a flood of circle presents A FLOOD OF CIRCUS 2019 @TSUTAYA O-EAST 4/13
- 2019/04/14
- 17:01
a flood of circleの対バンツアーの締めくくりとなる主催フェス「A FLOOD OF CIRCUS」、通称「大サーカス」。
今年もTSUTAYA O-EASTでの2ステージを使っての開催となるが、CHAIや髭、さらにはUNISON SQUARE GARDENという幅広いスタイルやジャンルの出演者が集まった昨年と一転し、今年は
a flood of circle
DOES
the pillows
climbgrow
THE BAWDIES
THE KEBABS
爆弾ジョニー
というロックンロールに振り切ったラインアップ。中でもフラッドの佐々木亮介がことあるごとに
「早くDOESやれ、バーカ」
とメンバーに対して言い続けてきた活動休止中のDOESの復活は今回の大きなトピックと言えるだろう。
長丁場であるため、場内ではカレーやケバブの飲食店が食欲を誘う匂いを醸し出す中、トップバッターのバンドのメンバーたちは飲食ブース隣のフェイスペインティングコーナーに並んでいるというこのロックンロールなイベントならではの自由っぷり。自身のライブ開始20分前という時間の出来事である。
・爆弾ジョニー [ELEPHANT STAGE]
そのフェイスペインティングコーナーに並んでいたのはこのバンドのりょーめー(ボーカル)、キョウスケ(ギター)、タイチ(ドラム)の3人。キョウスケは昨年は佐々木亮介らとのTHE HOSOMESのメンバーとしてこのイベントに出演している。
a flood of circleのメンバー4人による前説に続いて、聞き馴染みがあるというか、明らかにa flood of circleが使ってるSEが流れるというこのバンドならではのフラッドへの愛を感じさせる演出で5人が登場すると、パーカーを着たりょーめーが上手、ロマンチック☆安田(キーボード&ギター)が真ん中という立ち位置でアニメのタイアップ曲でもあった「終わりなき午後の冒険者」からスタートすると、りょーめーは最初の立ち位置を無視するかのようにステージの真ん中に立って歌い、コーラスパートではマイクを客席に向けて合唱を煽る。
タオルを振り回すりょーめーに合わせて観客も同じように振り回す「ケンキョニオラツケ!」で会場の空気を一気に掴みながら始まったばかりのこのイベントの熱量を上げると、アメリカの通販番組のようなコミカルな展開の「アメリカンマッスル」では腰を骨折してサポーターを巻いたりょーめーがこの日からライブ会場で販売されるデモCDの告知をすると、そのCDを最前列で見ていたファンに売って1000円を得るという実演販売を展開。メンバーが手売りをステージ上でするというのはなかなか見れない光景である。
安田のキーボードが美しいメロディを奏でながらもサビの歌詞はひたすらに性欲のことを素直に歌っているというギャップが面白い「キミハキミドリ」では間奏でタイチ(ドラム)がフラッド「Summertime Blues II」の替え歌を歌って爆笑を巻き起こす。こういうことができるのはメンバーが本当にフラッドの音楽を普段から聴いているからだろう。
キーボードからギターに持ち替えた安田→キョウスケ→りょーめーとボーカルリレーしていく新曲を披露すると、青木テツの前にフラッドのサポートギターを務めていたキョウスケが
「(亮介のモノマネで)おはようございます、爆弾ジョニーです(笑)
俺もフラッドの歴史に参加させてもらってました」
と改めてフラッドのサポートギターだったことをアピールするのだが、その後に
「3階でフェイスペインティングやってまーす」
と言って自身の顔に施されたペイントを見せるあたりはやっぱり天然というか、何というか。
その後に飛び道具感一切なしの名曲「MELODY」でこのバンドの持つメロディメーカーとしての力を見せると、
「あと2曲です。(「えー!」という観客の声に対して)フラッドに言えよ!俺たちが時間決めたんじゃないんだから!(笑)」
ともっと長くライブをやりたいという気持ちを見せると、最近できた中でお気に入りの新曲たちをメドレー形式で披露するのだが、そもそもが新曲であるだけにどこをどうメドレー的に繋いでいるのかが一切わからない。1曲が転調がすごい多い曲と言われたらそう思ってしまいそうでもある。
そして「かなしみのない場所へ」で
「ああ〜 ありがとう
あなたに出会えてぼくは今日もなんとなくそれなりに生きてます
そして出会うだろうまだ見ぬあなたたちと夢をみてる
かなしみのない場所で」
というこの場所で歌われることでフラッドと観客への感謝を告げているように感じるフレーズで大合唱を巻き起こして終わりかと思いきや、
「まだ時間あるから、キョウスケの作った曲やるか!」
と言ってかつてフラッドを支えてくれたキョウスケをフィーチャーするように「イミナシ!」を演奏すると、
「ちょうど40分!」
と見事なまでに持ち時間ピッタリのライブを終えてステージを去って行った。きっとそれは狙ったものではないのだろうけれど、このバンドがやるとそうなるのが決まっていたかのような感じにすらなる。それくらいにこのバンドはデビューした当時からロックンロールの魔法を纏っていたし、それは今も失われていないように思える。
爆弾ジョニーはそのロックンロールの魔法を体現していたからこそ、RISING SUN ROCK FESTIVALのメインステージにいきなり抜擢されたりと、10代の時から本当に期待されていた。でもりょーめーの精神がそのスピードに追いつくことができずにバンドは一度止まってしまった。
でもその止まっていた時間にりょーめー以外のメンバーは様々なバンドでサポートメンバーを務めて修行のような時間を過ごした。(フラッドでギターを弾いたキョウスケはもちろん、ベースの小堀もこの日出演しているthe pillowsのサポートを務めたこともある)
だからこそこのバンドは様々なバンドのファンからリスペクトと感謝を受けている。そのバンドのファンはこのバンドのメンバーがいなかったらそのバンドが続かなかったことをわかっているから。自分自身、フラッド最強のサポートギターと呼ばれたキョウスケの存在でそれを実感した。
でもやっぱりこのメンバーが1番輝くのはこのバンドのメンバーとしてステージに立っている時なのである。このバンドから今でもロックンロールの魔法がかかっていることを実感するのはそこなのである。
1.終わりなき午後の冒険者
2.ケンキョニオラツケ!
3.アメリカンマッスル
4.キミハキミドリ
5.新曲
6.MELODY
7.新曲メドレー
8.かなしみのない場所へ
9.イミナシ!
かなしみのない場所へ
https://youtu.be/x_FPpXjo94s
・THE KEBABS [TIGER STAGE]
O-EASTはメインステージの横にあるサブステージが使えることからこうしてフェス的なライブが開催されることが多いのだが、この小さいステージのトップバッターとして出演するのは、ある意味では今回の目玉の一つとも言える、THE KEBABS。
ボーカル&ギター:佐々木亮介 (a flood of circle)
ギター:新井弘毅 (ex.serial TV drama)
ベース:田淵智也 (UNISON SQUARE GARDEN)
ドラム:鈴木浩之 (ex.ART-SCHOOL)
という、友達同士で組んだバンドと言うにはあまりに豪華すぎるメンバーたちによるバンドである。田淵は去年のユニゾンに続いて2年連続出演。
SEもなしにメンバーがステージに現れたので、てっきりサウンドチェックをしに来たのかと思ったら、セッション的に音を鳴らしてそのままライブがスタートする。
「イカしたヤツら」
というフレーズでの亮介のボーカルに田淵のコーラスが乗るのが強烈なインパクトを残す「THE KEBABSのテーマ」でスタートすると、もう本当にシンプル極まりないロックンロールを叩きつけまくる。ステージが狭いがゆえにユニゾンでのライブ時ほど田淵は動き回りながら演奏することはないが、こんなに小さなステージでこの男が演奏する姿を見れることは今やそうそうない機会だ。
このバンドのライブを見るのは初めて(小さいライブハウスでしかライブをやってないがゆえにチケット全然取れないから)だからMCも一切挟まないというのがこのバンドのスタイルなのかどうかはわからないのだが、フラッド以外にもソロでトラップなどの現行の世界のポップミュージックを取り入れた音楽を作っている亮介を筆頭に、ユニゾンはもちろんQ-MHzでプロデュースワークも務める田淵、バンド解散後はフルカワユタカやPUFFYのサポートギターなどでも活躍している新井、バンド以外のアーティストのレコーディングでもドラムを叩いている鈴木と、いろんな音楽をやってきたし、できるようなメンバーたちのバンドである。
でもTHE KEBABSとしてこのメンバーが揃うと、ロックンロール以外の何物でもないような音楽になる。そこからはバンドを始めた少年のような強い衝動を感じるだけに、計算などではなくて4人でスタジオに入って音を鳴らしたらこういう音楽になった、というくらいのものなんだろう。
それがこんなにもカッコいいと思える音楽になっていて、こうしてライブでそれを体験できるというのは嬉しくて仕方がないし、亮介と1本のマイクで同時に歌ったり、単独で歌う場面もある田淵を始め、4人全員が本当に笑顔で楽しみながら演奏している。(失礼ながら鈴木が演奏中にこんなに笑顔を見せる人だとは知らなかった)
来月にはこのバンドのライブが渋谷QUATTROで行われる。すでにこの日演奏した曲の倍くらいの曲をこれまでのライブではやっているとのことなので、ようやくこのバンドメインのライブを見ることが本当に嬉しいというか、すごいやばい。
1.セッション
2.THE KEBABSのテーマ
3.すごいやばい
4.メリージェーン知らない
5.Bad rock'n'roll show
6.ピアノのある部屋で
7.Cocktail Party Anthem
8.台風ブンブン
9.ガソリン
THE KEBABSのテーマ
https://youtu.be/EyFdHdcWCds
・THE BAWDIES [ELEPHANT STAGE]
フラッドと同様に「ロックンロール」を標榜してバンドを続けてきた、THE BAWDIES。このイベントには若手ロックンロールバンド(去年はSIX LOUNGEやLarge House Satisfactionが出演した)が出演してきたが、真打ちというかラスボスというか、ロックンロールシーンにとってそういう存在であるこのバンドがついに出演。
おなじみ「SOUL MAN」のSEでスーツ姿の4人がステージに登場すると、
「飛べー!」
とROYがいきなりシャウトする「NO WAY」からスタートし、「SING YOUR SONG」で早くも合唱を巻き起こすなど、やはりこのバンドには一切のアウェー感を感じない。同じロックンロールバンドでありながらもフラッドとはあまり客層が被っていないような感じもしていたが(どちらも毎回ワンマンに行くバンドなだけにそう感じていた)、それは完全に杞憂だったようだ。
髪を切ったのは見慣れてきたが、髭もそって外見が非常にサッパリとしたJIMが動き回りまくりながらギターを弾いて観客を飛び跳ねさせる「YOU GOTTA DANCE」を終えるとROYが、
「a flood of circleとは完全に同期で。メジャーデビューアルバムが出た日も同じ日なんですけど、フジロックのルーキーステージに出た時に俺たちの次がフラッドで。俺は緊張し過ぎて顔が白菜みたいになってたんだけど、隣にいた佐々木君は顔に水分を含んでいたから、白菜の漬け物みたいな顔になってた(笑)」
という同期としてかつて同じ景色を見てきた存在だからこそのエピソードを語ると、メジャーデビューアルバムの1曲目に収録されている、今のTHE BAWDIESの始まりの曲と言っていい「EMOTION POTION」を演奏。最後のサビ前のブレイクでROYが観客の歓声を何度も煽るようにシャウトし、TAXMANがそのROYの存在をアピールするようなアクションを見せると、元からアウェー感のなかった客席はむしろホームに変わっていく。
「「HOT DOG」という曲の小芝居の準備に入ります!」
とROYが言うと、おなじみの「HOT DOG」劇場へ。この日はROYがルーク、TAXMANがダースベイダー、JIMがヨーダ(タオルを頭に巻いてそれらしい姿となり、声真似も良く似ている)、MARCYがC3POという配役のスターウォーズ。何度かライブでやったことがあるバージョンではあるのだが、こうしてこの日やったのは前日にスターウォーズの新作に関するニュースが出ていたからだろうか。ともあれめちゃくちゃウケていた。
「ここにいるみなさんはロックンロールが大好きなんでしょ!?だったら乗り遅れないでください!」
と言って演奏された「IT'S TOO LATE」でROYがロングシャウトを響かせると、「JUST BE COOL」でクールになれるわけもなく再び飛び上がらせ、ラストはおなじみのコール&レスポンスを挟んだ「TWISTIN' ANNIE」。
フラッドとの対バンだし、ロックンロールなイベントだしでてっきり最後は「KEEP ON ROCKIN'」をやるのかと思っていたが、KEYTALKと2マンをした時もこの曲を最後にやってコール&レスポンスをしていたし、今年はこの曲を最後にやるようになったのかもしれない。今まではなかなかフェスやイベントなどの短い持ち時間の時に聴ける曲ではなかっただけに、こんなにもガレージロックンロールな曲が聴けるというのは嬉しいことだけれども。
演奏が終わるとツアーの告知をし、わっしょいはなしにステージを去った4人。フラッドが掲げる「ロックンロール」をアリーナクラスという日本の最も広い場所で鳴らしてきたバンドはさすがに違うというか、年末のCOUNTDOWN JAPANの時もそうだったけれども、「曲はほとんど知らないけどバンドの名前は知ってる」という様子見的な人をライブが終わる頃には完全に「楽しかった!」と言わせるくらいに掴むことができるライブをやるバンドだ。それはフラッドと同時にメジャーデビューした2009年から全く変わらないどころか、より一層進化を続けている。それはこのバンドが決して止まらずにロックンロールし続けてきたからである。
1.NO WAY
2.SING YOUR SONG
3.YOU GOTTA DANCE
4.EMOTION POTION
5.HOT DOG
6.IT'S TOO LATE
7.JUST BE COOL
8.TWISTIN' ANNIE
HOT DOG
https://youtu.be/gOqNlnPuWEU
・climbgrow [TIGER STAGE]
今回の出演者の中で再若手、最も抜擢と言っていい存在の滋賀の4人組ロックンロールバンド、climbgrow。対バンツアーにも出演していたが、このイベントに初めて出演。
いつもと同じ出で立ちで狭いステージに4人が登場すると、
「ロックンロール代表、climbgrowです」
と杉野泰誠(ボーカル&ギター)が挨拶して「Lily」からスタート。今回の出演者の中では最も知られていないというか、初見の人が多いであろう存在なだけに果たしてどうなんだろうか、と思っていたが、初っ端からダイバーが続出するという予想をはるかに上回る盛り上がりよう。杉野のしゃがれたがなり声は亮介に通じるところがあるし、対バンツアーでもフラッドとの相性の良さというか、フラッドに憧れているバンドであることがちゃんと伝わっていたらしいので、このバンドが今まで出てきた中で最もアウェー感のないイベントなのかもしれない。
フラッドに憧れているバンドと書いたが、このバンドはロックンロールへの憧憬をそのまま自分たちの音楽にしてきたバンドだ。それは曲だけを聞くとフラッドというよりはミッシェル・ガン・エレファントの影響が強いかもしれないが、杉野が
「今日、本当に最高に楽しい」
と笑顔を見せながら(今までライブを何回か見てきてこんなに素直な杉野の笑顔を見たことはない)喋っていただけに、自分たちはフラッドが切り開いてくれたロックンロールの道を走っているという自覚があるんだろうし、そんなバンドが開催している大事なイベントに呼んでもらえたということが本当に嬉しいのだろう。
「カッコいいじゃねぇか!」
という荒ぶる観客の野次に
「当たり前だろ!」
と返すオラつきっぷりもこのバンドのロックンロールらしさを示しているが、
「俺たちは本当にまだまだペーペーなんで。必死にやるしかないんですよ。思ってるよりも謙虚にロックンロールバンドやってるんで(笑)」
と若手らしさも感じさせ、それは鳴らしている音の迫力とはギャップのある近藤和嗣(ギター)、田中仁太(ベース)、谷口宗夢(ドラム)のまだあどけなさを残す顔(まだ全員22歳くらい)からも感じられる。
「バンドやろうと思ってるやつもこの中にいっぱいいると思うけど、世の中くだらねーバンドがいっぱいいるからな。騙されるんじゃねぇぞ」
と強気な杉野の言葉の後に最後に鳴らされた「風夜更け」の畳み掛けるような言葉の連射っぷりからは、俺たちは絶対にくだらねーバンドにはならないからな、という強い意志を感じさせたし、この日出演しているバンドたちが目指す先にいることを感じさせた。
対バンツアーの京都でフラッドとこのバンドが2マンを行った時、このバンドのファンの人が
「あんなに嬉しそうな杉野の顔は初めて見た」
と言っていた。まだ数える程しかライブを見れていない自分でも、この日それは確かに感じた。このバンドがフラッドに憧れてロックンロールという今では希少種となってしまった(このバンドと同世代でこういう音楽を鳴らしているバンドは全然思い浮かばない)音楽を選んだのならば、フラッドが紆余曲折しながらも走り続けてきたことは間違いではなかったし、その姿は追いかけるべき背中として写っていたということ。このイベント終了後のバンドの公式ツイッターからもこのイベントが本当に楽しかったことが伝わってきた。この経験はこのバンドをさらに大きく強くしていくはず。
1.Lily
2.RAIN
3.SCARLET
4.mold Hi
5.ラスガノ
6.風夜更け
Lily
https://youtu.be/i2MPTi5ye1Q
・the pillows [ELEPHANT STAGE]
今回の出演者の中ではダントツで最年長となる、the pillows。あまりフェスやイベントにガンガン出るバンドではないだけにこうして見る機会があるのは貴重だったりする。
山中さわお(ボーカル&ギター)、真鍋吉明(ギター)、佐藤シンイチロウ(ドラム)の3人に加え、近年おなじみのサポートベーシスト有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)を加えた4人でステージに登場すると、
「アゥイエー!」
と山中が叫んで昨年リリースの最新アルバムのタイトル曲「Rebroadcast」からスタートすると、シンプルなサウンドの演奏が一気にタイトル通りにドライブしていく「Blues Drive Monster」はこのバンドの25周年を記念して作られたトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY」でフラッドがカバーしていた曲。(リリース直後に開催されたフラッドの日比谷野音ワンマンでも演奏された)
特にそこに触れるようなことを山中は言ってはいなかったが、間違いなくこの日この曲を演奏したのはこの曲をカバーしてくれたフラッドへのお返しという側面があったはずだ。
「おじさんとおじさんとおじさんとおじいさん(佐藤シンイチロウ)でバンドやってます。50代のテンションの低さを見せてやるぜ(笑)」
とベテランならではの自虐的なMCで笑わせるも、演奏からはテンションの低さは全く感じさせず、バンドを辞めることがなかったからこそのシンプルなサウンドの中に宿る熱量が全く退屈に感じさせることなく響き、バンドを続けてきたからこその経験がメロディや歌詞から響く。
このロックンロールバンドたちが集ったイベントだからこそ「About A Rock'n' Roll Band」のロックンロールバンドへの憧憬をテーマにした歌詞はこのバンドもスタイルは違えどロックンロールバンドであるということを感じさせてくれる。
某漫画作品でフィーチャーされてこのバンドの存在を若い世代にも知らしめることになった名曲「Funny Bunny」、山中のハイトーンボイスが50代という年齢を一切感じさせない若々しさを持って響く「この世の果てまで」と、本当に名曲ばかりを作ってきたバンドであることを実感させると、
「我々the pillows、今年で結成30周年を迎えました。それを記念して映画が作られてるんだけど、ドキュメンタリー映画ではなくてちゃんと役者さんが演技をしている映画で。それにTHE KEBABSが演奏シーンで出演してくれてるんだけど、映画用に新曲を作ってくれて。タイトルが「枕が変わると眠れない」っていう(笑)
でも佐々木は演技が凄く上手い。役者もできるよ。
その30周年の記念ライブが10月に横浜アリーナであります。みんな、会いにきてくれ。でも週末が良かったんだろうけど、会場が取れたのが木曜日だったんだ。だから場合によっては仕事を辞めてくれないか?(笑)」
と亮介とのエピソードとバンドの30周年を笑いを交えながら話していた山中はビールを飲みながら(本人は「炭酸水」と言っていたが)話していたので、徐々に顔が赤くなっていくのだが、「サードアイ」では高くジャンプしながらギターを弾き、かつてBUMP OF CHICKENがカバーしたことで一気にその名曲っぷりが知れ渡った「ハイブリッド・レインボウ」と惜しみなく代表曲を聴かせてくれる。
そしてラストは真鍋と佐藤だけでなく、有江もコーラスに参加する(「Funny Bunny」などでもマイクは通していなかったが口ずさみながらベースを弾いていた)「Locomotion, more! more!」で会場の空気をさらに暖かいものにしてこの後に繋げてメンバーはステージから去っていった。
すでに発表されている通り、今年のARABAKI ROCK FES.の大トリはこのバンドの30周年記念ライブである。そこにはそうそうたるメンツに混ざって亮介も出演する。かつてリリースされた2枚のトリビュートアルバムの参加アーティストからもこのバンドがどれだけ日本のロックシーンに影響を与えたのかがよくわかる。そんなバンドの30周年記念横浜アリーナはやはり行っておくべきなんだろうか。そのために仕事を辞めるかどうかはさておき。
1.Rebroadcast
2.Blues Drive Monster
3.MY FOOT
4.About A Rock'n' Roll Band
5.Funny Bunny
6.この世の果てまで
7.サードアイ
8.ハイブリッド・レインボウ
9.Locomotion, more! more!
Funny Bunny
https://youtu.be/f92VWkYl8CI
・DOES [TIGER STAGE]
前日までフラッドの前のこのスロットはタイムテーブルに「?????」と書かれており、発表されていなかった。この日の朝に解禁された出演者は活動休止中のDOES。かねてから亮介はメンバーに「DOESをやれ」と言い続けてきており、その想いはこうして形になった。
3人が小さいステージに登場すると、氏原ワタルが満面の笑みを浮かべながら両手を広げてから3人が向かい合い、メジャーデビューシングル「明日は来るのか」でスタート。すぐさま大ヒット曲「曇天」へと続くのだが、本当に3年間も止まっていたのかと思うくらいの演奏のキレ味。全くブランクを感じさせないのはステージの3人の演奏はもちろん、観客の熱狂っぷりもまた然り。
「a flood of circleに呼ばれて戻ってきました、DOESです!」
とかつて対バンしていた時と全く同じ挨拶をワタルがすると、赤塚ヤスシがグルグルとステージを回りながらベースを弾く「KNOW KNOW KNOW」ではダイバーが出現するというファンの待ち続けてきた想いが爆発する形となり、
「今、何月?四月だけど、三月」
とワタルが客席に問いかけた「三月」ではこのバンドが持つ独特な和の要素と、「おもえらく」という他のバンドの歌詞で聞いたこともないフレーズが使われているワタルの文学性の強さを感じさせる。メンバーはそれぞれ日本のバンドだけでなく海外の音楽も聞いているバンドであるが、そのアウトプットの仕方が実に独特というか、これほどメンバーの持つ人間性を持って曲になるバンドもそうそういないということに改めて気づかされるし、実はDOESのようなサウンドと歌詞のバンドっていそうなようでいて今になっても全然いないということにも改めて気づく。
「ずっとここにいたくなっちゃう」
と実に楽しそうなワタルが
「渋谷ベイビーはロックンロールベイビーかい!?ロックンロールベイビーはレイジー・ベイビーかい!?」
と問いかけながら、ケーサクのダンサブルなビートに合わせて飛び跳ねさせまくった「レイジー・ベイビー」を演奏すると、
ヤス「去年、HOSOMESで出た時に亮介に
「来年はDOESで出ろバカヤロー」
って言われたんだけど、出たわバカヤロー!」
とやはり去年のHOSOMESでの出演がこの日に繋がっていることを告げたが、弾き語りなどでステージに立っているワタルに対して、ヤスとケーサクはなかなかこうしてたくさんの人が見るようなステージに立つような機会がなかった。だからこそ亮介は去年ヤスをHOSOMESのメンバーとしてステージに立つ機会を作ったのだろうし、そうやって至るところでDOESを動かそうとしてきた亮介への3人の感謝がこの日の出演になっているし、亮介は3人の関係性が悪かったのだとしたら絶対に無理にバンドをやらせようとしない。活動休止したのはそういう理由ではないのを知っていて、DOESというバンドのカッコよさをもっとたくさんの人に知ってもらいたい、そのために自分ができることは何でもやる。その亮介の想いがこの日の奇跡を呼んだのだ。
「バンドって最高に楽しいねぇ。またやりたくなっちゃうよ」
とワタルが思わせぶりな発言をしたのもこの日の出演者たちがみんなロックバンドであり、そのバンドたちが見せたライブに感化されたところもあるんだろうし、自分たちのライブの手応えも感じていたはずだ。
そして「銀魂」シリーズで最初にタイアップに起用されてこのバンドの存在を世に知らしめた「修羅」での「ひぃ ふぅ みぃ よ」の掛け声は今でも本当に奇跡みたいなハマり具合だと思うし、ラストの「バクチ・ダンサー」はミュージックステーションにまで出演した時の姿を今でも思い出させる。その時のカッコよさは全く変わっていないし、楽曲も全く色褪せていない。だからいつでも戻ってきて大丈夫だ。
それは演奏が終わった後のみならず、メンバーがステージから去っていった後にも起こった大きな拍手がそれを後押ししていたし、戻ってきてくれてありがとうという意味も込められていたように感じた。
走り続けている時には見えないものもある。止まることで見えるものや、止まったからこそ解放されるものが、確かにある。去年のELLEGARDENやthe telephonesの活動休止からの復活は自分にそれを実感させてくれた。
「銀魂」の主題歌が突出して売れまくっただけに、DOESも何かしら悩んでいたりしたことは間違いなくあったと思う。でも止まったからこそ、そうしたものに囚われなくてもよくなった。だからこそ、ワタルはかつてのギラつきぷりは一切ない、穏やかで楽しそうな表情で演奏していた。今ならきっと止まる前よりも楽しくバンドができるはず。その姿を一回きりではなくて当たり前のように見ることができるようになるのは、決して遠い未来の話ではないと思う。
だって、つまんないよ これで終わりなんてさ。
1.明日は来るのか
2.曇天
3.KNOW KNOW KNOW
4.三月
5.レイジー・ベイビー
6.修羅
7.バクチ・ダンサー
修羅
https://youtu.be/kBQmuw3CYnE
・a flood of circle [ELEPHANT STAGE]
そしていよいよこのロックンロールなイベントを主催した、a flood of circleがこの日をさらに最高な1日にするべく、トリのステージに上がる。
出で立ちとしては特別な感じのない4人がステージに登場すると、
「おはようございます、a flood of circleです」
という亮介のおなじみの挨拶から、
「サーカスにようこそ!」
と言ったので、昨年も演奏されたサーカスソング「フェルディナン・グリフォン・サーカス」で始まるのかと思いきや、「Flayer's Waltz」からスタート。確かに
「空中ブランコ 宙を舞う」
というフレーズなどこの曲もサーカス感の強い曲であるが、
「飛べない鳥たちが空をぶっ飛んでいく」
というサビに合わせるかのように観客は次々と空を飛んでいく。それくらいに初っ端からバンドの演奏は熱量に満ちているし、それはこの日出演したバンドたちから受け取ったものの強さの証明でもある。
この日はTHE KEBABSで出演した田淵智也がプロデュースした「ミッドナイト・クローラー」、ライブバージョンで追加されたアウトロで青木テツに加え、
「紹介します、ギター俺!」
と亮介もギターソロをぶっ放す「Dancing Zombiez」と続くと、一丘が絶好調なドラムソロを披露した後に亮介がギターを下ろしてハンドマイク状態になって歌う「Sweet Home Battle Field」では最後に客席に突入して観客に支えられながら立ち上がって熱唱。ここまで見事に立つことができるのは他にBRAHMANのTOSHI-LOWとキュウソネコカミのセイヤくらいだろうか。歌い終わるとそのまま倒れるようにして支えられながらステージに戻るというのはこの男くらいしかやっていないことであるが。
「友達がいなくなっちゃったりするけど、願えばなんでもできる。今年DOES呼べたから。人類は月に行ったことだってあるんだぜ」
と語ってから歌い始めたのは美しいメロディのラブソング「Honey Moon Song」。
「月まで届くように叫んでる」
と歌うこの曲は、この日は他のバンドたち同様にこのバンドも世話になった、COMING KOBE主催者の松原裕や対バンをしたこともあるwowaka(HISAYOはツイッターでコメントをしていた)ら、空の上に行ってしまった人たちに届くように歌っているようだった。演奏された時の状況やタイミングによって曲の持つ意味は変容する。この日の「Honey Moon Song」はフラッドの曲が間違いなくそうした力を持っていることを証明していた。
「3月にアルバムが出たばっかりなのに、今月にアルバムと全く関係ないシングルが出るっていう(笑)
生き急ぎすぎとか言われることもあるけど、これが俺たちのペースだから!」
と改めてそのリリースペース、活動ペースの速さが自分たちにとって当たり前のことであることを表明したが、それはメジャーデビューした年にフルアルバムを2枚リリースした(しかも1枚目をリリースした直後にメンバーがいなくなっている)時から全く変わっていない。
そしてそのハイペースさでリリースされるシングルのタイトル曲「The Key」を披露したのだが、すでに放送開始しているアニメ「群青のマグメル」のタイアップとして聴いた時も感じたのだが、今のフラッドは過去最高にバンドそのものが拓けてきている。感触としては「NEW TRIBE」のように新たな場所へ向かおうとしている曲であるが、「The Key」では向かうというよりも新しい世界を自分たちで作ろうとしているかのような。
亮介は先月リリースのアルバム「CENTER OF THE EARTH」のインタビューで、
「ロック生き延ばしっていうよりも、ぶっ壊して新しく作った方が良いんじゃないかって」
と言っていたが、そのぶっ壊した後のロックの世界に最初に流れていて欲しいのがこの「The Key」だ。それはある意味ではスタイルの固まったように見えるロックンロールというジャンルの新たな間口の広さにもつながるはず。デビューして10年を過ぎても、こうして新しい曲が出るたびにバンドに新しい可能性を感じることができる。そんなバンドは実はあんまりいないし、だから我々はフラッドにまだまだ夢を見ている。
亮介はメンバー1人1人に話を振るのだが、去年のこのイベントで正式にバンドに加入したテツは
「なんか、デジャヴみたいだ(笑)」
とこのステージで亮介に話しかけられたことを去年のこのステージで
「入る?」
と言われた時に重ね合わせていた。あれから1年。この1年間はフラッドにとって、今のこの4人が最強のフラッドだということを証明するためのものだった。それはその姿を見てきた人たちにはちゃんと伝わっていると思うし、このバンドに骨を埋める決意をしてくれたテツにはファンみんなが感謝している。
HISAYOはまだこの日ビールを飲んでいないらしく、
「このイベント、最初に出たい(笑)ライブ終わってからビール飲みながらみんなのライブが見たい(笑)」
と話すと、一丘は
「みんな、疲れてないですか?……疲れたって言ったら「まだまだ疲れてんじゃねぇ!」って言ってテンション上げようとしたんだけど、まだ行けそうだね。作戦は失敗しました(笑)」
と何気に喋るのがちょっと上手くなったような成長を感じさせる。
すると亮介は
「まだまだ行けんだろ!」
と思いっきり煽るように超高速化した「The B eautiful Monkeys」を演奏し、この日最高潮の盛り上がりを見せると、さらにテンションを上げるべく、「CENTER OF THE EARTH」からタイトルそのまんまのただただハイテンションになるための曲でありながらそれはロックンロールの真髄そのものであるというのがライブで聴くとよくわかる「ハイテンションソング」でさらにテンションを上げると、メンバーがドラムセットの前に集まって複雑なイントロのキメを合わせる「美しい悪夢」を最後に演奏することで、まるで逆転満塁ホームランのような一発をかっ飛ばしてステージを去って行った。
アンコールで再びメンバーがステージに登場すると、亮介が来年もこのイベントをやるべく、出演者に象を入れたり、空中ブランコを入れたいというさらなる夢を語ると、
「DOESを出すっていう野望が今年叶ったんで。俺はずっとプリティを待ってる」
と、不慮の事故によってまだライブに出ることができないプリティが揃った4人でのgo! go! vanillasを来年はこのイベントに呼びたいという野望を語り、最新アルバムのタイトル曲である「Center Of The Earth」を演奏。
「サンキューベイビー 本当におめでとう 大好きだよ」
というビックリするくらいに素直というか、ストレートな歌詞はフラッドから我々ファンにとって、そしてファンからフラッドにとってのフレーズでもある。
とはいえ季節柄、「春の嵐」が聴けると思っていたのだが、最後に演奏されたのはやはり「シーガル」で亮介がマイクを離れるとサビでは大合唱が起こった。いろんなバンドのファンがいたであろうこの日の中でも、この曲での合唱が1番大きかった。やはりこの日の主役はフラッドだったのだ。
フラッドは何度となく形を変えながら、今が最高だということをずっと自分たちの力で証明してきたバンドだ。この日は出演者たちのロックバンドへの愛とフラッドへの愛がそれをさらに増幅させていた。つまりこの日はやっぱりこれまでの中で最高だったし、それはこれからも更新され続けていく。前週に04 Limited Sazabysが主催フェスを広い会場でやっているのを見ているだけに、フラッドにもいつかあんな場所でこのイベントをやって欲しいし、絶対にやれる力がこのバンドにはある。それをずっと信じてきたから10年以上、どんなに形が変わることがあっても着いてきたんだ。その生きるペースや生きてきた軌跡は普通の人から見たら紛れもなく異常というかまともではないけれど、まともじゃなくても 大好きだよ。またすぐに始まるワンマンツアーで。
1.Flyer's Waltz
2.ミッドナイト・クローラー
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.Honey Moon Song
6.The Key
7.The Beautiful Monkeys
8.ハイテンションソング
9.美しい悪夢
encore
10.Center Of The Earth
11.シーガル
Center Of The Earth
https://youtu.be/7w1GhWCzehw
Next→ 9mm Parabellum Bullet @日比谷野外音楽堂
今年もTSUTAYA O-EASTでの2ステージを使っての開催となるが、CHAIや髭、さらにはUNISON SQUARE GARDENという幅広いスタイルやジャンルの出演者が集まった昨年と一転し、今年は
a flood of circle
DOES
the pillows
climbgrow
THE BAWDIES
THE KEBABS
爆弾ジョニー
というロックンロールに振り切ったラインアップ。中でもフラッドの佐々木亮介がことあるごとに
「早くDOESやれ、バーカ」
とメンバーに対して言い続けてきた活動休止中のDOESの復活は今回の大きなトピックと言えるだろう。
長丁場であるため、場内ではカレーやケバブの飲食店が食欲を誘う匂いを醸し出す中、トップバッターのバンドのメンバーたちは飲食ブース隣のフェイスペインティングコーナーに並んでいるというこのロックンロールなイベントならではの自由っぷり。自身のライブ開始20分前という時間の出来事である。
・爆弾ジョニー [ELEPHANT STAGE]
そのフェイスペインティングコーナーに並んでいたのはこのバンドのりょーめー(ボーカル)、キョウスケ(ギター)、タイチ(ドラム)の3人。キョウスケは昨年は佐々木亮介らとのTHE HOSOMESのメンバーとしてこのイベントに出演している。
a flood of circleのメンバー4人による前説に続いて、聞き馴染みがあるというか、明らかにa flood of circleが使ってるSEが流れるというこのバンドならではのフラッドへの愛を感じさせる演出で5人が登場すると、パーカーを着たりょーめーが上手、ロマンチック☆安田(キーボード&ギター)が真ん中という立ち位置でアニメのタイアップ曲でもあった「終わりなき午後の冒険者」からスタートすると、りょーめーは最初の立ち位置を無視するかのようにステージの真ん中に立って歌い、コーラスパートではマイクを客席に向けて合唱を煽る。
タオルを振り回すりょーめーに合わせて観客も同じように振り回す「ケンキョニオラツケ!」で会場の空気を一気に掴みながら始まったばかりのこのイベントの熱量を上げると、アメリカの通販番組のようなコミカルな展開の「アメリカンマッスル」では腰を骨折してサポーターを巻いたりょーめーがこの日からライブ会場で販売されるデモCDの告知をすると、そのCDを最前列で見ていたファンに売って1000円を得るという実演販売を展開。メンバーが手売りをステージ上でするというのはなかなか見れない光景である。
安田のキーボードが美しいメロディを奏でながらもサビの歌詞はひたすらに性欲のことを素直に歌っているというギャップが面白い「キミハキミドリ」では間奏でタイチ(ドラム)がフラッド「Summertime Blues II」の替え歌を歌って爆笑を巻き起こす。こういうことができるのはメンバーが本当にフラッドの音楽を普段から聴いているからだろう。
キーボードからギターに持ち替えた安田→キョウスケ→りょーめーとボーカルリレーしていく新曲を披露すると、青木テツの前にフラッドのサポートギターを務めていたキョウスケが
「(亮介のモノマネで)おはようございます、爆弾ジョニーです(笑)
俺もフラッドの歴史に参加させてもらってました」
と改めてフラッドのサポートギターだったことをアピールするのだが、その後に
「3階でフェイスペインティングやってまーす」
と言って自身の顔に施されたペイントを見せるあたりはやっぱり天然というか、何というか。
その後に飛び道具感一切なしの名曲「MELODY」でこのバンドの持つメロディメーカーとしての力を見せると、
「あと2曲です。(「えー!」という観客の声に対して)フラッドに言えよ!俺たちが時間決めたんじゃないんだから!(笑)」
ともっと長くライブをやりたいという気持ちを見せると、最近できた中でお気に入りの新曲たちをメドレー形式で披露するのだが、そもそもが新曲であるだけにどこをどうメドレー的に繋いでいるのかが一切わからない。1曲が転調がすごい多い曲と言われたらそう思ってしまいそうでもある。
そして「かなしみのない場所へ」で
「ああ〜 ありがとう
あなたに出会えてぼくは今日もなんとなくそれなりに生きてます
そして出会うだろうまだ見ぬあなたたちと夢をみてる
かなしみのない場所で」
というこの場所で歌われることでフラッドと観客への感謝を告げているように感じるフレーズで大合唱を巻き起こして終わりかと思いきや、
「まだ時間あるから、キョウスケの作った曲やるか!」
と言ってかつてフラッドを支えてくれたキョウスケをフィーチャーするように「イミナシ!」を演奏すると、
「ちょうど40分!」
と見事なまでに持ち時間ピッタリのライブを終えてステージを去って行った。きっとそれは狙ったものではないのだろうけれど、このバンドがやるとそうなるのが決まっていたかのような感じにすらなる。それくらいにこのバンドはデビューした当時からロックンロールの魔法を纏っていたし、それは今も失われていないように思える。
爆弾ジョニーはそのロックンロールの魔法を体現していたからこそ、RISING SUN ROCK FESTIVALのメインステージにいきなり抜擢されたりと、10代の時から本当に期待されていた。でもりょーめーの精神がそのスピードに追いつくことができずにバンドは一度止まってしまった。
でもその止まっていた時間にりょーめー以外のメンバーは様々なバンドでサポートメンバーを務めて修行のような時間を過ごした。(フラッドでギターを弾いたキョウスケはもちろん、ベースの小堀もこの日出演しているthe pillowsのサポートを務めたこともある)
だからこそこのバンドは様々なバンドのファンからリスペクトと感謝を受けている。そのバンドのファンはこのバンドのメンバーがいなかったらそのバンドが続かなかったことをわかっているから。自分自身、フラッド最強のサポートギターと呼ばれたキョウスケの存在でそれを実感した。
でもやっぱりこのメンバーが1番輝くのはこのバンドのメンバーとしてステージに立っている時なのである。このバンドから今でもロックンロールの魔法がかかっていることを実感するのはそこなのである。
1.終わりなき午後の冒険者
2.ケンキョニオラツケ!
3.アメリカンマッスル
4.キミハキミドリ
5.新曲
6.MELODY
7.新曲メドレー
8.かなしみのない場所へ
9.イミナシ!
かなしみのない場所へ
https://youtu.be/x_FPpXjo94s
・THE KEBABS [TIGER STAGE]
O-EASTはメインステージの横にあるサブステージが使えることからこうしてフェス的なライブが開催されることが多いのだが、この小さいステージのトップバッターとして出演するのは、ある意味では今回の目玉の一つとも言える、THE KEBABS。
ボーカル&ギター:佐々木亮介 (a flood of circle)
ギター:新井弘毅 (ex.serial TV drama)
ベース:田淵智也 (UNISON SQUARE GARDEN)
ドラム:鈴木浩之 (ex.ART-SCHOOL)
という、友達同士で組んだバンドと言うにはあまりに豪華すぎるメンバーたちによるバンドである。田淵は去年のユニゾンに続いて2年連続出演。
SEもなしにメンバーがステージに現れたので、てっきりサウンドチェックをしに来たのかと思ったら、セッション的に音を鳴らしてそのままライブがスタートする。
「イカしたヤツら」
というフレーズでの亮介のボーカルに田淵のコーラスが乗るのが強烈なインパクトを残す「THE KEBABSのテーマ」でスタートすると、もう本当にシンプル極まりないロックンロールを叩きつけまくる。ステージが狭いがゆえにユニゾンでのライブ時ほど田淵は動き回りながら演奏することはないが、こんなに小さなステージでこの男が演奏する姿を見れることは今やそうそうない機会だ。
このバンドのライブを見るのは初めて(小さいライブハウスでしかライブをやってないがゆえにチケット全然取れないから)だからMCも一切挟まないというのがこのバンドのスタイルなのかどうかはわからないのだが、フラッド以外にもソロでトラップなどの現行の世界のポップミュージックを取り入れた音楽を作っている亮介を筆頭に、ユニゾンはもちろんQ-MHzでプロデュースワークも務める田淵、バンド解散後はフルカワユタカやPUFFYのサポートギターなどでも活躍している新井、バンド以外のアーティストのレコーディングでもドラムを叩いている鈴木と、いろんな音楽をやってきたし、できるようなメンバーたちのバンドである。
でもTHE KEBABSとしてこのメンバーが揃うと、ロックンロール以外の何物でもないような音楽になる。そこからはバンドを始めた少年のような強い衝動を感じるだけに、計算などではなくて4人でスタジオに入って音を鳴らしたらこういう音楽になった、というくらいのものなんだろう。
それがこんなにもカッコいいと思える音楽になっていて、こうしてライブでそれを体験できるというのは嬉しくて仕方がないし、亮介と1本のマイクで同時に歌ったり、単独で歌う場面もある田淵を始め、4人全員が本当に笑顔で楽しみながら演奏している。(失礼ながら鈴木が演奏中にこんなに笑顔を見せる人だとは知らなかった)
来月にはこのバンドのライブが渋谷QUATTROで行われる。すでにこの日演奏した曲の倍くらいの曲をこれまでのライブではやっているとのことなので、ようやくこのバンドメインのライブを見ることが本当に嬉しいというか、すごいやばい。
1.セッション
2.THE KEBABSのテーマ
3.すごいやばい
4.メリージェーン知らない
5.Bad rock'n'roll show
6.ピアノのある部屋で
7.Cocktail Party Anthem
8.台風ブンブン
9.ガソリン
THE KEBABSのテーマ
https://youtu.be/EyFdHdcWCds
・THE BAWDIES [ELEPHANT STAGE]
フラッドと同様に「ロックンロール」を標榜してバンドを続けてきた、THE BAWDIES。このイベントには若手ロックンロールバンド(去年はSIX LOUNGEやLarge House Satisfactionが出演した)が出演してきたが、真打ちというかラスボスというか、ロックンロールシーンにとってそういう存在であるこのバンドがついに出演。
おなじみ「SOUL MAN」のSEでスーツ姿の4人がステージに登場すると、
「飛べー!」
とROYがいきなりシャウトする「NO WAY」からスタートし、「SING YOUR SONG」で早くも合唱を巻き起こすなど、やはりこのバンドには一切のアウェー感を感じない。同じロックンロールバンドでありながらもフラッドとはあまり客層が被っていないような感じもしていたが(どちらも毎回ワンマンに行くバンドなだけにそう感じていた)、それは完全に杞憂だったようだ。
髪を切ったのは見慣れてきたが、髭もそって外見が非常にサッパリとしたJIMが動き回りまくりながらギターを弾いて観客を飛び跳ねさせる「YOU GOTTA DANCE」を終えるとROYが、
「a flood of circleとは完全に同期で。メジャーデビューアルバムが出た日も同じ日なんですけど、フジロックのルーキーステージに出た時に俺たちの次がフラッドで。俺は緊張し過ぎて顔が白菜みたいになってたんだけど、隣にいた佐々木君は顔に水分を含んでいたから、白菜の漬け物みたいな顔になってた(笑)」
という同期としてかつて同じ景色を見てきた存在だからこそのエピソードを語ると、メジャーデビューアルバムの1曲目に収録されている、今のTHE BAWDIESの始まりの曲と言っていい「EMOTION POTION」を演奏。最後のサビ前のブレイクでROYが観客の歓声を何度も煽るようにシャウトし、TAXMANがそのROYの存在をアピールするようなアクションを見せると、元からアウェー感のなかった客席はむしろホームに変わっていく。
「「HOT DOG」という曲の小芝居の準備に入ります!」
とROYが言うと、おなじみの「HOT DOG」劇場へ。この日はROYがルーク、TAXMANがダースベイダー、JIMがヨーダ(タオルを頭に巻いてそれらしい姿となり、声真似も良く似ている)、MARCYがC3POという配役のスターウォーズ。何度かライブでやったことがあるバージョンではあるのだが、こうしてこの日やったのは前日にスターウォーズの新作に関するニュースが出ていたからだろうか。ともあれめちゃくちゃウケていた。
「ここにいるみなさんはロックンロールが大好きなんでしょ!?だったら乗り遅れないでください!」
と言って演奏された「IT'S TOO LATE」でROYがロングシャウトを響かせると、「JUST BE COOL」でクールになれるわけもなく再び飛び上がらせ、ラストはおなじみのコール&レスポンスを挟んだ「TWISTIN' ANNIE」。
フラッドとの対バンだし、ロックンロールなイベントだしでてっきり最後は「KEEP ON ROCKIN'」をやるのかと思っていたが、KEYTALKと2マンをした時もこの曲を最後にやってコール&レスポンスをしていたし、今年はこの曲を最後にやるようになったのかもしれない。今まではなかなかフェスやイベントなどの短い持ち時間の時に聴ける曲ではなかっただけに、こんなにもガレージロックンロールな曲が聴けるというのは嬉しいことだけれども。
演奏が終わるとツアーの告知をし、わっしょいはなしにステージを去った4人。フラッドが掲げる「ロックンロール」をアリーナクラスという日本の最も広い場所で鳴らしてきたバンドはさすがに違うというか、年末のCOUNTDOWN JAPANの時もそうだったけれども、「曲はほとんど知らないけどバンドの名前は知ってる」という様子見的な人をライブが終わる頃には完全に「楽しかった!」と言わせるくらいに掴むことができるライブをやるバンドだ。それはフラッドと同時にメジャーデビューした2009年から全く変わらないどころか、より一層進化を続けている。それはこのバンドが決して止まらずにロックンロールし続けてきたからである。
1.NO WAY
2.SING YOUR SONG
3.YOU GOTTA DANCE
4.EMOTION POTION
5.HOT DOG
6.IT'S TOO LATE
7.JUST BE COOL
8.TWISTIN' ANNIE
HOT DOG
https://youtu.be/gOqNlnPuWEU
・climbgrow [TIGER STAGE]
今回の出演者の中で再若手、最も抜擢と言っていい存在の滋賀の4人組ロックンロールバンド、climbgrow。対バンツアーにも出演していたが、このイベントに初めて出演。
いつもと同じ出で立ちで狭いステージに4人が登場すると、
「ロックンロール代表、climbgrowです」
と杉野泰誠(ボーカル&ギター)が挨拶して「Lily」からスタート。今回の出演者の中では最も知られていないというか、初見の人が多いであろう存在なだけに果たしてどうなんだろうか、と思っていたが、初っ端からダイバーが続出するという予想をはるかに上回る盛り上がりよう。杉野のしゃがれたがなり声は亮介に通じるところがあるし、対バンツアーでもフラッドとの相性の良さというか、フラッドに憧れているバンドであることがちゃんと伝わっていたらしいので、このバンドが今まで出てきた中で最もアウェー感のないイベントなのかもしれない。
フラッドに憧れているバンドと書いたが、このバンドはロックンロールへの憧憬をそのまま自分たちの音楽にしてきたバンドだ。それは曲だけを聞くとフラッドというよりはミッシェル・ガン・エレファントの影響が強いかもしれないが、杉野が
「今日、本当に最高に楽しい」
と笑顔を見せながら(今までライブを何回か見てきてこんなに素直な杉野の笑顔を見たことはない)喋っていただけに、自分たちはフラッドが切り開いてくれたロックンロールの道を走っているという自覚があるんだろうし、そんなバンドが開催している大事なイベントに呼んでもらえたということが本当に嬉しいのだろう。
「カッコいいじゃねぇか!」
という荒ぶる観客の野次に
「当たり前だろ!」
と返すオラつきっぷりもこのバンドのロックンロールらしさを示しているが、
「俺たちは本当にまだまだペーペーなんで。必死にやるしかないんですよ。思ってるよりも謙虚にロックンロールバンドやってるんで(笑)」
と若手らしさも感じさせ、それは鳴らしている音の迫力とはギャップのある近藤和嗣(ギター)、田中仁太(ベース)、谷口宗夢(ドラム)のまだあどけなさを残す顔(まだ全員22歳くらい)からも感じられる。
「バンドやろうと思ってるやつもこの中にいっぱいいると思うけど、世の中くだらねーバンドがいっぱいいるからな。騙されるんじゃねぇぞ」
と強気な杉野の言葉の後に最後に鳴らされた「風夜更け」の畳み掛けるような言葉の連射っぷりからは、俺たちは絶対にくだらねーバンドにはならないからな、という強い意志を感じさせたし、この日出演しているバンドたちが目指す先にいることを感じさせた。
対バンツアーの京都でフラッドとこのバンドが2マンを行った時、このバンドのファンの人が
「あんなに嬉しそうな杉野の顔は初めて見た」
と言っていた。まだ数える程しかライブを見れていない自分でも、この日それは確かに感じた。このバンドがフラッドに憧れてロックンロールという今では希少種となってしまった(このバンドと同世代でこういう音楽を鳴らしているバンドは全然思い浮かばない)音楽を選んだのならば、フラッドが紆余曲折しながらも走り続けてきたことは間違いではなかったし、その姿は追いかけるべき背中として写っていたということ。このイベント終了後のバンドの公式ツイッターからもこのイベントが本当に楽しかったことが伝わってきた。この経験はこのバンドをさらに大きく強くしていくはず。
1.Lily
2.RAIN
3.SCARLET
4.mold Hi
5.ラスガノ
6.風夜更け
Lily
https://youtu.be/i2MPTi5ye1Q
・the pillows [ELEPHANT STAGE]
今回の出演者の中ではダントツで最年長となる、the pillows。あまりフェスやイベントにガンガン出るバンドではないだけにこうして見る機会があるのは貴重だったりする。
山中さわお(ボーカル&ギター)、真鍋吉明(ギター)、佐藤シンイチロウ(ドラム)の3人に加え、近年おなじみのサポートベーシスト有江嘉典(VOLA & THE ORIENTAL MACHINE)を加えた4人でステージに登場すると、
「アゥイエー!」
と山中が叫んで昨年リリースの最新アルバムのタイトル曲「Rebroadcast」からスタートすると、シンプルなサウンドの演奏が一気にタイトル通りにドライブしていく「Blues Drive Monster」はこのバンドの25周年を記念して作られたトリビュートアルバム「ROCK AND SYMPATHY」でフラッドがカバーしていた曲。(リリース直後に開催されたフラッドの日比谷野音ワンマンでも演奏された)
特にそこに触れるようなことを山中は言ってはいなかったが、間違いなくこの日この曲を演奏したのはこの曲をカバーしてくれたフラッドへのお返しという側面があったはずだ。
「おじさんとおじさんとおじさんとおじいさん(佐藤シンイチロウ)でバンドやってます。50代のテンションの低さを見せてやるぜ(笑)」
とベテランならではの自虐的なMCで笑わせるも、演奏からはテンションの低さは全く感じさせず、バンドを辞めることがなかったからこそのシンプルなサウンドの中に宿る熱量が全く退屈に感じさせることなく響き、バンドを続けてきたからこその経験がメロディや歌詞から響く。
このロックンロールバンドたちが集ったイベントだからこそ「About A Rock'n' Roll Band」のロックンロールバンドへの憧憬をテーマにした歌詞はこのバンドもスタイルは違えどロックンロールバンドであるということを感じさせてくれる。
某漫画作品でフィーチャーされてこのバンドの存在を若い世代にも知らしめることになった名曲「Funny Bunny」、山中のハイトーンボイスが50代という年齢を一切感じさせない若々しさを持って響く「この世の果てまで」と、本当に名曲ばかりを作ってきたバンドであることを実感させると、
「我々the pillows、今年で結成30周年を迎えました。それを記念して映画が作られてるんだけど、ドキュメンタリー映画ではなくてちゃんと役者さんが演技をしている映画で。それにTHE KEBABSが演奏シーンで出演してくれてるんだけど、映画用に新曲を作ってくれて。タイトルが「枕が変わると眠れない」っていう(笑)
でも佐々木は演技が凄く上手い。役者もできるよ。
その30周年の記念ライブが10月に横浜アリーナであります。みんな、会いにきてくれ。でも週末が良かったんだろうけど、会場が取れたのが木曜日だったんだ。だから場合によっては仕事を辞めてくれないか?(笑)」
と亮介とのエピソードとバンドの30周年を笑いを交えながら話していた山中はビールを飲みながら(本人は「炭酸水」と言っていたが)話していたので、徐々に顔が赤くなっていくのだが、「サードアイ」では高くジャンプしながらギターを弾き、かつてBUMP OF CHICKENがカバーしたことで一気にその名曲っぷりが知れ渡った「ハイブリッド・レインボウ」と惜しみなく代表曲を聴かせてくれる。
そしてラストは真鍋と佐藤だけでなく、有江もコーラスに参加する(「Funny Bunny」などでもマイクは通していなかったが口ずさみながらベースを弾いていた)「Locomotion, more! more!」で会場の空気をさらに暖かいものにしてこの後に繋げてメンバーはステージから去っていった。
すでに発表されている通り、今年のARABAKI ROCK FES.の大トリはこのバンドの30周年記念ライブである。そこにはそうそうたるメンツに混ざって亮介も出演する。かつてリリースされた2枚のトリビュートアルバムの参加アーティストからもこのバンドがどれだけ日本のロックシーンに影響を与えたのかがよくわかる。そんなバンドの30周年記念横浜アリーナはやはり行っておくべきなんだろうか。そのために仕事を辞めるかどうかはさておき。
1.Rebroadcast
2.Blues Drive Monster
3.MY FOOT
4.About A Rock'n' Roll Band
5.Funny Bunny
6.この世の果てまで
7.サードアイ
8.ハイブリッド・レインボウ
9.Locomotion, more! more!
Funny Bunny
https://youtu.be/f92VWkYl8CI
・DOES [TIGER STAGE]
前日までフラッドの前のこのスロットはタイムテーブルに「?????」と書かれており、発表されていなかった。この日の朝に解禁された出演者は活動休止中のDOES。かねてから亮介はメンバーに「DOESをやれ」と言い続けてきており、その想いはこうして形になった。
3人が小さいステージに登場すると、氏原ワタルが満面の笑みを浮かべながら両手を広げてから3人が向かい合い、メジャーデビューシングル「明日は来るのか」でスタート。すぐさま大ヒット曲「曇天」へと続くのだが、本当に3年間も止まっていたのかと思うくらいの演奏のキレ味。全くブランクを感じさせないのはステージの3人の演奏はもちろん、観客の熱狂っぷりもまた然り。
「a flood of circleに呼ばれて戻ってきました、DOESです!」
とかつて対バンしていた時と全く同じ挨拶をワタルがすると、赤塚ヤスシがグルグルとステージを回りながらベースを弾く「KNOW KNOW KNOW」ではダイバーが出現するというファンの待ち続けてきた想いが爆発する形となり、
「今、何月?四月だけど、三月」
とワタルが客席に問いかけた「三月」ではこのバンドが持つ独特な和の要素と、「おもえらく」という他のバンドの歌詞で聞いたこともないフレーズが使われているワタルの文学性の強さを感じさせる。メンバーはそれぞれ日本のバンドだけでなく海外の音楽も聞いているバンドであるが、そのアウトプットの仕方が実に独特というか、これほどメンバーの持つ人間性を持って曲になるバンドもそうそういないということに改めて気づかされるし、実はDOESのようなサウンドと歌詞のバンドっていそうなようでいて今になっても全然いないということにも改めて気づく。
「ずっとここにいたくなっちゃう」
と実に楽しそうなワタルが
「渋谷ベイビーはロックンロールベイビーかい!?ロックンロールベイビーはレイジー・ベイビーかい!?」
と問いかけながら、ケーサクのダンサブルなビートに合わせて飛び跳ねさせまくった「レイジー・ベイビー」を演奏すると、
ヤス「去年、HOSOMESで出た時に亮介に
「来年はDOESで出ろバカヤロー」
って言われたんだけど、出たわバカヤロー!」
とやはり去年のHOSOMESでの出演がこの日に繋がっていることを告げたが、弾き語りなどでステージに立っているワタルに対して、ヤスとケーサクはなかなかこうしてたくさんの人が見るようなステージに立つような機会がなかった。だからこそ亮介は去年ヤスをHOSOMESのメンバーとしてステージに立つ機会を作ったのだろうし、そうやって至るところでDOESを動かそうとしてきた亮介への3人の感謝がこの日の出演になっているし、亮介は3人の関係性が悪かったのだとしたら絶対に無理にバンドをやらせようとしない。活動休止したのはそういう理由ではないのを知っていて、DOESというバンドのカッコよさをもっとたくさんの人に知ってもらいたい、そのために自分ができることは何でもやる。その亮介の想いがこの日の奇跡を呼んだのだ。
「バンドって最高に楽しいねぇ。またやりたくなっちゃうよ」
とワタルが思わせぶりな発言をしたのもこの日の出演者たちがみんなロックバンドであり、そのバンドたちが見せたライブに感化されたところもあるんだろうし、自分たちのライブの手応えも感じていたはずだ。
そして「銀魂」シリーズで最初にタイアップに起用されてこのバンドの存在を世に知らしめた「修羅」での「ひぃ ふぅ みぃ よ」の掛け声は今でも本当に奇跡みたいなハマり具合だと思うし、ラストの「バクチ・ダンサー」はミュージックステーションにまで出演した時の姿を今でも思い出させる。その時のカッコよさは全く変わっていないし、楽曲も全く色褪せていない。だからいつでも戻ってきて大丈夫だ。
それは演奏が終わった後のみならず、メンバーがステージから去っていった後にも起こった大きな拍手がそれを後押ししていたし、戻ってきてくれてありがとうという意味も込められていたように感じた。
走り続けている時には見えないものもある。止まることで見えるものや、止まったからこそ解放されるものが、確かにある。去年のELLEGARDENやthe telephonesの活動休止からの復活は自分にそれを実感させてくれた。
「銀魂」の主題歌が突出して売れまくっただけに、DOESも何かしら悩んでいたりしたことは間違いなくあったと思う。でも止まったからこそ、そうしたものに囚われなくてもよくなった。だからこそ、ワタルはかつてのギラつきぷりは一切ない、穏やかで楽しそうな表情で演奏していた。今ならきっと止まる前よりも楽しくバンドができるはず。その姿を一回きりではなくて当たり前のように見ることができるようになるのは、決して遠い未来の話ではないと思う。
だって、つまんないよ これで終わりなんてさ。
1.明日は来るのか
2.曇天
3.KNOW KNOW KNOW
4.三月
5.レイジー・ベイビー
6.修羅
7.バクチ・ダンサー
修羅
https://youtu.be/kBQmuw3CYnE
・a flood of circle [ELEPHANT STAGE]
そしていよいよこのロックンロールなイベントを主催した、a flood of circleがこの日をさらに最高な1日にするべく、トリのステージに上がる。
出で立ちとしては特別な感じのない4人がステージに登場すると、
「おはようございます、a flood of circleです」
という亮介のおなじみの挨拶から、
「サーカスにようこそ!」
と言ったので、昨年も演奏されたサーカスソング「フェルディナン・グリフォン・サーカス」で始まるのかと思いきや、「Flayer's Waltz」からスタート。確かに
「空中ブランコ 宙を舞う」
というフレーズなどこの曲もサーカス感の強い曲であるが、
「飛べない鳥たちが空をぶっ飛んでいく」
というサビに合わせるかのように観客は次々と空を飛んでいく。それくらいに初っ端からバンドの演奏は熱量に満ちているし、それはこの日出演したバンドたちから受け取ったものの強さの証明でもある。
この日はTHE KEBABSで出演した田淵智也がプロデュースした「ミッドナイト・クローラー」、ライブバージョンで追加されたアウトロで青木テツに加え、
「紹介します、ギター俺!」
と亮介もギターソロをぶっ放す「Dancing Zombiez」と続くと、一丘が絶好調なドラムソロを披露した後に亮介がギターを下ろしてハンドマイク状態になって歌う「Sweet Home Battle Field」では最後に客席に突入して観客に支えられながら立ち上がって熱唱。ここまで見事に立つことができるのは他にBRAHMANのTOSHI-LOWとキュウソネコカミのセイヤくらいだろうか。歌い終わるとそのまま倒れるようにして支えられながらステージに戻るというのはこの男くらいしかやっていないことであるが。
「友達がいなくなっちゃったりするけど、願えばなんでもできる。今年DOES呼べたから。人類は月に行ったことだってあるんだぜ」
と語ってから歌い始めたのは美しいメロディのラブソング「Honey Moon Song」。
「月まで届くように叫んでる」
と歌うこの曲は、この日は他のバンドたち同様にこのバンドも世話になった、COMING KOBE主催者の松原裕や対バンをしたこともあるwowaka(HISAYOはツイッターでコメントをしていた)ら、空の上に行ってしまった人たちに届くように歌っているようだった。演奏された時の状況やタイミングによって曲の持つ意味は変容する。この日の「Honey Moon Song」はフラッドの曲が間違いなくそうした力を持っていることを証明していた。
「3月にアルバムが出たばっかりなのに、今月にアルバムと全く関係ないシングルが出るっていう(笑)
生き急ぎすぎとか言われることもあるけど、これが俺たちのペースだから!」
と改めてそのリリースペース、活動ペースの速さが自分たちにとって当たり前のことであることを表明したが、それはメジャーデビューした年にフルアルバムを2枚リリースした(しかも1枚目をリリースした直後にメンバーがいなくなっている)時から全く変わっていない。
そしてそのハイペースさでリリースされるシングルのタイトル曲「The Key」を披露したのだが、すでに放送開始しているアニメ「群青のマグメル」のタイアップとして聴いた時も感じたのだが、今のフラッドは過去最高にバンドそのものが拓けてきている。感触としては「NEW TRIBE」のように新たな場所へ向かおうとしている曲であるが、「The Key」では向かうというよりも新しい世界を自分たちで作ろうとしているかのような。
亮介は先月リリースのアルバム「CENTER OF THE EARTH」のインタビューで、
「ロック生き延ばしっていうよりも、ぶっ壊して新しく作った方が良いんじゃないかって」
と言っていたが、そのぶっ壊した後のロックの世界に最初に流れていて欲しいのがこの「The Key」だ。それはある意味ではスタイルの固まったように見えるロックンロールというジャンルの新たな間口の広さにもつながるはず。デビューして10年を過ぎても、こうして新しい曲が出るたびにバンドに新しい可能性を感じることができる。そんなバンドは実はあんまりいないし、だから我々はフラッドにまだまだ夢を見ている。
亮介はメンバー1人1人に話を振るのだが、去年のこのイベントで正式にバンドに加入したテツは
「なんか、デジャヴみたいだ(笑)」
とこのステージで亮介に話しかけられたことを去年のこのステージで
「入る?」
と言われた時に重ね合わせていた。あれから1年。この1年間はフラッドにとって、今のこの4人が最強のフラッドだということを証明するためのものだった。それはその姿を見てきた人たちにはちゃんと伝わっていると思うし、このバンドに骨を埋める決意をしてくれたテツにはファンみんなが感謝している。
HISAYOはまだこの日ビールを飲んでいないらしく、
「このイベント、最初に出たい(笑)ライブ終わってからビール飲みながらみんなのライブが見たい(笑)」
と話すと、一丘は
「みんな、疲れてないですか?……疲れたって言ったら「まだまだ疲れてんじゃねぇ!」って言ってテンション上げようとしたんだけど、まだ行けそうだね。作戦は失敗しました(笑)」
と何気に喋るのがちょっと上手くなったような成長を感じさせる。
すると亮介は
「まだまだ行けんだろ!」
と思いっきり煽るように超高速化した「The B eautiful Monkeys」を演奏し、この日最高潮の盛り上がりを見せると、さらにテンションを上げるべく、「CENTER OF THE EARTH」からタイトルそのまんまのただただハイテンションになるための曲でありながらそれはロックンロールの真髄そのものであるというのがライブで聴くとよくわかる「ハイテンションソング」でさらにテンションを上げると、メンバーがドラムセットの前に集まって複雑なイントロのキメを合わせる「美しい悪夢」を最後に演奏することで、まるで逆転満塁ホームランのような一発をかっ飛ばしてステージを去って行った。
アンコールで再びメンバーがステージに登場すると、亮介が来年もこのイベントをやるべく、出演者に象を入れたり、空中ブランコを入れたいというさらなる夢を語ると、
「DOESを出すっていう野望が今年叶ったんで。俺はずっとプリティを待ってる」
と、不慮の事故によってまだライブに出ることができないプリティが揃った4人でのgo! go! vanillasを来年はこのイベントに呼びたいという野望を語り、最新アルバムのタイトル曲である「Center Of The Earth」を演奏。
「サンキューベイビー 本当におめでとう 大好きだよ」
というビックリするくらいに素直というか、ストレートな歌詞はフラッドから我々ファンにとって、そしてファンからフラッドにとってのフレーズでもある。
とはいえ季節柄、「春の嵐」が聴けると思っていたのだが、最後に演奏されたのはやはり「シーガル」で亮介がマイクを離れるとサビでは大合唱が起こった。いろんなバンドのファンがいたであろうこの日の中でも、この曲での合唱が1番大きかった。やはりこの日の主役はフラッドだったのだ。
フラッドは何度となく形を変えながら、今が最高だということをずっと自分たちの力で証明してきたバンドだ。この日は出演者たちのロックバンドへの愛とフラッドへの愛がそれをさらに増幅させていた。つまりこの日はやっぱりこれまでの中で最高だったし、それはこれからも更新され続けていく。前週に04 Limited Sazabysが主催フェスを広い会場でやっているのを見ているだけに、フラッドにもいつかあんな場所でこのイベントをやって欲しいし、絶対にやれる力がこのバンドにはある。それをずっと信じてきたから10年以上、どんなに形が変わることがあっても着いてきたんだ。その生きるペースや生きてきた軌跡は普通の人から見たら紛れもなく異常というかまともではないけれど、まともじゃなくても 大好きだよ。またすぐに始まるワンマンツアーで。
1.Flyer's Waltz
2.ミッドナイト・クローラー
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.Honey Moon Song
6.The Key
7.The Beautiful Monkeys
8.ハイテンションソング
9.美しい悪夢
encore
10.Center Of The Earth
11.シーガル
Center Of The Earth
https://youtu.be/7w1GhWCzehw
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9mm Parabellum Bullet 〜15th Anniversary 「東西フリーライブ」 @日比谷野外音楽堂 4/14 ホーム
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