フレデリック FREDERHYTHM TOUR 2019 〜飄々とイマジネーション〜 @Zepp Tokyo 2/20
- 2019/02/21
- 00:01
もはや毎年年中ツアーを行っているし、そのタイトルもだいたい「フレデリズムツアー」でサブタイトルが違うくらいだし、ツアーやってる間に次の作品がリリースされるしで、もはや今がなんのツアーなのかわからないくらいにライブをやりまくっているという意味では生粋のライブバンドである、フレデリック。
今回のツアーはバンドが新たな次元に突入したことを示した「飄々とエモーション」のツアー第2弾的なものなのだが、この日がニューアルバム「フレデリズム2」の発売日という実に妙なスケジュール。Zepp Tokyo2daysの初日であるこの日は健司(ボーカル&ギター)と康司(ベース)の双子の三原兄弟の誕生日というめでたい日。この日にアルバムが発売されてワンマンがあるというのは狙ったとしか思えないくらいに整いすぎている。
19時を少し過ぎると場内が暗転し、おなじみのダンサブルなSEが流れ出すとステージ背面にツアータイトルの「飄々とイマジネーション」の文字が現れ、レーザー光線がさまざまな色でその文字に光を当てる。色によって言葉が持つイメージはだいぶ変わるな、と思っていると先に高橋武(ドラム)、康司、赤頭隆児(ギター)の3人が先にステージに登場して楽器を持つと、最後に健司が現れ、3人がビートを刻み始めると、ギターは持たずにハンドマイクを手にして歌い始める「シンセンス」からスタート。
爽やかなダンスサウンドの上を伸びる健司のファルセットは実に美しく、ハンドマイクということでステージ上手の康司側に歩いていくということもできるのだが、それだけで上手側からは大きな歓声が上がる。かつてはこうしてハンドマイクでステージを動き回る姿なんて全く想像できなかったが、もうずっと昔からこのスタイルで歌っているかのような堂々としたパフォーマンス。
その「シンセンス」のアウトロで高橋がリズムをキープし続けていると健司がギターを担ぎ、そのリズムはそのまま「かなしいうれしい」のイントロになり、それに合わせて手拍子が発生するという曲と曲を繋げるライブアレンジはフレデリックならではであり、フレデリズムであるよなぁと見るたびに思う。
なのでフレデリックのワンマンはテンポがめちゃくちゃ良い。確かに前半に「パラレルロール」や、
「遊びきってから帰れよ!」
と最後のフレーズで観客に告げる「KITAKU BEATS」という疾走感のある曲を続けたがゆえにより一層そのテンポの良さを感じるところもあるのだが、メンバーが登場して音を鳴らし始めてからここまで音楽以外の時間が全くないというくらいに常に音が鳴っている。
これはメンバーのミュージシャンとしての演奏力はもちろん、アスリートとしての体力がないとできない。見た目からはそうしたイメージはないが、その実態は精神も肉体もビルドアップされたバンドである。やはりそれはやり過ぎっていうくらいにライブをやっているバンドだからこそであろう。
レイドバックしたイントロからダンスロックに急展開する「シンクロック」からはレーザー光線がステージから客席に降り注ぎ始め、「TOGENKYO」「FUTURE ICE CREAM」というあたりでは観客を踊らせまくる最大のエンジンにして、フレデリックの名曲たちを生み出してきた男である康司のソロボーカルパートも聴ける。双子とはいえ見た目は一目で見分けがつくくらいに異なるが、それは歌声もまた然りである。
同じ双子であるTheピーズの大木温之とTOMOVSKYは顔もよく似ているし、かつては後からバンドを始めたTOMOVSKYがあえて高い声で歌っていたというくらいに声も似ていたらしい。そう考えると双子というのは実に面白い存在であるし、その双子で同じ音楽を選んだというのもまた面白い。
シンセの打ち込みのサウンドがイントロで響いた「真っ赤なCAR」は客席の一部から悲鳴にも似た歓声が上がるくらいのレア曲であるが、タイトル通りに真っ赤な照明がメンバーを照らすと、そこからは性急にというよりもテンポを落としてじっくりと踊らせるムードに。
カップリング曲という立ち位置であるにもかかわらずこのパートを象徴するような「NEON PICNIC」を聴いているとこのバンドがカップリングにも一切手を抜くことなく、大事な一曲として向き合っているということがよくわかるのだが、再び健司がハンドマイクに転じた、「フレデリズム2」の先行配信曲となった「LIGHT」ではいつの間にかステージ背面の「飄々とイマジネーション」というツアータイトルが壁一面の丸い(遠目から見るとCDのようにも見える)ライトに変化している。幕が上がったり落ちたりとかした気配も全くなかっただけにいったいこれはどうやっているのだろうかと思うと同時に、ここまでは
「今までは映像とかも使っていたけど、今日はそういう演出は最小限のライブなんだな」
というようにライブをまとめようとしていた己の思考を鮮やかに裏切ってみせた。決してド派手な演出ではなかったが、ほかのライブでは見たことがない、まさに飄々としながらイマジネーションを想起させるようなものだった。これは間違いなく今回のツアーのハイライト的な場面だろう。
ここまではほとんど曲間なく進行してきただけに、ここで初のMCタイム。東京でワンマンをやるのが1年ちょっとぶりであり、だいぶ空いてしまったがゆえに観客もいつぶりか答えられない中で、
「今日は何の日?」
と煽ると待ってましたとばかりに観客による「Happy Birthday」の大合唱。「Dear」の部分で名前を入れられないのは健司と康司の2人の誕生日であるからこそだが、健司はそれを
「今日は「フレデリズム2」の発売日です(笑)」
とはぐらかすも、やはり嬉しすぎたらしく、この日の会場入りの際にスタッフ全員が出迎えてくれて祝ってくれたこと、赤頭から誕生日プレゼントをもらったことなど、やはり誕生日に焦点を当てたMCとなったが、康司の
「今日は俺らの生まれた日やけど、みんなが生まれてくれたからこうやってここでライブができてる。みんな生まれてきてくれてありがとう。みんなが生まれてなかったら今日は別の三原がここに立ってたかもしれない」
というぶっ飛んだMCと赤頭(照れているのかあまり喋らない)に続いて高橋のMCになると、
「今日の前のライブが福岡だったんだけど、そのライブがめちゃくちゃ良くて。ライブが良いっていう要素って来てくれてるみんなが力を返してくれたりとか色々あると思うんだけど、その日のライブの前に健司くんが
「28歳最後のライブ、よろしくお願いします」
って言ってて。だから俺は絶対に良いライブにしてやろうと思ってライブに臨んで、そういう気持ちが良いライブに繋がったと思ってて。
今日も2人の29歳最初のライブだから絶対に良いライブにしようと思ってるんだけど、正直言って俺は誰の誕生日でもそうは思わないと思う。康司くんがめちゃ良い曲を作ってくれて、健司くんがそれを歌ってみんなに届けてくれる存在だからこそそう思える」
と
「なんでそんないいこといきなり言うねん!」
と言われるくらいの名MCによって会場は大きな拍手に包まれる。
高橋は途中でバンドに加入してきたし、自分はフレデリックに入る前のスタイルを知っていたからこそ、正直加入前にサポートでバンドに参加し始めた時はちょっとフレデリックの音楽には直線的過ぎるというか、ドラマーとしての腕は間違いないが、スタイルとしてこのバンドに合っているのだろうか?と思っていた。
しかしライブを重ね、バンドのメンバーの1人として一緒に楽曲を作ってきたことによって、その違和感がなくなるどころか、もうフレデリックはこの4人でしかあり得ないな、とすら思えている。それは高橋自身が自身のスタイルを大事にしながらもフレデリックのドラマーとして合わせるべきところを合わせてきたからだろうし、何よりもこうしてメンバーの存在を本当に愛おしく、大事に思っているという精神的な理由が大きい。本当に良いメンバーによる良いバンドだと心から思う。
そんな感動的なMCを経ての後半戦は「リリリピート」から、踊りまくれるフレデリックに一気に転じていくのだが、やはりリリース日ということで「フレデリズム2」からそのイメージ通りのフレデリックど真ん中な「エンドレスメーデー」も披露されると、間奏で一気にダブっぽくなったりブレイクを入れたりと、1曲の中で何球もチェンジアップを投げるかのような緩急をつけることによってサビでさらなる爆発力を獲得した「バジルの宴」と続くと、おなじみの疾走感溢れるイントロが追加された「オドループ」へ。
今や日本のロックシーン最大のアンセムと言っていいこの曲ではサビで健司が観客に歌を委ねたりするのだが、この日は明らかに「ここも!?」と思ってしまうような部分でも健司からマイクから離れたり歌わなかったりする場面が多かったので、
「さっきまであんなに声が出てたのに急にどうしたんだ?」
と思っていると、赤頭がギターソロ前に健司に水を差し出す素振りを見せ、健司は
「泣いてへんわ!」
と返した。いや、確かに泣いていた。嬉し泣きをしていたから歌えなかったのだ。
フェスでどんなに大きなステージに立っても泣きそうな素振りは一切見せなかった、逆に強い面を見せてきただけに、ステージの上で健司が泣く姿なんか全く想像できなかった。高橋のMCによって引き出された涙だったようだが、この日はメンバーにとっても我々にとっても忘れられない、特別な日になった。
そして
「もう、みんなが嫌いやわ!(笑)」
と言いながら最後には
「ごめん、大好きです!」
と言って最後に演奏されたのは「フレデリズム2」に収録されている「スキライズム」。他にも演奏していないキラーチューンがたくさんあるにもかかわらずこの曲を大事な本編の最後に持ってきたということは、ゆくゆくはこの曲がそうしたキラーチューンたちと並ぶような曲になるのが本人たちには見えているのだろう。最後に康司と赤頭が健司と肩を組むようにして笑顔で寄り添っていたのを見て、フレデリックはまだまだこれからとんでもないところまで行くんだろうな、と思った。
アンコールでは
「実は康司からも誕生日プレゼント貰ったんですよ。自分も誕生日なのに(笑)
欲しかった柄シャツを貰ったからそれを着て出てこようかと思ったけど、今日はそれどころじゃない(笑)」
とやはり涙を流したのを引きずっているようで、
「誕生日の話ばっかりになってしまったけど、今日は「フレデリズム2」の発売日です。
世の中にはいろんなバンドとかアーティストがいて、それぞれが1番を目指してやってると思うねんけど、俺たちはそういうとことは違うとこでこっそりとやって、俺たちだけの国を作りたい。それが「フレデリズム」なんです」
とアルバムへの想いを口にしたのだが、どこかそれすらも涙ぐんでいるように見えた。そして、
「みんなも俺たちの国へ逃げ込んできてください」
と言って演奏されたのは
「君とばっくれたいのさ」
というサビのフレーズのリフレインがクセになりまくる、また新たな中毒ソングをこのバンドが作ってきたな、と思わざるを得ない「逃避行」。もうこの日ここにいた人たちはみんなフレデリックの国に逃げ込んでいる人たちだけど、この曲とこの曲が収録された「フレデリズム2」によってその入国者は間違いなくさらに増えることだろう。さすがにまだアルバムのツアーではないので全曲をライブでは演奏しないが、すでにアルバムツアーであるかのような新曲のライブでの仕上がりぶり。その姿を見たことによってアルバム自体の評価もさらに高まる。まだフルアルバムは2枚目であるが、はやくもバンドにとってのマイルストーン的なものになるのかもしれない。
そして最後に演奏されたのはやはりツアータイトルにもなっている「飄々とエモーション」。健司はハンドマイクで実に伸びやかに歌い、先ほどの歌に詰まったのはやはり喉の不調とかでは一切ないということを改めて感じさせると、最後には観客にコーラス部分をコール&レスポンス的に合唱させるのだが、あまりにも健司の歌が上手すぎ&声量が凄すぎで(かつキーが男性からしたら高すぎる)、歌うのを躊躇してしまうほどだった。
この歌唱力の凄まじい進化っぷりを見ていると、いずれは全く踊れる要素がない曲が出来てくるかもしれないし、そうなったとしても歌の力だけでこのキャパや、それこそ発表されたばかりの横浜アリーナのような規模の会場まで掌握できるようになるかもしれない。つまりバンドの可能性は無限に思えるくらいに広がってきている。もう「オワラセナイト」や「オンリーワンダー」をやっていないことに全く物足りなさは感じないようになっていた。
同じツアーや同じセトリ、同じ会場であってもライブが1本1本違うものであるというのは当たり前である。しかしこの日のライブはやはり特別なものだった。翌日の2日目も全く違うものになるのは間違いないけれど、フレデリックのライブは流れが完璧に出来上がっているだけに、どこをどうやって変えるのだろうかとも思う。
でも明日のライブが終わる頃にはきっとそう思っている自分の想像を良い意味であっさりと裏切ってくれるのだろう。前のツアーもファイナルと追加公演が全く違うものになっていて、ビックリさせられたバンドなのだ、フレデリックは。
1.シンセンス
2.かなしいうれしい
3.パラレルロール
4.KITAKU BEATS
5.シンクロック
6.TOGENKYO
7.FUTURE ICE CREAM
8.真っ赤なCAR
9.NEON PICNIC
10.LIGHT
11.リリリピート
12.エンドレスメーデー
13.バジルの宴
14.オドループ
15.スキライズム
encore
16.逃避行
17.飄々とエモーション
LIGHT
https://youtu.be/0H7VWEfekv8
Next→ 2/21 フレデリック @Zepp Tokyo
今回のツアーはバンドが新たな次元に突入したことを示した「飄々とエモーション」のツアー第2弾的なものなのだが、この日がニューアルバム「フレデリズム2」の発売日という実に妙なスケジュール。Zepp Tokyo2daysの初日であるこの日は健司(ボーカル&ギター)と康司(ベース)の双子の三原兄弟の誕生日というめでたい日。この日にアルバムが発売されてワンマンがあるというのは狙ったとしか思えないくらいに整いすぎている。
19時を少し過ぎると場内が暗転し、おなじみのダンサブルなSEが流れ出すとステージ背面にツアータイトルの「飄々とイマジネーション」の文字が現れ、レーザー光線がさまざまな色でその文字に光を当てる。色によって言葉が持つイメージはだいぶ変わるな、と思っていると先に高橋武(ドラム)、康司、赤頭隆児(ギター)の3人が先にステージに登場して楽器を持つと、最後に健司が現れ、3人がビートを刻み始めると、ギターは持たずにハンドマイクを手にして歌い始める「シンセンス」からスタート。
爽やかなダンスサウンドの上を伸びる健司のファルセットは実に美しく、ハンドマイクということでステージ上手の康司側に歩いていくということもできるのだが、それだけで上手側からは大きな歓声が上がる。かつてはこうしてハンドマイクでステージを動き回る姿なんて全く想像できなかったが、もうずっと昔からこのスタイルで歌っているかのような堂々としたパフォーマンス。
その「シンセンス」のアウトロで高橋がリズムをキープし続けていると健司がギターを担ぎ、そのリズムはそのまま「かなしいうれしい」のイントロになり、それに合わせて手拍子が発生するという曲と曲を繋げるライブアレンジはフレデリックならではであり、フレデリズムであるよなぁと見るたびに思う。
なのでフレデリックのワンマンはテンポがめちゃくちゃ良い。確かに前半に「パラレルロール」や、
「遊びきってから帰れよ!」
と最後のフレーズで観客に告げる「KITAKU BEATS」という疾走感のある曲を続けたがゆえにより一層そのテンポの良さを感じるところもあるのだが、メンバーが登場して音を鳴らし始めてからここまで音楽以外の時間が全くないというくらいに常に音が鳴っている。
これはメンバーのミュージシャンとしての演奏力はもちろん、アスリートとしての体力がないとできない。見た目からはそうしたイメージはないが、その実態は精神も肉体もビルドアップされたバンドである。やはりそれはやり過ぎっていうくらいにライブをやっているバンドだからこそであろう。
レイドバックしたイントロからダンスロックに急展開する「シンクロック」からはレーザー光線がステージから客席に降り注ぎ始め、「TOGENKYO」「FUTURE ICE CREAM」というあたりでは観客を踊らせまくる最大のエンジンにして、フレデリックの名曲たちを生み出してきた男である康司のソロボーカルパートも聴ける。双子とはいえ見た目は一目で見分けがつくくらいに異なるが、それは歌声もまた然りである。
同じ双子であるTheピーズの大木温之とTOMOVSKYは顔もよく似ているし、かつては後からバンドを始めたTOMOVSKYがあえて高い声で歌っていたというくらいに声も似ていたらしい。そう考えると双子というのは実に面白い存在であるし、その双子で同じ音楽を選んだというのもまた面白い。
シンセの打ち込みのサウンドがイントロで響いた「真っ赤なCAR」は客席の一部から悲鳴にも似た歓声が上がるくらいのレア曲であるが、タイトル通りに真っ赤な照明がメンバーを照らすと、そこからは性急にというよりもテンポを落としてじっくりと踊らせるムードに。
カップリング曲という立ち位置であるにもかかわらずこのパートを象徴するような「NEON PICNIC」を聴いているとこのバンドがカップリングにも一切手を抜くことなく、大事な一曲として向き合っているということがよくわかるのだが、再び健司がハンドマイクに転じた、「フレデリズム2」の先行配信曲となった「LIGHT」ではいつの間にかステージ背面の「飄々とイマジネーション」というツアータイトルが壁一面の丸い(遠目から見るとCDのようにも見える)ライトに変化している。幕が上がったり落ちたりとかした気配も全くなかっただけにいったいこれはどうやっているのだろうかと思うと同時に、ここまでは
「今までは映像とかも使っていたけど、今日はそういう演出は最小限のライブなんだな」
というようにライブをまとめようとしていた己の思考を鮮やかに裏切ってみせた。決してド派手な演出ではなかったが、ほかのライブでは見たことがない、まさに飄々としながらイマジネーションを想起させるようなものだった。これは間違いなく今回のツアーのハイライト的な場面だろう。
ここまではほとんど曲間なく進行してきただけに、ここで初のMCタイム。東京でワンマンをやるのが1年ちょっとぶりであり、だいぶ空いてしまったがゆえに観客もいつぶりか答えられない中で、
「今日は何の日?」
と煽ると待ってましたとばかりに観客による「Happy Birthday」の大合唱。「Dear」の部分で名前を入れられないのは健司と康司の2人の誕生日であるからこそだが、健司はそれを
「今日は「フレデリズム2」の発売日です(笑)」
とはぐらかすも、やはり嬉しすぎたらしく、この日の会場入りの際にスタッフ全員が出迎えてくれて祝ってくれたこと、赤頭から誕生日プレゼントをもらったことなど、やはり誕生日に焦点を当てたMCとなったが、康司の
「今日は俺らの生まれた日やけど、みんなが生まれてくれたからこうやってここでライブができてる。みんな生まれてきてくれてありがとう。みんなが生まれてなかったら今日は別の三原がここに立ってたかもしれない」
というぶっ飛んだMCと赤頭(照れているのかあまり喋らない)に続いて高橋のMCになると、
「今日の前のライブが福岡だったんだけど、そのライブがめちゃくちゃ良くて。ライブが良いっていう要素って来てくれてるみんなが力を返してくれたりとか色々あると思うんだけど、その日のライブの前に健司くんが
「28歳最後のライブ、よろしくお願いします」
って言ってて。だから俺は絶対に良いライブにしてやろうと思ってライブに臨んで、そういう気持ちが良いライブに繋がったと思ってて。
今日も2人の29歳最初のライブだから絶対に良いライブにしようと思ってるんだけど、正直言って俺は誰の誕生日でもそうは思わないと思う。康司くんがめちゃ良い曲を作ってくれて、健司くんがそれを歌ってみんなに届けてくれる存在だからこそそう思える」
と
「なんでそんないいこといきなり言うねん!」
と言われるくらいの名MCによって会場は大きな拍手に包まれる。
高橋は途中でバンドに加入してきたし、自分はフレデリックに入る前のスタイルを知っていたからこそ、正直加入前にサポートでバンドに参加し始めた時はちょっとフレデリックの音楽には直線的過ぎるというか、ドラマーとしての腕は間違いないが、スタイルとしてこのバンドに合っているのだろうか?と思っていた。
しかしライブを重ね、バンドのメンバーの1人として一緒に楽曲を作ってきたことによって、その違和感がなくなるどころか、もうフレデリックはこの4人でしかあり得ないな、とすら思えている。それは高橋自身が自身のスタイルを大事にしながらもフレデリックのドラマーとして合わせるべきところを合わせてきたからだろうし、何よりもこうしてメンバーの存在を本当に愛おしく、大事に思っているという精神的な理由が大きい。本当に良いメンバーによる良いバンドだと心から思う。
そんな感動的なMCを経ての後半戦は「リリリピート」から、踊りまくれるフレデリックに一気に転じていくのだが、やはりリリース日ということで「フレデリズム2」からそのイメージ通りのフレデリックど真ん中な「エンドレスメーデー」も披露されると、間奏で一気にダブっぽくなったりブレイクを入れたりと、1曲の中で何球もチェンジアップを投げるかのような緩急をつけることによってサビでさらなる爆発力を獲得した「バジルの宴」と続くと、おなじみの疾走感溢れるイントロが追加された「オドループ」へ。
今や日本のロックシーン最大のアンセムと言っていいこの曲ではサビで健司が観客に歌を委ねたりするのだが、この日は明らかに「ここも!?」と思ってしまうような部分でも健司からマイクから離れたり歌わなかったりする場面が多かったので、
「さっきまであんなに声が出てたのに急にどうしたんだ?」
と思っていると、赤頭がギターソロ前に健司に水を差し出す素振りを見せ、健司は
「泣いてへんわ!」
と返した。いや、確かに泣いていた。嬉し泣きをしていたから歌えなかったのだ。
フェスでどんなに大きなステージに立っても泣きそうな素振りは一切見せなかった、逆に強い面を見せてきただけに、ステージの上で健司が泣く姿なんか全く想像できなかった。高橋のMCによって引き出された涙だったようだが、この日はメンバーにとっても我々にとっても忘れられない、特別な日になった。
そして
「もう、みんなが嫌いやわ!(笑)」
と言いながら最後には
「ごめん、大好きです!」
と言って最後に演奏されたのは「フレデリズム2」に収録されている「スキライズム」。他にも演奏していないキラーチューンがたくさんあるにもかかわらずこの曲を大事な本編の最後に持ってきたということは、ゆくゆくはこの曲がそうしたキラーチューンたちと並ぶような曲になるのが本人たちには見えているのだろう。最後に康司と赤頭が健司と肩を組むようにして笑顔で寄り添っていたのを見て、フレデリックはまだまだこれからとんでもないところまで行くんだろうな、と思った。
アンコールでは
「実は康司からも誕生日プレゼント貰ったんですよ。自分も誕生日なのに(笑)
欲しかった柄シャツを貰ったからそれを着て出てこようかと思ったけど、今日はそれどころじゃない(笑)」
とやはり涙を流したのを引きずっているようで、
「誕生日の話ばっかりになってしまったけど、今日は「フレデリズム2」の発売日です。
世の中にはいろんなバンドとかアーティストがいて、それぞれが1番を目指してやってると思うねんけど、俺たちはそういうとことは違うとこでこっそりとやって、俺たちだけの国を作りたい。それが「フレデリズム」なんです」
とアルバムへの想いを口にしたのだが、どこかそれすらも涙ぐんでいるように見えた。そして、
「みんなも俺たちの国へ逃げ込んできてください」
と言って演奏されたのは
「君とばっくれたいのさ」
というサビのフレーズのリフレインがクセになりまくる、また新たな中毒ソングをこのバンドが作ってきたな、と思わざるを得ない「逃避行」。もうこの日ここにいた人たちはみんなフレデリックの国に逃げ込んでいる人たちだけど、この曲とこの曲が収録された「フレデリズム2」によってその入国者は間違いなくさらに増えることだろう。さすがにまだアルバムのツアーではないので全曲をライブでは演奏しないが、すでにアルバムツアーであるかのような新曲のライブでの仕上がりぶり。その姿を見たことによってアルバム自体の評価もさらに高まる。まだフルアルバムは2枚目であるが、はやくもバンドにとってのマイルストーン的なものになるのかもしれない。
そして最後に演奏されたのはやはりツアータイトルにもなっている「飄々とエモーション」。健司はハンドマイクで実に伸びやかに歌い、先ほどの歌に詰まったのはやはり喉の不調とかでは一切ないということを改めて感じさせると、最後には観客にコーラス部分をコール&レスポンス的に合唱させるのだが、あまりにも健司の歌が上手すぎ&声量が凄すぎで(かつキーが男性からしたら高すぎる)、歌うのを躊躇してしまうほどだった。
この歌唱力の凄まじい進化っぷりを見ていると、いずれは全く踊れる要素がない曲が出来てくるかもしれないし、そうなったとしても歌の力だけでこのキャパや、それこそ発表されたばかりの横浜アリーナのような規模の会場まで掌握できるようになるかもしれない。つまりバンドの可能性は無限に思えるくらいに広がってきている。もう「オワラセナイト」や「オンリーワンダー」をやっていないことに全く物足りなさは感じないようになっていた。
同じツアーや同じセトリ、同じ会場であってもライブが1本1本違うものであるというのは当たり前である。しかしこの日のライブはやはり特別なものだった。翌日の2日目も全く違うものになるのは間違いないけれど、フレデリックのライブは流れが完璧に出来上がっているだけに、どこをどうやって変えるのだろうかとも思う。
でも明日のライブが終わる頃にはきっとそう思っている自分の想像を良い意味であっさりと裏切ってくれるのだろう。前のツアーもファイナルと追加公演が全く違うものになっていて、ビックリさせられたバンドなのだ、フレデリックは。
1.シンセンス
2.かなしいうれしい
3.パラレルロール
4.KITAKU BEATS
5.シンクロック
6.TOGENKYO
7.FUTURE ICE CREAM
8.真っ赤なCAR
9.NEON PICNIC
10.LIGHT
11.リリリピート
12.エンドレスメーデー
13.バジルの宴
14.オドループ
15.スキライズム
encore
16.逃避行
17.飄々とエモーション
LIGHT
https://youtu.be/0H7VWEfekv8
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