確か最初にライブを観たのは2022年のJAPAN JAMだった。それまでに何回かいわゆるダンス&ボーカルグループのライブは観てきたけれど、BE:FIRSTのライブは衝撃的だった。自分が大好きなロックバンドのライブを観た後のような感覚が確かにあった。それから何回かフェスでライブを観て、「フェスでこんなに凄いんならワンマンはどうなるんだろうか」と思った。そのタイミングでリリースされたアルバム「2:BE」を買って聴き、そこに封入されたツアーの先行予約を見て、行くなら今しかないなと思って今回こうして東京ドーム2daysの初日に参加。これまでに人生において何千本ライブを観てきたかわからないが、ボーカル&ダンスグループのワンマンに参加するのは人生初である。
久しぶりに野球以外(昔ミスチルのワンマンに来て以来っぷりだと思う)で来た東京ドームは本当に広い。開演前から社長のSKY-HI仕込みだと思われる宇宙人のように加工されたアナウンスからも、薄暗い中でうっすらと見えるステージセットもどこか近未来的な宇宙感を感じさせるものになっている。こんなに女性トイレだけがめちゃくちゃ並んでいるライブというのも実に久しぶりである。
開演時間の18時になった瞬間に場内がいきなり暗くなると、スクリーンにはメンバー7人が宇宙船の中で目覚める映像が映し出される。やはり今回のテーマが宇宙であることがここではっきりとわかると、音が鳴ってステージ奥の宇宙船のようなセットが左右に開くと中からまさに宇宙服のような白というか銀のような衣装を着た7人が姿を現し、SOTAが歌い始めたのは「2:BE」のオープニング曲であり、改めてこのアルバムから第二章が始まるという意志を表明するかのような「Slogan」でスタート。自分は2階スタンド席から見ていたのだが、やはりドーム特有の音の遅さのようなものは感じてしまうけれど、それでも不思議とこんなに巨大な会場の2階席でも物理的な距離の遠さを感じないのは巨大なフェス会場のステージに立つ姿を見てきたからだろうか。SOTA以外のメンバーがサングラスをかけているというあたりがより宇宙の違う星から来た生命体だということを感じさせてくれる。
そのまま背面のスクリーンに和を感じさせるR&Bというこのグループだからこその音楽性を確立させた感のある「Masterplan」へと続くというのはアルバム通りの流れであるが、歌いながら各メンバーが次々にサングラスを外していくたびに大きな歓声が上がる。アタック感抜群のラッパー的な歌唱のRYOKIは両サイドを刈り上げ、オープニング映像では金髪だったJUNONは赤に髪色を染めているという変化も見られるが、それぞれの歌唱はもちろんダンスのキレも素晴らしい。めちゃくちゃ全員が完璧に揃ってるというよりは同じ振り付けでも動き方などが少しずつ異なることによってそれぞれの個性が発揮されながらも、全員がダンスパラメータがMAXに達している動きをしているのがハッキリとわかる。アプリと連動することによって観客たちが持っているグッズのライトがまるで色のウェーブのように光るという観客がいてこのグッズがあることによって成立している演出も本当に美しくて、初めてのワンマンだから日和ってしまったけれど、あのライトを買っておけば良かったと思っていたし、2階席だからこそグラウンド部分の観客たちのライトの輝きがよりはっきりと見える。それはどの席だったとしても満足するような演出だったとも思う。
「Mainstream」のカップリング曲として収録されていた「SOS」ではそのタイトルを体全体で示すようなダンスが取り入れられているのが実に見ていて楽しいが、最年少のRYUHEIのこの曲での歌唱力は初めて観た時は本当に1人めちゃくちゃ少年っぽい人がいるなと思っていたのが本当に頼もしくなったことがその歌詞から伝わってくる。もちろん最初から歌唱はめちゃくちゃ上手かったが、なんだか少年さよりもむしろどっしりとした大人としての安定感を感じさせるようになったというか。
しかしここまではステージにはメンバー7人しかいないし、サウンドもバンドサウンドらしさはなかった(ここまでもバンド演奏だったら本当に申し訳ないが)ので、フェスでバンド編成だったのはフェスで勝負するためだったんだろうかとも思っていたら、急にどこからか明らかに生演奏でしかないような力強いリズムが聞こえてくると、背面のスクリーンの裏の高い位置にドラム、ベース、ギター&キーボードが演奏している姿がうっすらと見え、そのバンドの音に合わせるようにして炎や花火が上がりまくるのは「Scream」で、そのドーム規模でありながらもダイレクトに耳に響いてくるバンドサウンドの力強さには震えてしまうし、それはそのサウンドに乗るメンバーのラップ、特にRYOKIとSOTAのそれによってより強く感じるものである。最初に観た時は明らかにSKY-HIの影響を強く感じられるラップをしていたSOTAも完全に自分なりの表現を見つけてそれを昇華しているように見える。
MANATOによる新年初ライブだということを踏まえた挨拶はいきなり噛んでしまって本人は苦笑、メンバーはめちゃ笑ってるという構図も面白い中で演奏された「Set Sail」からは本当にここがあの音響の悪さで有名な東京ドームだろうかというくらいにその音響が全くストレスにならないように響いてくる。個人的に1番グループのまとめ役的な存在だと思っているし、野球少年だったことでドームツアーに対する感慨を人一倍持っているであろうLEOはスクリーンにアップで映ると早くも汗をめちゃくちゃかいているのが伝わる。金髪が鮮やかなSHUNTOがこの曲を歌う姿も笑顔もどこか強い青春感と爽やかさを感じさせてくれる。
そんなこのグループが持つ青春感と爽やかさをより強く感じさせてくれるのはRYUHEIが
「今日は俺と一緒にここで死んでくれー!」
とテンション上がり過ぎて爽やかさとは真逆のことを言ってしまった後の「Don't Wake Me Up」であり、「Set Sail」時からステージ左右のスクリーンの下にまで歩いて行って歌っていたメンバーたちはこの曲ではさらにその先まで行って2グループに分かれてゴンドラに乗り込んで客席の通路をそのゴンドラが通行するという、これがドームクラスでボーカルグループやアイドルグループがよくやるというやつか!とテンションが上がったのは自分はそうした存在のライブを全く通ってこなかったためにこの日人生で初めてこの演出を観たから。その結構ゆっくり進むことによってスタンド席の前方列の人に手を振ったり、ゴンドラの上でカメラ目線で歌ったりという姿も新鮮だが、「Be Free」ではスクリーンには海から山までをも飛行するという映像が映し出されるのはまさにこのゴンドラに乗っているのがそうした場所を超えて我々の目の前に来てくれるかのようであり、それが「Moment」では都会の夜景の中を飛行していくかのように映像が次々に切り替わっていく。このゴンドラに乗って歌うセクションはファーストアルバムの曲がメインになっているために、そのアルバムのツアーには行かなかった身としてはこうしてライブで聴くことができるのが嬉しい。それにしてもゴンドラに乗ってドームの客席内を一周するのは3曲分も時間がかかるのかと思ってしまうけれど、それは曲と曲をメドレーのように曲間なしで繋いでいくアレンジと、MCなしで突っ走るというこのグループのライブのスピードがゴンドラのスピードのはるか先を行っているというような。
そのゴンドラがステージまで戻ってくると、やはりこちらもファーストアルバム収録のキラキラしたポップさ、爽やかさを感じさせるような「Shining One」ではしかし間奏部分でSOTAがダンスチャンピオンとしての実力を遺憾無く発揮するようにキレキレのダンスを見せる。それがため息が出てしまうくらいに素晴らしいのは、もう体が音に連動して勝手に動いているかのようにすら見えるから。自分は全然ダンスの世界も技術的なこともわからないけれど、それでもこのSOTAのダンスが凄すぎるということだけはわかる。
ここまで「これどこまで行くの?」というくらいにノンストップで突っ走ってきたのだが、場内が暗転するとスクリーンには宇宙船から地球に降り立ったばかりのメンバーたちの様子が映し出され、映像が始まった瞬間に観客たちが一斉に座り始めるというのはまるでこの展開をわかっている人たちがたくさんいるというような。
その映像は地球の国家大臣を名乗る怪しい人物たちがメンバーの中から2人を接待したいと言ったことによって誰が行くかで揉めまくった結果、1番ちゃんと仕切ろうとしていたRYOKIがノリノリで接待されて踊っており、同行したMANATOに「結局お前かい!」とツッコミを入れられるのだが、その接待シーンの2人の地球に慣れていない異星人的な設定も、踊り子が出てきたことによってノリノリになってシーシャを吸いまくって気絶し、その隙に宇宙船の鍵を盗まれるまでの演技も実に見事で、ちゃんとこの映像が休憩時間ではなくてこのライブの物語の一部として機能している。それはさすが本名名義でいろんなドラマなどにも出演してそこで演技が評価されてきたRYOKIだなと思う。
そんな映像がこの後にどう繋がるんだ?と思っていたら、ステージにはそのRYOKIとMANATOの2人が黒い衣装に着替えて登場し、映像に出てきた「シーシャ」などの単語が歌詞に登場する回収っぷりを見せる「Selfish」を2人だけで歌うのだが、背面のスクリーンのウォールペインティング的な映像もサウンドも完全にヒップホップなこの曲をRYOKIとともにMANATOがラップ全開で歌うことによって、RYOKIとSOTAほどラップのイメージがなかったMANATOが実はめちゃくちゃラップも上手くリズミカルな歌唱ができることがすぐにわかる。その出で立ちもどこかヘッズ的な2人は曲終わりでステージ後ろに飛び込んでいくようにすると場内がそのまま暗転する。
その後にはここまでほとんど使われていなかったセンターステージの周りが1人用のリフトのように上昇し、そこにLEO、JUNON、SOTAの3人が。この3人で歌うのは「Genesis」で、野球少年だったLEOによる
「憧れるのをやめましょう
大谷さんにはなれないでしょ」
というフレーズを低いキーとトーンで歌うのが印象的な曲であるが、「Selfish」ではMANATOがラップスキルを見せたように、この曲ではSOTAが美しい歌声を持つJUNONと並んで歌える歌唱力を持つようになったことを実感させてくれる。この曲は作詞作曲ともに3人が参加しているという点ではこのグループが今では自身の歌唱パートを自分で生み出す、つまりそこにそのメンバーのパーソナリティが色濃く反映される音楽を作っていることを感じさせてくれるし、それはある意味ではグループ内ユニットとも言えるこの編成だから実感できるものだ。
そんなグループ内ユニットのラストはRYUHEIとSHUNTOの2人なのだが、なんと今度はステージ対面側、グラウンド的にはホームベースあたりのミニステージに2人が登場して観客と物理的な距離感がめちゃくちゃ近い中で「Metamorphose」を歌う。個人的にはこの曲はめちゃくちゃK-POP感が強い曲だと思っているが、歌唱からその素養を最も感じるこの2人をこの曲に当てるというあたりもさすがで、2人の歌唱力のずば抜けた上手さをじっくり体感できる曲である。曲中には左右に分かれて1人用のゴンドラに乗ってセンターステージへと移動するのだが、2人が絡み合うようなダンスの表現もまた実に妖艶だ。
そうしたグループ内ユニット的な編成でメンバー個々のポテンシャルの高さを存分に感じさせてくれると、センターステージ中央からRYUHEIとSHUNTO以外のメンバーが迫り上がってくるような形で合流して、その全員が揃って抜群のキレのダンスを見せながら歌うことによる迫力を感じさせてくれる「Mainstream」からはバンドの鳴らすサウンドもさらに強力になっているような印象すらある。それはメンバーが歌いながらメインステージに戻っていく「Milli-Billi」からダークな世界観を歌唱とサウンドで感じさせる「Guilty」と、このグループが勝負をかけた音楽性であるR&Bの要素が強い曲たちの流れに繋がっていく。
自分はロックバンドの音楽を聴いて生きてきた人間なので、正直言ってR&B的な音楽は全然通ってないし自分にとってのストライクな音楽でもない。でもこうしてこのグループのこうした曲を聴いているとただただ「カッケェな…」と思ってしまうのは作詞作曲に携わっていることも含めて曲そのものや歌唱からメンバーの生き様や信念が感じられるからだ。これがカッコいい、日本の新しいメインストリームになる音楽だと信じていて、その曲たちの力を100%以上引き出すために歌唱の力と表現を磨き続ける。そんな意志が聴いていて確かに見えてくるから、自分に馴染みがない音楽性でも心の底からカッコいいなと思うのである。
そんなカッコいい曲たちの流れの後に再びスクリーンに映像が映し出されると、宇宙船の鍵を紛失したことによってメンバーたちが情報提供を呼びかけるために記者会見を開くという映像なのだが、記者からの質問が明らかにウケ狙いばかりのものであり、RYOKIの独特な絵画のスキルや、
記者「ピッチャーとキャッチャーの間にもう一つ新しいポジションができました。その名前は?」
LEO「ヒョン…」
記者「ヒョン?その役割は?」
LEO「天候を見る…(笑)」
メンバー「重要だ(笑)」
という大喜利じみたものにもなっていくと、MANATOへの質問に関してはメンバーから
「彼には大喜利を出してください(笑)」
とリクエストが入ったことによって
記者「こんな記者会見は嫌だ。どんな記者会見?」
MANATO「マイクがヘッドセット」
という見事な大喜利っぷりを発揮する。こうした映像でこんなにユーモラスな要素が強いとは思わなかったけれど、フェスや雑誌のインタビューというロックファンに向けた場所ではこうした面は見れない。だから自分はこの日にこうしてワンマンを観るまではクールだったり熱かったりというざっくりとした、でもとにかく「カッコいい」というイメージだけをこのグループのメンバーたちに持っていた。でもそれだけじゃなくて面白い部分を持っているという人間味をこの映像は伝えてくれる。個人的にはフェスでは見た目も含めてクールなイメージがとにかく強かったMANATOがこんなに面白い人だとは思ってなかった。それはやはりワンマンに来たからこそわかるものであり、それはバンドだろうがそうでなかろうが変わることはないんだなと改めて思った。だからもっと早くワンマンが観たかったなとも思う。
その映像の最後は
記者「宇宙船の鍵が見つからなかったらこの世界はどうなるんでしょうか?」
SOTA「この世界は…爆発します!」
で終わり、60秒のカウントダウンの後にまさに爆発するかのようなサウンドによって「Bump Around」がスタートすると、メンバーたちは赤を基調にした衣装に着替えて登場。そのキレキレのヒップホップ曲を牽引するのはもちろんRYOKIとSOTAのラップであるのだが、まさにそのラップは2人の才気が爆発しているかのような。それはバンドサウンドの強さもまたそうである。
1stアルバムのオープニング曲という、ある意味ではグループの始まりを告げた曲とも言える「BF is…」でのその歌唱とダンスの見事さ(この曲に関してはいろんな意味で「揃ってる」と感じる)を積極的にセンターステージにも出ていきながら歌い踊ることによって見せつけてくれると、このグループでの活動が壮大な冒険であるかのように感じられるような歌詞と、バンドメンバーが今ここで音を鳴らしているからこそより強くロックさを感じさせるサウンドによる「Brave Generation」と続き、メインステージに戻ってきたSOTAが
「みんなで踊る時間ですよー!」
と言ってから演奏されたのはこのグループのサウンドの方向性を決定づけた「Boom Boom Back」なのだが、SOTAの言葉通りにライブバージョンということなのだろうか、音源のイメージとはまた違うアレンジになっていたようにも感じる。それはやはりみんなで歌い踊るためのものだったりするのだろうか。だからこそひたすらクールなR&Bというイメージだったこの曲がこの人数で喜びと楽しさを分かち合うかのようなパーティーチューンになっていたのであるし、それはこれだけ凄まじいスキルを持ったメンバーたちのグループがここにいる全員でライブを作ろうとしているという意識の表れとも言える。
そのメンバーたちが先にステージを去ると、ここでバンドメンバーたちによるソロ回しが行われてそれぞれの名前もスクリーンに映し出される。そのギター&キーボードが宮田"レフティ"リョウという、sumikaなどにも何度か参加していたり、最近ではChevonのライブに参加していたのを観た人がいるというのは「ここでも!?」と思ったが、そうしてバンドメンバーたちをしっかりフィーチャーするというのはライブはこの人たちがいることによって成立しているということをちゃんと伝えるためだとも思う。やはりソロ回しが全員めちゃくちゃ上手いだけに。
再びの映像では地球で同じ家で仲睦まじく暮らしているメンバーたちの姿が映し出されるのだが、それは音声なしというのがどこかさらに青春性とノスタルジアを感じさせる。しかし全員揃った中でJUNONが1人部屋を出て1階に降りていくと、立ててあったフォトフレームを裏返して…という映像が終わると、センターステージにスポットが当たってそこには私服っぽい服装で髪を後ろで結くという出で立ちに変わったJUNONの姿が。そのJUNONが歌い始めたのはFIRST TAKE ver.でその歌とメロディに焦点を当てた「Smile Again」で、だからこそそのJUNONの歌声の美しさが映えるし、そのすぐ後にやはりセンターステージに現れた全員がそうした美しくも力強い歌唱の持ち主であることがわかる。その歌声を聴いていて、自分の隣の席の方がめちゃくちゃ泣いていた。この人がこの曲にどういう思いを持っているのかということは全くわからないけれど、ただBE:FIRSTの歌声がそこまでこの人の感情を爆発させたということは紛れもない事実であるし、この全員の歌の上手さと上手いだけではない目の前にいる人を自分たちの音楽で救いたいというような感情のこもりっぷりは確かにそうなるのもわかるなと思っていた。
そこからはその歌唱力をフルに生かした、いわゆる聴かせるようなタイプの曲が続く。新作収録の「Sapphire」ではまさにサファイアのような青い照明とレーザーが美しく、さらにはそのレーザーが天井に当てられることでサファイアの形を描いていく。この東京ドームの天井が改めてめちゃくちゃ高いことがわかるし、こんなに美しく見えるなんて。あの天井から昔吊り下がっていたスピーカーに打球を当てた元近鉄バファローズのラルフ・ブライアントのことを少し思い出したりしていたのは自分もLEOと同じく野球が大好きだからである。
それは同じく新作収録のクールなサウンドの「Grow Up」へと続いていき、メンバーはそれぞれにセンターステージを自由に歩き回りながら歌うと、最新シングル曲「Sailing」で再びセンターステージの真ん中に集結するとその真ん中の台が上昇していくのだが、暗くて全然見えなかったメンバーたち(特にLEO)は明らかに焦ったりしているのが歌唱に表れていたのが面白い。完璧に決めるだけではなくてそうした姿を見せてくれるのもメンバーたちの人間味を感じさせてくれるし、そうした姿がメンバー同士や我々観客をさらに笑顔に楽しくさせてくれるのだ。
するとここで開放されたかのようにしてMCへ。その「Sailing」での視界の悪さから始まり、
MANATO「俺はRYOKIの母親とLINEをしていて、TVとかに出るとスタッフより早く画面を撮ったのを送ってくれる(笑)」
RYOKI「息子に送るのは1番最後(笑)」
というまさかのメンバーの親との繋がりを明かすと、全然伝わっていないような「地面師」のモノマネまで。正直言ってここまでのライブのテンポの速さからしたらかなりグダグダしている。でもその「フリートークがグダグダする」というあたりも、演奏中は超人のように見えるこの7人が我々と同じ人間であり、ただただ音楽のスキルが高くて、そこへの努力を誰よりもできる人たちだということを感じる。何というか、このMCの空気が凄すぎて畏怖すらあった自分のメンバーへの距離感を少し縮めてくれた感じすらある。みんなが喋っている間にJUNONがあらゆる方向にまで歩いて行って観客に手を振っていた姿も含めて。
そのMCはバンドメンバーも途中で加わりながら、SOTAを皮切りに何人かで回した、ウェーブを起こしながらも「スロ〜」と言うとゆっくりになるという文字にすると全然伝わらなさそうな観客を巻き込んだパフォーマンスで締めるのだが、その「スロ〜」部分で顔を作ってゆっくり腕を上げるLEOの表情がカメラに全く映らなくてLEOが「なんでだよ!(笑)」とツッコミを入れるのもまた面白い。
そんなMCの後にはSOTAが
「スターじゃなくてヒーローになりたい。ヒーローは目の前にいる人を救うから、手が届く存在だから。でも僕らに生きる意味を与えてくれるBESTYの皆さんが僕にとってのヒーローです!」
と今目の前にいる人に向けて思いを口にする。それは本当にそう思ってないと出ないだろうなと思うのは、それぞれ挫折を経験してきているメンバー自分たちもヒーローになりたいと口にしていて、だからこそその歌唱やパフォーマンスにその感情が宿っていると感じられるから。SOTAのMC中にもその言葉に花を添えるようにして弾いていた宮田のキーボードがさらに美しく響く「Glorious」はそんなメンバーたちの想いがそのまま歌詞になっているかのようだ。
「本気で生きてきた昨日が今の僕に言うんだ
「後悔はしないでいたい」」
という歌詞が象徴的に響くこの曲はやはりメンバーたちも作詞に参加している。自分がロックバンドの音楽やライブに感動してきたり胸を突き動かされたりしたのはその抱えている思いをそのまま歌詞と音にして鳴らせるからこその感情が宿っているからだが、このBE:FIRSTの音楽とライブからは確かに同じものを感じる。だからこそ自分はこのグループのライブを観て響くものがあったのかもしれない。
そんな思いを抱えながらも吹き飛ばすように再びゴンドラに乗ったメンバーも観客もタオルを振り回しまくりながら歌う「Great Mistakes」の景色の壮観さたるや。東京ドームを本拠地にしている巨人の応援でもタオルを振り回すというのがあるが、それが客席の一角だけじゃなくてグラウンドを含めた全体で起こるとこんなに凄い光景になるのかということを改めて体感させてくれる。
そして自分が初めてこのグループに触れた曲であり、タイトルとしてもライブが終わってしまうということを感じさせるような「Bye-Good-Bye」の前ではLEOが熱くBESTYへの思いを語る。その最後には
「生きていてくれてありがとうございます!」
と言って深く頭を下げる。その言葉を自分は何度も大好きなロックバンドのライブで聞いてきた。きっとそのバンドと同じ思いを持って音楽をやっている。何度その言葉によって生きる力をもらってきただろうか。それを今東京ドームで、BE:FIRSTのライブでも聞くことができている。なんだか自分がいるべくしてここにいるようにすら思えてきたし、
「新しい曲を作ってまた会いにきます!」
と言ったのも、自分たちが自発的に自分たちのやりたい音楽を作れるようなグループになったからこそ。
さらには曲の間奏ではJUNONもまたかつて自身が味わった挫折と、周りの同級生たちが就職を決めていく中で感じた取り残されてしまった感覚を口にする。だからこそ今こうして一緒にいることができているメンバーとBESTYに心から感謝をしていると。JUNONは「伝わってるかわからないけど」とも言っていたが、めちゃくちゃ伝わるのは仲間への想いはもちろん、JUNONがめちゃくちゃ良い子だということ。だからこそ本人も言っていた通りにこの掴んだ幸せをずっと離さないでいて欲しいと思っていた。
そうしてあまりに濃厚な、でも最後のサビはやはり爽やかな「Bye-Good-Bye」をセンターステージで踊りながら歌って終わったかと思いきや、SOTAが
「この曲やらなきゃ終われないだろ!」
と言って観客に撮影を許可して始まったのは「Blissful」。新作アルバムのリード曲であり、BE:FIRSTのやりたいこととキャッチーさが最大限に融合していると自分が思っているこの曲は、まだアルバムリリース前だった9月のひたちなかのロッキンではバンドなしで演奏されていた。それが今回はバンドメンバーがちゃんと演奏することによってさらなるダイナミズムを獲得している。客席にタオルを投げ込んだSOTAが
「この日の思い出を持って帰ってくれよ!」
と言っていたのは、ネタバレなどの要素がある中でもこうしてこの日のことを見返すことによってそれぞれにこれからの日々を生きていく力を与えるためでもあるだろう。その日々を味わい尽くすための歌でもあるけれど、その人生というものの味はこのグループに出会ったことによってさらに濃くて美味しいものになったなと思った。最後にまだバンドメンバーが音を鳴らしている中でステージが暗転してメンバーが消えるという終わり方も含めて、自分が今まで生きてきた中で体験してなかったものを与えてくれたから。エンディング映像を見ながら、それはBE:FIRSTでなければ味わえないものだったなと思っていた。
しかしセトリなども映し出されたエンディング映像だったためにさすがにアンコールはないよな〜と思っていたら、薄暗い中でさらなる映像が映し出される。それはRYOKIとMANATOから宇宙船の鍵を盗んだおっさんたちが宴会をしている場面で、宇宙船の中で眠りについていたメンバーのいち、RYUHEIだけが意識を持つと何故かそのおっさんたちの服が脱がされ、タイムスリップをしたかのように本編で流れた記者会見会場で座るRYUHEIのポケットの中に宇宙船の鍵が入っている。会見で「メンバーは超能力が使えるそうですが…」という質問があったのがネタじゃなくて布石になっていて、それがここで回収された…かと思った瞬間にステージには黒い衣装に着替えたメンバーが激しく踊りながら来月リリースされる新曲「Spacecraft」が披露されるというまさかの展開にあまりに唖然としてしまった。なんなんだこのライブは。途中で設定や世界観が消えたと思ったらちゃんと生きてた。しかもその後にはオープニングで披露された「Slogan」がもう一回演奏され、背面にはスタッフたちの名前が次々に映し出される中で最後にメンバーはオープニング同様に宇宙船のセットの中に入っていき、その宇宙船の扉が閉まってライブが終わる。ただ曲を演奏して終わりじゃない、それぞれの中にこのエンディングの意味を考えさせるという、余韻しか残らないようなアンコール。もう盛り上がるとかじゃなくて、あんぐりしていたら終わってしまった。
メンバーたちが旅していたのは宇宙空間や地球じゃなくて時間だったのかもしれない。終わってから時計を見たらもう2時間45分も経っていたということにビックリしながらそんなことを思っていた。29曲も演奏してるのにこんなに一瞬だったのだから。
その曲数の多さに驚いたのは、自分が普段ライブを観に行くバンドのライブでこんなに曲をやるのは1曲が短いパンクバンドくらいだから。それは生演奏することがどれだけ体力やカロリーや精神を使うものかということをわかっているから、こんなにも曲をやらないのが当たり前だと思っていたし、ダンス&ボーカルグループがこれだけ曲数をやってるのをセトリだけ見たら「歌うだけだとこんなに曲できるんだな〜」と思うだけだったかもしれない。でもBE:FIRSTはこんな手練メンバーたちが演奏していて、しかもライブならではのアレンジを随所に入れながらこれだけの曲をやっている。メンバーはもちろん、関わる人たち全員の意識が完璧に統一されているからこそのエンターテイメント。こんなにたくさん曲を聴けるなんて、ライブが始まるまでは全く思ってなかったし、ライブはとにかく曲が聴きたいタイプとして本当に嬉しかった。
フェスで観た時からわかってはいたけれど、BE:FIRSTのメンバーたちはめちゃくちゃキラキラしているようにも見える。見えるけど、ただキラキラしている王子様というわけでもなければ、偶像としての存在でもない。同じ人間として挫折を味わいながらも生きてきて、きっと誰よりも泥臭く努力をしまくってきた人たち。それがワンマンを観たら本当によくわかったし、それはそのまま自分がこのグループに惹かれた理由でもある。推しという概念がないので、誰か1人が好きというわけではない。でもこの日観たらメンバー1人1人全員のことを好きになった。もっと早く、ドームより前に見たかったと思うくらいに。
でもこうしてワンマンに足を運んだのはこのグループがいわゆるロックフェスという場に挑んでくれたから。初めて出た時には色々言われただろうけれど、それでも何度も挑んでくれたから、自分はこの日ここにいることができた。そうやって自分に人生初の体験をくれて、昔だったらライブを観たり曲を聴くこともなかったダンス&ボーカルグループという存在に向き合うきっかけをくれて、こんなに1人1人を好きになってしまったこのグループに自分が返せるものがあるだろうか。それはこれからもこうやって会いに来ることしかないと思ってるから、お互いにとってのヒーローにこれからもっといろんな場所で会えますように。
1.Slogan
2.Masterplan
3.SOS
4.Scream
5.Set Sail
6.Don't Wake Me Up
7.Be Free
8.Moment
9.Shining One
10.Selfish
11.Genesis
12.Metamorphose
13.Mainstream
14.Milli-Billi
15.Guilty
16.Bump Around
17.BF is…
18.Brave Generation
19.Boom Boom Back
20.Smile Again -FIRST TAKE ver.-
21.Sapphire
22.Grow Up
23.Sailing
24.Glorious
25.Great Mistakes
26.Bye-Good-Bye
27.Blissful
encore
28.Spacecraft
29.Slogan