納豆の起源
『納豆の起源』
日本各地での微細な食文化が急速に瓦解して途絶していったように、世界各地の微細な食文化も急速に絶滅していっている。多くは記録さえも残さずに消え失せるため、この世界には膨大な「未解明の謎文化」の荒野(沃野?)が広がることになる。
謎の大きさの前には非力だけれど、1人で立ち向かう研究者さんの各国現地調査や体験譚が、たっぷり糸をひく美味しさの粘り本。
北海道のお赤飯は「甘納豆の炊き込み」あらかじめ断っておくが、私のこれまでの調査研究では、納豆の起源を特定できていない。
しかし、本書の最後には、これまでの知見から得られた仮説を提示することにした。
照葉樹林帯で納豆を生産している地域すべてを調査していないので、私も知り得ない情報はたくさんあるであろう。したがって、本書で提示した仮説が正しいかどうかについては、本書の情報をもとに、議論していただくことを期待したい。
日本で納豆と称されている食品は、大豆を発酵させるために用いる菌で分けると、納豆菌を用いた「糸引き納豆」と麹菌(Aspergillus oryzae)を用いた「塩辛納豆」の2種類に大きく分けられる。
納豆菌を用いた後に麹菌と塩を混ぜて追加発酵させる「五斗納豆」を別の種類とするのならば、3種類とすることもできる。
甘納豆の起源ははっきりしている。幕末の一八五七年(安政四年)に東京日本橋西河岸の菓子商である榮太樓(えいたろう)の細田安兵衛がつくり出したもので、塩辛納豆である遠州名物の「浜名納豆 はまな」に擬して「甘名納豆 あまな」と名づけ、やがて「甘納豆」に縮まったものである。
甘納豆の赤飯の起源は山梨らしい。
— ろーれる (@laurel_snow) 2014年7月13日
甲斐源氏の流れをくむ南部氏が室町時代に青森に移り住み。近代になって青森県民が北海道へ移住するようになり広く甘納豆赤飯が広まったと言われている。
道内で甘納豆赤飯が広まったのは光塩学園創設者の南部先生の功績ということだそうです。
【好きな豆の大きさ】北海道と関東は、極小粒と小粒が5割を超えており、より小さな豆を好む傾向が見られた。九州は中粒が約3分の1を占め、東北はひき割りが約1割を占めて、他の地域よりも高い値となっている。
ヒマラヤ地域に関しては、ネパール系民族がつくる納豆は干し納豆で、アルナーチャルのチベット・ビルマ系のモンパ族がつくる納豆は味噌状納豆であり、東南アジアとは完全に異なる形状であった。
納豆をつくるための伝統的な植物利用がどんどんと失われている。アルナーチャルで調査をしたシャクナゲでつくる納豆など、非常にユニークであり、地域の伝統的な植物利用の形態として注目すべきである。しかし、今はもうほとんど使われていない。
著者さんがNHKで語る ↓
視点・論点 「納豆の起源を探る」 #nhk_kaisetu https://t.co/jfeQM0wb84
— Miwa Biere (@miwabiere) 2016年7月4日
ああ。ラジオの深夜便聞いてしまった。
— hellolive (@aigamienai25th) 2015年12月3日
「納豆の起源を探る」
横山さんのお話が面白過ぎて、
寝たいけど眠れない。
モチを好む照葉樹林文化の納豆、麹、発酵食の起源をたどるフォーラムが京大でありました。「納豆の起源」の著者による講演も。先日、ミャンマーのお土産にいただいたせんべい状の納豆。調味料やサラダにも使われるようです。さてどうやって食べよう。 pic.twitter.com/tDP6yq1L4I
— 里山文庫 まえだちさと (@agro_ecology) 2016年4月24日
『納豆の起源』
横山智
NHKブックス
NHK出版
作者 LWY from Fukuoka (Flickr) [CC BY 2.0], ウィキメディア・コモンズ
『ミニ特集:細菌を科学する』
『ミニ特集:文化雑学を楽しむ本』
『ミニ特集:文化と植物の共演』
『ミニ特集:文化と植物の共演 2』