「普通って何ですか普通って普通って」と粘着してる人がいる。全特あるいは全逓連工作員がこんな場末の飲み屋のやさぐれブログまで進出してきてるのかと思うと結構鬱だ。

 が、いずれにせよ結果から見れば僕の予想は「ハズシ」だったことも事実なので、「普通に」の意味を反省を交えて書いておこうか。ま、何度も言うけど政治そのものの取材経験も別にない、ただの門外漢の「選挙マーケティング」という視点からの憶測に過ぎないんだけどね。

 僕は、この政局における小泉首相の狙いはまさにど真ん中、「郵便と郵貯・簡保の切り離し」だったと見ていた。で、別に郵便(+窓口ネットワーク)は民営化でも公社でも何でも良くて、郵貯・簡保だけが民営化できればいいと、最後のどこかで妥協するとか、あるいは参院で否決されてももう一度衆院に持って帰って可決すればいいんじゃないのとか、やるんじゃないかと思ってたわけだ。

 先週号の日経ビジネスの第2特集を読み、それから昨日の解散に至るまでの様子を見ると、この読みは完全に外れてたことが分かる。小泉首相の狙いは、郵政民営化にあったわけじゃないのだ。

 まあ、もちろん郵政を踏み絵として使ったというのはあるんだけど、そもそももう郵政ネットワーク、そして郵政マネーの「民営化」はとっくの昔に実質的に始まっているわけですよ。そして郵政公社は来年4月に海外物流事業への参入を着々と準備し、財政投融資の預託金(※郵貯から財務省資金運用部を通じて特殊法人に直接融資されている、いわゆる“郵政マネー”)は、2007年にもなくなっちゃう勢いでどんどん減っている。さらに、特定郵便局が握っていた巨額の裏金(さんざん選挙活動に使われていた)もきれいさっぱり一掃され、特定郵便局は削減しなくても今後は勝手に局長が廃業して減っていく見通しが立った。

 となると今国会の郵政法案は、既に転がり始めている改革を「後戻りさせない」程度の意味しかないし、というかまさか「あの裏金をもう一度復活させろ」とはいくら政治家でも言えないわけで、郵政の実質的な改革はもう「終わってる」と言ってもいい。

 一方、僕は前のエントリを書くときに、もう一つのルールを見立てていた。「一般に自民党政治家というものは選挙で当選する見通しが立たない政策に自分の政治生命など賭けない」というルールである。

 何度も言うけれど、「郵政を民営化すべきか?」という質問には、(いろいろな世論調査も出ているけれど)特に都市部の人にとっては「すればぁ」という以上の反応はない。地方の人にとっても、窓口ネットワークのユニバーサルサービス維持だけが焦点だとすれば、民営化でも「変わらない」と政府が保証するのなら反対する理由はない。とすれば、このイシューはそもそも選挙の争点にもならず、こんなことで解散すれば民主党を利するだけだ。だから、解散という選択肢はないと思ったわけである。

 ところが、この2つの見立てはどちらも外れていたということがやっと分かった。

 まず1つめの見立て。小泉首相は、何を狙いに解散したのか?郵政改革ではなく、「自民党の改革」を後戻りさせない体制を作るのが狙いだったのだ。つまり、亀井派と堀内派・橋本派の一部を中心とした、支持母体である全特や全逓連との関係を切れない守旧派勢力の一掃、である。
 
 そう考えると、小泉首相の不可解な一言の謎が解ける。どこかで読んだが、彼はこの国会中「民主党が郵政民営化に反対したのは最大の戦術ミスだ」と言った、らしい。当初僕はこの意味が分からなかった。けれど今ならこう説明がつく。

 小泉首相は実は解散を望んでいた。郵政法案が今国会で成立するかどうかなんて、どうでもいい。要するに任期残り1年を切った今のタイミングで守旧派を一掃するチャンスが欲しかった。

 守旧派が「郵政煽り」にまんまと乗って造反を決めてくれれば、「小泉=民営化、改革の旗手」対「守旧派=民営化反対、既得権益の代表」という構図が描ける。この構図が選挙で有利に働くのは、とりもなおさず都市部の小選挙区と比例区である。都市部でこの構図を振り回せば、守旧派は一掃できる。

 問題があるとすれば、この構図の中に民主党が割り込んでくることだ。つまり民主党が「民営化、改革の旗手」のポジションを取って「改革の旗手であることは民主党も同じ。小泉か、民主党か」という選択を有権者に突きつけるのが一番怖い。そうなれば小泉支持票の一部は民主党に流れて、守旧派が勝つかも知れない。

 ところが、バカ民主党は見事に「民営化反対」の旗印を掲げて選挙に突入してくれた。今回の選挙の構図は「小泉自民党=民営化」対「民営化反対守旧派+民営化反対民主党+(どことは言わないが民主党を勝たせたがる)左派系マスコミ」だ。これはおいしすぎる。国民の既得権益勢力嫌い、マスコミ不信、2ちゃんねるの嫌中・嫌韓ブームも味方にできる(笑)。

 思うに、旧来の自民党の論理とは、「公約を反故にしてでも、選挙区でお世話になった支持母体は決して裏切らない」というもの(いわゆる組織選挙)だったと思うのだが、小泉首相が突きつけたのは「組織より個人との約束を優先する」論理への転換という踏み絵だったのかなあと。そういえば、今朝のフジの「やじうま」が、政府関係者の発言として「今回の解散は叡山焼き討ちだ」というコメントを紹介していたが、むべなるかなという感じだ。

 カワセミ氏finalvent氏などが早々と今回の選挙での「自民党支持」を明言しているが、そういったリベラル論客の転向も含め、今回の解散には政治における「時代の変化」というものを強く感じるなあ、という感慨をもって「ヤマかけ敗者の弁」としておきたい。

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コメント

民主党って郵政民営化反対なんて言ってましたっけ。
「今回の郵政民営化法案には反対」って話が多かったような気がするんですが。
民主党に限らず、今回反対した人々って。

投稿: moりcoろ | 2005/08/09 10:51

 私の場合は特にこれといった支持指標はないので「勝ち馬に乗る」で一貫しとるわけですが、まぁ、今回の選挙は小泉さん勝利でしょう。
 そう読んでいるので、小泉さん支持でいきます。

 あとまあ、「法案そのものには反対ではないが小泉氏の政治手法に反対」って言ってる人が多かったですけど、アレって場末のヤクザが「お前の言い方が気に食わない」で難癖つけてるのと変わりない。そういう構図でしか物事を捉えられないような、あまつさえ行動に移してしまうようなバカタレは落ちてよいと思います。

 某亀井某静香の選挙区住民なので今までは「亀井に入れたく無いけど民主に入れるのは死ぬほど嫌」で傍観していましたが、今回は気軽に選挙に行けそうです。よかった、よかった。


 あとまあ、自分の見解が誤っていたときに素直に反省する姿勢は非常に良いと思います。見習うべき指標がひとつできた(謝り方のサンプルがひとつできた)くらいに思ってます。お疲れさん。

投稿: うんこ | 2005/08/09 11:01

構図として民主党+自民造反になりましたが、小泉氏は自民党内の派閥解消は目指したとしても、総数を減らす改革を選ぶわけ無いで、今回のは事故でしょう。
あんまり初老性痴呆の方の行いを深読み賛美するのもどうかと思います。

投稿: p-style | 2005/08/09 11:26

『これはおいしすぎる』
┼       +    *    *
  _n  *        +       +
 ( l     ∧_∧  
  \ \ (*´∀`) グッジョブ!!
   ヽ___ ̄ ̄  )          ┼
 *    /    /   *    + 

投稿: hoge | 2005/08/09 13:33

R30さんのまったくおっしゃるとおりですね。永田
町界隈も同じ読みのようです。ただ選挙は一応リ
スクを伴うから最初から解散を小泉が望んでたか
どうかわかりませんけど。これでますます公明党
の役割の重要度が増しちゃいますね。一応造反衆
院37人を切って捨てても公明党と合わせれれば
246で、過半数の241はクリアします。246を確保
できれば、小泉はおれの勝利、国民は郵政民営化
と小さな政府を支持したと勝手に勝利宣言するの
でしょう。造反の方がた、民主党の岡田さん、文
春の民主党有利の選挙予想に踊らされて浮かれて
ると、思わぬ方向しっぺ返しを食うと思います。

投稿: soulnote | 2005/08/09 16:22

話は、ぜんぜん関係ないけど、
梅干の干しかげんは成功したのだろうか? 
気になる。

投稿: 野猫 | 2005/08/09 16:36

A新聞は社説で「民営化には賛成」と書いていますけど・・・。
ところで、同じネタを書いていてもコメント欄の雰囲気がブログによって全く違うのが面白い。
結局「けなし」によって形成された議論は質の高いものにはならないってことを証明しているような感じがする。・・・ココもね。

投稿: 通りすがり | 2005/08/09 21:42

こちらはR30氏が思っているような者ではない。郵政民営化に反対も賛成もしていないが、法案の内容が駄目だという立場である。この立場は民主党に近いかもしれない。そもそも賛成反対を決めるような問題ではない。そういうどうでもいいことはサンデープロジェクトにでも任せておけばよい。
だいたいコメントひとつでうろたえる必要もないだろうに。こちらは参院は通らないと予想していたから茶化しでコメントしていたに過ぎない。何を鬱になっているのかな?
まあしかし残念ながらこのように政局に後から理屈をつけて少数の人物の意図に帰していくような記述は大変ミスリーディングであると言わねばならない。政局には偶然による部分が極めて大きいのであって予測などできるものではないが、記述はそのまま行為文となって時局に影響を与えるということに留意しなければならない。

投稿: 普通って何? | 2005/08/10 03:08

論旨がずれるかもしれませんが、何年も議論して結論を得たり、意見集約が出来ない『会議体』としての国会って、一体何なんでしょうね。結論も導き出せない会議体自体が議論に挙がらないのが不思議でしょうがないですね。

投稿: ノートリアス | 2005/08/10 10:06

>民主党って郵政民営化反対なんて言ってましたっけ。
>「今回の郵政民営化法案には反対」って話が多かったような気がするんですが。

じゃあ、対案だせば?
ださなかったんですから、こんな逃げはなしね

改革嘘付き民・党!
選挙スロ一ガンはこれね

投稿: mK | 2005/08/10 15:03

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