ツタロック2019 @幕張メッセ9〜11ホール 3/31
- 2019/04/03
- 22:29
TSUTAYAが主催するフェス、ツタロック。かつては「TSUTAYA店舗でCDを購入した人が行ける対バンイベント」という形だったが、昨年からは幕張メッセにてフェス形式で開催。昨年は1日だけだったが、今年は2daysに規模が拡大。
会場構成は昨年と同様にメインステージのMASSIVE STAGEと、セカンドステージのCOSMIC STAGEの2ステージ構成。5分もかからずにステージ移動ができるので、ひたすらライブを見まくりたいというフェスの楽しみ方をする自分にとっては実にありがたい。
10:35〜 Oh No Darkness!! [MASSIVE STAGE] (Opening Act)
オープニングアクトはオーディションを勝ち抜いてこのフェスへの出場権を獲得した3人組バンド、Oh No Darkness!!。
サポートギターを加えた4人編成で、シューゲイザーやグランジ的なノイジーなギターサウンドの上に紅一点のベース&ボーカルのウィスパー気味な歌声が乗る。
サウンドも好みであるのだが、何よりも普通はベース&ボーカルという立ち位置の人(パンクバンドに多い)というのは、歌をしっかり歌うためにベースの演奏は簡単にするのが多くのパターンではあるのだが、このバンドは体をくねらせながら音の意味でベースが動き回りまくる。
基本的にはバンド名から察せられる通りに光よりもほの暗い闇の中にいるかのような感覚になるバンドなのだけれど、メロディがキャッチーであるがゆえにそこまで鬱々としたイメージは浮かばない。まだ若いように見えるがSUPERCARやNUMBER GIRLが影響源にあったりするのだろうか。
MCらしいMCは一切なしで、持ち時間の20分を全て曲の演奏に当てると、演奏が終わったと同時にすぐさま楽器を置いてステージを去っていく。その様が実に潔いというか、最近はあんまりいないタイプのバンドだなと思った。
1.2001
2.スローシャッター
3.火星年代記
4.リワインド
5.Alt
火星年代記
https://youtu.be/vjzQT-IlBoI
11:00〜 ヤバイTシャツ屋さん [MASSIVE STAGE]
メインステージであるMASSIVE STAGEのトップバッターはこのフェス初出演のヤバイTシャツ屋さん。何気にフェスで見るのは久しぶりである。(年始からはあまりフェスがないだけに当たり前でもあるのだが)
おなじみの「はじまるよ〜」という脱力的なSEでメンバー3人が登場。どことなくこやまは疲れているのか、いつもの登場時よりも表情が浮かないように見えた。
いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で大合唱を巻き起こしながら踊らせまくると、2018年にリリースされたキラーチューン「かわE」、「鬼POP〜」とシングル曲あるいはリード曲が続くことによって、このバンドでしか聞けない歌詞(=他のバンドでは絶対書けない歌詞)の曲がこんなにも浸透していて、今のロックシーンのアンセムになっているとは、とこれだけデカいステージ、たくさんの人を前に演奏している姿を見ると改めて思う。
しかし2年前にポリープの手術をしてからは喉の不安がなくなってすごく歌いやすくなったと言っていたこやまのボーカルは珍しくやや不安定というか、喋り声もガラガラしたものになっていたし、ところどころ歌声がひっくり返りそうにもなっていて、曲中に水を飲みに行く頻度がいつもよりも多かった。それは朝イチだからという影響も少なからずあるんだろうか。
しかしそんな中でもしばたは朝から元気いっぱい、いつもと変わらぬ安定感を見せているのが頼もしいが、そのしばたはこの日がちょうど誕生日ということでMCで誕生日を祝ったのだが、てっきりしばたが作った曲をやるのかと思ったがそれはなし。
その代わりにこのフェスのスポンサーがXFLAGという「モンスト」の会社ということで、モンストに課金しまくっているというこやまがそれをそのまま曲にしたラウドな「リセットマラソン」が演奏されたのだが、まさかこの曲をフェスで聴くことになるとは。
そんなラウドな流れを「DANCE ON TANSU」の無意味な歌詞としばたのスラップによるダンサブルなサウンドで踊らせまくるものに変えると、「oi! oi!」ならぬ「Wi-Fi! Wi-Fi!」の力強いコールが起こる「無線LANばり便利」から、
「ヤバTを聴くと偏差値が下がります!偏差値が下がると先のことをなんも考えられなくなります!この後に体力残そうと思うな!ここで使い果たせ!」
と「ヤバみ」から「キッス!キッス!」の大合唱が起きた「ハッピーウエディング前ソング」という何も考えずに楽しまざるを得ない必殺曲2連発で終了かと思いきや、
「あれ?まだ時間ある!」
とさらに「喜志駅周辺なんもない」を追加し、曲中のコール&レスポンスもしっかり行うと、
「体力残そうと思うな!」
と言っていたこやまが最もそれを実践するかのように最後は床に倒れこみながらギターを弾き、立ち上がるとギターを抱えて大きくジャンプした。その姿は本当にカッコいいバンドのものだった。
「朝イチからヤバTはキツい!」
とこやまは観客にコールさせていたし、確かに体力的にはそうなのだが、こんなにライブを見ていて目が覚めるトップバッターはそうそういない。
声が出なかったのは悔しさを感じるものだったと思うが(登場時に表情が冴えなかったのは自身の状態をわかっていたからだと思う)、その悔しさはこれからこの規模のステージで最後にライブをやるときのための糧になると思う。ヤバTは間違いなく悔しさを原動力にして進んできたバンドだから。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
4.Universal Serial Bus
5.Tank-top of the World
6.リセットマラソン
7. DANCE ON TANSU
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.ハッピーウェディング前ソング
11.喜志駅周辺なんもない
かわE
https://youtu.be/ciFOh2KN99U
11:45〜 Amelie [COSMIC STAGE]
紅一点メンバーであるボーカル&ギターのmickを中心とした埼玉県越谷市の4人組バンド、Amelie。2日目のCOSMIC STAGEのトップバッターを担う。
冒頭の「ライアーゲームじゃ始まらない」からパワフルなボーカルを響かせるmickとライブをしまくって鍛え上げられてきた男性メンバーたちの演奏はこのステージがあくまでライブハウスのステージから地続きの場所であるかのよう。実際に地元の越谷のライブハウスを使ってフェスを主催したりとライブハウスに根ざした活動をしているバンドなだけに、この日の出演者の中で最もライブハウスバンドらしさを感じさせた。
ギターロックだったりパンクだったりと曲によってサウンドが異なる曲も多いが、その曲の中心にあるmickの歌声によって最終的に聞き手に届く時のイメージはポップだ。歌を中心に据えるバンドならではの歌謡性も随所に感じられる。
そんな中でmickが
「もう二度と会えない人がいて、悲しい思いをしたとしても私は笑って生きていたい」
と自身の生き様を語ってから演奏されたのは新曲「ノンフィクション」。どちらかといえば歌い上げるようなタイプの曲であるが、曲前に語られたエピソードの通りに、もう会うことができない大切な人を思い浮かべながら作った曲なのであろう。mickが間奏部分で目を拭うような仕草を見せていたのは気のせいだろうか。
そこからバンドサウンドはさらに加速。直人の鋭いギターが推進力となり、あっきーもステージを左右に動き回りながらベースを弾き、アサケンのドラムは一打の強さと重さを増していく。mickはギターではなくキーボードを弾きながら歌うという器用さと幅広さも見せる。
そしてラストはこのバンド最大のアンセムと言える「朝は来る」。疾走感のあるパンクサウンドと、タイトルフレーズでのmickのボーカルの伸び具合はこの広いステージでも広すぎる感じを全く受けないくらいのスケールを持って鳴っていた。
mickは曲間に熱い言葉を観客にぶつけていたし、不器用ではあるが真っ直ぐにしか生きることができない。それは同じようにライブハウスで生きてきた先輩バンドたちの姿と重なるところがある。でもこの日、おそらくバンド史上でもトップクラスの規模のステージに立っても、緊張したり物怖じしたり、普段の力が出せていない感じは一切しなかった。ただライブハウスで生きてきたんじゃなくて、ライブをしまくって生きてきたバンドだからこそそう感じたのだろう。だから今後もこうした広い場所で会える気がする。
1.ライアーゲームじゃ始まらない
2.メグリメグル
3.ゼロじゃない
4.ノンフィクション
5.手紙
6.step!
7.朝は来る
朝は来る
https://youtu.be/hb1dbEkK0Og
12:25〜 KEYTALK [MASSIVE STAGE]
もはや若きフェス番長と言ってもいいくらいにあらゆるフェスに出まくっているKEYTALK。北海道のツアーから帰ってきてすぐというタイミングでの出演。
おなじみの物販で賑々しく4人がステージに現れると、衣装というよりは私服のような出で立ちなのだが、それぞれのイメージカラーをしっかり纏っているあたりはこのバンドのメンバーとしての意識を普段から持っているからだろうか。
小野武正の軽快なギターのイントロが客席にダンスを促す「コースター」から始まるのだが、なかなか最近はフェスでは演奏されていなかった曲なだけに一瞬どよめきが起こる。
しかし続く「パラレル」は同時期に出たシングルではあるが、逆に最近はよく演奏されるようになってきている。サビでの巨匠こと寺中の声の伸びはもちろん、首藤義勝もツアーモードのままだからか喉の状態はかなり良さそうである。
その首藤のゴリゴリのスラップベースがまさにフェスならではのお祭り騒ぎに誘う「MATSURI BAYASHI」から
「まだ寒いけど、夏になろうぜー!」
と巨匠が言うと、てっきり「Summer Venus」かと思いきや、演奏されたのは「MABOROSHI SUMMER」。武正のthe band apart好きが伺えるギターのフレーズと大胆な転調は近年の曲にはあまりない要素なだけに、ある意味ではKEYTALKの原点らしさを感じさせてくれる。
義勝の甘いボーカルがポップなメロディに溶け合う「Love me」を終えると、巨匠が5月にニューシングルをリリースする告知を。それに伴ってレーベルも移籍することも発表し、その新曲「BUBBLE-GUM MAGIC」は
「今までとは違う大人なKEYTALKが見れる曲」
ということで、タイトルが発表された時にイメージしたポップな曲というわけではないようだが果たしてどんな曲なのだろうか。ここまでこの後に披露しそうな空気を出しておいてやらないというのもKEYTALKらしいけれど。
アジカンにとっての「リライト」、KEYTALKにとっての「MONSTER DANCE」では八木がなぜかサビ前に
「ロックンロール!!!」
と雄叫びをあげるという気合いの漲りっぷりを見せると、それに触発されたのか巨匠はマイクスタンドを逆さまに持って野太い声で歌い、この日はやらないのかと思っていた「Summer Venus」は最後に演奏され、結果的に春という季節から夏に一気にワープするかのように夏ソングを3曲も並べ(いかにも春な「桜花爛漫」をやらなかったのは意外)、EDMサウンドのパートでは義勝が
「ISSAさーん!」
と巨匠を呼ぶと、巨匠が全力の「U.S.A」ダンスをするというエンターテイナーっぷりを発揮した。総じて、この日もやっぱり楽しいライブであった。
フェスだと初めてライブを見るという人もたくさんいるだけに、いわゆるフェスセトリと言ってもいいところからはみ出すようなことはせずに、でも何度も見てる人たちが喜ぶような定番ではない曲もしっかり入れてくる。先月見たTHE BAWDIESとの2マンでは普段めったにやらないような曲をたくさんやっていた。もうかなりの数の持ち曲があるが、このバンドはライブですぐに演奏できる状態にある曲がどれくらいあるのだろうか。
そしてこの日は「ぺーい」のコール&レスポンスはなく、ひたすらにギターの演奏だけで魅せていた武正は、自身のライブ後は普通に客席でいろんなバンドのライブを見ていた。
かつてSWEET LOVE SHOWERに初出演した時に3日間全て会場を訪れて、ひたすらライブを見まくるという他の出演者の誰よりもフェスを楽しんでいた(3日で30組くらいライブを見たらしい)この男は今でも全く変わっていないし、その姿勢がKEYTALKの楽曲の幅広さと器用さに繋がってるところも間違いなくあると思う。
1.コースター
2.パラレル
3.MATSURI BAYASHI
4.MABOROSHI SUMMER
5.Love me
6.YURAMEKI SUMMER
7.MONSTER DANCE
8.Summer Venus
MONSTER DANCE
https://youtu.be/N39glrfql0I
13:10〜 Shiggy Jr. [COSMIC STAGE]
オープニングアクトのOh No Darkness!からトップバッターのAmelieと女性ボーカルバンドが続いたCOSMIC STAGEだが、このShiggy Jr.も紅一点ボーカルの池田智子を擁する4人組バンドであり、この流れは主催側も意図してのものだろう。
その池田は赤いパーカーに足が見える7分丈くらいの黒いパンツを履いて登場すると、サポートメンバー(シンセ、シンセ&ギター)の2人に加えてベースの森夏彦もシンセを弾く「TUNE IN!!」からスタートし、J-POPと言われてもおかしくない(メンバーたちもJ-POPのフィールドに勝負をかけに行っていることを明言している)くらいのきらめくポップサウンドで会場の空気はガラッと変わっていく。
時間の設定が1時間早くなる「サマータイム」を
「1時間だけ長く側にいられる」
というラブソングに落とし込むアイデアが秀逸な「サマータイムラブ」とバンドの代表曲的な曲を続けると、公開が迫っている映画「パンドラとアクビ」のオープニングテーマ「D.A.Y.S.」、エンディングテーマ「B.U.R.N.」を続けて披露。
「1999」
という歌い出しから始まる「D.A.Y.S.」はいかにもこのバンドらしいポップな曲だが、この日初披露となった「B.U.R.N.」は対照的にゴリゴリのファンキーさを持った曲。同じバンドであるにもかかわらずこうもベクトルが違う曲がオープニングとエンディングに使われているというだけでどんな映画なのか気になってくる。
たいと通りにエレクトロなサウンドのダンスチューン「DANCE DANCE DANCE」から、「どうかしちゃってんだ」ではバンドのコンポーザーであり、キャップを被った姿がキッズそのものな原田茂幸(ギター)のラップが炸裂し、森の長めのコール&レスポンスで観客をより一層自分たちの方に引き込み、最後には諸石和馬のドラムソロもあり、池田の存在感が強い中でもこの4人だからこそこのバンドであるということをしっかり見せていく。
そしてこのバンドの存在を音楽好きたちに知らしめた「LISTEN TO THE MUSIC」というバンド最初期からの代表曲から、最後はバンド最新の代表曲「ピュアなソルジャー」と橋渡しをしてみせ、自分たちのポップネスがアップデートされ続けていることを示してみせた。
それこそ「LISTEN TO THE MUSIC」がリリースされた時の期待値はものすごく高いものであったが、なかなか現状は思い描いたところまでは到達できていない。そんな中であっても昨年リリースされた「DANCE TO THE MUSIC」(このタイトルこそが自身の表れである)も非常にいいアルバムだった。
それだけにもっとたくさんの人に聞かれて然るべき、とも思うけれども、ライブを見るとまだまだもっと良くなるところがある。そしてそのカギはやはり池田が握っている。彼女がボーカリストとして覚醒すれば「ポップ」なだけじゃない、「曲はポップだけど、ライブを見るとめちゃくちゃカッコいい」という今まではスルーされていた層にも届くようになると思う。
1.TUNE IN!!
2.サマータイムラブ
3.D.A.Y.S.
4.B.U.R.N.
5.DANCE DANCE DANCE
6.どうかしちゃってんだ
7.LISTEN TO THE MUSIC
8.ピュアなソルジャー
ピュアなソルジャー
https://youtu.be/znNk8861QL4
13:50〜 打首獄門同好会 [MASSIVE STAGE]
日本が誇る最強の飯テロバンド、打首獄門同好会。堂々のメインステージへの出演だが、よりによって昼飯どきに登場である。
サウンドチェックの時点で事前に配られたうまい棒をテーマにした「デリシャスティック」からスタートすると、ステージ両サイドのスクリーンには終始VJによる映像が流れ、メンバーの演奏する姿は全く映らないため、ついつい映像ばかりを見てしまうくらいにやはりこのバンドの映像センスは高い。
カップラーメンのスーパーカップをテーマにした「YES MAX」は最新ミニアルバム「そろそろ中堅」に収録されている曲だが、ロッキンオンジャパン誌のインタビューでこの曲について語った、
「スーパーカップの各種の味をよく見てみたら、熟成味噌だけ3分じゃなくて4分なんですよ」
という言葉がインタビューの見出しになるバンドは世界中を探しても絶対いないだろう。(逆に見出しだけ見たらバンドのインタビューとは思えない)
魚をテーマにした「島国DNA」で「まぐろ丼」「しらす丼」などのメニューを連呼して空腹中枢を刺激してくると、
「皆さま、今日は3月31日ですが、平成最後の日ではありません。ただの3月31日です。明日からは4月1日。しかも月曜日ということで明日からフレッシュな気持ちで新生活や仕事やバイトを迎えられることでしょう。それでは聞いてください、はたらきたくない」
と大澤会長ならではのユーモアを発揮してから演奏された「はたらきたくない」からは「布団の中から出たくない」と可愛いキャラクターを使ったアニメーションに観客も釘付けに。
スクリーンを使って「そろそろ中堅」の宣伝をすると(中堅と言いながら還暦を超えたベースのJunkoはフェスに出るとダントツの最年長であるが)、そこに収録された、大澤会長のシャキッとコーンへの愛を曲にした「Shake it up 'n' go 〜シャキッとコーンのうた〜」へ。
「我々の演奏してる姿は見なくていいからスクリーンの映像を見てください」
というくらいにやはりこの映像も可愛いキャラクターのアニメーションなのだが、ここまでくるとただのコーンすらめちゃくちゃ美味しく見えてくるくらいにこのバンドの術中にハマってしまっている。
ファミコン時代の名作ゲームへのオマージュ的な映像を使った「きのこたけのこ戦争」を終えると、大澤会長が何やらメンバー1人1人に耳打ちし、
「あと1曲のつもりだったんですが、まだあと10分も残っている。さすがにその時間で1曲だけしかやらないのは申し訳ないので1曲増やします。日曜日だからこの曲が聴きたくなるよね!」
と言って演奏されたのは「おどるポンポコリン」のカバー。今までにも木村カエラなどもカバーしているが、このバンドがカバーすることによってこの曲はパンク・ラウドなアレンジも実によく似合う普遍性を持っていることに気付かされるし、2番ってこういう歌詞だったのかとも気づく。サビの最後の
「お腹がへったよ」
というフレーズはまさに今このバンドのライブを見ている我々の心境そのものである。
そしてラストは
「4月1日、新年度からの我が国の豊作を願って!」
と半ば無理矢理な感じもしなくはない「日本の米は世界一」。ラウド・パンクなサウンドのバンドであるがゆえにダイバーが発生するのはよくわかるのだが、この曲でダイブが起きてるのを見ると食糧を求めて暴動を起こしているような、米騒動のようにすら見えてしまう。
正直、こうしてフェスで真ん中あたりの時間に見ると、異物感しか感じないようなバンドである。しかしそんなバンドが幕張メッセのフェスのメインステージに出演するようになっている。異物感を撒き散らしながらもっと大きなところで見れる予感しかしないし、間違いなくこの人しかできない(というかやろうとしない)歌詞の書き方をしている大澤会長のクリエイティビティは尽きることがなさそう。
1.デリシャスティック
2.こどものねごと
3.YES MAX
4.島国DNA
5.はたらきたくない
6.布団の中から出たくない
7.Shake it up 'n' go 〜シャキッとコーンのうた〜
8.きのこたけのこ戦争
9.おどるポンポコリン
10.日本の米は世界一
はたらきたくない
https://youtu.be/GR-mLGV0X1I
14:35〜 SIX LOUNGE [COSMIC STAGE]
大分出身のスリーピースロックンロールバンド、SIX LOUNGE。最近はさまざまなフェスに出演するようになってきているが、このフェスにも初登場。
ステージに3人が登場すると、ヤマグチユウモリが歌い始めたのは「くだらない」。音数も少ない研ぎ澄まされたロックンロール。ここまでのフェスの流れで見るとそれはより一層引き立って見えるし、ギター、ベース、ドラムの3つのみ、しかも最低限の音しか鳴っていないのに成立するのはこのバンドのロックンロールバンドとしての強みだ。
すでに5月にリリースされることが決定しているニューシングル収録の「Lonely Lovely Man」は
「カモーン!ジャパーン!」
とユウモリが叫ぶというある意味では衝撃的な曲。実際にそう歌っているのかは歌詞を見ないとわからないところではあるが。
サビで一気に突き抜ける「僕を撃て」からはライブにおけるキラーチューンを連発。アンプに繋いだベースのシールドの太さと長い髪の間から覗かせるメガネが目を惹くイワオリクも徐々にステージを歩く幅が大きくなっていく。
「TSUTAYAさんにはいつもお世話になってます!CD借りたり映画借りたり、エッチなDVD借りたり!」
というユウモリのTSUTAYAに向けたコメントは信じられないくらいにスベり倒していたが、「LULU」「トラッシュ」とバンドの演奏は加速していき、それを担うナガマツシンタロウのドラムは手数をさらに増していく。スリーピースというシンプルな編成(当たり前のように同期の音なんか使わない)であるがゆえにこのナガマツのドラムの強さはこのバンドにとって大きい。
「バイバイ!」
とだけ告げると最後にその姿をステージに刻むかのように「ラストシーン」を演奏してステージをすぐに去った3人。その潔さもロックンロールバンドらしさを感じさせた。
MCもスベっていたし、演出やエンタメ性は一切ないバンドだ。しかもロックンロールというスタイルの音楽は世界的に見たらほぼ無風と言っていい状態。そんな、時代と逆行するようなスタイルのこのバンドがこの時間までのCOSMIC STAGEで最大動員を記録しているのを見ると(びっくりするくらい観客が多かった)、何かが変わりそうだし、climgrowだったりという後続のロックンロールバンドたちにとって大きな希望になると思う。もちろんまだまだもっとすごい曲を作れたらより一層変わると思うけれど。
そんな事ばっか考えてる。
1.くだらない
2.Lonely Lovely Man
3.僕を撃て
4.MIDNIGHT RADIO
5.LULU
6.トラッシュ
7.ラストシーン
ラストシーン
https://youtu.be/NrQOyA8T4GQ
15:15〜 the telephones [MASSIVE STAGE]
今年メジャーデビュー10周年を迎えて活動休止から復活した、the telephones。「今まで行ったことのないところへ行くツアー」を終え、ライブハウスだけでなくフェスの大きなステージにも帰ってきた。去年もVIVA LA ROCKには出演しているとはいえ、地元埼玉のフェスでの一夜限りという感じもあった(夏にはUKFCにも出演したけど)だけに、フェスに戻ってきたという感じがする。
おなじみの「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでアフロのカツラを被った4人が登場するというのはいつも通りだが、それぞれがモンストのキャラクターのグッズを持っていたり身につけたりしているというのはXFLAGがスポンサーのフェスであり、モンストユーザーであるこのバンドならでは。
いきなりの「Monkey Discooooooo」と準備運動とか一切なしのいきなりの本気モード。石毛輝は独特のハイトーンボイスで歌詞を「幕張」に変えて歌う。
続くノブのシンセがダンサブルに響く「HABANERO」では間奏で石毛が華麗に側転を決める。かつてもおなじみだった光景ではあるが、つい先日まで行われていたツアーでは会場がステージの小さいライブハウスだっただけに、こうしたアクションを取れるようなスペースがなかった。その姿を見るだけでも、the telephonesがフェスの大きなステージに帰ってきたということを実感する。
メンバー全員がモンスト大好きなバンドなだけにモンストのテーマ曲を演奏したり、
「前に幕張メッセで開催されたモンストの大会にメンバー4人で参加したんですよ。結果は速やかに予選落ちでしたけど(笑)」
というエピソードを語る。そして「モンスト」が好きすぎるが故に「モンスター」がタイトルに入っている曲を、と言って演奏されたのは活動休止明けで演奏されるのは間違いなく初めてとなる「DISCO AGE MONSTERS!!!」。そもそもがDISCOシリーズの曲のなかではかなりのレア曲であるのだが、ノブはカメラにスマホを向けてモンストの画面を見せたりする。あまりよく映らなかったけれど。
さらに
「2008年の1月にTSUTAYAのイベントに呼んでもらって、9mm Parabellum Bulletと凛として時雨と3組でやらせてもらえて。当時俺たちはまだインディーズでCDをようやく出せるようになった頃で、ライブをやっても客は10人くらいしかいなかった。そんな俺たちがそのイベントに出て、景色が変わった。だから今日はその時からやっている曲をやります」
というTSUTAYAとのエピソードを語った後に演奏されたのはダイバーも発生した「sick rocks」。実際にそのイベントに出演した半年後、the telephonesはロッキン、サマソニ、ラブシャという大型フェスに次々と初出演を果たした。そして今でも盟友と言える9mmと凛として時雨と邂逅することができた。10年以上経ってもメンバーがちゃんと覚えているのもよくわかる。
涼平のグルーヴィーなベースのイントロが観客を踊らせる「electric girl」からの「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」というダンスモードではノブが客席を真ん中で分けて向き合う形で「T」のポーズで踊らせる。
「後ろ見えてるよー!」
と後ろの方にまでそれをやらせるのはツアーでもおなじみだったが、このバンドのライブを初めて見るであろう人も多く、様子見的だった空気がこのノブの存在によって、
「あれ?この人めちゃ面白くない?」
「なんか楽しくなってきた!」
という雰囲気に変わっていく。ずっと見ているとその飛び道具的な存在にもすっかり慣れてしまったが、確かに初めてライブでノブを見た時は「こんなとんでもない人がいるのか。見た目はイケメンなのに」と衝撃的だった。それは現在においてはKing Gnuの井口理に受け継がれていると言えると思う。
そして石毛による「DISCO」のコール&レスポンスからはDISCOシリーズ2連発。ラストの「urban disco」ではノブがステージから飛び降りて客席にダイブ。その姿が見ている側にも抑えがたい衝動を呼び起こし、フロントエリアではまるでTOSHI-LOWに向かってダイブする人たちのように、ノブに向かってダイブする人が多発した。10年経ってもthe telephonesのライブは全く変わっていない。それはきっとこれから歳を重ねても変わらないんだろうとも思うし、やっぱり広いステージが似合うバンドだと改めて思った。
しかしなにもかもがかつてと全く同じというわけではない。序盤は明らかにアウェー感があった。それはかつてtelephonesのフェスでのライブでは感じたことのない(2008年にフェスに出始めた頃からアウェー感を感じたことはなかった)ものだった。
もうthe telephonesの存在や曲を知らない人たちがたくさんいる世代のフェスになった。それを改めて実感させられたが、それは決してネガティブなものだとは感じない。かつてこのバンドがフェスに出てファンを増やしてステージを駆け上がっていったような感覚をまた味わうことができるから。
まだ配信はもちろんYoutubeで曲を聴くことすら出来なかった時代。telephonesはひたすらにライブの反響で勝ってきた。良くない意味で「フェスバンド」と言われることも多々あったが、それはこのバンドがフェスで勝ってきたことの証明。そのthe telephonesがついにフェスのステージに帰ってきたのだ。
リハ.A.B.C.DISCO
リハ.FREE THROW
1.Monkey Discooooooo
2.HABANERO
3.DISCO AGE MONSTERS!!!
4.sick rocks
5.electric girl
6.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
7.I Hate DISCOOOOOOO
8.urban disco
urban disco
https://youtu.be/ph64dJTpIzI
16:00〜 Yogee New Waves [COSMIC STAGE]
前週にNO NUKESでライブを見たばかりなので、2週連続でライブを見ることになった、Yogee New Waves。この日も高野勲(キーボード)、松井泉(パーカッション)の強者サポートメンバー2人を加えた6人体制。
持ち時間がNO NUKESよりも若干長いからか、その時は演奏されなかった「Summer of Love」を最初に演奏すると、「Good Night Station」と続くことでゆったりと音に身を任せて揺れることができる。
前週は角舘が曲中でギターを下ろして歌ったりするというロックな衝動を感じさせる場面もあったが、この日はそういうことはなく、このフェスの出演者たちの中で自分たちしか持っていない面をしっかりとアピールするかのようにまったりとした空気に包まれていく。
それが極まったのは文字通りエメラルド色の照明に包まれた「emerald」から「Climax Night」という流れ。この心地よさはこの日の出演者でこのバンドでしか感じることができないし、かといって眠くなるようなことがないのは粕谷(ドラム)と上野(ベース)によるリズム隊のどっしりとした安定感があってのものだろう。
「今日の会場には僕らのconverseの映像が流れたり、ポスターが貼ってあって。だから今日は僕らもconverseを履いてきてます。勲さんだけ違うけど(笑)」
とこの日会場で見られたこのバンドの姿をアピールしてから(最初にポスターを見た時は一瞬誰だかわからないくらいにモデルのように決まっていた)最後に演奏された「Like Sixteen Candles」で角舘の独特の甘い声が会場に広がっていった。
このフェスには昨年もD.A.NやOGRE YOU ASSHOLEが出演していたが、ほかのバンドと比べると違うフェスなのかと思うくらいにアウェー感が強かった。それは他のバンドとは違うサウンドやスタイルを持っているということでもあるのだが、今年のYogee New Wavesもかなりアウェー感が強いというか、客席はかなり寂しいものであった。客層の違いと言ってしまえばそれだけなのだが。
1.Summer of Love
2.Good Night Station
3.CAN YOU FEEL IT
4.Bluemin' Days
5.emerald
6.Climax Night
7.Like Sixteen Candles
Good Night Station
https://youtu.be/G2a2Z5mRfRw
16:45〜 ゲスの極み乙女。 [MASSIVE STAGE]
近年はバンド以外の場所でも各メンバーの姿を見る機会が増えている、ゲスの極み乙女。。この日の出演者の中ではすでに大物感すら漂うようになっている。
髪がかなり長くなった、ほな・いこかが先に登場してドラムを叩き始めると、それに続いて他のメンバーもステージに登場し、演奏を開始したのは「猟奇的なキスを私にして」。おなじみのコーラスメンバーのえつことささみおの2人の声が曲にポップさとメロディの美しさを与えていく。
「ロマンスがありあまる」とヒット曲を惜しみなく続けると、川谷はギター&ボーカルからキーボード&ボーカル、さらに「サイデンティティ」ではハンドマイクでボーカルに専念と曲ごとにクルクルと自らの立ち位置を変えていく。
ドロドロとした「ドグマン」というフェスでやるのかと驚くような選曲もあり、やはり一筋縄ではいかないバンドだと思わせておいて「私以外私じゃないの」というヒット曲へという流れはまるで予想がつかないが、重いベースサウンドでバンドを支える休日課長がテラスハウスに出たことを川谷が
「一緒に歩いてると課長だけ「テラスハウス見てました!」って声かけられて、俺は全然気付かれない(笑)」
「さっきケータリングのところでKEYTALKの巨匠と会って。巨匠はテラスハウス大好きだから、
「ご飯食べるところ見ていていいですか?」
って言って、ずっと課長がご飯食べてるところを見てた(笑)」
と、まるで楽屋で話しているかのように長々と喋る。それはややグダグダに感じるところもあったが、本人もそれをちゃんとわかっているようで、
「俺たちもヤバTみたいにもっと上手く話せたらな〜」
とニヤつきながら話すのだが、
「テラスハウスとTSUTAYA全然関係ないじゃん!」
とほな・いこかに突っ込まれなかったらずっとそのまま喋っていそうですらあった。
いかにもゲスの極み乙女。なシュールな歌詞と美しいメロディの最新曲「もう切ないとは言わせない」、
「走り出したら止まれなくて」
という歌詞の通りに駆け抜ける「crying march」と続くと、ラストはイントロが流れた瞬間に客席が踊り狂った「キラーボール 」でお約束的に終わるのかと思いきや、最後のサビ前のブレイク部分で川谷がちゃんMARIのピアノの演奏を制すと、
「今から弾くやつ、もう1000回くらい聴いてるから飽きた。即興でT-POINTの曲作って」
とちゃんMARIに無茶振りするのだが、一瞬でオリジナルのT-POINTの歌を作ってしまうのはやはり凄い。歌詞がないのでどの辺りにT-POINTらしさがあるのかはわからないが、その無茶振りが客席をさらに沸かせ、このバンドの演奏力の高さを改めて実感させてくれた。
ゲスの極み乙女。は本当に演奏が上手いが、川谷絵音は今でも米津玄師と一緒に写真に写るだけで
「米津玄師は川谷と離れた方がいい」
とかむちゃくちゃ言われたりしている。休日課長もほな・いこかもバンドではない場所でテレビに出ているだけに、バンドに費やす時間はこれまでより少なくなっていても仕方がない。(ただでさえ絵音はindigo la EndとDADARAYなどもやっているし)
でもライブを観るとこのバンドは本当に強いバンドだなと思う。それはメンバーの絵音に対する揺るぎない信頼と、それを軸にしたバンドの結束力が全く変わっていないから。それがもしないんだったらあの騒動の時とかに誰かしらがバンドから離れる選択をしていても不思議ではない。
この4人だからこそ、このバンドだからこそかかる魔法のようなものを決して熱さを感じさせずに、飄々と体現しているバンド。
1.猟奇的なキスを私にして
2.ロマンスがありあまる
3.サイデンティティ
4.ドグマン
5.私以外私じゃないの
6.もう切ないとは言わせない
7.crying march
8.キラーボール 〜T-POINTのテーマ(ちゃんまり即興)
もう切ないとは言わせない
https://youtu.be/enMzQTnZlEc
17:30〜 teto [COSMIC STAGE]
このフェスには初出演となる、teto。昨年末にはちょっとした騒動もあったりしたが、アルバム「手」が大名盤(自分の2018年年間ベストアルバム1位に選出)だったのもあってか、今年もすでに数え切れないくらいに様々なフェスやイベントに出演することが決まっている。
SEがNirvanaから日本語の曲に変わっていることに少しびっくりしながらも4人がステージに登場すると、年末は金髪だった小池(ボーカル&ギター)が黒髪に、髪が伸びすぎてラーメンマンみたいな髪型になっていた山崎(ギター)もそれ以前の髪型に戻っている。
「高層ビルと人工衛星」から始まると、相変わらずのどしゃめしゃな演奏の中で小池は衝動を炸裂させるように暴れまくり、最後のサビ前というタイミングでステージを飛び降りて客席にダイブ。客席からもダイバーが発生していたためにもみくちゃになりながらステージに戻ると水を頭から被ったりと、1曲目にしてこの後に何が起こるのか全く予想できないワクワク感。だからこのバンドのライブを観るのは本当に楽しい。
ダイバーにもみくちゃにされたがゆえに序盤からかなり疲れが見える小池はその後もマイクを持ってステージの前の方まで出て行って歌ったりと落ち着くそぶりが全くないし、山崎も口に含んだ水を水鉄砲のように吐き出したりという自由っぷり。それが「Pain Pain Pain」「暖かい都会から」という言葉数の多いパンクな曲たちから発せられる衝動が後押ししていく。
「明日から4月だから新生活が始まったりする人も多いと思うんだけど、明日から社会人っていう人も結構いるよね?マジで地獄でしかない生活だからな!(笑)
でもたまにはこういう楽しい日があったりするから。出会いと別れを思って作った曲です」
と、バンドをやる前は普通に社会人として働いていた小池だからこその新社会人に向けての言葉の後に演奏された新曲はミドルテンポの美しい曲。それまでが何を歌っているかわからないくらいのレベルだっただけに、じっくりと演奏して歌うこういうタイプの曲が引き立つし、小池は本当に素晴らしいメロディメーカーだと思う。
しかし「拝啓」で再び暴れまわりながら演奏しつつ、最後には
「ここにいる全ての人へ どうか、生きていてください」
と
「浅くていいから 息をし続けていてくれないか」
のフレーズを極限までストレートか表現に変化させたのはライブの場だからであろう。
「TSUTAYAさんにはめちゃお世話になってて。俺の地元にはTSUTAYAが近くになかったんだけど、上京してきた時に家の近くにTSUTAYAがあって。今はもう潰れてしまったんだけど…ってTSUTAYAのフェスで潰れたとか言うのよくないと思うんだけど(笑)
でもレンタルとかはもう厳しい時代だと思うんですよ。だけどよく言われているように、あの店で借りた、好きなバンドがオススメしてたCDのこととか、借りてから家に帰って聴くまでの高揚感みたいなものは絶対消えないなって。なくなって欲しいものの方が多い世の中だけど、そうもいかないので」
と小池がTSUTAYAへの思いを口にしてから演奏されたのはバンドバージョンでの「光るまち」。
小池の歌のみで始まった曲にメンバーの演奏が重なり、山崎のノイジーに掻き鳴らすギターが過ぎ去っていく町の景色を思い描かせる。この曲のアレンジはきっと銀杏BOYZの「人間」などの途中からバンドサウンドになる曲が影響源としてあるんだろうけど、曲が見せてくれる景色はこのバンドのこの曲のものでしかない。弾き語りバージョンしか音源化されていないだけに、早くバンドバージョンも音源化していただきたい。
小池のMCを聞いていたら、自分自身もいろんなことを思い出した。高校生の頃に実家の近くのTSUTAYAに行ってCDを買ったり借りたりしていた頃のこと。そのTSUTAYAは小池が言っていたTSUTAYAと同様になくなってしまったが、今でも消えない思い出がたくさんあるし、そうした思い出や経験の一つ一つが今の自分を作っている。
1.高層ビルと人工衛星
2.Pain Pain Pain
3.あのトワイライト
4.暖かい都会から
5.新曲
6.拝啓
7.光るまち
Pain Pain Pain
https://youtu.be/mUG-sd7su8Q
18:15〜 SUPER BEAVER [MASSIVE STAGE]
昨年はCOSMIC STAGEへの出演だったので、2年連続出演にしてメインのMASSIVE STAGE、さらにはトリ前という位置にまで大きくジャンプアップを果たした、SUPER BEAVER。
メンバーが登場すると演奏を開始する前に渋谷龍太も
「今回この位置になったのは、このフェスの人たちが去年の我々のライブを見てくれて、今年はこの大事な位置を任せようと思ったと言ってくれました。
常に現場至上主義でやってきましたが、関わる人たちもその思いでやっているこのフェスに出れることを本当に嬉しく思います。レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVER始めます」
と去年の熱演がこのステージに繋がっていることを語り、ラウドなサウンドの「正攻法」からスタートすると、
「嘘つきの言葉は信じない」
のフレーズで上杉研太(ベース)が中指を突き立てている姿がスクリーンにアップで映る。それはかつてバンドが味わった苦い経験が柳沢亮太(ギター)に書かせたものなのだろう。
「あっという間に終わってしまうよ、このライブも」
と言って演奏された「閃光」はまさにあっという間に終わってしまうこのライブ、この1日、さらには人生をも言い表しているかのよう。
観客の両手が高々と上がる「青い春」、インディーズバンドながらドラマ主題歌に抜擢された「予感」と完全に今のこのバンドのベスト盤的な選曲を連発するが、何度ライブで聴いても全く飽きないのはこのバンドの曲、歌詞、音などのすべての要素に込めた意志があるがゆえだろうか。
「連帯感とか音楽で一つになろうとかそんな生温いことが言いたいわけじゃない。だからこそあなたたち一人一人でかかってこい!」
と一人一人の大合唱を煽った「秘密」は、一人一人ではあるけれどその一人一人が重なることによって美しい光景を描き出し、
「14年目のインディーズバンドとしてがむしゃらに走り続けてきましたが、それも今日で最後」
と、え?最後って?と誰しもが一瞬ドキッとすると、
「明日からは15年目のインディーズバンドとして活動していきます」
と4月1日が結成記念日であり、14年目の最後という意味だったので一安心。
そして渋谷は最後にマイクを通さずに観客1人1人への感謝を口にする。それがこんなに広い会場なのにしっかりと聞こえたのは、声量ももちろんあるけれど、渋谷とバンドの届けたいという意志の強さによるものがでかいと思う。
最後にその感謝の意志の結晶とも言える「ありがとう」を演奏し、バンドは日本武道館ワンマンも果たした14年目最後のライブを終えた。果たして15年目にはどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。
1.正攻法
2.閃光
3.青い春
4.予感
5.秘密
6.ありがとう
予感
https://youtu.be/XnYwwyXPt70
19:00〜 BIGMAMA [COSMIC STAGE]
ここまでこのCOSMIC STAGEに出演したのはみんな若手バンドたち。そのステージにトリとして登場するのはBIGMAMA。もうキャリア10年を超え、中堅からベテランと言っていい位置に差し掛かっているバンドがこのステージを締める。
おなじみベートーベン「第九」の壮大なSEでメンバーたちがステージに登場すると、金井政人(ボーカル&ギター)がタンクトップ姿なのが目を惹く。
静かにスタートして徐々に心と体に火をつけていくかのような「Make Up Your Mind」からスタートすると、ファンに人気の高い金井と柿沼広也(ギター&ボーカル)のツインボーカル的な「最後の一口」、さらには「ヒーローインタビュー」と徐々に曲のテンポが速いものになっていく。金井は観客を煽るような仕草に加えて、ほかのメンバー同様に笑顔も時には見受けられ、状態は非常に良さそうだ。
「できれば記憶の片隅ではなく、真ん中に。BIGMAMAです、よろしくお願いします」
と金井が挨拶すると、最新アルバム「-11°C」収録の「POPCORN STAR」では久々のBIGMAMAならではのヴァイオリンが入ったパンクサウンドに呼応してダイバーが続出。個人的にもここ数年のこのバンドの中で最も好きな曲であるだけに、こうしてライブで定番となってきているのは嬉しい限り。
BIGMAMAはキャリアにおいて様々な音楽的トライアルを果たしてきたが、それを経たからこそこの「POPCORN STAR」やその後に演奏された「Strawberry Feels」というパンクな最新作の曲たちが勢いや若さだけで突っ走るわけではないパンクサウンドの輝きを感じさせてくれる。
逆にグランジ的な重厚なサウンドの「ファビュラ・フィビュラ」はその音楽的なトライアルの一つであるが、この曲もまたコーラスでの観客の大合唱という意味ではライブで欠かせない存在になっている。
そして5月にリリースされる新曲「mummy mummy」も披露されたのだが、最初にタイトルを見た時はポップな曲だと思っていた。しかし実際に聴いてみると、ややおどろおどろしいというか、完全にダークサイドの曲である。原作を読んでないからわからないが、これはタイアップである「賭ケグルイ」の世界観に寄り添ったものとみていいのだろうか。
サビ前での一面に並んだリフトの壁を見るといつも「BIGMAMAのライブだな〜」と思わされてきた「荒狂曲 〜シンセカイ〜」は今でもキッズやかつてキッズでこのバンドとともに成長してきた人たちのテーマソングと言える。
そうしたパンク色の強いこの日のセットリストの最後に置かれたのは、
「この時間にこのステージを見にきてくれたあなたの全てを肯定します」
と言って演奏された「YESMAN」。その言葉を聞いてこの曲を聴くと、この日このフェスでこのバンドのライブを見れて本当に幸せだと思えるのだ。
きっと2〜3年くらいまで前だったらこのバンドはメインの方のMASSIVE STAGEに出演していたはず。でも今となってはこのキャパがちょうどいいくらいの感じ(結果的にはやはりこのステージでは1番人が多かったけど)に落ち着いてしまった。そこにはここに至るまでのいろいろなことも関係しているだろうし、実際にかつては毎回ワンマンを見に行っていた自分も「もうあんまりライブ見に行ったりしなくてもいいかな」と思ってしまう時もあった。
でも最近いろんなフェスやイベントでこのバンドのライブを見ていると、また昔みたいにワンマンに行ってみたいと思えるようになってきた。なので久しぶりに5月の母の日ライブには足を運んでみようと思っているし、片隅に追いやりかけていたこのバンドの存在がまた真ん中に戻ってきていることを確かに感じている。
1.Make Up Your Mind
2.最後の一口
3.ヒーローインタビュー
4.POPCORN STAR
5.ファビュラ・フィビュラ
6.Strawberry Feels
7.mummy mummy
8.荒狂曲"シンセカイ"
9.YESMAN
mummy mummy
https://youtu.be/X0oXLqqs0kI
19:45〜 10-FEET [MASSIVE STAGE]
今回のこのフェスの大トリは10-FEET。昨年はMy Hair is Badという若手にトリを託したこのフェスからすると実に座りがいいというか、誰しもが納得するようなバンドである。
おなじみのSE「そして伝説へ…」で3人がステージに登場すると、
「今日はアンコールの時間も貰ってるけど、一回引っ込んでまた出て、っていうのは時間がもったいないから、アンコールなしでアンコールの時間までやります」
と宣言して「1sec.」からスタートし、最新アルバムの「1 size FITS ALL」と続くと、早くもモッシュとダイブの嵐に。
「おい、目覚めてないんか?」
と観客に問いかけての「VIBES BY VIBES」、「super stomper」と目新しさこそないけれど10-FEETらしい選曲が続いたかと思いきや、
「照明さんすいません、次の曲変えます」
と言って演奏されたのは「蜃気楼」。どういう意図を持って曲を変えたのか、変える前の曲がなんだったのかはわからないが、
「また同じ夢を見ていた」
という住野よるが小説のタイトルに引用した名フレーズを持つこの曲が聴けたのは嬉しいし、決して激しいノリができる曲ではないけれど、本当に10-FEETの持つ名曲だと思う。
その名曲の後に
「僕らは幸せになるために産声上げた」
という生きる意味と向かい合いながら結局は単純な答えに行き着く「2%」と続くものだから感動するなという方が無理な話である。
「できれば周りの人と仲良くして欲しいし、ライブが終わった後にネットで
「隣の奴が歌ってうるさかった」
とか
「サークルばっかりできてウザかった」
とか言って欲しくない。そうならないためにどうするか?俺たちが良いライブやればええんやろ!」
と自分たち自身に改めて気合いを入れるように、そして観客たちを気遣うようにTAKUMAが吠えると、「利根川」バージョンに歌詞を変えた(幕張メッセでのライブだと「花見川」バージョンもあるがその違いは?)「RIVER」、「ヒトリセカイ」と心の深い部分に響くような曲を続け、ラストは明日以降の憂鬱や不安や葛藤を全て向こう側に飛ばすかのような「その向こうへ」。演奏が終わってステージを去った後に時間を見たら持ち時間ピッタリだった。計算しても絶対できないであろうことを当たり前のようにやってのける(あえてアンコールなしというやり方で)10-FEETは本当に凄い。
TAKUMAは
「俺たちが良いライブすればええんやろ!」
と言っていたが、実際に良いライブをしてみせて、それでいて観客の誰一人として悲しい思いをして欲しくないと思っている。それがバンドの曲や音から出ているからこそ、ベテランになると集客力や立場がキツくなっていくフェスという場所においても10-FEETは文句なしにトリができる存在であり続ける。これだけ凄いバンドたちが並ぶ中でしっかり最後を締めてくれて、みんなが満足できるような空間を作ってくれる。やっぱり10-FEETは凄い。
1.1sec.
2.1 size FITS ALL
3.VIBES BY VIBES
4.super stomper
5.goes on
6.蜃気楼
7.2%
8.RIVER
9.ヒトリセカイ
10.その向こうへ
その向こうへ
https://youtu.be/p67eKL1e6u0
20:35〜 ピエール中野 [COSMIC STAGE]
クロージングDJは前日には凛として時雨のドラマーとしてトリを務めた、ピエール中野。アーティスト主催ではないフェスにおいて2日連続でトリを務める人というのはほとんど前例がないことである。
時間になるとすでにDJ卓にピエール中野がおり、
「おい、やるぞ!」
と言うとこの日のトップバッターであるヤバイTシャツ屋さんが1曲目に演奏した「あつまれ!パーティーピーポー」でスタート。ピエールはブレイク前からヤバTをこうしてDJでかけていたが、この曲からスタートすることで長かった1日の始まりを思い起こさせる。
2018年度という点で言うと2018年最大の音楽シーンのトピックだったELLEGARDEN復活、この日、石毛輝も凛として時雨の名前を出していた盟友the telephonesの復活と鉄板の日本のロックアンセムを連打。てっきりthe telephonesのメンバーはステージに出てくると思ったのだが、それはなし。
MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」からは持ち時間を気にしてか途中で曲を繋げるというDJの経験値の高さを垣間見ることができ、この男のDJでは定番のハイスタ「STAY GOLD」からはパンク・ラウドに振り切れていくのかと思いきや、これまたこの男のDJでは定番の嵐「A・RA・SHI」がかかったのでこれで終わりかと思いきや、何かと渦中の電気グルーヴ「虹」をかけると(「Shangri-La」じゃないところがピエールらしい)、
「この曲今買えないんだぜ!?信じられないよな?俺たちはTSUTAYAからいろんな恩恵を受けてステージに立って表現をしてる。今日は音楽は自由だってことを証明しに来た!」
と、ピエール瀧が逮捕されたことによってCDショップや配信から電気グルーヴの音楽が消えてしまったことに対する自身のスタンスをはっきりと展開する。名前をいただいているくらいに影響を受けているピエール中野だからこそ、こうして電気グルーヴの音楽を途絶えさせないように流した「虹」からはこの曲の普遍性と、聞かれることがなくなってしまうことの怖さや違和感を強く感じさせた。つまり、ピエール中野が言ったように音楽は自由だ。聴くのも、聴かないのも。でも聴きたいと思った時には聴けるようであって欲しい。この曲や電気グルーヴの存在に人生を救われたり支えられたりしてきた人がたくさんいるのだから。
曲が終わると一本締めでDJと今年のツタロックを締めたピエール中野。ただ盛り上がるだけのDJではない、彼の音楽への強い愛情と、超絶ドラマーである彼がなぜDJとしてこんなにも精力的に活動してるのかが改めてわかった時間だった。
1.あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
2.ジターバグ / ELLEGARDEN
3.Monkey Discooooooo / the telephones
4.FLY AGAIN / MAN WITH A MISSION
5.ヘビーローテーション / AKB48
6.STAY GOLD / Hi-STANDARD
7.goes on / 10-FEET
8.包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ / マキシマム ザ ホルモン
9.A・RA・SHI / 嵐
10.虹 / 電気グルーヴ
CDレンタルや販売業としてのTSUTAYAはこれからも店舗が減っていったり、縮小していくのは間違いない。それはもう時代の流れだ。でもこの日、tetoの小池やピエール中野が言っていたように、そこでの記憶は決してなくならない。それはこの日のライブもそう。
もしなくなってしまったとしても、こういうフェスがあることによって、その存在を思い返せるような日が1年に1日や2日だけでもありますように。
Next→ 4/6 YON FES @モリコロパーク
会場構成は昨年と同様にメインステージのMASSIVE STAGEと、セカンドステージのCOSMIC STAGEの2ステージ構成。5分もかからずにステージ移動ができるので、ひたすらライブを見まくりたいというフェスの楽しみ方をする自分にとっては実にありがたい。
10:35〜 Oh No Darkness!! [MASSIVE STAGE] (Opening Act)
オープニングアクトはオーディションを勝ち抜いてこのフェスへの出場権を獲得した3人組バンド、Oh No Darkness!!。
サポートギターを加えた4人編成で、シューゲイザーやグランジ的なノイジーなギターサウンドの上に紅一点のベース&ボーカルのウィスパー気味な歌声が乗る。
サウンドも好みであるのだが、何よりも普通はベース&ボーカルという立ち位置の人(パンクバンドに多い)というのは、歌をしっかり歌うためにベースの演奏は簡単にするのが多くのパターンではあるのだが、このバンドは体をくねらせながら音の意味でベースが動き回りまくる。
基本的にはバンド名から察せられる通りに光よりもほの暗い闇の中にいるかのような感覚になるバンドなのだけれど、メロディがキャッチーであるがゆえにそこまで鬱々としたイメージは浮かばない。まだ若いように見えるがSUPERCARやNUMBER GIRLが影響源にあったりするのだろうか。
MCらしいMCは一切なしで、持ち時間の20分を全て曲の演奏に当てると、演奏が終わったと同時にすぐさま楽器を置いてステージを去っていく。その様が実に潔いというか、最近はあんまりいないタイプのバンドだなと思った。
1.2001
2.スローシャッター
3.火星年代記
4.リワインド
5.Alt
火星年代記
https://youtu.be/vjzQT-IlBoI
11:00〜 ヤバイTシャツ屋さん [MASSIVE STAGE]
メインステージであるMASSIVE STAGEのトップバッターはこのフェス初出演のヤバイTシャツ屋さん。何気にフェスで見るのは久しぶりである。(年始からはあまりフェスがないだけに当たり前でもあるのだが)
おなじみの「はじまるよ〜」という脱力的なSEでメンバー3人が登場。どことなくこやまは疲れているのか、いつもの登場時よりも表情が浮かないように見えた。
いきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で大合唱を巻き起こしながら踊らせまくると、2018年にリリースされたキラーチューン「かわE」、「鬼POP〜」とシングル曲あるいはリード曲が続くことによって、このバンドでしか聞けない歌詞(=他のバンドでは絶対書けない歌詞)の曲がこんなにも浸透していて、今のロックシーンのアンセムになっているとは、とこれだけデカいステージ、たくさんの人を前に演奏している姿を見ると改めて思う。
しかし2年前にポリープの手術をしてからは喉の不安がなくなってすごく歌いやすくなったと言っていたこやまのボーカルは珍しくやや不安定というか、喋り声もガラガラしたものになっていたし、ところどころ歌声がひっくり返りそうにもなっていて、曲中に水を飲みに行く頻度がいつもよりも多かった。それは朝イチだからという影響も少なからずあるんだろうか。
しかしそんな中でもしばたは朝から元気いっぱい、いつもと変わらぬ安定感を見せているのが頼もしいが、そのしばたはこの日がちょうど誕生日ということでMCで誕生日を祝ったのだが、てっきりしばたが作った曲をやるのかと思ったがそれはなし。
その代わりにこのフェスのスポンサーがXFLAGという「モンスト」の会社ということで、モンストに課金しまくっているというこやまがそれをそのまま曲にしたラウドな「リセットマラソン」が演奏されたのだが、まさかこの曲をフェスで聴くことになるとは。
そんなラウドな流れを「DANCE ON TANSU」の無意味な歌詞としばたのスラップによるダンサブルなサウンドで踊らせまくるものに変えると、「oi! oi!」ならぬ「Wi-Fi! Wi-Fi!」の力強いコールが起こる「無線LANばり便利」から、
「ヤバTを聴くと偏差値が下がります!偏差値が下がると先のことをなんも考えられなくなります!この後に体力残そうと思うな!ここで使い果たせ!」
と「ヤバみ」から「キッス!キッス!」の大合唱が起きた「ハッピーウエディング前ソング」という何も考えずに楽しまざるを得ない必殺曲2連発で終了かと思いきや、
「あれ?まだ時間ある!」
とさらに「喜志駅周辺なんもない」を追加し、曲中のコール&レスポンスもしっかり行うと、
「体力残そうと思うな!」
と言っていたこやまが最もそれを実践するかのように最後は床に倒れこみながらギターを弾き、立ち上がるとギターを抱えて大きくジャンプした。その姿は本当にカッコいいバンドのものだった。
「朝イチからヤバTはキツい!」
とこやまは観客にコールさせていたし、確かに体力的にはそうなのだが、こんなにライブを見ていて目が覚めるトップバッターはそうそういない。
声が出なかったのは悔しさを感じるものだったと思うが(登場時に表情が冴えなかったのは自身の状態をわかっていたからだと思う)、その悔しさはこれからこの規模のステージで最後にライブをやるときのための糧になると思う。ヤバTは間違いなく悔しさを原動力にして進んできたバンドだから。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
4.Universal Serial Bus
5.Tank-top of the World
6.リセットマラソン
7. DANCE ON TANSU
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.ハッピーウェディング前ソング
11.喜志駅周辺なんもない
かわE
https://youtu.be/ciFOh2KN99U
11:45〜 Amelie [COSMIC STAGE]
紅一点メンバーであるボーカル&ギターのmickを中心とした埼玉県越谷市の4人組バンド、Amelie。2日目のCOSMIC STAGEのトップバッターを担う。
冒頭の「ライアーゲームじゃ始まらない」からパワフルなボーカルを響かせるmickとライブをしまくって鍛え上げられてきた男性メンバーたちの演奏はこのステージがあくまでライブハウスのステージから地続きの場所であるかのよう。実際に地元の越谷のライブハウスを使ってフェスを主催したりとライブハウスに根ざした活動をしているバンドなだけに、この日の出演者の中で最もライブハウスバンドらしさを感じさせた。
ギターロックだったりパンクだったりと曲によってサウンドが異なる曲も多いが、その曲の中心にあるmickの歌声によって最終的に聞き手に届く時のイメージはポップだ。歌を中心に据えるバンドならではの歌謡性も随所に感じられる。
そんな中でmickが
「もう二度と会えない人がいて、悲しい思いをしたとしても私は笑って生きていたい」
と自身の生き様を語ってから演奏されたのは新曲「ノンフィクション」。どちらかといえば歌い上げるようなタイプの曲であるが、曲前に語られたエピソードの通りに、もう会うことができない大切な人を思い浮かべながら作った曲なのであろう。mickが間奏部分で目を拭うような仕草を見せていたのは気のせいだろうか。
そこからバンドサウンドはさらに加速。直人の鋭いギターが推進力となり、あっきーもステージを左右に動き回りながらベースを弾き、アサケンのドラムは一打の強さと重さを増していく。mickはギターではなくキーボードを弾きながら歌うという器用さと幅広さも見せる。
そしてラストはこのバンド最大のアンセムと言える「朝は来る」。疾走感のあるパンクサウンドと、タイトルフレーズでのmickのボーカルの伸び具合はこの広いステージでも広すぎる感じを全く受けないくらいのスケールを持って鳴っていた。
mickは曲間に熱い言葉を観客にぶつけていたし、不器用ではあるが真っ直ぐにしか生きることができない。それは同じようにライブハウスで生きてきた先輩バンドたちの姿と重なるところがある。でもこの日、おそらくバンド史上でもトップクラスの規模のステージに立っても、緊張したり物怖じしたり、普段の力が出せていない感じは一切しなかった。ただライブハウスで生きてきたんじゃなくて、ライブをしまくって生きてきたバンドだからこそそう感じたのだろう。だから今後もこうした広い場所で会える気がする。
1.ライアーゲームじゃ始まらない
2.メグリメグル
3.ゼロじゃない
4.ノンフィクション
5.手紙
6.step!
7.朝は来る
朝は来る
https://youtu.be/hb1dbEkK0Og
12:25〜 KEYTALK [MASSIVE STAGE]
もはや若きフェス番長と言ってもいいくらいにあらゆるフェスに出まくっているKEYTALK。北海道のツアーから帰ってきてすぐというタイミングでの出演。
おなじみの物販で賑々しく4人がステージに現れると、衣装というよりは私服のような出で立ちなのだが、それぞれのイメージカラーをしっかり纏っているあたりはこのバンドのメンバーとしての意識を普段から持っているからだろうか。
小野武正の軽快なギターのイントロが客席にダンスを促す「コースター」から始まるのだが、なかなか最近はフェスでは演奏されていなかった曲なだけに一瞬どよめきが起こる。
しかし続く「パラレル」は同時期に出たシングルではあるが、逆に最近はよく演奏されるようになってきている。サビでの巨匠こと寺中の声の伸びはもちろん、首藤義勝もツアーモードのままだからか喉の状態はかなり良さそうである。
その首藤のゴリゴリのスラップベースがまさにフェスならではのお祭り騒ぎに誘う「MATSURI BAYASHI」から
「まだ寒いけど、夏になろうぜー!」
と巨匠が言うと、てっきり「Summer Venus」かと思いきや、演奏されたのは「MABOROSHI SUMMER」。武正のthe band apart好きが伺えるギターのフレーズと大胆な転調は近年の曲にはあまりない要素なだけに、ある意味ではKEYTALKの原点らしさを感じさせてくれる。
義勝の甘いボーカルがポップなメロディに溶け合う「Love me」を終えると、巨匠が5月にニューシングルをリリースする告知を。それに伴ってレーベルも移籍することも発表し、その新曲「BUBBLE-GUM MAGIC」は
「今までとは違う大人なKEYTALKが見れる曲」
ということで、タイトルが発表された時にイメージしたポップな曲というわけではないようだが果たしてどんな曲なのだろうか。ここまでこの後に披露しそうな空気を出しておいてやらないというのもKEYTALKらしいけれど。
アジカンにとっての「リライト」、KEYTALKにとっての「MONSTER DANCE」では八木がなぜかサビ前に
「ロックンロール!!!」
と雄叫びをあげるという気合いの漲りっぷりを見せると、それに触発されたのか巨匠はマイクスタンドを逆さまに持って野太い声で歌い、この日はやらないのかと思っていた「Summer Venus」は最後に演奏され、結果的に春という季節から夏に一気にワープするかのように夏ソングを3曲も並べ(いかにも春な「桜花爛漫」をやらなかったのは意外)、EDMサウンドのパートでは義勝が
「ISSAさーん!」
と巨匠を呼ぶと、巨匠が全力の「U.S.A」ダンスをするというエンターテイナーっぷりを発揮した。総じて、この日もやっぱり楽しいライブであった。
フェスだと初めてライブを見るという人もたくさんいるだけに、いわゆるフェスセトリと言ってもいいところからはみ出すようなことはせずに、でも何度も見てる人たちが喜ぶような定番ではない曲もしっかり入れてくる。先月見たTHE BAWDIESとの2マンでは普段めったにやらないような曲をたくさんやっていた。もうかなりの数の持ち曲があるが、このバンドはライブですぐに演奏できる状態にある曲がどれくらいあるのだろうか。
そしてこの日は「ぺーい」のコール&レスポンスはなく、ひたすらにギターの演奏だけで魅せていた武正は、自身のライブ後は普通に客席でいろんなバンドのライブを見ていた。
かつてSWEET LOVE SHOWERに初出演した時に3日間全て会場を訪れて、ひたすらライブを見まくるという他の出演者の誰よりもフェスを楽しんでいた(3日で30組くらいライブを見たらしい)この男は今でも全く変わっていないし、その姿勢がKEYTALKの楽曲の幅広さと器用さに繋がってるところも間違いなくあると思う。
1.コースター
2.パラレル
3.MATSURI BAYASHI
4.MABOROSHI SUMMER
5.Love me
6.YURAMEKI SUMMER
7.MONSTER DANCE
8.Summer Venus
MONSTER DANCE
https://youtu.be/N39glrfql0I
13:10〜 Shiggy Jr. [COSMIC STAGE]
オープニングアクトのOh No Darkness!からトップバッターのAmelieと女性ボーカルバンドが続いたCOSMIC STAGEだが、このShiggy Jr.も紅一点ボーカルの池田智子を擁する4人組バンドであり、この流れは主催側も意図してのものだろう。
その池田は赤いパーカーに足が見える7分丈くらいの黒いパンツを履いて登場すると、サポートメンバー(シンセ、シンセ&ギター)の2人に加えてベースの森夏彦もシンセを弾く「TUNE IN!!」からスタートし、J-POPと言われてもおかしくない(メンバーたちもJ-POPのフィールドに勝負をかけに行っていることを明言している)くらいのきらめくポップサウンドで会場の空気はガラッと変わっていく。
時間の設定が1時間早くなる「サマータイム」を
「1時間だけ長く側にいられる」
というラブソングに落とし込むアイデアが秀逸な「サマータイムラブ」とバンドの代表曲的な曲を続けると、公開が迫っている映画「パンドラとアクビ」のオープニングテーマ「D.A.Y.S.」、エンディングテーマ「B.U.R.N.」を続けて披露。
「1999」
という歌い出しから始まる「D.A.Y.S.」はいかにもこのバンドらしいポップな曲だが、この日初披露となった「B.U.R.N.」は対照的にゴリゴリのファンキーさを持った曲。同じバンドであるにもかかわらずこうもベクトルが違う曲がオープニングとエンディングに使われているというだけでどんな映画なのか気になってくる。
たいと通りにエレクトロなサウンドのダンスチューン「DANCE DANCE DANCE」から、「どうかしちゃってんだ」ではバンドのコンポーザーであり、キャップを被った姿がキッズそのものな原田茂幸(ギター)のラップが炸裂し、森の長めのコール&レスポンスで観客をより一層自分たちの方に引き込み、最後には諸石和馬のドラムソロもあり、池田の存在感が強い中でもこの4人だからこそこのバンドであるということをしっかり見せていく。
そしてこのバンドの存在を音楽好きたちに知らしめた「LISTEN TO THE MUSIC」というバンド最初期からの代表曲から、最後はバンド最新の代表曲「ピュアなソルジャー」と橋渡しをしてみせ、自分たちのポップネスがアップデートされ続けていることを示してみせた。
それこそ「LISTEN TO THE MUSIC」がリリースされた時の期待値はものすごく高いものであったが、なかなか現状は思い描いたところまでは到達できていない。そんな中であっても昨年リリースされた「DANCE TO THE MUSIC」(このタイトルこそが自身の表れである)も非常にいいアルバムだった。
それだけにもっとたくさんの人に聞かれて然るべき、とも思うけれども、ライブを見るとまだまだもっと良くなるところがある。そしてそのカギはやはり池田が握っている。彼女がボーカリストとして覚醒すれば「ポップ」なだけじゃない、「曲はポップだけど、ライブを見るとめちゃくちゃカッコいい」という今まではスルーされていた層にも届くようになると思う。
1.TUNE IN!!
2.サマータイムラブ
3.D.A.Y.S.
4.B.U.R.N.
5.DANCE DANCE DANCE
6.どうかしちゃってんだ
7.LISTEN TO THE MUSIC
8.ピュアなソルジャー
ピュアなソルジャー
https://youtu.be/znNk8861QL4
13:50〜 打首獄門同好会 [MASSIVE STAGE]
日本が誇る最強の飯テロバンド、打首獄門同好会。堂々のメインステージへの出演だが、よりによって昼飯どきに登場である。
サウンドチェックの時点で事前に配られたうまい棒をテーマにした「デリシャスティック」からスタートすると、ステージ両サイドのスクリーンには終始VJによる映像が流れ、メンバーの演奏する姿は全く映らないため、ついつい映像ばかりを見てしまうくらいにやはりこのバンドの映像センスは高い。
カップラーメンのスーパーカップをテーマにした「YES MAX」は最新ミニアルバム「そろそろ中堅」に収録されている曲だが、ロッキンオンジャパン誌のインタビューでこの曲について語った、
「スーパーカップの各種の味をよく見てみたら、熟成味噌だけ3分じゃなくて4分なんですよ」
という言葉がインタビューの見出しになるバンドは世界中を探しても絶対いないだろう。(逆に見出しだけ見たらバンドのインタビューとは思えない)
魚をテーマにした「島国DNA」で「まぐろ丼」「しらす丼」などのメニューを連呼して空腹中枢を刺激してくると、
「皆さま、今日は3月31日ですが、平成最後の日ではありません。ただの3月31日です。明日からは4月1日。しかも月曜日ということで明日からフレッシュな気持ちで新生活や仕事やバイトを迎えられることでしょう。それでは聞いてください、はたらきたくない」
と大澤会長ならではのユーモアを発揮してから演奏された「はたらきたくない」からは「布団の中から出たくない」と可愛いキャラクターを使ったアニメーションに観客も釘付けに。
スクリーンを使って「そろそろ中堅」の宣伝をすると(中堅と言いながら還暦を超えたベースのJunkoはフェスに出るとダントツの最年長であるが)、そこに収録された、大澤会長のシャキッとコーンへの愛を曲にした「Shake it up 'n' go 〜シャキッとコーンのうた〜」へ。
「我々の演奏してる姿は見なくていいからスクリーンの映像を見てください」
というくらいにやはりこの映像も可愛いキャラクターのアニメーションなのだが、ここまでくるとただのコーンすらめちゃくちゃ美味しく見えてくるくらいにこのバンドの術中にハマってしまっている。
ファミコン時代の名作ゲームへのオマージュ的な映像を使った「きのこたけのこ戦争」を終えると、大澤会長が何やらメンバー1人1人に耳打ちし、
「あと1曲のつもりだったんですが、まだあと10分も残っている。さすがにその時間で1曲だけしかやらないのは申し訳ないので1曲増やします。日曜日だからこの曲が聴きたくなるよね!」
と言って演奏されたのは「おどるポンポコリン」のカバー。今までにも木村カエラなどもカバーしているが、このバンドがカバーすることによってこの曲はパンク・ラウドなアレンジも実によく似合う普遍性を持っていることに気付かされるし、2番ってこういう歌詞だったのかとも気づく。サビの最後の
「お腹がへったよ」
というフレーズはまさに今このバンドのライブを見ている我々の心境そのものである。
そしてラストは
「4月1日、新年度からの我が国の豊作を願って!」
と半ば無理矢理な感じもしなくはない「日本の米は世界一」。ラウド・パンクなサウンドのバンドであるがゆえにダイバーが発生するのはよくわかるのだが、この曲でダイブが起きてるのを見ると食糧を求めて暴動を起こしているような、米騒動のようにすら見えてしまう。
正直、こうしてフェスで真ん中あたりの時間に見ると、異物感しか感じないようなバンドである。しかしそんなバンドが幕張メッセのフェスのメインステージに出演するようになっている。異物感を撒き散らしながらもっと大きなところで見れる予感しかしないし、間違いなくこの人しかできない(というかやろうとしない)歌詞の書き方をしている大澤会長のクリエイティビティは尽きることがなさそう。
1.デリシャスティック
2.こどものねごと
3.YES MAX
4.島国DNA
5.はたらきたくない
6.布団の中から出たくない
7.Shake it up 'n' go 〜シャキッとコーンのうた〜
8.きのこたけのこ戦争
9.おどるポンポコリン
10.日本の米は世界一
はたらきたくない
https://youtu.be/GR-mLGV0X1I
14:35〜 SIX LOUNGE [COSMIC STAGE]
大分出身のスリーピースロックンロールバンド、SIX LOUNGE。最近はさまざまなフェスに出演するようになってきているが、このフェスにも初登場。
ステージに3人が登場すると、ヤマグチユウモリが歌い始めたのは「くだらない」。音数も少ない研ぎ澄まされたロックンロール。ここまでのフェスの流れで見るとそれはより一層引き立って見えるし、ギター、ベース、ドラムの3つのみ、しかも最低限の音しか鳴っていないのに成立するのはこのバンドのロックンロールバンドとしての強みだ。
すでに5月にリリースされることが決定しているニューシングル収録の「Lonely Lovely Man」は
「カモーン!ジャパーン!」
とユウモリが叫ぶというある意味では衝撃的な曲。実際にそう歌っているのかは歌詞を見ないとわからないところではあるが。
サビで一気に突き抜ける「僕を撃て」からはライブにおけるキラーチューンを連発。アンプに繋いだベースのシールドの太さと長い髪の間から覗かせるメガネが目を惹くイワオリクも徐々にステージを歩く幅が大きくなっていく。
「TSUTAYAさんにはいつもお世話になってます!CD借りたり映画借りたり、エッチなDVD借りたり!」
というユウモリのTSUTAYAに向けたコメントは信じられないくらいにスベり倒していたが、「LULU」「トラッシュ」とバンドの演奏は加速していき、それを担うナガマツシンタロウのドラムは手数をさらに増していく。スリーピースというシンプルな編成(当たり前のように同期の音なんか使わない)であるがゆえにこのナガマツのドラムの強さはこのバンドにとって大きい。
「バイバイ!」
とだけ告げると最後にその姿をステージに刻むかのように「ラストシーン」を演奏してステージをすぐに去った3人。その潔さもロックンロールバンドらしさを感じさせた。
MCもスベっていたし、演出やエンタメ性は一切ないバンドだ。しかもロックンロールというスタイルの音楽は世界的に見たらほぼ無風と言っていい状態。そんな、時代と逆行するようなスタイルのこのバンドがこの時間までのCOSMIC STAGEで最大動員を記録しているのを見ると(びっくりするくらい観客が多かった)、何かが変わりそうだし、climgrowだったりという後続のロックンロールバンドたちにとって大きな希望になると思う。もちろんまだまだもっとすごい曲を作れたらより一層変わると思うけれど。
そんな事ばっか考えてる。
1.くだらない
2.Lonely Lovely Man
3.僕を撃て
4.MIDNIGHT RADIO
5.LULU
6.トラッシュ
7.ラストシーン
ラストシーン
https://youtu.be/NrQOyA8T4GQ
15:15〜 the telephones [MASSIVE STAGE]
今年メジャーデビュー10周年を迎えて活動休止から復活した、the telephones。「今まで行ったことのないところへ行くツアー」を終え、ライブハウスだけでなくフェスの大きなステージにも帰ってきた。去年もVIVA LA ROCKには出演しているとはいえ、地元埼玉のフェスでの一夜限りという感じもあった(夏にはUKFCにも出演したけど)だけに、フェスに戻ってきたという感じがする。
おなじみの「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでアフロのカツラを被った4人が登場するというのはいつも通りだが、それぞれがモンストのキャラクターのグッズを持っていたり身につけたりしているというのはXFLAGがスポンサーのフェスであり、モンストユーザーであるこのバンドならでは。
いきなりの「Monkey Discooooooo」と準備運動とか一切なしのいきなりの本気モード。石毛輝は独特のハイトーンボイスで歌詞を「幕張」に変えて歌う。
続くノブのシンセがダンサブルに響く「HABANERO」では間奏で石毛が華麗に側転を決める。かつてもおなじみだった光景ではあるが、つい先日まで行われていたツアーでは会場がステージの小さいライブハウスだっただけに、こうしたアクションを取れるようなスペースがなかった。その姿を見るだけでも、the telephonesがフェスの大きなステージに帰ってきたということを実感する。
メンバー全員がモンスト大好きなバンドなだけにモンストのテーマ曲を演奏したり、
「前に幕張メッセで開催されたモンストの大会にメンバー4人で参加したんですよ。結果は速やかに予選落ちでしたけど(笑)」
というエピソードを語る。そして「モンスト」が好きすぎるが故に「モンスター」がタイトルに入っている曲を、と言って演奏されたのは活動休止明けで演奏されるのは間違いなく初めてとなる「DISCO AGE MONSTERS!!!」。そもそもがDISCOシリーズの曲のなかではかなりのレア曲であるのだが、ノブはカメラにスマホを向けてモンストの画面を見せたりする。あまりよく映らなかったけれど。
さらに
「2008年の1月にTSUTAYAのイベントに呼んでもらって、9mm Parabellum Bulletと凛として時雨と3組でやらせてもらえて。当時俺たちはまだインディーズでCDをようやく出せるようになった頃で、ライブをやっても客は10人くらいしかいなかった。そんな俺たちがそのイベントに出て、景色が変わった。だから今日はその時からやっている曲をやります」
というTSUTAYAとのエピソードを語った後に演奏されたのはダイバーも発生した「sick rocks」。実際にそのイベントに出演した半年後、the telephonesはロッキン、サマソニ、ラブシャという大型フェスに次々と初出演を果たした。そして今でも盟友と言える9mmと凛として時雨と邂逅することができた。10年以上経ってもメンバーがちゃんと覚えているのもよくわかる。
涼平のグルーヴィーなベースのイントロが観客を踊らせる「electric girl」からの「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」というダンスモードではノブが客席を真ん中で分けて向き合う形で「T」のポーズで踊らせる。
「後ろ見えてるよー!」
と後ろの方にまでそれをやらせるのはツアーでもおなじみだったが、このバンドのライブを初めて見るであろう人も多く、様子見的だった空気がこのノブの存在によって、
「あれ?この人めちゃ面白くない?」
「なんか楽しくなってきた!」
という雰囲気に変わっていく。ずっと見ているとその飛び道具的な存在にもすっかり慣れてしまったが、確かに初めてライブでノブを見た時は「こんなとんでもない人がいるのか。見た目はイケメンなのに」と衝撃的だった。それは現在においてはKing Gnuの井口理に受け継がれていると言えると思う。
そして石毛による「DISCO」のコール&レスポンスからはDISCOシリーズ2連発。ラストの「urban disco」ではノブがステージから飛び降りて客席にダイブ。その姿が見ている側にも抑えがたい衝動を呼び起こし、フロントエリアではまるでTOSHI-LOWに向かってダイブする人たちのように、ノブに向かってダイブする人が多発した。10年経ってもthe telephonesのライブは全く変わっていない。それはきっとこれから歳を重ねても変わらないんだろうとも思うし、やっぱり広いステージが似合うバンドだと改めて思った。
しかしなにもかもがかつてと全く同じというわけではない。序盤は明らかにアウェー感があった。それはかつてtelephonesのフェスでのライブでは感じたことのない(2008年にフェスに出始めた頃からアウェー感を感じたことはなかった)ものだった。
もうthe telephonesの存在や曲を知らない人たちがたくさんいる世代のフェスになった。それを改めて実感させられたが、それは決してネガティブなものだとは感じない。かつてこのバンドがフェスに出てファンを増やしてステージを駆け上がっていったような感覚をまた味わうことができるから。
まだ配信はもちろんYoutubeで曲を聴くことすら出来なかった時代。telephonesはひたすらにライブの反響で勝ってきた。良くない意味で「フェスバンド」と言われることも多々あったが、それはこのバンドがフェスで勝ってきたことの証明。そのthe telephonesがついにフェスのステージに帰ってきたのだ。
リハ.A.B.C.DISCO
リハ.FREE THROW
1.Monkey Discooooooo
2.HABANERO
3.DISCO AGE MONSTERS!!!
4.sick rocks
5.electric girl
6.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
7.I Hate DISCOOOOOOO
8.urban disco
urban disco
https://youtu.be/ph64dJTpIzI
16:00〜 Yogee New Waves [COSMIC STAGE]
前週にNO NUKESでライブを見たばかりなので、2週連続でライブを見ることになった、Yogee New Waves。この日も高野勲(キーボード)、松井泉(パーカッション)の強者サポートメンバー2人を加えた6人体制。
持ち時間がNO NUKESよりも若干長いからか、その時は演奏されなかった「Summer of Love」を最初に演奏すると、「Good Night Station」と続くことでゆったりと音に身を任せて揺れることができる。
前週は角舘が曲中でギターを下ろして歌ったりするというロックな衝動を感じさせる場面もあったが、この日はそういうことはなく、このフェスの出演者たちの中で自分たちしか持っていない面をしっかりとアピールするかのようにまったりとした空気に包まれていく。
それが極まったのは文字通りエメラルド色の照明に包まれた「emerald」から「Climax Night」という流れ。この心地よさはこの日の出演者でこのバンドでしか感じることができないし、かといって眠くなるようなことがないのは粕谷(ドラム)と上野(ベース)によるリズム隊のどっしりとした安定感があってのものだろう。
「今日の会場には僕らのconverseの映像が流れたり、ポスターが貼ってあって。だから今日は僕らもconverseを履いてきてます。勲さんだけ違うけど(笑)」
とこの日会場で見られたこのバンドの姿をアピールしてから(最初にポスターを見た時は一瞬誰だかわからないくらいにモデルのように決まっていた)最後に演奏された「Like Sixteen Candles」で角舘の独特の甘い声が会場に広がっていった。
このフェスには昨年もD.A.NやOGRE YOU ASSHOLEが出演していたが、ほかのバンドと比べると違うフェスなのかと思うくらいにアウェー感が強かった。それは他のバンドとは違うサウンドやスタイルを持っているということでもあるのだが、今年のYogee New Wavesもかなりアウェー感が強いというか、客席はかなり寂しいものであった。客層の違いと言ってしまえばそれだけなのだが。
1.Summer of Love
2.Good Night Station
3.CAN YOU FEEL IT
4.Bluemin' Days
5.emerald
6.Climax Night
7.Like Sixteen Candles
Good Night Station
https://youtu.be/G2a2Z5mRfRw
16:45〜 ゲスの極み乙女。 [MASSIVE STAGE]
近年はバンド以外の場所でも各メンバーの姿を見る機会が増えている、ゲスの極み乙女。。この日の出演者の中ではすでに大物感すら漂うようになっている。
髪がかなり長くなった、ほな・いこかが先に登場してドラムを叩き始めると、それに続いて他のメンバーもステージに登場し、演奏を開始したのは「猟奇的なキスを私にして」。おなじみのコーラスメンバーのえつことささみおの2人の声が曲にポップさとメロディの美しさを与えていく。
「ロマンスがありあまる」とヒット曲を惜しみなく続けると、川谷はギター&ボーカルからキーボード&ボーカル、さらに「サイデンティティ」ではハンドマイクでボーカルに専念と曲ごとにクルクルと自らの立ち位置を変えていく。
ドロドロとした「ドグマン」というフェスでやるのかと驚くような選曲もあり、やはり一筋縄ではいかないバンドだと思わせておいて「私以外私じゃないの」というヒット曲へという流れはまるで予想がつかないが、重いベースサウンドでバンドを支える休日課長がテラスハウスに出たことを川谷が
「一緒に歩いてると課長だけ「テラスハウス見てました!」って声かけられて、俺は全然気付かれない(笑)」
「さっきケータリングのところでKEYTALKの巨匠と会って。巨匠はテラスハウス大好きだから、
「ご飯食べるところ見ていていいですか?」
って言って、ずっと課長がご飯食べてるところを見てた(笑)」
と、まるで楽屋で話しているかのように長々と喋る。それはややグダグダに感じるところもあったが、本人もそれをちゃんとわかっているようで、
「俺たちもヤバTみたいにもっと上手く話せたらな〜」
とニヤつきながら話すのだが、
「テラスハウスとTSUTAYA全然関係ないじゃん!」
とほな・いこかに突っ込まれなかったらずっとそのまま喋っていそうですらあった。
いかにもゲスの極み乙女。なシュールな歌詞と美しいメロディの最新曲「もう切ないとは言わせない」、
「走り出したら止まれなくて」
という歌詞の通りに駆け抜ける「crying march」と続くと、ラストはイントロが流れた瞬間に客席が踊り狂った「キラーボール 」でお約束的に終わるのかと思いきや、最後のサビ前のブレイク部分で川谷がちゃんMARIのピアノの演奏を制すと、
「今から弾くやつ、もう1000回くらい聴いてるから飽きた。即興でT-POINTの曲作って」
とちゃんMARIに無茶振りするのだが、一瞬でオリジナルのT-POINTの歌を作ってしまうのはやはり凄い。歌詞がないのでどの辺りにT-POINTらしさがあるのかはわからないが、その無茶振りが客席をさらに沸かせ、このバンドの演奏力の高さを改めて実感させてくれた。
ゲスの極み乙女。は本当に演奏が上手いが、川谷絵音は今でも米津玄師と一緒に写真に写るだけで
「米津玄師は川谷と離れた方がいい」
とかむちゃくちゃ言われたりしている。休日課長もほな・いこかもバンドではない場所でテレビに出ているだけに、バンドに費やす時間はこれまでより少なくなっていても仕方がない。(ただでさえ絵音はindigo la EndとDADARAYなどもやっているし)
でもライブを観るとこのバンドは本当に強いバンドだなと思う。それはメンバーの絵音に対する揺るぎない信頼と、それを軸にしたバンドの結束力が全く変わっていないから。それがもしないんだったらあの騒動の時とかに誰かしらがバンドから離れる選択をしていても不思議ではない。
この4人だからこそ、このバンドだからこそかかる魔法のようなものを決して熱さを感じさせずに、飄々と体現しているバンド。
1.猟奇的なキスを私にして
2.ロマンスがありあまる
3.サイデンティティ
4.ドグマン
5.私以外私じゃないの
6.もう切ないとは言わせない
7.crying march
8.キラーボール 〜T-POINTのテーマ(ちゃんまり即興)
もう切ないとは言わせない
https://youtu.be/enMzQTnZlEc
17:30〜 teto [COSMIC STAGE]
このフェスには初出演となる、teto。昨年末にはちょっとした騒動もあったりしたが、アルバム「手」が大名盤(自分の2018年年間ベストアルバム1位に選出)だったのもあってか、今年もすでに数え切れないくらいに様々なフェスやイベントに出演することが決まっている。
SEがNirvanaから日本語の曲に変わっていることに少しびっくりしながらも4人がステージに登場すると、年末は金髪だった小池(ボーカル&ギター)が黒髪に、髪が伸びすぎてラーメンマンみたいな髪型になっていた山崎(ギター)もそれ以前の髪型に戻っている。
「高層ビルと人工衛星」から始まると、相変わらずのどしゃめしゃな演奏の中で小池は衝動を炸裂させるように暴れまくり、最後のサビ前というタイミングでステージを飛び降りて客席にダイブ。客席からもダイバーが発生していたためにもみくちゃになりながらステージに戻ると水を頭から被ったりと、1曲目にしてこの後に何が起こるのか全く予想できないワクワク感。だからこのバンドのライブを観るのは本当に楽しい。
ダイバーにもみくちゃにされたがゆえに序盤からかなり疲れが見える小池はその後もマイクを持ってステージの前の方まで出て行って歌ったりと落ち着くそぶりが全くないし、山崎も口に含んだ水を水鉄砲のように吐き出したりという自由っぷり。それが「Pain Pain Pain」「暖かい都会から」という言葉数の多いパンクな曲たちから発せられる衝動が後押ししていく。
「明日から4月だから新生活が始まったりする人も多いと思うんだけど、明日から社会人っていう人も結構いるよね?マジで地獄でしかない生活だからな!(笑)
でもたまにはこういう楽しい日があったりするから。出会いと別れを思って作った曲です」
と、バンドをやる前は普通に社会人として働いていた小池だからこその新社会人に向けての言葉の後に演奏された新曲はミドルテンポの美しい曲。それまでが何を歌っているかわからないくらいのレベルだっただけに、じっくりと演奏して歌うこういうタイプの曲が引き立つし、小池は本当に素晴らしいメロディメーカーだと思う。
しかし「拝啓」で再び暴れまわりながら演奏しつつ、最後には
「ここにいる全ての人へ どうか、生きていてください」
と
「浅くていいから 息をし続けていてくれないか」
のフレーズを極限までストレートか表現に変化させたのはライブの場だからであろう。
「TSUTAYAさんにはめちゃお世話になってて。俺の地元にはTSUTAYAが近くになかったんだけど、上京してきた時に家の近くにTSUTAYAがあって。今はもう潰れてしまったんだけど…ってTSUTAYAのフェスで潰れたとか言うのよくないと思うんだけど(笑)
でもレンタルとかはもう厳しい時代だと思うんですよ。だけどよく言われているように、あの店で借りた、好きなバンドがオススメしてたCDのこととか、借りてから家に帰って聴くまでの高揚感みたいなものは絶対消えないなって。なくなって欲しいものの方が多い世の中だけど、そうもいかないので」
と小池がTSUTAYAへの思いを口にしてから演奏されたのはバンドバージョンでの「光るまち」。
小池の歌のみで始まった曲にメンバーの演奏が重なり、山崎のノイジーに掻き鳴らすギターが過ぎ去っていく町の景色を思い描かせる。この曲のアレンジはきっと銀杏BOYZの「人間」などの途中からバンドサウンドになる曲が影響源としてあるんだろうけど、曲が見せてくれる景色はこのバンドのこの曲のものでしかない。弾き語りバージョンしか音源化されていないだけに、早くバンドバージョンも音源化していただきたい。
小池のMCを聞いていたら、自分自身もいろんなことを思い出した。高校生の頃に実家の近くのTSUTAYAに行ってCDを買ったり借りたりしていた頃のこと。そのTSUTAYAは小池が言っていたTSUTAYAと同様になくなってしまったが、今でも消えない思い出がたくさんあるし、そうした思い出や経験の一つ一つが今の自分を作っている。
1.高層ビルと人工衛星
2.Pain Pain Pain
3.あのトワイライト
4.暖かい都会から
5.新曲
6.拝啓
7.光るまち
Pain Pain Pain
https://youtu.be/mUG-sd7su8Q
18:15〜 SUPER BEAVER [MASSIVE STAGE]
昨年はCOSMIC STAGEへの出演だったので、2年連続出演にしてメインのMASSIVE STAGE、さらにはトリ前という位置にまで大きくジャンプアップを果たした、SUPER BEAVER。
メンバーが登場すると演奏を開始する前に渋谷龍太も
「今回この位置になったのは、このフェスの人たちが去年の我々のライブを見てくれて、今年はこの大事な位置を任せようと思ったと言ってくれました。
常に現場至上主義でやってきましたが、関わる人たちもその思いでやっているこのフェスに出れることを本当に嬉しく思います。レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVER始めます」
と去年の熱演がこのステージに繋がっていることを語り、ラウドなサウンドの「正攻法」からスタートすると、
「嘘つきの言葉は信じない」
のフレーズで上杉研太(ベース)が中指を突き立てている姿がスクリーンにアップで映る。それはかつてバンドが味わった苦い経験が柳沢亮太(ギター)に書かせたものなのだろう。
「あっという間に終わってしまうよ、このライブも」
と言って演奏された「閃光」はまさにあっという間に終わってしまうこのライブ、この1日、さらには人生をも言い表しているかのよう。
観客の両手が高々と上がる「青い春」、インディーズバンドながらドラマ主題歌に抜擢された「予感」と完全に今のこのバンドのベスト盤的な選曲を連発するが、何度ライブで聴いても全く飽きないのはこのバンドの曲、歌詞、音などのすべての要素に込めた意志があるがゆえだろうか。
「連帯感とか音楽で一つになろうとかそんな生温いことが言いたいわけじゃない。だからこそあなたたち一人一人でかかってこい!」
と一人一人の大合唱を煽った「秘密」は、一人一人ではあるけれどその一人一人が重なることによって美しい光景を描き出し、
「14年目のインディーズバンドとしてがむしゃらに走り続けてきましたが、それも今日で最後」
と、え?最後って?と誰しもが一瞬ドキッとすると、
「明日からは15年目のインディーズバンドとして活動していきます」
と4月1日が結成記念日であり、14年目の最後という意味だったので一安心。
そして渋谷は最後にマイクを通さずに観客1人1人への感謝を口にする。それがこんなに広い会場なのにしっかりと聞こえたのは、声量ももちろんあるけれど、渋谷とバンドの届けたいという意志の強さによるものがでかいと思う。
最後にその感謝の意志の結晶とも言える「ありがとう」を演奏し、バンドは日本武道館ワンマンも果たした14年目最後のライブを終えた。果たして15年目にはどんな景色を我々に見せてくれるのだろうか。
1.正攻法
2.閃光
3.青い春
4.予感
5.秘密
6.ありがとう
予感
https://youtu.be/XnYwwyXPt70
19:00〜 BIGMAMA [COSMIC STAGE]
ここまでこのCOSMIC STAGEに出演したのはみんな若手バンドたち。そのステージにトリとして登場するのはBIGMAMA。もうキャリア10年を超え、中堅からベテランと言っていい位置に差し掛かっているバンドがこのステージを締める。
おなじみベートーベン「第九」の壮大なSEでメンバーたちがステージに登場すると、金井政人(ボーカル&ギター)がタンクトップ姿なのが目を惹く。
静かにスタートして徐々に心と体に火をつけていくかのような「Make Up Your Mind」からスタートすると、ファンに人気の高い金井と柿沼広也(ギター&ボーカル)のツインボーカル的な「最後の一口」、さらには「ヒーローインタビュー」と徐々に曲のテンポが速いものになっていく。金井は観客を煽るような仕草に加えて、ほかのメンバー同様に笑顔も時には見受けられ、状態は非常に良さそうだ。
「できれば記憶の片隅ではなく、真ん中に。BIGMAMAです、よろしくお願いします」
と金井が挨拶すると、最新アルバム「-11°C」収録の「POPCORN STAR」では久々のBIGMAMAならではのヴァイオリンが入ったパンクサウンドに呼応してダイバーが続出。個人的にもここ数年のこのバンドの中で最も好きな曲であるだけに、こうしてライブで定番となってきているのは嬉しい限り。
BIGMAMAはキャリアにおいて様々な音楽的トライアルを果たしてきたが、それを経たからこそこの「POPCORN STAR」やその後に演奏された「Strawberry Feels」というパンクな最新作の曲たちが勢いや若さだけで突っ走るわけではないパンクサウンドの輝きを感じさせてくれる。
逆にグランジ的な重厚なサウンドの「ファビュラ・フィビュラ」はその音楽的なトライアルの一つであるが、この曲もまたコーラスでの観客の大合唱という意味ではライブで欠かせない存在になっている。
そして5月にリリースされる新曲「mummy mummy」も披露されたのだが、最初にタイトルを見た時はポップな曲だと思っていた。しかし実際に聴いてみると、ややおどろおどろしいというか、完全にダークサイドの曲である。原作を読んでないからわからないが、これはタイアップである「賭ケグルイ」の世界観に寄り添ったものとみていいのだろうか。
サビ前での一面に並んだリフトの壁を見るといつも「BIGMAMAのライブだな〜」と思わされてきた「荒狂曲 〜シンセカイ〜」は今でもキッズやかつてキッズでこのバンドとともに成長してきた人たちのテーマソングと言える。
そうしたパンク色の強いこの日のセットリストの最後に置かれたのは、
「この時間にこのステージを見にきてくれたあなたの全てを肯定します」
と言って演奏された「YESMAN」。その言葉を聞いてこの曲を聴くと、この日このフェスでこのバンドのライブを見れて本当に幸せだと思えるのだ。
きっと2〜3年くらいまで前だったらこのバンドはメインの方のMASSIVE STAGEに出演していたはず。でも今となってはこのキャパがちょうどいいくらいの感じ(結果的にはやはりこのステージでは1番人が多かったけど)に落ち着いてしまった。そこにはここに至るまでのいろいろなことも関係しているだろうし、実際にかつては毎回ワンマンを見に行っていた自分も「もうあんまりライブ見に行ったりしなくてもいいかな」と思ってしまう時もあった。
でも最近いろんなフェスやイベントでこのバンドのライブを見ていると、また昔みたいにワンマンに行ってみたいと思えるようになってきた。なので久しぶりに5月の母の日ライブには足を運んでみようと思っているし、片隅に追いやりかけていたこのバンドの存在がまた真ん中に戻ってきていることを確かに感じている。
1.Make Up Your Mind
2.最後の一口
3.ヒーローインタビュー
4.POPCORN STAR
5.ファビュラ・フィビュラ
6.Strawberry Feels
7.mummy mummy
8.荒狂曲"シンセカイ"
9.YESMAN
mummy mummy
https://youtu.be/X0oXLqqs0kI
19:45〜 10-FEET [MASSIVE STAGE]
今回のこのフェスの大トリは10-FEET。昨年はMy Hair is Badという若手にトリを託したこのフェスからすると実に座りがいいというか、誰しもが納得するようなバンドである。
おなじみのSE「そして伝説へ…」で3人がステージに登場すると、
「今日はアンコールの時間も貰ってるけど、一回引っ込んでまた出て、っていうのは時間がもったいないから、アンコールなしでアンコールの時間までやります」
と宣言して「1sec.」からスタートし、最新アルバムの「1 size FITS ALL」と続くと、早くもモッシュとダイブの嵐に。
「おい、目覚めてないんか?」
と観客に問いかけての「VIBES BY VIBES」、「super stomper」と目新しさこそないけれど10-FEETらしい選曲が続いたかと思いきや、
「照明さんすいません、次の曲変えます」
と言って演奏されたのは「蜃気楼」。どういう意図を持って曲を変えたのか、変える前の曲がなんだったのかはわからないが、
「また同じ夢を見ていた」
という住野よるが小説のタイトルに引用した名フレーズを持つこの曲が聴けたのは嬉しいし、決して激しいノリができる曲ではないけれど、本当に10-FEETの持つ名曲だと思う。
その名曲の後に
「僕らは幸せになるために産声上げた」
という生きる意味と向かい合いながら結局は単純な答えに行き着く「2%」と続くものだから感動するなという方が無理な話である。
「できれば周りの人と仲良くして欲しいし、ライブが終わった後にネットで
「隣の奴が歌ってうるさかった」
とか
「サークルばっかりできてウザかった」
とか言って欲しくない。そうならないためにどうするか?俺たちが良いライブやればええんやろ!」
と自分たち自身に改めて気合いを入れるように、そして観客たちを気遣うようにTAKUMAが吠えると、「利根川」バージョンに歌詞を変えた(幕張メッセでのライブだと「花見川」バージョンもあるがその違いは?)「RIVER」、「ヒトリセカイ」と心の深い部分に響くような曲を続け、ラストは明日以降の憂鬱や不安や葛藤を全て向こう側に飛ばすかのような「その向こうへ」。演奏が終わってステージを去った後に時間を見たら持ち時間ピッタリだった。計算しても絶対できないであろうことを当たり前のようにやってのける(あえてアンコールなしというやり方で)10-FEETは本当に凄い。
TAKUMAは
「俺たちが良いライブすればええんやろ!」
と言っていたが、実際に良いライブをしてみせて、それでいて観客の誰一人として悲しい思いをして欲しくないと思っている。それがバンドの曲や音から出ているからこそ、ベテランになると集客力や立場がキツくなっていくフェスという場所においても10-FEETは文句なしにトリができる存在であり続ける。これだけ凄いバンドたちが並ぶ中でしっかり最後を締めてくれて、みんなが満足できるような空間を作ってくれる。やっぱり10-FEETは凄い。
1.1sec.
2.1 size FITS ALL
3.VIBES BY VIBES
4.super stomper
5.goes on
6.蜃気楼
7.2%
8.RIVER
9.ヒトリセカイ
10.その向こうへ
その向こうへ
https://youtu.be/p67eKL1e6u0
20:35〜 ピエール中野 [COSMIC STAGE]
クロージングDJは前日には凛として時雨のドラマーとしてトリを務めた、ピエール中野。アーティスト主催ではないフェスにおいて2日連続でトリを務める人というのはほとんど前例がないことである。
時間になるとすでにDJ卓にピエール中野がおり、
「おい、やるぞ!」
と言うとこの日のトップバッターであるヤバイTシャツ屋さんが1曲目に演奏した「あつまれ!パーティーピーポー」でスタート。ピエールはブレイク前からヤバTをこうしてDJでかけていたが、この曲からスタートすることで長かった1日の始まりを思い起こさせる。
2018年度という点で言うと2018年最大の音楽シーンのトピックだったELLEGARDEN復活、この日、石毛輝も凛として時雨の名前を出していた盟友the telephonesの復活と鉄板の日本のロックアンセムを連打。てっきりthe telephonesのメンバーはステージに出てくると思ったのだが、それはなし。
MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」からは持ち時間を気にしてか途中で曲を繋げるというDJの経験値の高さを垣間見ることができ、この男のDJでは定番のハイスタ「STAY GOLD」からはパンク・ラウドに振り切れていくのかと思いきや、これまたこの男のDJでは定番の嵐「A・RA・SHI」がかかったのでこれで終わりかと思いきや、何かと渦中の電気グルーヴ「虹」をかけると(「Shangri-La」じゃないところがピエールらしい)、
「この曲今買えないんだぜ!?信じられないよな?俺たちはTSUTAYAからいろんな恩恵を受けてステージに立って表現をしてる。今日は音楽は自由だってことを証明しに来た!」
と、ピエール瀧が逮捕されたことによってCDショップや配信から電気グルーヴの音楽が消えてしまったことに対する自身のスタンスをはっきりと展開する。名前をいただいているくらいに影響を受けているピエール中野だからこそ、こうして電気グルーヴの音楽を途絶えさせないように流した「虹」からはこの曲の普遍性と、聞かれることがなくなってしまうことの怖さや違和感を強く感じさせた。つまり、ピエール中野が言ったように音楽は自由だ。聴くのも、聴かないのも。でも聴きたいと思った時には聴けるようであって欲しい。この曲や電気グルーヴの存在に人生を救われたり支えられたりしてきた人がたくさんいるのだから。
曲が終わると一本締めでDJと今年のツタロックを締めたピエール中野。ただ盛り上がるだけのDJではない、彼の音楽への強い愛情と、超絶ドラマーである彼がなぜDJとしてこんなにも精力的に活動してるのかが改めてわかった時間だった。
1.あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
2.ジターバグ / ELLEGARDEN
3.Monkey Discooooooo / the telephones
4.FLY AGAIN / MAN WITH A MISSION
5.ヘビーローテーション / AKB48
6.STAY GOLD / Hi-STANDARD
7.goes on / 10-FEET
8.包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ / マキシマム ザ ホルモン
9.A・RA・SHI / 嵐
10.虹 / 電気グルーヴ
CDレンタルや販売業としてのTSUTAYAはこれからも店舗が減っていったり、縮小していくのは間違いない。それはもう時代の流れだ。でもこの日、tetoの小池やピエール中野が言っていたように、そこでの記憶は決してなくならない。それはこの日のライブもそう。
もしなくなってしまったとしても、こういうフェスがあることによって、その存在を思い返せるような日が1年に1日や2日だけでもありますように。
Next→ 4/6 YON FES @モリコロパーク