ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2019 「ホームタウン」 フロントアクト:MONO NO AWARE @Zepp Tokyo 4/8
- 2019/04/11
- 22:40
昨年12月にニューアルバム「ホームタウン」をリリースした、アジカンことASIAN KUNG-FU GENERATION。ツアーが始まる前から年末のフェスから春のイベントでアルバムの収録曲を披露していたが、先月から始まったリリースツアーはライブハウスから始まり、ホールツアーは7月まで続くという長丁場。(近年のアジカンのツアーは本数が非常に多い)
すでに東京でも先月に恵比寿リキッドルームでツアーを行っているが、この日はZepp Tokyoでの2daysの初日。やはり近年のツアーではおなじみとなっているフロントアクトはMONO NO AWARE。
・MONO NO AWARE
石毛輝のYap!!!が初ライブを下北沢で行った時の対バンがこのバンドだったので、ライブを見るのは2回目。その間にはフジロックに出たり、米津玄師が曲を聴いて「最高」とツイートしたりと、随分と状況は変わりつつある。
機材がいたってシンプルなだけにZeppのステージがやたらと広く感じる中で4人がステージに現れると、「me to me」のサイケデリックなサウンドが会場を包み込んで行く。前に見た時はひたすらにシュールな歌詞のシティポップバンドというイメージだったが、それにとどまらない音楽性の広がりを1曲目にして感じさせてくれる。
「ジャワカレー」「二段熟カレー」
などの今までその商品のCMでしか歌詞に使われたことがないであろうフレーズが満員のZeppの観客を「?」の海に叩き込む、でもやたらとポップであるがゆえに頭にこびりついて離れなくなる「マンマミーヤ!」はすでにこのバンドの代表曲と言っていい曲であり、やはりこのバンドはこうした「何をどう考えたらこんな歌詞が書けるのか」と思うくらいにシュールな歌詞のバンドというイメージが強い。
「僕は中学生の頃によくラジオを聞いてまして。SCHOOL OF LOCK!という番組をよく聞いていたんですが、その番組の講師がアジカンのみなさんで。後藤さんは当時から海外のバンドであったり、日本のインディーズバンドであったりと自分たちの好きな音楽を紹介していました。それで知った音楽も多いです。
僕はそうしてアジカンに出会ったわけですけども、今日こうしてここに来ているみなさんもそれぞれにアジカンと出会ったエピソードがあるわけで、今日は1人ずつそれを意見交換していきたいのですが、そうすると時間がいくらあっても足りないわけで…」
と緊張感とかを一切感じさせないくらいに饒舌な玉置周啓(ボーカル&ギター)のMCにクスクスと笑い声も起こりながら、
「この人、めちゃくちゃ面白い人なんじゃないか?」
という期待が高まっていくと、
「早くアジカンを見たくて仕方がない皆さんですが、もう少し我々のライブを見なくてはいけない。それは仕方ないですよね。それを了承した上で今日のチケットを発券して今ここにいるわけですから。チケットはどうやって発券したんでしょうか。やはりコンビニとかでしょうか」
という追い討ちをかけるようなMCでドッと笑いが起こる。アジカンは近年はこうしたポップな若手バンドをフロントアクトに招くことが増えているが、その中でも爪痕の残し具合は随一と言っていいかもしれない。
「残り3曲、怒涛のテンションでお送りしたいと思います」
という言葉を全く怒涛感のない飄々とした口ぶりで言うと、玉置のボーカルに加藤成順(ギター)、竹田綾子(ベース)、柳澤豊(ドラム)のコーラスが重なる、ロックなサウンドの「轟々雷音」、東京は東京でもかなり遠く離れた八丈島出身の玉置が描くことで東京23区育ちの人が描く東京とも、地方出身者が描く東京ともまた違う「東京」、そして最後は玉置がギターをパントマイムの道具のように使う姿が実にシュールかつ不気味にすら感じてしまう「イワンコッチャナイ」。
シュールだ、シュールだと書いてきたが、ライブ自体は前に見た時よりもはるかに良くなっていた。音楽性の拡張はライブの流れを作ることにもプラスになっているし、何よりも玉置のキャラクターが楽曲にそのまま結びついているのがよくわかるようになった。決してわかりやすいバンドではないが、一度見たら絶対忘れられないインパクトを放っている。
1.me to me
2.マンマミーヤ!
3.轟々雷音
4.東京
5.イワンコッチャナイ
マンマミーヤ!
https://youtu.be/UzvRfNicSgY
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしてアジカン。SEなしで登場するのも、サポートメンバーにシモリョー(the chef cooks me)を加えた5人編成なのも近年おなじみのもの。
メンバーが楽曲を持つとトラック的なサウンドの中、ゴッチの淡々とした、でも確かな体温を感じさせる「UCLA」からスタートするというちょっと意外な展開。サビで一気に視界が開けるかのようにメロディが解き放たれると、
「ASIAN KUNG-FU GENERATION
HOMETOWN TOUR」
という電飾が一気に明るくなった照明に照らされて輝き出す。「ホームタウン」ツアーの始まりを宣言するかのように。
アルバムのツアーということで「ホームタウン」で獲得した新たなサウンドである、日本のロックバンドとしての音の良さをどうライブという場所でも見せていくかというのが今回のツアー最大の焦点になるわけだが、NO NUKESなどでライブを見た時も感じたように、やはりサウンドは非常にクリア。特に伊地知潔のドラムからそれを強く感じるが、かつての「ブルートレイン」をはじめとした「ファンクラブ」期のような難しい手数の多い曲はほとんどなく、むしろリズム自体は「モータープール」も「ダンシングガール」も実にシンプルな曲たちであるがゆえにより一層一つ一つの音がダイレクトに、しっかり耳と心に届いてくるし、ゴッチと喜多建介のギターとシモリョーのキーボードも、重なり合いながらも誰が何の音を弾いているのかが今までよりもハッキリとわかる。アルバムで刷新したロックバンドの新たなサウンドはライブという場でも確かに変化・進化を見せている。
ゴッチがおなじみの
「ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。みんな踊ったり歌ったり、好きに楽しんで」
と軽く挨拶してからアルバムのタイトル曲である「ホームタウン」をゴッチが両手を揺らしたりして自身が率先して自由に楽しむ姿を示すと、「ループ&ループ」からは過去曲も演奏されていき、最新作と過去曲の融合をライブという場で見せてくれる。
「ホームタウン」にも収録された「荒野を歩け」では間奏で喜多が片足を高く上げて渾身のギターソロを弾くと、過去曲である「ライカ」に続いていくのだが、ゴッチの歌い出しとバンドの演奏のリズムが明らかに合っておらず、「あれ?」という空気に。それを理解した喜多と山田は伊地知のドラムセットに寄っていき、ゴッチも3人のその姿を見ると、一瞬だけ音が小さくなったので「一回止めてやり直すのかな」と思ったのだが、すぐにタイミングを合わせてそのまま演奏を続けた。
それぞれの顔を見るだけでどうすればいいのか、みんなはどうしたいのかがわかる。必ずしもずっとメンバー間が親密なバンドではなかったし、むしろ真逆な空気感を感じたことすらあったけど、アジカンはずっとこの4人でバンドを続けてきた。だからこそこの4人でしかわからないことがある。本人たちは100%の演奏を見せられなくて悔しかったかもしれないが、それ故に確かに感じることができるものがあった。
アジカンは近年のツアーでは「最新作の曲+代表・定番曲」という内容にはならず、むしろ最新作の曲以外はかなりのレア曲を演奏することが多いバンドなのだが、今回もかつてリリース直後(「或る街の群青」のカップリングとして)にROCK IN JAPAN FES.で演奏したら客席が凍りつき、メンバーが「ひたちなかショック」と言うくらいの衝撃をもたらした「鵠沼サーフ」が披露されたのだが、この曲が収録された「サーフ ブンガク カマクラ」と「ホームタウン」は非常にサウンドのテイストが近い(どちらもパワーポップを標榜して作られたアルバムだ)だけに、まとまりが非常にいいし、ホールツアーではこのアルバムの曲が多く演奏されるんじゃないかという期待が高まる。
「スモークが煙い(笑)これ身体には害はないの?(笑)
俺はデビューする時にタバ子っていう彼女と別れたんだけど(笑)、建ちゃんとかみんながスパスパ吸うからさぁ。副流煙とか吸い込んでたら別れた意味あんのかなって(笑)」
とMCで他のメンバーをいじるのは変わらないが、今やゴッチはエッサイなど多数の著作を発表している、ロックバンド界随一の文豪と言ってもいい存在となっているが、それは歌詞の面でも同様。今回の「ホームタウン」においては「刷新されたサウンドに耳が行きがちなのでサラッと聴けるが実はかなり社会や世界に対して言いたいことを詰め込んでいる」というものになっており、それを強く感じさせるのは「サーカス」の
「滑舌の悪い彼のスピーチが終わるころ出口で会いましょう」
というフレーズ。自分はこのフレーズからは現政権(というか現首相)が退陣した時のことを描いていると思っている。それは歌詞カードをしっかり見ないとわからないことだが、明確にそれを言うというよりもちゃんと聴くとそう聴こえるという書き方をしているあたりは決して誰も置いていかないようにしようとしているゴッチなりの歌詞への向き合い方を感じる。
続く「夕暮れの紅」は「リライト」のカップリングというレア曲だが、この曲もまた「ホームタウン」の曲の並びと違和感なく溶け込んでいる。そこには細かいアレンジを変えたりというバンドなりの工夫もあってのことだと思うけれど。
「ホームタウン」の幕開けを静かに飾る「クロックワーク」はここで披露され、「レインボーフラッグ」ではタイトル通りに背面の電飾が七色に次々と光を変えていく。「Wonder Future」ツアーのプロジェクションマッピングのようなド派手な演出ではなく、あくまで曲に合わせて演奏を引き立てるようにしているのはライブハウスであるが故だろうか。それは「ホームタウン」というアルバムの内容に近しいものであるが、だとするとツアー後半のホールではまた違う演出が見れるのかもしれない。
近年はワンマンでは「リライト」や「君という花」もアンコールでやるかどうかというくらいにシングル曲の扱いが変わってきているのだが、今回はシングルの中でも「迷子犬と雨のビート」「踵で愛を打ち鳴らせ」というポップな曲が選ばれたのも「ホームタウン」のシンプルだがクリアなサウンドに合わせてのものだと思われる。
「MONO NO AWARE、良かったよね。ラジオ聞いてくれてたって。でも俺たちも「中学生の時に聴いてました!」って好きなアーティストに会うと言っちゃうんだけど、過去形にするのは良くないよね。ユニコーンのテッシーさん(手島いさむ)に会った時に「青春でした!」って言ったら、「今も青春じゃろがい!」って言われて(笑)
だからMONO NO AWAREみたいに、みんながそれぞれ我々と出会ったキッカケについて意見交換をしたいのだけれど、そうすると時間がいくらあっても足りないので…(笑)」
とMONO NO AWAREの玉置のMCを引用して爆笑を巻き起こしてから、今のアジカンによる反戦歌(決してストレートに「戦争反対」というのではなく)「さよならソルジャー」の真摯な祈りが胸を打つと、ライブならではのイントロアレンジが再録版としてシングルリリースされた「Re:Re:」でのゴッチの気合いの入ったカウントがラストスパートを告げてから「アンダースタンド」へ。
10代の頃からこの曲のイントロで叫んでいた「イェー!」というフレーズを今でも叫ぶことができている。あの頃と変わらぬ4人でアジカンはずっと走り続けている。当時はまだ若手、今ではベテランと言っていい位置にまで来ているけれど、この曲をライブで聴けた時の喜びはずっと変わっていない。
そして本編最後は最近のフェスやイベントでもライブの締めとしておなじみになってきている「ボーイズ&ガールズ」をここにいた全てのボーイズ&ガールズに向けて鳴らして、5人はステージを去っていった。
アジカンのアンコールは近年のツアーではメンバーの中の一人がやりたい曲を決める当番制となっているのだが、この日の当番はギターの喜多。
「今日はアンコールちょっと長いです」
とゴッチが言うと、この日は全くなかったソリッドなギターロックタイプの「Easter」、さらには「Standard」という曲が続く。フェスやイベントでは定番になっている曲ではあるが、それを選んだのは喜多がこれらの曲がファンに人気があるという意識なのか、「ホームタウン」のサウンドに合わせた本編への反動によるものか。
少し前まではライブの締めとして定番であった「今を生きて」もこのツアーでは当番制アンコールの曲として演奏されたのだが、この日のこの曲は今まで以上に気持ちがこもっていた。シモリョーのタンバリンを振る姿もいつにも増して激しく、メンバーの音を鳴らす姿、ゴッチの歌う姿も本気で目の前にいる人たちに「今を生きて欲しい」と思って演奏している。そんなように見えた。
だから演奏を終えるとゴッチは、
「生きてれば後悔することもたくさんある。でも生きてれば取り返すことができる。生きてこそ。音楽大好きな人が死んじゃったりとかいろいろあるけれど」
と語った。この話をしている時、それまでと明らかに空気が変わった。みんな、なんでゴッチがこういうことを言っているのかをちゃんと理解していた。アジカンを好きな人たちはみんな音楽が好きだから、音楽シーン、ましてやバンドシーンにおいてこの日に悲しいニュースがあったことを知っていたはずだ。だからゴッチの言葉を絶対に聞き逃さないようにしていた。もし生きていたらいつかアジカンと交わることがあったかもしれない人が居なくなってしまったことに思いを馳せながら。アジカンのメンバーたちだって自分たちよりもずっと年下の音楽が大好きな人が亡くなってしまったのは悲しくて仕方がないはずだ。
アジカンだって続かないかもしれないと思ったことは一度や二度じゃない。メンバー間の空気がかなり緊張感に満ちたというか、ピリピリしたように感じたことも何度かあった。それでもアジカンは止まらなかった。こうして生き続けてきた。それはアジカンを聴き続けて生きてきた我々もそうだ。生き続けてきたからこうして会うことができる。まだまだ死ねない理由がそうして増えていく。
だからゴッチは最後に演奏された新曲「解放区」のポエトリーリーディング部分で何度も
「生きてこそ」
と繰り返した。NO NUKESで演奏された時はそんなことを口にしてはいなかった。
「写真には映らないものもあるんだぜ?」
とアンコールが写真撮影OKであることを告げた瞬間にスマホを連写していた観客に告げたが、「解放区」の演奏はその言葉を自らの身をもって示しているかのようだった。
演奏を終えると5人はステージ前に並んで一礼した。ゴッチのピックはいつものように遠くへ飛んだ。なんだか、アジカンを聴いていれば我々はもっと遠いところまで行けるかのように。そう、ツアーはまだまだ始まったばかりなのだ。
1.UCLA
2.モータープール
3.ダンシングガール
4.ホームタウン
5.ループ&ループ
6.荒野を歩け
7.ライカ
8.鵠沼サーフ
9.サーカス
10.夕暮れの紅
11.クロックワーク
12.レインボーフラッグ
13.迷子犬と雨のビート
14.踵で愛を打ち鳴らせ
15.さよならソルジャー
16.Re:Re:
17.アンダースタンド
18.ボーイズ&ガールズ
encore
19.Easter
20.Standard
21.今を生きて
22.解放区
ホームタウン
https://youtu.be/7z-7klgUSyU
Next→ a flood of circle presents a flood of circus @TSUTAYA O-EAST
すでに東京でも先月に恵比寿リキッドルームでツアーを行っているが、この日はZepp Tokyoでの2daysの初日。やはり近年のツアーではおなじみとなっているフロントアクトはMONO NO AWARE。
・MONO NO AWARE
石毛輝のYap!!!が初ライブを下北沢で行った時の対バンがこのバンドだったので、ライブを見るのは2回目。その間にはフジロックに出たり、米津玄師が曲を聴いて「最高」とツイートしたりと、随分と状況は変わりつつある。
機材がいたってシンプルなだけにZeppのステージがやたらと広く感じる中で4人がステージに現れると、「me to me」のサイケデリックなサウンドが会場を包み込んで行く。前に見た時はひたすらにシュールな歌詞のシティポップバンドというイメージだったが、それにとどまらない音楽性の広がりを1曲目にして感じさせてくれる。
「ジャワカレー」「二段熟カレー」
などの今までその商品のCMでしか歌詞に使われたことがないであろうフレーズが満員のZeppの観客を「?」の海に叩き込む、でもやたらとポップであるがゆえに頭にこびりついて離れなくなる「マンマミーヤ!」はすでにこのバンドの代表曲と言っていい曲であり、やはりこのバンドはこうした「何をどう考えたらこんな歌詞が書けるのか」と思うくらいにシュールな歌詞のバンドというイメージが強い。
「僕は中学生の頃によくラジオを聞いてまして。SCHOOL OF LOCK!という番組をよく聞いていたんですが、その番組の講師がアジカンのみなさんで。後藤さんは当時から海外のバンドであったり、日本のインディーズバンドであったりと自分たちの好きな音楽を紹介していました。それで知った音楽も多いです。
僕はそうしてアジカンに出会ったわけですけども、今日こうしてここに来ているみなさんもそれぞれにアジカンと出会ったエピソードがあるわけで、今日は1人ずつそれを意見交換していきたいのですが、そうすると時間がいくらあっても足りないわけで…」
と緊張感とかを一切感じさせないくらいに饒舌な玉置周啓(ボーカル&ギター)のMCにクスクスと笑い声も起こりながら、
「この人、めちゃくちゃ面白い人なんじゃないか?」
という期待が高まっていくと、
「早くアジカンを見たくて仕方がない皆さんですが、もう少し我々のライブを見なくてはいけない。それは仕方ないですよね。それを了承した上で今日のチケットを発券して今ここにいるわけですから。チケットはどうやって発券したんでしょうか。やはりコンビニとかでしょうか」
という追い討ちをかけるようなMCでドッと笑いが起こる。アジカンは近年はこうしたポップな若手バンドをフロントアクトに招くことが増えているが、その中でも爪痕の残し具合は随一と言っていいかもしれない。
「残り3曲、怒涛のテンションでお送りしたいと思います」
という言葉を全く怒涛感のない飄々とした口ぶりで言うと、玉置のボーカルに加藤成順(ギター)、竹田綾子(ベース)、柳澤豊(ドラム)のコーラスが重なる、ロックなサウンドの「轟々雷音」、東京は東京でもかなり遠く離れた八丈島出身の玉置が描くことで東京23区育ちの人が描く東京とも、地方出身者が描く東京ともまた違う「東京」、そして最後は玉置がギターをパントマイムの道具のように使う姿が実にシュールかつ不気味にすら感じてしまう「イワンコッチャナイ」。
シュールだ、シュールだと書いてきたが、ライブ自体は前に見た時よりもはるかに良くなっていた。音楽性の拡張はライブの流れを作ることにもプラスになっているし、何よりも玉置のキャラクターが楽曲にそのまま結びついているのがよくわかるようになった。決してわかりやすいバンドではないが、一度見たら絶対忘れられないインパクトを放っている。
1.me to me
2.マンマミーヤ!
3.轟々雷音
4.東京
5.イワンコッチャナイ
マンマミーヤ!
https://youtu.be/UzvRfNicSgY
・ASIAN KUNG-FU GENERATION
そしてアジカン。SEなしで登場するのも、サポートメンバーにシモリョー(the chef cooks me)を加えた5人編成なのも近年おなじみのもの。
メンバーが楽曲を持つとトラック的なサウンドの中、ゴッチの淡々とした、でも確かな体温を感じさせる「UCLA」からスタートするというちょっと意外な展開。サビで一気に視界が開けるかのようにメロディが解き放たれると、
「ASIAN KUNG-FU GENERATION
HOMETOWN TOUR」
という電飾が一気に明るくなった照明に照らされて輝き出す。「ホームタウン」ツアーの始まりを宣言するかのように。
アルバムのツアーということで「ホームタウン」で獲得した新たなサウンドである、日本のロックバンドとしての音の良さをどうライブという場所でも見せていくかというのが今回のツアー最大の焦点になるわけだが、NO NUKESなどでライブを見た時も感じたように、やはりサウンドは非常にクリア。特に伊地知潔のドラムからそれを強く感じるが、かつての「ブルートレイン」をはじめとした「ファンクラブ」期のような難しい手数の多い曲はほとんどなく、むしろリズム自体は「モータープール」も「ダンシングガール」も実にシンプルな曲たちであるがゆえにより一層一つ一つの音がダイレクトに、しっかり耳と心に届いてくるし、ゴッチと喜多建介のギターとシモリョーのキーボードも、重なり合いながらも誰が何の音を弾いているのかが今までよりもハッキリとわかる。アルバムで刷新したロックバンドの新たなサウンドはライブという場でも確かに変化・進化を見せている。
ゴッチがおなじみの
「ASIAN KUNG-FU GENERATIONです。みんな踊ったり歌ったり、好きに楽しんで」
と軽く挨拶してからアルバムのタイトル曲である「ホームタウン」をゴッチが両手を揺らしたりして自身が率先して自由に楽しむ姿を示すと、「ループ&ループ」からは過去曲も演奏されていき、最新作と過去曲の融合をライブという場で見せてくれる。
「ホームタウン」にも収録された「荒野を歩け」では間奏で喜多が片足を高く上げて渾身のギターソロを弾くと、過去曲である「ライカ」に続いていくのだが、ゴッチの歌い出しとバンドの演奏のリズムが明らかに合っておらず、「あれ?」という空気に。それを理解した喜多と山田は伊地知のドラムセットに寄っていき、ゴッチも3人のその姿を見ると、一瞬だけ音が小さくなったので「一回止めてやり直すのかな」と思ったのだが、すぐにタイミングを合わせてそのまま演奏を続けた。
それぞれの顔を見るだけでどうすればいいのか、みんなはどうしたいのかがわかる。必ずしもずっとメンバー間が親密なバンドではなかったし、むしろ真逆な空気感を感じたことすらあったけど、アジカンはずっとこの4人でバンドを続けてきた。だからこそこの4人でしかわからないことがある。本人たちは100%の演奏を見せられなくて悔しかったかもしれないが、それ故に確かに感じることができるものがあった。
アジカンは近年のツアーでは「最新作の曲+代表・定番曲」という内容にはならず、むしろ最新作の曲以外はかなりのレア曲を演奏することが多いバンドなのだが、今回もかつてリリース直後(「或る街の群青」のカップリングとして)にROCK IN JAPAN FES.で演奏したら客席が凍りつき、メンバーが「ひたちなかショック」と言うくらいの衝撃をもたらした「鵠沼サーフ」が披露されたのだが、この曲が収録された「サーフ ブンガク カマクラ」と「ホームタウン」は非常にサウンドのテイストが近い(どちらもパワーポップを標榜して作られたアルバムだ)だけに、まとまりが非常にいいし、ホールツアーではこのアルバムの曲が多く演奏されるんじゃないかという期待が高まる。
「スモークが煙い(笑)これ身体には害はないの?(笑)
俺はデビューする時にタバ子っていう彼女と別れたんだけど(笑)、建ちゃんとかみんながスパスパ吸うからさぁ。副流煙とか吸い込んでたら別れた意味あんのかなって(笑)」
とMCで他のメンバーをいじるのは変わらないが、今やゴッチはエッサイなど多数の著作を発表している、ロックバンド界随一の文豪と言ってもいい存在となっているが、それは歌詞の面でも同様。今回の「ホームタウン」においては「刷新されたサウンドに耳が行きがちなのでサラッと聴けるが実はかなり社会や世界に対して言いたいことを詰め込んでいる」というものになっており、それを強く感じさせるのは「サーカス」の
「滑舌の悪い彼のスピーチが終わるころ出口で会いましょう」
というフレーズ。自分はこのフレーズからは現政権(というか現首相)が退陣した時のことを描いていると思っている。それは歌詞カードをしっかり見ないとわからないことだが、明確にそれを言うというよりもちゃんと聴くとそう聴こえるという書き方をしているあたりは決して誰も置いていかないようにしようとしているゴッチなりの歌詞への向き合い方を感じる。
続く「夕暮れの紅」は「リライト」のカップリングというレア曲だが、この曲もまた「ホームタウン」の曲の並びと違和感なく溶け込んでいる。そこには細かいアレンジを変えたりというバンドなりの工夫もあってのことだと思うけれど。
「ホームタウン」の幕開けを静かに飾る「クロックワーク」はここで披露され、「レインボーフラッグ」ではタイトル通りに背面の電飾が七色に次々と光を変えていく。「Wonder Future」ツアーのプロジェクションマッピングのようなド派手な演出ではなく、あくまで曲に合わせて演奏を引き立てるようにしているのはライブハウスであるが故だろうか。それは「ホームタウン」というアルバムの内容に近しいものであるが、だとするとツアー後半のホールではまた違う演出が見れるのかもしれない。
近年はワンマンでは「リライト」や「君という花」もアンコールでやるかどうかというくらいにシングル曲の扱いが変わってきているのだが、今回はシングルの中でも「迷子犬と雨のビート」「踵で愛を打ち鳴らせ」というポップな曲が選ばれたのも「ホームタウン」のシンプルだがクリアなサウンドに合わせてのものだと思われる。
「MONO NO AWARE、良かったよね。ラジオ聞いてくれてたって。でも俺たちも「中学生の時に聴いてました!」って好きなアーティストに会うと言っちゃうんだけど、過去形にするのは良くないよね。ユニコーンのテッシーさん(手島いさむ)に会った時に「青春でした!」って言ったら、「今も青春じゃろがい!」って言われて(笑)
だからMONO NO AWAREみたいに、みんながそれぞれ我々と出会ったキッカケについて意見交換をしたいのだけれど、そうすると時間がいくらあっても足りないので…(笑)」
とMONO NO AWAREの玉置のMCを引用して爆笑を巻き起こしてから、今のアジカンによる反戦歌(決してストレートに「戦争反対」というのではなく)「さよならソルジャー」の真摯な祈りが胸を打つと、ライブならではのイントロアレンジが再録版としてシングルリリースされた「Re:Re:」でのゴッチの気合いの入ったカウントがラストスパートを告げてから「アンダースタンド」へ。
10代の頃からこの曲のイントロで叫んでいた「イェー!」というフレーズを今でも叫ぶことができている。あの頃と変わらぬ4人でアジカンはずっと走り続けている。当時はまだ若手、今ではベテランと言っていい位置にまで来ているけれど、この曲をライブで聴けた時の喜びはずっと変わっていない。
そして本編最後は最近のフェスやイベントでもライブの締めとしておなじみになってきている「ボーイズ&ガールズ」をここにいた全てのボーイズ&ガールズに向けて鳴らして、5人はステージを去っていった。
アジカンのアンコールは近年のツアーではメンバーの中の一人がやりたい曲を決める当番制となっているのだが、この日の当番はギターの喜多。
「今日はアンコールちょっと長いです」
とゴッチが言うと、この日は全くなかったソリッドなギターロックタイプの「Easter」、さらには「Standard」という曲が続く。フェスやイベントでは定番になっている曲ではあるが、それを選んだのは喜多がこれらの曲がファンに人気があるという意識なのか、「ホームタウン」のサウンドに合わせた本編への反動によるものか。
少し前まではライブの締めとして定番であった「今を生きて」もこのツアーでは当番制アンコールの曲として演奏されたのだが、この日のこの曲は今まで以上に気持ちがこもっていた。シモリョーのタンバリンを振る姿もいつにも増して激しく、メンバーの音を鳴らす姿、ゴッチの歌う姿も本気で目の前にいる人たちに「今を生きて欲しい」と思って演奏している。そんなように見えた。
だから演奏を終えるとゴッチは、
「生きてれば後悔することもたくさんある。でも生きてれば取り返すことができる。生きてこそ。音楽大好きな人が死んじゃったりとかいろいろあるけれど」
と語った。この話をしている時、それまでと明らかに空気が変わった。みんな、なんでゴッチがこういうことを言っているのかをちゃんと理解していた。アジカンを好きな人たちはみんな音楽が好きだから、音楽シーン、ましてやバンドシーンにおいてこの日に悲しいニュースがあったことを知っていたはずだ。だからゴッチの言葉を絶対に聞き逃さないようにしていた。もし生きていたらいつかアジカンと交わることがあったかもしれない人が居なくなってしまったことに思いを馳せながら。アジカンのメンバーたちだって自分たちよりもずっと年下の音楽が大好きな人が亡くなってしまったのは悲しくて仕方がないはずだ。
アジカンだって続かないかもしれないと思ったことは一度や二度じゃない。メンバー間の空気がかなり緊張感に満ちたというか、ピリピリしたように感じたことも何度かあった。それでもアジカンは止まらなかった。こうして生き続けてきた。それはアジカンを聴き続けて生きてきた我々もそうだ。生き続けてきたからこうして会うことができる。まだまだ死ねない理由がそうして増えていく。
だからゴッチは最後に演奏された新曲「解放区」のポエトリーリーディング部分で何度も
「生きてこそ」
と繰り返した。NO NUKESで演奏された時はそんなことを口にしてはいなかった。
「写真には映らないものもあるんだぜ?」
とアンコールが写真撮影OKであることを告げた瞬間にスマホを連写していた観客に告げたが、「解放区」の演奏はその言葉を自らの身をもって示しているかのようだった。
演奏を終えると5人はステージ前に並んで一礼した。ゴッチのピックはいつものように遠くへ飛んだ。なんだか、アジカンを聴いていれば我々はもっと遠いところまで行けるかのように。そう、ツアーはまだまだ始まったばかりなのだ。
1.UCLA
2.モータープール
3.ダンシングガール
4.ホームタウン
5.ループ&ループ
6.荒野を歩け
7.ライカ
8.鵠沼サーフ
9.サーカス
10.夕暮れの紅
11.クロックワーク
12.レインボーフラッグ
13.迷子犬と雨のビート
14.踵で愛を打ち鳴らせ
15.さよならソルジャー
16.Re:Re:
17.アンダースタンド
18.ボーイズ&ガールズ
encore
19.Easter
20.Standard
21.今を生きて
22.解放区
ホームタウン
https://youtu.be/7z-7klgUSyU
Next→ a flood of circle presents a flood of circus @TSUTAYA O-EAST
a flood of circle presents A FLOOD OF CIRCUS 2019 @TSUTAYA O-EAST 4/13 ホーム
YON FES 2019 day2 @愛・地球博記念公園モリコロパーク