YON FES 2019 day2 @愛・地球博記念公園モリコロパーク
- 2019/04/10
- 21:02
2日目。この日もビックリするくらいに雲一つないくらいの快晴。まるで誰かが操作してるというか、目に見えない力によってそうなっているかのように。
朝からRYU-TAは長蛇の列ができている麺屋おがたの店内に立ち、KOUHEIは自転車で会場内を走るなどこのフェスだからこそ見れるフォーリミのメンバーたちの姿もある中、11時前になるとフォーリミのメンバーたちがステージに現れ、ゆるキャラたちとともに前説を行なって最初のバンドへ。
11:00〜 KEYTALK [SKY STAGE]
初年度以来の出演となる、KEYTALK。その際に巨匠こと寺中が発案した「1,2,3,4フェス!」の掛け声はこのバンドが出演していなくてもこのフェスにおける合言葉になっていた。
おなじみの「物販」のSEでメンバーたちがステージに登場すると、
「お祭り騒ぎしようぜー!」
と巨匠が煽り、いきなりの「MATSURI BAYASHI」で首藤義勝のスラップベースが炸裂し、さらに「MONSTER DANCE」という普段のライブならクライマックスで演奏される2曲でスタートするという意外な展開。
しかし客席は最前列から最後方まで振り付けが完璧に揃っており、曲そのものはもちろん、内容までもが完璧に浸透していることに驚きを隠せない。ワンマンならともかく、フェスでこんな景色を見れることはそうそうない。フォーリミとKEYTALK、さらにはそのファン同士が凄く近い場所にいることがよくわかる。
さらに前週のツタロックでは最後に演奏されていた「Summer Venus」までもが続けざまに演奏されるのだが、義勝のボーカル部分で巨匠と武正がギターを弾きながら義勝の周りをぐるぐると回り、
「気になるわ〜!」
と思わず口に出してしまうほど。おなじみのEDMサウンド部分での「U.S.A」ダンスももちろん披露。
会場内には桜が咲いている箇所もあることで春らしさを感じさせるロケーションをさらに春らしくするのは「桜花爛漫」。フェスで演奏されるのは少し久しぶりだろうか。
巨匠が移籍後初リリースとなる「BUBBLE-GUM MAGIC」の告知を行うとともに、
「ずっと昔から切磋琢磨してきたフォーリミがこうして名古屋でこんなに大きいフェスをやっていること、本当に刺激になります。僕らもまだ全然決まってないですけど、2年後に横浜スタジアムでワンマンをやるために頑張っていこうと思ってます!」
とフォーリミとこのフェスへの思い、さらにはバンドとしての新たな目標までを口にすると、
「お互いに全然お客さんがいない時によくライブでやってて、フォーリミのメンバーたちがフロアで見てくれていた曲」
という「夕映えの街、今」ではフォーリミのKOUHEIがステージに登場し、八木に代わってドラムを叩く。やはりKOUHEIが叩くことによってもともとこの曲の持つパンクさがさらに増す中、八木はステージを走り回っていたかと思いきや、ステージを降りて客席にダイブ。その際に履いていた靴をなくしてしまったらしいが、今となってはこの2組がガラガラのライブハウスでライブをしていたということが信じられない位置にまで来ているが、だからこそこの2組が共有できているものがある。そうした絆のようなものが見えるのはこのフェスだからこそ。
KOUHEIがステージを去ってドラムが八木に戻ると、最後に演奏されたのは「太陽系リフレイン」。この曲もまたかつてフォーリミとともにガラガラのライブハウスでライブをしていた頃に演奏していた曲だと思うが、最近はクライマックスに演奏している曲を前半に、それ故に後半はかつてのように。それはあの頃に戻ったというわけではなく、あの頃の気持ちを両バンドともに今も忘れてはいないということ。
KEYTALKは普段からとてつもない数のライブを行っているバンドだし、フェス以外の場所ではガラッとやる曲を変えることが多い。それは常にどんな持ち曲でも演奏できる状態にあるというバンドの姿勢あってこそだが、この日のKOUHEIとのコラボからの終盤はこのバンドが確かに持っているパンクさを感じさせた。このフェスに出ればそれを感じられるのなら、できることならこれからも毎年。
リハ.YURAMEKI SUMMER
リハ.sympathy
1.MATSURI BAYASHI
2.MONSTER DANCE
3.Summer Venus
4.桜花爛漫
5.Love me
6.夕映えの街、今 (ドラム:KOUHEI)
7.太陽系リフレイン
太陽系リフレイン
https://youtu.be/_cIxcdUEagQ
・ENTH [LAND STAGE]
開催初年度から出演しているENTH。これで3回目の出演であり、名古屋出身としてLAND STAGEを背負っているバンドと言っていい存在。
前日のこのステージのトップバッターであったONIONRING同様にスリーピースのメロディック・パンクバンドであり、1曲目の「Will」から続く代表曲「ムーンレイカー」に至る序盤だけでメロディックパンクバンドらしいメロディの美しさは感じることができるのだが、編成面ではスリーピースであれどボーカルのdaiponがギターではなくベースということで、ニット帽にサングラスという野外フェスらしいのかなんなのかよくわからない出で立ちのNaokiのギターで変化をつける曲が多いし、近作の曲には「1曲の中に何曲分のアイデアを詰め込んでいるのだろうか」っていうくらいに急な展開をする曲が多い。
それはシンプルなメロディックパンクバンドに比べるとわかりにくさにも繋がりかねないところではあるが、メロディックパンクバンドにこんなに展開しまくるようなバンドはほとんどいない(そもそもパンクはそうしたアレンジと相性が良くない音楽だ)だけに、このバンドだからこその個性となっている。
観客の合唱を煽る「LOVE ME MORE」で突っ走りまくった流れに一呼吸置くと、
「最高に楽しいです。このフェスは出演者にフォーリミからのメッセージカードが楽屋に置かれてるんですけど、GENさんが
「ENTHはもういいっしょ」
って言って白紙の紙を渡されました(笑)」
という気心知れた間柄であることを示すエピソードは何故か全くウケなかったが、その分音楽はさらに盛り上がりを増していった。
初年度にこのフェスで見た時はまだ観客がまばらだった。(フォーリミのRYU-TAがステージに登場した時は一気に人が増えたけど)
それが今やこのステージが満員になるくらいの人を集めるようなバンドになった。名古屋出身のバンドとしては1番の出世株と言っていいし、そういう意味ではこのバンドはこのフェスの象徴的なバンドの一つと言っていいのかもしれない。
1.Will
2.ムーンレイカー
3."TH"
4.HAHA
5.HANGOVER
6.LOVE ME MORE
7.Gentleman Kill
8.SLEEPWALK
9.Get Started Together
10.Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!
ムーンレイカー
https://youtu.be/CAuRVpM9v24
・SUPER BEAVER [SKY STAGE]
初年度はLAND STAGEに出演していた、SUPER BEAVER。日本武道館ワンマンも果たし、すっかりこのステージが相応しい存在のバンドになった。
メンバー4人がステージに登場すると、
「いつだって始まりは、青い春」
と言って「青い春」からスタート。サビでは観客の両手が青空に向かって伸び、ワルツのリズムの手拍子では
「手拍子は頭の上で!」
と渋谷が言うとさらに高く手が上がる。
「ギター元気ねぇな!」
と言うとおりに序盤は柳沢のギターの出音が良くなかったが、決して弾くことをやめずに曲中に挽回してみせるあたりのローディーも含めたチームワークはさすがに自分たちの意志でインディーズであることを貫き続けてきたバンドである。
このライブも、人生すらもあっという間に終わってしまうということを歌う「閃光」、このバンドの持つポップな要素を全開にした「予感」と続くと、
「音楽で一つになろうとかバカらしい!束になってくんなよ!お前1人で来い!」
と渋谷なりの言い方で合唱を煽る「秘密」はしかし、その1人が1万以上も重なり合うことで美しいハーモニーと景色を描き出していた。
「こうしてフォーリミに呼んでいただいてこのステージに立たせていただいてますが、仲が良いから出たいんじゃない。カッコいいバンドがやっている、カッコいいフェスだから出たい。きっとフォーリミも単に仲が良いからって呼んでくれているわけではないと思っています」
とこのフェスのこのステージに立っている理由を渋谷が語ると、
「若くして命を絶ったロックスター、カッコいいと思ったことは一度もない。生きてこそ。生きてナンボ」
と続けた。それはこの前日に渋谷が葬儀に行った松原裕氏のことを言っているのかと思ったし、それももちろんあるだろう。でも自分は松原氏のことを言ったのであれば、最後に「ありがとう」を演奏すると思っていた。
「受け入れてくれてありがとう 分け合ってくれてありがとう」
と今まで共にした時間に感謝を込めて。
でもこの日最後に演奏されたのは、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と歌う「27」だった。翌日になって、飛び込んできたヒトリエのwowakaのニュース。渋谷は、SUPER BEAVERはそれを知っていたんじゃないかと思う。だからこの曲にしたんじゃないのかと。
もちろんそれは自分の憶測だし、本当のところはメンバーにしかわからない。だけど行動や活動はもちろん、一語一句、一音一音の全てに自分たちの意志を込めてきたのがSUPER BEAVERというバンドだ。我々はその意志に心を何度も震わされてきた。だからこそ、この選曲にも大きな、そして確かな意味や意志があった気がしてならないのだ。
それでも決して感傷的なだけのような後味は残さない。これはフォーリミのための舞台であることをちゃんとわかっているバンドだから。
1.青い春
2.閃光
3.予感
4.秘密
5.27
27
https://youtu.be/9Oswl4gGMFw
・Hump Back [LAND STAGE]
前日のヤングオオハラ同様に、フォーリミのスペシャ列伝ツアーの後輩にあたる、Hump Back。サウンドチェックの段階から林萌々子(ボーカル&ギター)は笑い声を上げながら演奏しており、バンドの状態の良さとこのフェスに出演できる喜びを感じさせる。
本番で3人がステージに登場し、「月まで」からライブをスタートさせると、髪の一部を緑色に染めたぴか(ベース)がぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏するのは変わらずだが、いつにも増してステージを左右に走り回っている。すると
「大好きな04 Limited Sazabysに、カッコいいって思われたいんだ!」
とそのぴかが叫ぶ。このバンドは林のチャットモンチーへの憧憬から始まったバンドであるが、
「ぴかはずっと自分でチケットを取ってフォーリミのライブにディッキを履いて行っていた。だからこのフェスに出るのが夢だった」
とMCをすることのないぴかに変わって林がぴかのテンションの高さを解説すると、
「メンバーの夢は私の夢でもある。大きいところでやりたいとか、あのステージに立ちたいとかいろいろあるけれど、私の夢はこの3人でずっとバンドを続けること。それだけ」
とあくまでロックバンドでありたいという自分たちの思いを語る。それはかつてたった1人でHump Backの名前を背負って活動してきた林だからこそ強く響く。こうしてメンバーが横にいてバンドができるのが当たり前のことではないのをわかっているから。その林の言葉を聞いたぴかは一瞬、目元を拭っていたように見えた。
「こんなに雲一つない青空の下やけど、私は天邪鬼なんで」
と言ってそれまでのアッパーなギターロックチューンから一転、いつかはこうした野外フェスの夜の時間に聞いてみたくなるようなメロディと歌詞をしっかり聞かせる「ナイトシアター」を演奏した。ほかに演奏された曲たちが代表曲であり定番曲的な曲たちだったためにこの日はこの曲が強いインパクトを残していた。
そしてラストに演奏された「星丘公園」では
「君が泣いた夜にロックンロールは死んでしまった」
と林がギターを弾きながら歌う。でもその歌詞とは裏腹に、このバンドがこうしてこの3人で活動しているうちはロックンロールは死なないと思える。元から良いバンドだと思っていたが、そうまで思えるような存在のバンドになった。そんなバンドがバンド主催のフェスのステージに立っている意味は本当に大きい。決して新しいことをやっているバンドではない。でもだからこそ、いろんなバンドたちが受け継いできたロックバンドのロマンをこのバンドは持っている。
リハ.生きて行く
リハ.クジラ
1.月まで
2.高速道路にて
3.拝啓、少年よ
4.短編小説
5.ナイトシアター
6.星丘公園
星丘公園
https://youtu.be/YatJsm5i8Jw
・SiM [SKY STAGE]
フォーリミがパンクヒーローならば、同世代のラウドなダークヒーロー、SiM。自身の主催するDEAD POP FESTiVALにフォーリミが出演したこともあるが、ついにこのフェスに初出演。
ベースのSINがどこか髪が短くなったように感じる中でメンバーが登場すると、MAH(ボーカル)がマイクをぐるぐると振り回しながら展開が激しい「DiAMOND」からスタートし、この2日間、ラウドと呼べるようなバンドが出演していないだけにこのバンドのサウンドの凶悪さ、重さ、強さが際立っている。ここまでのフェスの空気とは全く違う。
モッシュやダイブが起こるのはもちろんだが、それ以外にも「Amy」でのツーステ、「GUNSHOTS」でのモンキーダンス、「T.H.C.」での高速左回りサークルと、雰囲気はもちろんのこと、見せてくれる景色もそれまでのこのフェスとは全く違うが、
「あいつらが大好きな地元・名古屋のフェスにようやく出ることができました!ありがとう、coldrain!」
と名古屋のバンドであれど普段は逆にいじるcoldrainの名前をフォーリミの代わりに出すという嘯きっぷりを見せると、
「このフェスはフォーリミのメンバーとか、マスコットキャラクターとか、会場の雰囲気がふわっとしてるから、
「あ〜たんぽぽだ〜」
っていうやつが多いと思ってた(笑)」
と悪魔らしいいじりっぷりで笑わせてから「Blah Blah Blah」で合唱を煽るも、
「この前、名古屋でcoldrainの対バンに出た時の方が声が大きかったぞ!勝ってるのは人数だけですか!?」
と演奏を止めてさらに煽る煽る。それによって実際に観客の合唱は明らかに大きくなるあたりは流石。MAHという男のカリスマ性の強さを感じさせる。
するとそのMAHが急に、
「今日はお便りをもらっています」
と紙を広げると、
「SiMの皆さん、こんにちは。04 Limited SazabysのHIROKAZです。…ちょっとよく知らない人ですね。
今日、もし「KiLLiNG ME」で観客をステージに上げてギターを弾かせるくだりをやるのならば、ぜひ私に弾かせていただけないでしょうか。
いい度胸だ。HIROKAZ君、来なさい!」
とギターを弾くのを懇願したHIROKAZがステージに現れる。
「さっき楽屋で見たら全然弾けてなかったけど(笑)」
と言われながらもSHOW-HATEからギターを受け取るとしっかりあの独特のリフを弾く。SHOW-HATEはそのHIROKAZの様子を眺めたり踊ったりと実に楽しそうだ。
ギターを弾き切ったHIROKAZがステージを後にすると、ラストはウォールオブデスが炸裂した「f.a.i.t.h」で、結果的にはSiMだからこそ、ラウドバンドだからこそ見せることができる光景を全てこのフェスで残してみせた。
SiMは自分たちが出る意味があるフェスしか出ないという姿勢をずっと貫いている。だからこそどんな場所でも観れるというバンドではないのだけど、その姿勢があるからこそ出るフェスでは強すぎるくらいの爪痕を残していく。そしてその姿を見るとこのバンドの主催フェスであるDEAD POP FESTiVALに今年も足を運びたくなる。
1.DiAMOND
2.Amy
3.GUNSHOTS
4.T.H.C.
5.Blah Blah Blah
6.KiLLiNG ME feat.HIROKAZ
7.f.a.i.t.h
DiAMOND
https://youtu.be/iA8UwjH0ljw
・SPECIAL OTHERS [LAND STAGE]
こうした野外フェスのピースフルな雰囲気にはピッタリのバンドであるが、このフェスにおいてはやはりどこか異物感というか、アウェーな感じがするのは否めない、SPECIAL OTHERS。このフェスには初年度以来の出演となる。
いつものような出で立ちでふらっとメンバーたちがステージに登場すると、まずは音を確かめ合うかのようにジャム的な演奏を始め、最新ツアー会場限定シングルである「Puzzle」でスタートするという攻めっぷり。かつての「Manbo No.5」のような柳下のギターリフが印象的なダンスナンバーであるが、持ち時間が短くて1曲が長いという曲数を多く披露することが絶対にできそうにないフェスでいきなり新曲をやるという攻めっぷりは自分たちがまだベテランであるという意識が全くないこのバンドだからできることである。
初期からのおなじみの代表曲「BEN」ではメンバーそれぞれのソロ回しも挟まれ、ただでさえ長尺の曲がさらに伸びていく。しかしながら晴天の空の下で聞くこの曲のサウンドの気持ち良さたるや。芹澤と宮原のボーカル部分はここが楽園であるかのような錯覚さえ感じさせる。
宮原「俺たちは自分のことをおじさんだとは思ってないけれど、果たして俺たちはおじさんなのか」
という緩いMCから、
芹澤「みんな俺たちのこと絶対覚えて帰って!インスタにもいいね!して!俺たちのファンは世代的にインスタやってないから全然いいね!がつかなくて公式マークがついてくれない!(笑)
そしてSPECIAL OTHERSはSiMに匹敵する盛り上がりっぷりだったってインスタに書いて!それだけの簡単な仕事だから!」
とアピールするのに珍しくやたらと必死な芹澤が、
「SiMの盛り上がりに匹敵するためのスペシャルゲスト」
として呼び込んだのは、フォーリミのGEN。
GEN「このステージに立つの初めてなんで緊張してます!」
芹澤「まぁお前もこんなにデカいステージに立つのは慣れてないだろうからリラックスしろよ?(笑)」
という茶番が繰り広げられる中、SPECIAL OTHERSの出演が発表された時からまず間違いなくやるであろうと思っていた、GENをボーカルに迎えたコラボ曲「LOOP」を披露した。
30分で3曲という内容であるがゆえに、聴きたい曲が聴けないというのは仕方ないところである。でもこの「LOOP」が聴けるのはこの日のこの時間、この会場のこのライブだけ。普段とは全く違うタイプのサウンドを軽やかに乗りこなすGENの姿からは、このバンドと出会ったことによってボーカリストとしてさらに成長していることを感じさせた。
1.Puzzle
2.BEN
3.LOOP feat.GEN
LOOP
https://youtu.be/iVa0NaJ2-pI
・クリープハイプ
SPECIAL OTHERSからフォーリミよりも年上の中堅バンドが続く中盤。SPECIAL OTHERS同様にこのフェスには初年度以来の出演となるクリープハイプが登場。サウンドチェックから新曲をチラッと演奏するサービス精神を見せてくれる。
いつものようにSEもなしにメンバー4人がステージに現れると、尾崎世界観(ボーカル&ギター)がギターを弾きながら
「桜散る 桜散る」
と「栞」を歌い始めると、
「新しい街に行っても 元…げん!?元気でね、っていうより、GEN来てね。果たして来てくれるでしょうか」
と言うと、FM802バージョンでボーカルを務めたうちの1人(他にはあいみょんやsumika片岡健太など錚々たる面々)であるGENがステージに現れ、尾崎とボーカルを分け合う。もともと歌っていた曲なだけに違和感は全くない。ちょっと歌詞のカンペを見ているような感じはあったけど。
歌い終わるとメンバーたちに向かって頭を下げたGEN。それに応じてGENに対して頭を下げる尾崎。年齢も少し離れているし、2組の関係性は決して友達というようなものではない。でもその姿からは音楽家としてリスペクトし合うもの同士だからこその姿であった。
もはやこのバンド最大の代表曲となりつつある「イト」、4つ打ちの軽快なダンスチューン「おばけでいいからはやくきて」、長谷川カオナシがベースではなくキーボードを弾く「5%」と近年リリースの曲が続く。激しいサウンドのバンドではないが、観客は集中力高く尾崎の歌とバンドの演奏を聴いている。
天気の良い野外でのライブなだけに「憂、燦々」や「ラブホテル」という夏を先取りするような曲をやってもいいような状況で演奏されたのはこれまたじっくり聴かせるタイプの「二十九、三十」。尾崎が敬愛する銀杏BOYZがカバーしてからはこうしてフェスでも演奏される機会が増えてきているが、
「前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで」
という歌詞に背中を押されてきたかのように、客席では涙を流すような観客もいた。このフェスにここまで深くこのバンドの曲と向き合ってきた人達がいたのはちょっと意外であった。
MCもほぼほぼなしに「社会の窓」で尾崎のボーカルも声量と強さを増していくと、最後はやはり「HE IS MINE」でこの日も
「セックスしよう!」
の大合唱を巻き起こし、
「よくできました」
とこのフェスの観客を称えてステージを去っていった。
いつにも増してシリアスな空気だったが、それが終わりの時間が近づくこのフェスの最後の時に向かっているかのようだった。軽口を叩いたりすることもなかった、ひたすらに音楽であり続けた35分間だった。
リハ.ニガツノナミダ
リハ.泣き笑い
1.栞 feat.GEN
2.イト
3.おばけでいいからはやくきて
4.5%
5.二十九、三十
6.社会の窓
7.HE IS MINE
栞
https://youtu.be/j4XsCJHfplg
・Survivd Said The Prophet [LAND STAGE]
もともとはこの位置にはSUNNY CAR WASHが出演する予定だった。しかし出演キャンセル(結果的には活動休止状態)になったことにより、急遽出演が決まったのがこのサバプロこと、Survive Said The Prophetである。
サウンドチェックで宇多田ヒカル「Flavor Of Life」をラウドにカバーしていた姿からもわかるとおりに、Yoshの歌唱力の高さとバンドの演奏力とアレンジスキルの高さを併せ持つラウドバンドである。
ベースのYudaiは弾きながら叫びまくり、Yoshはステージを右から左に動き、長い髪を解いたり束ねたりと繰り返しているが、メンバー全員の見た目は実にスタイリッシュ。しかしながらオシャレというよりは素直にカッコいいというような。
とはいえラウドバンドとしてはサウンドは王道というか、他のジャンルの音をわかりやすく取り入れたりするというよりはラウドな中でもキャッチーに、という意識で曲を作っているのがわかるし、そこはラウドバンドじゃなくても全然歌えるであろうYoshの歌唱力の高さによるものも大きいと思う。
「さっきSiMのライブ見たらやっぱりすげぇなぁって。ラウドの先輩方だから補足しておくと、
「あ〜たんぽぽだ〜」
ってたんぽぽ見つけた後に綿毛を吹き飛ばしたのが耳に入ると聞こえなくなっちゃうから気をつけてね」
となぜかこのステージで豆知識を教えてくれるYoshは
「次に向こう(SKY STAGE)に出るバンドと俺たちが同じアニメのタイアップをやりました。俺たちの方がカッコいいってことを見せてやるよ!」
とギラつきながら「found & lost」で確かにアニメ主題歌になったのも納得なキャッチーなメロディを響かせ、
「俺たち、このフェスで1番最後に発表されたバンドです。それなのにこんなに歓迎してくれてるなんて、このフェスは本当にすごい」
と直前になって出演が決まった自分たちを受け入れてくれたこのフェスと観客に感謝を告げていた。
しかしどんなバンドでもこうして代打として出てきて受け入れてもらえるかというとそんなことはない。このバンドはすでにラウドバンドの急先鋒として話題になっているし、この日のラインアップ的には日頃からこのバンドの音楽を聴いている人も多いであろうけれど、こうしてこの日代打にもかかわらずLAND STAGEを埋め尽くした観客が凄まじい勢いでダイブをしたりしていたのは、このバンドがライブハウスシーンでしっかり勝ってきたバンドならではのライブの強さをしっかり持っているバンドだから。
今やラウドバンドはかなり規模に差が出てきているところもあるし、ラウド系が好きな人にしか届いていないという状況にあるバンドもいてなかなか厳しいところも見えたりするが、かつてSiMやcoldrainが見せてくれたように、このバンドがシーンに新たな風穴を開けてくれるんじゃないか、と期待したくなるくらいに素晴らしいライブだった。
1.space[ s ]
2.TRANSlated
3.Fool's gold
4.Right and Left
5.found & lost
6.When I
7.Network System
found & lost
https://youtu.be/VrOOigt76K0
・BLUE ENCOUNT [SKY STAGE]
KEYTALKとともにフォーリミとは全然観客がいない時から切磋琢磨して成長してきた、BLUE ENCOUNT。初年度にはこのバンドがライブをしている時にステージ袖でKEYTALKのメンバーたちが歯を磨いているところがスクリーンに映し出されたりしたこともあった。
メンバーがステージに現れると、いきなり田邊が歌い始めたのは「もっと光を」。田邊の歌声に合わせてたくさんの人がリフトしていくが、確かに最近はこうして序盤に演奏されるパターンもよくあるとはいえ、いきなりこの曲をやったということにはKEYTALKが「MONSTER DANCE」を前半にやったのと同じような理由を感じる。
「フォーリミとYON FESの物語が終わりませんように!」
と言って演奏された「Never Ending Story」、さらには「ロストジンクス」と、やっている曲だけを見たら初年度となんら変わらないように見える。きっとこの辺りの曲はフォーリミと出会った頃からライブで演奏して鍛え上げてきた曲なんだろう。
そのまま「LAST HERO」のイントロを演奏し始めたかと思いきや、辻村のベースの音が急に出なくなってしまい、演奏がいったん止まってしまう。復旧させようとする辻村とスタッフを横目に、田邊は高村のドラムセットの前で何やら話し、
「フォーリミの曲をベースなしでやるか〜!」
と言って「monolith」のカバーを演奏。しかしあまりにもキーが高すぎるからか、田邊の歌はいつも以上にヤケクソみたいな感じに。田邊もキーはかなり高い方まで出るボーカリストであるがために、改めてGENの声の高さを実感する。いつのまにか辻村のベースも復旧して普通に「monolith」の演奏に加わっていた。
「DAY × DAY」を終えると田邊が、
「今でもあいつらと初めて会った時のことはよく覚えてる。大須の味仙の2階の席。初めて会ったのにすぐに意気投合して、その日の深い時間までバンドのことや自分たちの現状、どうなりたいか、何をやりたいかまでたくさん話した。
そんなあいつらがこうやってフェスをやって、俺たちを呼んでくれている。一つだけ言えるのは、あの時あいつらに会ってなかったら俺たちは音楽を絶対続けてなかった。俺たちに音楽を続けさせてくれたあいつらに…今そこにいるんだけど、ちゃんと感謝を伝えたい!」
と長い付き合いであるフォーリミとのエピソードを話すと、田邊は袖にいるメンバーたちの方を向いて
「本当にありがとう!」
と叫んで頭を下げた。その後にすぐ
「やっぱりすげぇ恥ずかしい!(笑)」
と照れていただけに、歌にすれば思いを伝えられるように、ステージに立っているからこそ言えることだったのだろう。
その言葉を受けたからこその「THANKS」の
「あなたに出会えて本当に良かった 心からありがとう」
のフレーズを聴いた観客は汗と涙にまみれまくりながらモッシュやサークルを展開していたのだが、そんな感動的な流れであっても最後には
「それでも、俺はバチバチでありたい!」
と言って「VS」を演奏した。仲間だけど、いつも手を繋ぐ存在なわけじゃない。悟空とベジータやピッコロのように。それが様になるのはBLUE ENCOUNTというバンドが常に熱血的な感情をむき出しにして走ってきたバンドだから。気づいたらこんな大きなステージのトリ前まで来ていたのも当たり前のことなのかもしれない。
リハ.HEART
1.もっと光を
2.Never Ending Story
3.ロストジンクス
4.monolith 〜 LAST HERO
5.DAY × DAY
6.THANKS
7.VS
VS
https://youtu.be/fey-Kn6WROs
・ハルカミライ [LAND STAGE]
2日間に渡って若手バンドたちが熱演を繰り広げてきたLAND STAGEもいよいよ最後の時間を迎える。このステージのトリはハルカミライ。今やZeppを即完させるようにまでなったバンドである。
サウンドチェックで小松謙太(ドラム)、須藤俊(ベース)、関大地(ギター)の3人が登場して、3人のコーラスのみで成り立つ曲(「ファイト!!」など)を演奏すると、まだ本番じゃないのにダイブの嵐。これは本番になったらどうなるんだろうか、と思っているところに橋本学(ボーカル)が登場すると、「君にしか」でスタートし、やっぱり客席はダイバーの嵐だし、なんなら橋本も持ち時間の半分以上は客席にいるんじゃないかと思うくらいにステージを飛び降りて客席に突入、次の曲が始まる前にステージに戻ったかと思ったらまた客席に突入と実に忙しないというか、もう感覚のままに行動している。
「普通のバンドなら、終わってからフォーリミ見るために走れる体力残させないからな!って言うんだろうけど、ハルカミライは一味違うぜ。俺たちはフォーリミを見るために走って、そこでさらに大きな声を出して歌うための元気を与えに来たんだ!」
と橋本は青春パンクと言っていいような、人の背中を押す音楽を鳴らすこのバンドの軸をしっかり言葉にしてみせる。かと思えば、SKY STAGEでフォーリミ待機している人たちに、
「おーい!こっち来いよ〜!」
と呼びかけるも、
「全然反応しねぇや(笑)」
といちいち面白く、周りの女性からは「可愛い」という声すら上がる。
「フォーリミとはツアー2箇所に呼んでもらったんだけど、かなりスパークしまして。ベースの須藤が行方不明になったと思ったら、道端で寝てて(笑)
小松が探しに行ったんだけど、小松も途中の道端で寝ちゃって(笑)結果的に須藤の方が先に帰ってくるっていう(笑)」
とまだ若いのに一昔前のバンドマンみたいな酒エピソードを語りながら、曲が始まるとメンバーは暴れまくり、橋本のみならず関までもギターとマイクスタンドを持って客席に突入していくというやりたい放題っぷり。その無軌道さは自分が10代の頃に見ていたパンクバンドたちのようだ。
「向こう、桜が咲いてる!」
とこの会場に咲いている桜の木を指差してから演奏された「それいけステアーズ」はサビで「さくら」というフレーズが繰り返される爽やかな曲であるが、やっぱり橋本は客席に突入し、あまりのダイバーの多さに倒れてしまっている観客を見るや、
「起こせ起こせ!大丈夫か!?」
と全員が立ち上がるのを確認するまでしっかり待つ。だからこそステージに戻るのが遅れてしまうのだが、
「ちょっとお前らだけでできる曲やってて!」
と言うと橋本がステージに戻るまでの間に3人は「ファイト!!」を演奏し、やっぱりまたダイブの嵐に。ちなみにこの「ファイト!!」は
「あいつのことなら俺がぶっ飛ばしといてやるから」
と歌われる曲なのだが、リハも含めたらもう4〜5回はぶっ飛ばしている。
序盤に呼びかけたSKY STAGEでフォーリミ待機をしている人たちに再び呼びかけるも、
「そっちにいる人たち〜!もう来なくていいや(笑)」
ともうライブが終わることを匂わせると、「世界を終わらせて」でタイトル通りにライブを終わらせたかと思いきや、最後にトドメとばかりに「エース」を演奏し、途中で主催のフォーリミを見に行くために抜けることが一切できないくらいに最後の最後までやりたい放題、汗とダイブに満ちた30分をやり切った。
自分はだいぶ前にこのバンドのライブを、インディーズ時代のyonigeのツアーの対バンで小さいライブハウスで見たことがある。しかしその時は全くと言っていいほど印象に残っていない。その頃はまだ今のようなライブのスタイルではなかったし、パンクというよりもSUPER BEAVERのような歌モノのロックバンドというイメージだった。
何がどうなって今のようなスタイルに転じたのかはわからないが、橋本は今年リリースしたアルバム「永遠の花」のインタビューで、
「俺にとってパンクは中指を立てたりするものじゃなくて、優しく抱きしめるものなんです」
と自身のパンク感を語っていた。それはかつて
「僕パンクロックが好きだ ああ 優しいから好きなんだ」(「パンクロック」)
と歌ったブルーハーツのようだし(実際に「アストロビスタ」の歌詞にブルーハーツが出てくる)、自分はパンクのそういう部分に人生を変えられてこうして今でもロックバンドのライブを見に来ている。このバンドの音楽やライブはそうした自分の中に未だにある熱い部分を呼び起こしてくれる。だから後半、ライブを見ていたらいつのまにか涙が流れていた。もし自分が今10代だったら、このバンドをキッカケにしてロックに目覚めていたかもしれない。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.春のテーマ
6.アストロビスタ
7.それいけステアーズ
8.ファイト!!
9.世界を終わらせて
10.エース
ファイト!!
https://youtu.be/B94gR4od9tY
・04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そしてついにトリ。2日間のこのフェスを締めくくるべく、フォーリミがステージに。
オリジナルのSEでメンバーが登場すると、GENはSPECIAL OTHERSとクリープハイプのライブにゲストボーカルとして出演した時と同様のピンクのパーカーを着ている。
前日は本編の最後に演奏されたショートなパンクチューン「Message」からスタートすると、照明が色鮮やかに輝く「fiction」、
「YON FESから逃げ出せない!」
と言って演奏された「escape」と、この日は「SOIL」のモードというよりはこれまでのフェスにおける代表曲中心という内容なのだが、前日とはもう全く違う。メンバーの気合いや熱量が違う。GENの歌い方が違う。2日間の最後に自分たちが1番っていうライブを見せないでどうするんだ、という気概が見えるし、その裏にはこの2日間、この時間に至るまでにバトンを繋いできてくれたアーティストたちの思いを全て自分たちの力に変えているかのよう。
だからこそ、今年はラーメン屋の店主としても活躍していたRYU-TAの「Chicken race」の煽りもいつにも増して強く、それが「days」「Brain sugar」という新旧のメロディが立った曲をしっかりと繋いでいく。
今年もフォーリミのメンバーはそれぞれ様々な出演者のステージに登場してコラボを果たしてきたが、この日はフォーリミのステージにもゲストを招く。呼び込まれたのはSPECIAL OTHERSの鍵盤担当の芹澤優真。
GEN「芹澤さんはいつも金の話しかしない(笑)」
芹澤「家賃とか税金とかの話をするとだいたい年収がどのくらいかわかる(笑)」
という実に芹澤らしい(この辺りのがめつさはSPECIAL OTHERSのツアードキュメントなどでもよく見ることができる)紹介をされると、「SOIL」に収録された芹澤参加曲「Shine」をキーボードが入った完全版で演奏。パンクな曲が多いだけにこの曲の優しいメロディは一層引き立つし、かつてこのフェスにスペアザが出演したことによってお互いの曲に参加し合うようになった。それはこれからのこのフェスとフォーリミというバンドの新たな可能性を示している。立ったままでキーボードを弾く芹澤の姿も実に貴重だ。
「考えすぎるな、GEN。でもこれは俺たちのフェス、YON FESだ。だから俺たちが1番良いライブをやらなきゃいけない!」
と考えすぎてしまいがちな思考をフラットにしてから演奏された「Squall」で再びバンドの熱量をさらに強く感じさせるようなパンクモードに振り切り、ラストは渾身の「monolith」でやはりダイブとモッシュの嵐に。前日とは1曲目と最後の曲を入れ替える形になったが、それによって与えられる印象や余韻は全く違うものになった。
アンコールではこうしてこの場所でフェスを開催できているからこその感謝を語り、このフェスと参加者の未来に光を当てるように「swim」を演奏すると、GENはステージにKEYTALKの首藤義勝を招き入れ、自身のベースを義勝に委ねると、自分はハンドマイクで歌ったのはファストかつショートなパンクチューン「Remember」。
これで大団円かと思いきや、
GEN「義勝ミスってなかった?もう一回やります!ギター、MERRY ROCK PARADEで俺たちを助けてくれた、SUPER BEAVER柳沢!BLUE ENCOUNT江口!」
とメンバーがインフルエンザになった昨年末にサポートギターとしてバンドに参加した柳沢と江口を呼び込む。
となるとギターが多過ぎるだけにHIROKAZがギターを下ろし、人生2回目となるダイブをするべく客席に向かおうとするのだが、曲を始める前に客席を見たKOUHEIが、
「お前さすがにそれは危ないからやめろ」
と、リフトの上にさらに乗っていた観客に注意する。GENは「今日はまぁ無礼講だから…」と言っていたが、それでもKOUHEIは
「最後に誰にもケガして欲しくないから。それはやめろ」
と決して譲らず、その観客を降ろさせた。
KOUHEIはかつてもSWEET LOVE SHOWERで同じように曲を始める前にリフトが乱立してるのを見て、それをやめさせたことがある。自分たちが見たいのはそういうものじゃない。だから多少空気が変わってしまうとしても、観客に直接やめろと言う。フォーリミはKOUHEIが加入してから一気に快進撃を続けてきたし、それは伊地知潔が加入したアジカンやFujiが加わったWANIMAと同様に、ロックバンドはドラマーによって変わるということを示しているくらいに音楽面でもバンマス的な役割を果たしている男であるが、メンバーからはいじられまくっていても精神的な面でも最も重要なメンバーなのかもしれない。
開演前に自ら自転車に乗って観客の歩く横を通って会場の様子を見に行くのも、主催バンドのメンバーとしての責任感あってこそだし、この翌日、KOUHEIはツイッターで
「最近悲しいニュースが立て続けにあります。
辛い。
辛いけど、悲しい事や辛い事がこの世から無くなることはない。
だからこそ楽しいことだったり幸せな事を増やせるような存在でありたい。
お前ごときが?
そーだよ。
だからまだ死ねないんだよ。」
と自身の生き方を綴っていた。それは親しい人が亡くなってしまったから出た言葉でもあるのだが、KOUHEIのこの生き方がこのフェスを支えている1番大きくて太い柱なのかもしれない。
「お前ごときが」なんて思ったことなんか一回もない。時には女装までして我々を楽しませてくれて、こうして幸せだと思える場所を作ってくれている。間違いなくそれはあなたのおかげ。
そして柳沢と江口のギター、義勝のベースという布陣でもう一度「Remember」を演奏すると、HIROKAZが予告通りに客席にダイブしたのだが、袖からKEYTALKやBLUE ENCOUNTのメンバーがステージに乱入したことによってHIROKAZのダイブはかなりインパクトが薄くなってしまう。もうステージはYON FESオールスターズと言っていいような状態になっていた。最後の最後に、このフェスじゃないと絶対に見れないような景色が目の前に広がっていた。
演奏を終えるとステージに上がっていたメンバーたちをそのまま留め、残っていた出演者たちで写真撮影。掛け声はもちろん「1,2,3,4フェス」で、その掛け声を考案したKEYTALKの巨匠がカウントを取るという大役を任され、記念すべき4年目にして、平成最後のYON FESは幕を閉じた。
1.Message
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.days
6.Brain sugar
7.Shine feat.芹澤優真 (SPECIAL OTHERS)
8.Squall
9.monolith
encore
10.swim
11.Remember ベース首藤義勝(KEYTALK)
12.Remember ベース首藤義勝、ギター柳沢亮太(SUPER BEAVER)、江口雄也(BLUE ENCOUNT)
Squall
https://youtu.be/NRhmgBtRKBA
このフェスに来たのは初年度以来3年ぶり。それくらい経つとやっぱり色々なものが変わる。初年度は「同年代」「名古屋」という色が強かったラインアップははるかに幅広くなったし、両ステージの動線や、入場ゲートの位置など、初年度に不便に感じた部分は参加者の声を拾い上げてしっかり改善されていた。
そうしてきっとこれからも続いていくことでフェスの形は変わっていく。その変わっていく様をこれからも毎年見ていたい。まだ来たのはたったの2回。でもこうしてここでライブを見たり、名古屋の街に行ったり、リニモの駅や車内に飾られた過去のこのフェスの写真を見たりすることによって、この場所が自分にとって間違い無く大事な場所の一つになっている。だからまた来年、ここでしかないどこかで。
Next→ 4/8 ASIAN KUNG-FU GENERATION @Zepp Tokyo
朝からRYU-TAは長蛇の列ができている麺屋おがたの店内に立ち、KOUHEIは自転車で会場内を走るなどこのフェスだからこそ見れるフォーリミのメンバーたちの姿もある中、11時前になるとフォーリミのメンバーたちがステージに現れ、ゆるキャラたちとともに前説を行なって最初のバンドへ。
11:00〜 KEYTALK [SKY STAGE]
初年度以来の出演となる、KEYTALK。その際に巨匠こと寺中が発案した「1,2,3,4フェス!」の掛け声はこのバンドが出演していなくてもこのフェスにおける合言葉になっていた。
おなじみの「物販」のSEでメンバーたちがステージに登場すると、
「お祭り騒ぎしようぜー!」
と巨匠が煽り、いきなりの「MATSURI BAYASHI」で首藤義勝のスラップベースが炸裂し、さらに「MONSTER DANCE」という普段のライブならクライマックスで演奏される2曲でスタートするという意外な展開。
しかし客席は最前列から最後方まで振り付けが完璧に揃っており、曲そのものはもちろん、内容までもが完璧に浸透していることに驚きを隠せない。ワンマンならともかく、フェスでこんな景色を見れることはそうそうない。フォーリミとKEYTALK、さらにはそのファン同士が凄く近い場所にいることがよくわかる。
さらに前週のツタロックでは最後に演奏されていた「Summer Venus」までもが続けざまに演奏されるのだが、義勝のボーカル部分で巨匠と武正がギターを弾きながら義勝の周りをぐるぐると回り、
「気になるわ〜!」
と思わず口に出してしまうほど。おなじみのEDMサウンド部分での「U.S.A」ダンスももちろん披露。
会場内には桜が咲いている箇所もあることで春らしさを感じさせるロケーションをさらに春らしくするのは「桜花爛漫」。フェスで演奏されるのは少し久しぶりだろうか。
巨匠が移籍後初リリースとなる「BUBBLE-GUM MAGIC」の告知を行うとともに、
「ずっと昔から切磋琢磨してきたフォーリミがこうして名古屋でこんなに大きいフェスをやっていること、本当に刺激になります。僕らもまだ全然決まってないですけど、2年後に横浜スタジアムでワンマンをやるために頑張っていこうと思ってます!」
とフォーリミとこのフェスへの思い、さらにはバンドとしての新たな目標までを口にすると、
「お互いに全然お客さんがいない時によくライブでやってて、フォーリミのメンバーたちがフロアで見てくれていた曲」
という「夕映えの街、今」ではフォーリミのKOUHEIがステージに登場し、八木に代わってドラムを叩く。やはりKOUHEIが叩くことによってもともとこの曲の持つパンクさがさらに増す中、八木はステージを走り回っていたかと思いきや、ステージを降りて客席にダイブ。その際に履いていた靴をなくしてしまったらしいが、今となってはこの2組がガラガラのライブハウスでライブをしていたということが信じられない位置にまで来ているが、だからこそこの2組が共有できているものがある。そうした絆のようなものが見えるのはこのフェスだからこそ。
KOUHEIがステージを去ってドラムが八木に戻ると、最後に演奏されたのは「太陽系リフレイン」。この曲もまたかつてフォーリミとともにガラガラのライブハウスでライブをしていた頃に演奏していた曲だと思うが、最近はクライマックスに演奏している曲を前半に、それ故に後半はかつてのように。それはあの頃に戻ったというわけではなく、あの頃の気持ちを両バンドともに今も忘れてはいないということ。
KEYTALKは普段からとてつもない数のライブを行っているバンドだし、フェス以外の場所ではガラッとやる曲を変えることが多い。それは常にどんな持ち曲でも演奏できる状態にあるというバンドの姿勢あってこそだが、この日のKOUHEIとのコラボからの終盤はこのバンドが確かに持っているパンクさを感じさせた。このフェスに出ればそれを感じられるのなら、できることならこれからも毎年。
リハ.YURAMEKI SUMMER
リハ.sympathy
1.MATSURI BAYASHI
2.MONSTER DANCE
3.Summer Venus
4.桜花爛漫
5.Love me
6.夕映えの街、今 (ドラム:KOUHEI)
7.太陽系リフレイン
太陽系リフレイン
https://youtu.be/_cIxcdUEagQ
・ENTH [LAND STAGE]
開催初年度から出演しているENTH。これで3回目の出演であり、名古屋出身としてLAND STAGEを背負っているバンドと言っていい存在。
前日のこのステージのトップバッターであったONIONRING同様にスリーピースのメロディック・パンクバンドであり、1曲目の「Will」から続く代表曲「ムーンレイカー」に至る序盤だけでメロディックパンクバンドらしいメロディの美しさは感じることができるのだが、編成面ではスリーピースであれどボーカルのdaiponがギターではなくベースということで、ニット帽にサングラスという野外フェスらしいのかなんなのかよくわからない出で立ちのNaokiのギターで変化をつける曲が多いし、近作の曲には「1曲の中に何曲分のアイデアを詰め込んでいるのだろうか」っていうくらいに急な展開をする曲が多い。
それはシンプルなメロディックパンクバンドに比べるとわかりにくさにも繋がりかねないところではあるが、メロディックパンクバンドにこんなに展開しまくるようなバンドはほとんどいない(そもそもパンクはそうしたアレンジと相性が良くない音楽だ)だけに、このバンドだからこその個性となっている。
観客の合唱を煽る「LOVE ME MORE」で突っ走りまくった流れに一呼吸置くと、
「最高に楽しいです。このフェスは出演者にフォーリミからのメッセージカードが楽屋に置かれてるんですけど、GENさんが
「ENTHはもういいっしょ」
って言って白紙の紙を渡されました(笑)」
という気心知れた間柄であることを示すエピソードは何故か全くウケなかったが、その分音楽はさらに盛り上がりを増していった。
初年度にこのフェスで見た時はまだ観客がまばらだった。(フォーリミのRYU-TAがステージに登場した時は一気に人が増えたけど)
それが今やこのステージが満員になるくらいの人を集めるようなバンドになった。名古屋出身のバンドとしては1番の出世株と言っていいし、そういう意味ではこのバンドはこのフェスの象徴的なバンドの一つと言っていいのかもしれない。
1.Will
2.ムーンレイカー
3."TH"
4.HAHA
5.HANGOVER
6.LOVE ME MORE
7.Gentleman Kill
8.SLEEPWALK
9.Get Started Together
10.Bong! Cafe' au lait! Acoustic guitar!
ムーンレイカー
https://youtu.be/CAuRVpM9v24
・SUPER BEAVER [SKY STAGE]
初年度はLAND STAGEに出演していた、SUPER BEAVER。日本武道館ワンマンも果たし、すっかりこのステージが相応しい存在のバンドになった。
メンバー4人がステージに登場すると、
「いつだって始まりは、青い春」
と言って「青い春」からスタート。サビでは観客の両手が青空に向かって伸び、ワルツのリズムの手拍子では
「手拍子は頭の上で!」
と渋谷が言うとさらに高く手が上がる。
「ギター元気ねぇな!」
と言うとおりに序盤は柳沢のギターの出音が良くなかったが、決して弾くことをやめずに曲中に挽回してみせるあたりのローディーも含めたチームワークはさすがに自分たちの意志でインディーズであることを貫き続けてきたバンドである。
このライブも、人生すらもあっという間に終わってしまうということを歌う「閃光」、このバンドの持つポップな要素を全開にした「予感」と続くと、
「音楽で一つになろうとかバカらしい!束になってくんなよ!お前1人で来い!」
と渋谷なりの言い方で合唱を煽る「秘密」はしかし、その1人が1万以上も重なり合うことで美しいハーモニーと景色を描き出していた。
「こうしてフォーリミに呼んでいただいてこのステージに立たせていただいてますが、仲が良いから出たいんじゃない。カッコいいバンドがやっている、カッコいいフェスだから出たい。きっとフォーリミも単に仲が良いからって呼んでくれているわけではないと思っています」
とこのフェスのこのステージに立っている理由を渋谷が語ると、
「若くして命を絶ったロックスター、カッコいいと思ったことは一度もない。生きてこそ。生きてナンボ」
と続けた。それはこの前日に渋谷が葬儀に行った松原裕氏のことを言っているのかと思ったし、それももちろんあるだろう。でも自分は松原氏のことを言ったのであれば、最後に「ありがとう」を演奏すると思っていた。
「受け入れてくれてありがとう 分け合ってくれてありがとう」
と今まで共にした時間に感謝を込めて。
でもこの日最後に演奏されたのは、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と歌う「27」だった。翌日になって、飛び込んできたヒトリエのwowakaのニュース。渋谷は、SUPER BEAVERはそれを知っていたんじゃないかと思う。だからこの曲にしたんじゃないのかと。
もちろんそれは自分の憶測だし、本当のところはメンバーにしかわからない。だけど行動や活動はもちろん、一語一句、一音一音の全てに自分たちの意志を込めてきたのがSUPER BEAVERというバンドだ。我々はその意志に心を何度も震わされてきた。だからこそ、この選曲にも大きな、そして確かな意味や意志があった気がしてならないのだ。
それでも決して感傷的なだけのような後味は残さない。これはフォーリミのための舞台であることをちゃんとわかっているバンドだから。
1.青い春
2.閃光
3.予感
4.秘密
5.27
27
https://youtu.be/9Oswl4gGMFw
・Hump Back [LAND STAGE]
前日のヤングオオハラ同様に、フォーリミのスペシャ列伝ツアーの後輩にあたる、Hump Back。サウンドチェックの段階から林萌々子(ボーカル&ギター)は笑い声を上げながら演奏しており、バンドの状態の良さとこのフェスに出演できる喜びを感じさせる。
本番で3人がステージに登場し、「月まで」からライブをスタートさせると、髪の一部を緑色に染めたぴか(ベース)がぴょんぴょん飛び跳ねながら演奏するのは変わらずだが、いつにも増してステージを左右に走り回っている。すると
「大好きな04 Limited Sazabysに、カッコいいって思われたいんだ!」
とそのぴかが叫ぶ。このバンドは林のチャットモンチーへの憧憬から始まったバンドであるが、
「ぴかはずっと自分でチケットを取ってフォーリミのライブにディッキを履いて行っていた。だからこのフェスに出るのが夢だった」
とMCをすることのないぴかに変わって林がぴかのテンションの高さを解説すると、
「メンバーの夢は私の夢でもある。大きいところでやりたいとか、あのステージに立ちたいとかいろいろあるけれど、私の夢はこの3人でずっとバンドを続けること。それだけ」
とあくまでロックバンドでありたいという自分たちの思いを語る。それはかつてたった1人でHump Backの名前を背負って活動してきた林だからこそ強く響く。こうしてメンバーが横にいてバンドができるのが当たり前のことではないのをわかっているから。その林の言葉を聞いたぴかは一瞬、目元を拭っていたように見えた。
「こんなに雲一つない青空の下やけど、私は天邪鬼なんで」
と言ってそれまでのアッパーなギターロックチューンから一転、いつかはこうした野外フェスの夜の時間に聞いてみたくなるようなメロディと歌詞をしっかり聞かせる「ナイトシアター」を演奏した。ほかに演奏された曲たちが代表曲であり定番曲的な曲たちだったためにこの日はこの曲が強いインパクトを残していた。
そしてラストに演奏された「星丘公園」では
「君が泣いた夜にロックンロールは死んでしまった」
と林がギターを弾きながら歌う。でもその歌詞とは裏腹に、このバンドがこうしてこの3人で活動しているうちはロックンロールは死なないと思える。元から良いバンドだと思っていたが、そうまで思えるような存在のバンドになった。そんなバンドがバンド主催のフェスのステージに立っている意味は本当に大きい。決して新しいことをやっているバンドではない。でもだからこそ、いろんなバンドたちが受け継いできたロックバンドのロマンをこのバンドは持っている。
リハ.生きて行く
リハ.クジラ
1.月まで
2.高速道路にて
3.拝啓、少年よ
4.短編小説
5.ナイトシアター
6.星丘公園
星丘公園
https://youtu.be/YatJsm5i8Jw
・SiM [SKY STAGE]
フォーリミがパンクヒーローならば、同世代のラウドなダークヒーロー、SiM。自身の主催するDEAD POP FESTiVALにフォーリミが出演したこともあるが、ついにこのフェスに初出演。
ベースのSINがどこか髪が短くなったように感じる中でメンバーが登場すると、MAH(ボーカル)がマイクをぐるぐると振り回しながら展開が激しい「DiAMOND」からスタートし、この2日間、ラウドと呼べるようなバンドが出演していないだけにこのバンドのサウンドの凶悪さ、重さ、強さが際立っている。ここまでのフェスの空気とは全く違う。
モッシュやダイブが起こるのはもちろんだが、それ以外にも「Amy」でのツーステ、「GUNSHOTS」でのモンキーダンス、「T.H.C.」での高速左回りサークルと、雰囲気はもちろんのこと、見せてくれる景色もそれまでのこのフェスとは全く違うが、
「あいつらが大好きな地元・名古屋のフェスにようやく出ることができました!ありがとう、coldrain!」
と名古屋のバンドであれど普段は逆にいじるcoldrainの名前をフォーリミの代わりに出すという嘯きっぷりを見せると、
「このフェスはフォーリミのメンバーとか、マスコットキャラクターとか、会場の雰囲気がふわっとしてるから、
「あ〜たんぽぽだ〜」
っていうやつが多いと思ってた(笑)」
と悪魔らしいいじりっぷりで笑わせてから「Blah Blah Blah」で合唱を煽るも、
「この前、名古屋でcoldrainの対バンに出た時の方が声が大きかったぞ!勝ってるのは人数だけですか!?」
と演奏を止めてさらに煽る煽る。それによって実際に観客の合唱は明らかに大きくなるあたりは流石。MAHという男のカリスマ性の強さを感じさせる。
するとそのMAHが急に、
「今日はお便りをもらっています」
と紙を広げると、
「SiMの皆さん、こんにちは。04 Limited SazabysのHIROKAZです。…ちょっとよく知らない人ですね。
今日、もし「KiLLiNG ME」で観客をステージに上げてギターを弾かせるくだりをやるのならば、ぜひ私に弾かせていただけないでしょうか。
いい度胸だ。HIROKAZ君、来なさい!」
とギターを弾くのを懇願したHIROKAZがステージに現れる。
「さっき楽屋で見たら全然弾けてなかったけど(笑)」
と言われながらもSHOW-HATEからギターを受け取るとしっかりあの独特のリフを弾く。SHOW-HATEはそのHIROKAZの様子を眺めたり踊ったりと実に楽しそうだ。
ギターを弾き切ったHIROKAZがステージを後にすると、ラストはウォールオブデスが炸裂した「f.a.i.t.h」で、結果的にはSiMだからこそ、ラウドバンドだからこそ見せることができる光景を全てこのフェスで残してみせた。
SiMは自分たちが出る意味があるフェスしか出ないという姿勢をずっと貫いている。だからこそどんな場所でも観れるというバンドではないのだけど、その姿勢があるからこそ出るフェスでは強すぎるくらいの爪痕を残していく。そしてその姿を見るとこのバンドの主催フェスであるDEAD POP FESTiVALに今年も足を運びたくなる。
1.DiAMOND
2.Amy
3.GUNSHOTS
4.T.H.C.
5.Blah Blah Blah
6.KiLLiNG ME feat.HIROKAZ
7.f.a.i.t.h
DiAMOND
https://youtu.be/iA8UwjH0ljw
・SPECIAL OTHERS [LAND STAGE]
こうした野外フェスのピースフルな雰囲気にはピッタリのバンドであるが、このフェスにおいてはやはりどこか異物感というか、アウェーな感じがするのは否めない、SPECIAL OTHERS。このフェスには初年度以来の出演となる。
いつものような出で立ちでふらっとメンバーたちがステージに登場すると、まずは音を確かめ合うかのようにジャム的な演奏を始め、最新ツアー会場限定シングルである「Puzzle」でスタートするという攻めっぷり。かつての「Manbo No.5」のような柳下のギターリフが印象的なダンスナンバーであるが、持ち時間が短くて1曲が長いという曲数を多く披露することが絶対にできそうにないフェスでいきなり新曲をやるという攻めっぷりは自分たちがまだベテランであるという意識が全くないこのバンドだからできることである。
初期からのおなじみの代表曲「BEN」ではメンバーそれぞれのソロ回しも挟まれ、ただでさえ長尺の曲がさらに伸びていく。しかしながら晴天の空の下で聞くこの曲のサウンドの気持ち良さたるや。芹澤と宮原のボーカル部分はここが楽園であるかのような錯覚さえ感じさせる。
宮原「俺たちは自分のことをおじさんだとは思ってないけれど、果たして俺たちはおじさんなのか」
という緩いMCから、
芹澤「みんな俺たちのこと絶対覚えて帰って!インスタにもいいね!して!俺たちのファンは世代的にインスタやってないから全然いいね!がつかなくて公式マークがついてくれない!(笑)
そしてSPECIAL OTHERSはSiMに匹敵する盛り上がりっぷりだったってインスタに書いて!それだけの簡単な仕事だから!」
とアピールするのに珍しくやたらと必死な芹澤が、
「SiMの盛り上がりに匹敵するためのスペシャルゲスト」
として呼び込んだのは、フォーリミのGEN。
GEN「このステージに立つの初めてなんで緊張してます!」
芹澤「まぁお前もこんなにデカいステージに立つのは慣れてないだろうからリラックスしろよ?(笑)」
という茶番が繰り広げられる中、SPECIAL OTHERSの出演が発表された時からまず間違いなくやるであろうと思っていた、GENをボーカルに迎えたコラボ曲「LOOP」を披露した。
30分で3曲という内容であるがゆえに、聴きたい曲が聴けないというのは仕方ないところである。でもこの「LOOP」が聴けるのはこの日のこの時間、この会場のこのライブだけ。普段とは全く違うタイプのサウンドを軽やかに乗りこなすGENの姿からは、このバンドと出会ったことによってボーカリストとしてさらに成長していることを感じさせた。
1.Puzzle
2.BEN
3.LOOP feat.GEN
LOOP
https://youtu.be/iVa0NaJ2-pI
・クリープハイプ
SPECIAL OTHERSからフォーリミよりも年上の中堅バンドが続く中盤。SPECIAL OTHERS同様にこのフェスには初年度以来の出演となるクリープハイプが登場。サウンドチェックから新曲をチラッと演奏するサービス精神を見せてくれる。
いつものようにSEもなしにメンバー4人がステージに現れると、尾崎世界観(ボーカル&ギター)がギターを弾きながら
「桜散る 桜散る」
と「栞」を歌い始めると、
「新しい街に行っても 元…げん!?元気でね、っていうより、GEN来てね。果たして来てくれるでしょうか」
と言うと、FM802バージョンでボーカルを務めたうちの1人(他にはあいみょんやsumika片岡健太など錚々たる面々)であるGENがステージに現れ、尾崎とボーカルを分け合う。もともと歌っていた曲なだけに違和感は全くない。ちょっと歌詞のカンペを見ているような感じはあったけど。
歌い終わるとメンバーたちに向かって頭を下げたGEN。それに応じてGENに対して頭を下げる尾崎。年齢も少し離れているし、2組の関係性は決して友達というようなものではない。でもその姿からは音楽家としてリスペクトし合うもの同士だからこその姿であった。
もはやこのバンド最大の代表曲となりつつある「イト」、4つ打ちの軽快なダンスチューン「おばけでいいからはやくきて」、長谷川カオナシがベースではなくキーボードを弾く「5%」と近年リリースの曲が続く。激しいサウンドのバンドではないが、観客は集中力高く尾崎の歌とバンドの演奏を聴いている。
天気の良い野外でのライブなだけに「憂、燦々」や「ラブホテル」という夏を先取りするような曲をやってもいいような状況で演奏されたのはこれまたじっくり聴かせるタイプの「二十九、三十」。尾崎が敬愛する銀杏BOYZがカバーしてからはこうしてフェスでも演奏される機会が増えてきているが、
「前に進め 前に進め 不規則な生活リズムで」
という歌詞に背中を押されてきたかのように、客席では涙を流すような観客もいた。このフェスにここまで深くこのバンドの曲と向き合ってきた人達がいたのはちょっと意外であった。
MCもほぼほぼなしに「社会の窓」で尾崎のボーカルも声量と強さを増していくと、最後はやはり「HE IS MINE」でこの日も
「セックスしよう!」
の大合唱を巻き起こし、
「よくできました」
とこのフェスの観客を称えてステージを去っていった。
いつにも増してシリアスな空気だったが、それが終わりの時間が近づくこのフェスの最後の時に向かっているかのようだった。軽口を叩いたりすることもなかった、ひたすらに音楽であり続けた35分間だった。
リハ.ニガツノナミダ
リハ.泣き笑い
1.栞 feat.GEN
2.イト
3.おばけでいいからはやくきて
4.5%
5.二十九、三十
6.社会の窓
7.HE IS MINE
栞
https://youtu.be/j4XsCJHfplg
・Survivd Said The Prophet [LAND STAGE]
もともとはこの位置にはSUNNY CAR WASHが出演する予定だった。しかし出演キャンセル(結果的には活動休止状態)になったことにより、急遽出演が決まったのがこのサバプロこと、Survive Said The Prophetである。
サウンドチェックで宇多田ヒカル「Flavor Of Life」をラウドにカバーしていた姿からもわかるとおりに、Yoshの歌唱力の高さとバンドの演奏力とアレンジスキルの高さを併せ持つラウドバンドである。
ベースのYudaiは弾きながら叫びまくり、Yoshはステージを右から左に動き、長い髪を解いたり束ねたりと繰り返しているが、メンバー全員の見た目は実にスタイリッシュ。しかしながらオシャレというよりは素直にカッコいいというような。
とはいえラウドバンドとしてはサウンドは王道というか、他のジャンルの音をわかりやすく取り入れたりするというよりはラウドな中でもキャッチーに、という意識で曲を作っているのがわかるし、そこはラウドバンドじゃなくても全然歌えるであろうYoshの歌唱力の高さによるものも大きいと思う。
「さっきSiMのライブ見たらやっぱりすげぇなぁって。ラウドの先輩方だから補足しておくと、
「あ〜たんぽぽだ〜」
ってたんぽぽ見つけた後に綿毛を吹き飛ばしたのが耳に入ると聞こえなくなっちゃうから気をつけてね」
となぜかこのステージで豆知識を教えてくれるYoshは
「次に向こう(SKY STAGE)に出るバンドと俺たちが同じアニメのタイアップをやりました。俺たちの方がカッコいいってことを見せてやるよ!」
とギラつきながら「found & lost」で確かにアニメ主題歌になったのも納得なキャッチーなメロディを響かせ、
「俺たち、このフェスで1番最後に発表されたバンドです。それなのにこんなに歓迎してくれてるなんて、このフェスは本当にすごい」
と直前になって出演が決まった自分たちを受け入れてくれたこのフェスと観客に感謝を告げていた。
しかしどんなバンドでもこうして代打として出てきて受け入れてもらえるかというとそんなことはない。このバンドはすでにラウドバンドの急先鋒として話題になっているし、この日のラインアップ的には日頃からこのバンドの音楽を聴いている人も多いであろうけれど、こうしてこの日代打にもかかわらずLAND STAGEを埋め尽くした観客が凄まじい勢いでダイブをしたりしていたのは、このバンドがライブハウスシーンでしっかり勝ってきたバンドならではのライブの強さをしっかり持っているバンドだから。
今やラウドバンドはかなり規模に差が出てきているところもあるし、ラウド系が好きな人にしか届いていないという状況にあるバンドもいてなかなか厳しいところも見えたりするが、かつてSiMやcoldrainが見せてくれたように、このバンドがシーンに新たな風穴を開けてくれるんじゃないか、と期待したくなるくらいに素晴らしいライブだった。
1.space[ s ]
2.TRANSlated
3.Fool's gold
4.Right and Left
5.found & lost
6.When I
7.Network System
found & lost
https://youtu.be/VrOOigt76K0
・BLUE ENCOUNT [SKY STAGE]
KEYTALKとともにフォーリミとは全然観客がいない時から切磋琢磨して成長してきた、BLUE ENCOUNT。初年度にはこのバンドがライブをしている時にステージ袖でKEYTALKのメンバーたちが歯を磨いているところがスクリーンに映し出されたりしたこともあった。
メンバーがステージに現れると、いきなり田邊が歌い始めたのは「もっと光を」。田邊の歌声に合わせてたくさんの人がリフトしていくが、確かに最近はこうして序盤に演奏されるパターンもよくあるとはいえ、いきなりこの曲をやったということにはKEYTALKが「MONSTER DANCE」を前半にやったのと同じような理由を感じる。
「フォーリミとYON FESの物語が終わりませんように!」
と言って演奏された「Never Ending Story」、さらには「ロストジンクス」と、やっている曲だけを見たら初年度となんら変わらないように見える。きっとこの辺りの曲はフォーリミと出会った頃からライブで演奏して鍛え上げてきた曲なんだろう。
そのまま「LAST HERO」のイントロを演奏し始めたかと思いきや、辻村のベースの音が急に出なくなってしまい、演奏がいったん止まってしまう。復旧させようとする辻村とスタッフを横目に、田邊は高村のドラムセットの前で何やら話し、
「フォーリミの曲をベースなしでやるか〜!」
と言って「monolith」のカバーを演奏。しかしあまりにもキーが高すぎるからか、田邊の歌はいつも以上にヤケクソみたいな感じに。田邊もキーはかなり高い方まで出るボーカリストであるがために、改めてGENの声の高さを実感する。いつのまにか辻村のベースも復旧して普通に「monolith」の演奏に加わっていた。
「DAY × DAY」を終えると田邊が、
「今でもあいつらと初めて会った時のことはよく覚えてる。大須の味仙の2階の席。初めて会ったのにすぐに意気投合して、その日の深い時間までバンドのことや自分たちの現状、どうなりたいか、何をやりたいかまでたくさん話した。
そんなあいつらがこうやってフェスをやって、俺たちを呼んでくれている。一つだけ言えるのは、あの時あいつらに会ってなかったら俺たちは音楽を絶対続けてなかった。俺たちに音楽を続けさせてくれたあいつらに…今そこにいるんだけど、ちゃんと感謝を伝えたい!」
と長い付き合いであるフォーリミとのエピソードを話すと、田邊は袖にいるメンバーたちの方を向いて
「本当にありがとう!」
と叫んで頭を下げた。その後にすぐ
「やっぱりすげぇ恥ずかしい!(笑)」
と照れていただけに、歌にすれば思いを伝えられるように、ステージに立っているからこそ言えることだったのだろう。
その言葉を受けたからこその「THANKS」の
「あなたに出会えて本当に良かった 心からありがとう」
のフレーズを聴いた観客は汗と涙にまみれまくりながらモッシュやサークルを展開していたのだが、そんな感動的な流れであっても最後には
「それでも、俺はバチバチでありたい!」
と言って「VS」を演奏した。仲間だけど、いつも手を繋ぐ存在なわけじゃない。悟空とベジータやピッコロのように。それが様になるのはBLUE ENCOUNTというバンドが常に熱血的な感情をむき出しにして走ってきたバンドだから。気づいたらこんな大きなステージのトリ前まで来ていたのも当たり前のことなのかもしれない。
リハ.HEART
1.もっと光を
2.Never Ending Story
3.ロストジンクス
4.monolith 〜 LAST HERO
5.DAY × DAY
6.THANKS
7.VS
VS
https://youtu.be/fey-Kn6WROs
・ハルカミライ [LAND STAGE]
2日間に渡って若手バンドたちが熱演を繰り広げてきたLAND STAGEもいよいよ最後の時間を迎える。このステージのトリはハルカミライ。今やZeppを即完させるようにまでなったバンドである。
サウンドチェックで小松謙太(ドラム)、須藤俊(ベース)、関大地(ギター)の3人が登場して、3人のコーラスのみで成り立つ曲(「ファイト!!」など)を演奏すると、まだ本番じゃないのにダイブの嵐。これは本番になったらどうなるんだろうか、と思っているところに橋本学(ボーカル)が登場すると、「君にしか」でスタートし、やっぱり客席はダイバーの嵐だし、なんなら橋本も持ち時間の半分以上は客席にいるんじゃないかと思うくらいにステージを飛び降りて客席に突入、次の曲が始まる前にステージに戻ったかと思ったらまた客席に突入と実に忙しないというか、もう感覚のままに行動している。
「普通のバンドなら、終わってからフォーリミ見るために走れる体力残させないからな!って言うんだろうけど、ハルカミライは一味違うぜ。俺たちはフォーリミを見るために走って、そこでさらに大きな声を出して歌うための元気を与えに来たんだ!」
と橋本は青春パンクと言っていいような、人の背中を押す音楽を鳴らすこのバンドの軸をしっかり言葉にしてみせる。かと思えば、SKY STAGEでフォーリミ待機している人たちに、
「おーい!こっち来いよ〜!」
と呼びかけるも、
「全然反応しねぇや(笑)」
といちいち面白く、周りの女性からは「可愛い」という声すら上がる。
「フォーリミとはツアー2箇所に呼んでもらったんだけど、かなりスパークしまして。ベースの須藤が行方不明になったと思ったら、道端で寝てて(笑)
小松が探しに行ったんだけど、小松も途中の道端で寝ちゃって(笑)結果的に須藤の方が先に帰ってくるっていう(笑)」
とまだ若いのに一昔前のバンドマンみたいな酒エピソードを語りながら、曲が始まるとメンバーは暴れまくり、橋本のみならず関までもギターとマイクスタンドを持って客席に突入していくというやりたい放題っぷり。その無軌道さは自分が10代の頃に見ていたパンクバンドたちのようだ。
「向こう、桜が咲いてる!」
とこの会場に咲いている桜の木を指差してから演奏された「それいけステアーズ」はサビで「さくら」というフレーズが繰り返される爽やかな曲であるが、やっぱり橋本は客席に突入し、あまりのダイバーの多さに倒れてしまっている観客を見るや、
「起こせ起こせ!大丈夫か!?」
と全員が立ち上がるのを確認するまでしっかり待つ。だからこそステージに戻るのが遅れてしまうのだが、
「ちょっとお前らだけでできる曲やってて!」
と言うと橋本がステージに戻るまでの間に3人は「ファイト!!」を演奏し、やっぱりまたダイブの嵐に。ちなみにこの「ファイト!!」は
「あいつのことなら俺がぶっ飛ばしといてやるから」
と歌われる曲なのだが、リハも含めたらもう4〜5回はぶっ飛ばしている。
序盤に呼びかけたSKY STAGEでフォーリミ待機をしている人たちに再び呼びかけるも、
「そっちにいる人たち〜!もう来なくていいや(笑)」
ともうライブが終わることを匂わせると、「世界を終わらせて」でタイトル通りにライブを終わらせたかと思いきや、最後にトドメとばかりに「エース」を演奏し、途中で主催のフォーリミを見に行くために抜けることが一切できないくらいに最後の最後までやりたい放題、汗とダイブに満ちた30分をやり切った。
自分はだいぶ前にこのバンドのライブを、インディーズ時代のyonigeのツアーの対バンで小さいライブハウスで見たことがある。しかしその時は全くと言っていいほど印象に残っていない。その頃はまだ今のようなライブのスタイルではなかったし、パンクというよりもSUPER BEAVERのような歌モノのロックバンドというイメージだった。
何がどうなって今のようなスタイルに転じたのかはわからないが、橋本は今年リリースしたアルバム「永遠の花」のインタビューで、
「俺にとってパンクは中指を立てたりするものじゃなくて、優しく抱きしめるものなんです」
と自身のパンク感を語っていた。それはかつて
「僕パンクロックが好きだ ああ 優しいから好きなんだ」(「パンクロック」)
と歌ったブルーハーツのようだし(実際に「アストロビスタ」の歌詞にブルーハーツが出てくる)、自分はパンクのそういう部分に人生を変えられてこうして今でもロックバンドのライブを見に来ている。このバンドの音楽やライブはそうした自分の中に未だにある熱い部分を呼び起こしてくれる。だから後半、ライブを見ていたらいつのまにか涙が流れていた。もし自分が今10代だったら、このバンドをキッカケにしてロックに目覚めていたかもしれない。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.春のテーマ
6.アストロビスタ
7.それいけステアーズ
8.ファイト!!
9.世界を終わらせて
10.エース
ファイト!!
https://youtu.be/B94gR4od9tY
・04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そしてついにトリ。2日間のこのフェスを締めくくるべく、フォーリミがステージに。
オリジナルのSEでメンバーが登場すると、GENはSPECIAL OTHERSとクリープハイプのライブにゲストボーカルとして出演した時と同様のピンクのパーカーを着ている。
前日は本編の最後に演奏されたショートなパンクチューン「Message」からスタートすると、照明が色鮮やかに輝く「fiction」、
「YON FESから逃げ出せない!」
と言って演奏された「escape」と、この日は「SOIL」のモードというよりはこれまでのフェスにおける代表曲中心という内容なのだが、前日とはもう全く違う。メンバーの気合いや熱量が違う。GENの歌い方が違う。2日間の最後に自分たちが1番っていうライブを見せないでどうするんだ、という気概が見えるし、その裏にはこの2日間、この時間に至るまでにバトンを繋いできてくれたアーティストたちの思いを全て自分たちの力に変えているかのよう。
だからこそ、今年はラーメン屋の店主としても活躍していたRYU-TAの「Chicken race」の煽りもいつにも増して強く、それが「days」「Brain sugar」という新旧のメロディが立った曲をしっかりと繋いでいく。
今年もフォーリミのメンバーはそれぞれ様々な出演者のステージに登場してコラボを果たしてきたが、この日はフォーリミのステージにもゲストを招く。呼び込まれたのはSPECIAL OTHERSの鍵盤担当の芹澤優真。
GEN「芹澤さんはいつも金の話しかしない(笑)」
芹澤「家賃とか税金とかの話をするとだいたい年収がどのくらいかわかる(笑)」
という実に芹澤らしい(この辺りのがめつさはSPECIAL OTHERSのツアードキュメントなどでもよく見ることができる)紹介をされると、「SOIL」に収録された芹澤参加曲「Shine」をキーボードが入った完全版で演奏。パンクな曲が多いだけにこの曲の優しいメロディは一層引き立つし、かつてこのフェスにスペアザが出演したことによってお互いの曲に参加し合うようになった。それはこれからのこのフェスとフォーリミというバンドの新たな可能性を示している。立ったままでキーボードを弾く芹澤の姿も実に貴重だ。
「考えすぎるな、GEN。でもこれは俺たちのフェス、YON FESだ。だから俺たちが1番良いライブをやらなきゃいけない!」
と考えすぎてしまいがちな思考をフラットにしてから演奏された「Squall」で再びバンドの熱量をさらに強く感じさせるようなパンクモードに振り切り、ラストは渾身の「monolith」でやはりダイブとモッシュの嵐に。前日とは1曲目と最後の曲を入れ替える形になったが、それによって与えられる印象や余韻は全く違うものになった。
アンコールではこうしてこの場所でフェスを開催できているからこその感謝を語り、このフェスと参加者の未来に光を当てるように「swim」を演奏すると、GENはステージにKEYTALKの首藤義勝を招き入れ、自身のベースを義勝に委ねると、自分はハンドマイクで歌ったのはファストかつショートなパンクチューン「Remember」。
これで大団円かと思いきや、
GEN「義勝ミスってなかった?もう一回やります!ギター、MERRY ROCK PARADEで俺たちを助けてくれた、SUPER BEAVER柳沢!BLUE ENCOUNT江口!」
とメンバーがインフルエンザになった昨年末にサポートギターとしてバンドに参加した柳沢と江口を呼び込む。
となるとギターが多過ぎるだけにHIROKAZがギターを下ろし、人生2回目となるダイブをするべく客席に向かおうとするのだが、曲を始める前に客席を見たKOUHEIが、
「お前さすがにそれは危ないからやめろ」
と、リフトの上にさらに乗っていた観客に注意する。GENは「今日はまぁ無礼講だから…」と言っていたが、それでもKOUHEIは
「最後に誰にもケガして欲しくないから。それはやめろ」
と決して譲らず、その観客を降ろさせた。
KOUHEIはかつてもSWEET LOVE SHOWERで同じように曲を始める前にリフトが乱立してるのを見て、それをやめさせたことがある。自分たちが見たいのはそういうものじゃない。だから多少空気が変わってしまうとしても、観客に直接やめろと言う。フォーリミはKOUHEIが加入してから一気に快進撃を続けてきたし、それは伊地知潔が加入したアジカンやFujiが加わったWANIMAと同様に、ロックバンドはドラマーによって変わるということを示しているくらいに音楽面でもバンマス的な役割を果たしている男であるが、メンバーからはいじられまくっていても精神的な面でも最も重要なメンバーなのかもしれない。
開演前に自ら自転車に乗って観客の歩く横を通って会場の様子を見に行くのも、主催バンドのメンバーとしての責任感あってこそだし、この翌日、KOUHEIはツイッターで
「最近悲しいニュースが立て続けにあります。
辛い。
辛いけど、悲しい事や辛い事がこの世から無くなることはない。
だからこそ楽しいことだったり幸せな事を増やせるような存在でありたい。
お前ごときが?
そーだよ。
だからまだ死ねないんだよ。」
と自身の生き方を綴っていた。それは親しい人が亡くなってしまったから出た言葉でもあるのだが、KOUHEIのこの生き方がこのフェスを支えている1番大きくて太い柱なのかもしれない。
「お前ごときが」なんて思ったことなんか一回もない。時には女装までして我々を楽しませてくれて、こうして幸せだと思える場所を作ってくれている。間違いなくそれはあなたのおかげ。
そして柳沢と江口のギター、義勝のベースという布陣でもう一度「Remember」を演奏すると、HIROKAZが予告通りに客席にダイブしたのだが、袖からKEYTALKやBLUE ENCOUNTのメンバーがステージに乱入したことによってHIROKAZのダイブはかなりインパクトが薄くなってしまう。もうステージはYON FESオールスターズと言っていいような状態になっていた。最後の最後に、このフェスじゃないと絶対に見れないような景色が目の前に広がっていた。
演奏を終えるとステージに上がっていたメンバーたちをそのまま留め、残っていた出演者たちで写真撮影。掛け声はもちろん「1,2,3,4フェス」で、その掛け声を考案したKEYTALKの巨匠がカウントを取るという大役を任され、記念すべき4年目にして、平成最後のYON FESは幕を閉じた。
1.Message
2.fiction
3.escape
4.Chicken race
5.days
6.Brain sugar
7.Shine feat.芹澤優真 (SPECIAL OTHERS)
8.Squall
9.monolith
encore
10.swim
11.Remember ベース首藤義勝(KEYTALK)
12.Remember ベース首藤義勝、ギター柳沢亮太(SUPER BEAVER)、江口雄也(BLUE ENCOUNT)
Squall
https://youtu.be/NRhmgBtRKBA
このフェスに来たのは初年度以来3年ぶり。それくらい経つとやっぱり色々なものが変わる。初年度は「同年代」「名古屋」という色が強かったラインアップははるかに幅広くなったし、両ステージの動線や、入場ゲートの位置など、初年度に不便に感じた部分は参加者の声を拾い上げてしっかり改善されていた。
そうしてきっとこれからも続いていくことでフェスの形は変わっていく。その変わっていく様をこれからも毎年見ていたい。まだ来たのはたったの2回。でもこうしてここでライブを見たり、名古屋の街に行ったり、リニモの駅や車内に飾られた過去のこのフェスの写真を見たりすることによって、この場所が自分にとって間違い無く大事な場所の一つになっている。だからまた来年、ここでしかないどこかで。
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あいをかたるのならそのすべてはこのうただ