パスピエ presents 「印象E」 出演:パスピエ / UNISON SQUARE GARDEN @新木場STUDIO COAST 6/17
- 2016/06/18
- 01:15
去年は日本武道館でのワンマンを成功させた、5人組ロックバンド、パスピエの恒例の自主企画ライブ、「印象」シリーズ。
毎回規模を拡大しながら続いてきたこのシリーズ、ついに東名阪での開催で東京の会場は新木場STUDIO COASTになり、ゲストはUNISON SQUARE GARDENを迎えるに至った。
・UNISON SQUARE GARDEN
2年前、このバンドの自主企画ライブにパスピエが出演しており、いわばお返し的な出演となる、UNISON SQUARE GARDEN。
会場の中に入った時にはすでにメンバーが登場しており、セッション的な演奏から斎藤が
「UNISON SQUARE GARDENです!」
と一言挨拶すると、このバンドがメジャーデビュー当時からスリーピースロックバンドのダイナミズムの限界に挑んでいたことを実感させる「マスターボリューム」でスタートし、聴いていると思わず心と体がウキウキしてくるような大ヒットシングル「シュガーソングとビターステップ」ももちろん演奏されるが、ゲストという立ち位置でアルバム曲も多数演奏されているのに、アウェー感が全くない。もちろんユニゾンを見に来たというユニゾンのファンもたくさんいただろうが、ヒットシングルだけでなくアルバム曲までもが現在のロックシーンのアンセムと言えるような存在になりつつある。それはまるでRADWIMPSが「3」~「4」を出して、一気にロックシーンの頂点まで駆け上がった頃のように。
「君が残像に」
のフレーズの3人のハモりとともに打ち込みも使ったサウンドで踊らせる「MR.アンディ」ではサビのフレーズに合わせて手拍子も起こるが、このバンドにおいては全く煽ることも強制することもなく、ただただやりたい人だけが手拍子をするという状況が貫かれている。
ピアノの音色が美しい、斎藤の声の伸び具合を存分に堪能できる「harmonize finale」を終えると、ここまで全くMCをするような雰囲気ではなかったため、斎藤が口を開くと場内がざわつき、
「なんでざわつくの?(笑)俺だって喋っていいでしょ(笑)」
と完全に掴むと、
「パスピエとは2年前に僕らの自主企画ライブに出てもらってからの付き合いなんだけど、一緒にやりたくないバンドだなぁって(笑)
だって演奏めちゃくちゃ上手いじゃん?それでその演奏めちゃくちゃ上手いバンドを聴いてるファンの人たちは絶対耳が肥えてるんですよ。だから僕らは運動量とか顔の表情作ったりしてなんとかやってるけど、全部見抜かれてる気がする(笑)」
と、パスピエのメンバーとファンに最大級の賛辞を送り、来月発売のアルバムからの新曲「パンデミック・サドンデス」を演奏。すでにライブではおなじみとなりつつあるだけに、新曲とは思えない盛り上がりぶりとなったが、タイプ的には次に演奏された「天国と地獄」のような、いろんな意味で情報量が多いタイプの曲。この辺りから自らのバンドの持ち味を「運動量」と斎藤が言ったように、田淵がステージを所狭しと駆け回りまくる。もちろんベースを演奏しながら。
するとここで長尺ライブならではの、鈴木のドラムソロコーナーへ。斎藤と田淵がいったんステージから姿を消す中、同世代のかみじょうちひろ(9mm Parabellum Bullet)やピエール中野(凛として時雨)という超人ドラマーたちに負けないくらいの凄まじいソロを見せる。スティックで空中を叩きまくる=バスドラしか鳴っていないのに音が凄まじいと思えるのはなんなんだろうか。斎藤がパスピエは演奏が上手すぎると言っていたが、このソロを見ると、「いやいや、あんたらもめちゃくちゃ上手いじゃないですか!」と突っ込まざるを得ない。
鈴木はデビュー当初からこんなに上手いドラマーじゃなかっただけに、これは積み重ねてきた努力の結晶と言える。
斎藤と田淵がステージに戻ってそれぞれ音を鳴らすと、
「今日を行け 何度でもメロディ」
というサビの最後のフレーズがバシッと決まる「リニアブルーを聴きながら」へ。ユニゾンは決して難しい言葉を多用する歌詞のバンドではなく、むしろ誰もが知っている、使っている言葉を組み合わせて歌詞にするバンドだが、そんな言葉を使っていても、このメロディへの「ここにはこのフレーズしかない!」というハマり具合によって、田淵の作詞家としての唯一無二さを際立たせている。その田淵はステージを飛び跳ねまくっており、とてもこんな歌詞を書くような人には見えないのだが。
「ラスト!」
と言うと「ガリレオのショーケース」では鈴木が上着を頭にかけて、前が見えない状態でドラムを叩き、田淵は寝転がって足だけを上げたり、どうやってベースを弾いているんだろうかという動きばかりで、この曲においてのリズム隊はお笑いコンビのコントのようですらある。
そんな中、キメでギターをジャジャッと鳴らす斎藤の背後に田淵が近寄り、後ろから手を伸ばして斎藤のギターを弾く、後ろから抱きしめるという、いつにも増してやり過ぎなんじゃないかというアクションを見せ続け、
「またね!」
と斎藤が言うと、鈴木がスティックを投げ込みながらステージを去って行った。
「演奏が上手すぎる」というパスピエに絶対負けたくないという、先輩の意地を多いに感じたライブ。来るべき来月のアルバムもとんでもない内容の名盤になりそうで、ユニゾンの勢いはまだまだ止まりそうもない。
あまり大きいステージに意欲を見せるバンドではないが、状況的に今年の夏は1番大きいステージで見れるだろうか。
1.マスターボリューム
2.Kid,I like quartet
3.シュガーソングとビターステップ
4.ため息Shooting the moon
5.MR.アンディ
6.harmonize finale
7.パンデミック・サドンデス
8.天国と地獄
9.リニアブルーを聴きながら
10.ガリレオのショーケース
・パスピエ
意外なほどにスムーズな転換ののち、パスピエのメンバーが1人ずつステージに登場。赤と緑という「幕の内ISM」のジャケットのような色合いの衣装を着た大胡田なつきが現れると一層大きな歓声が上がる。
するといきなり現状の最新シングルである「ヨアケマエ」からスタート。
「革命は食事のあとで」「正しい夜明けを迎えませんか」
と、明らかに「武道館以降」の新章突入を感じさせるフレーズが並ぶ歌詞はもちろん、ライブでは間奏で、今まで一切楽器を弾くことのなかった大胡田がキーボードを弾くという場面も必見。
これからの季節=夏の到来を感じさせるようなきらめくポップス「七色の少年」でCOASTの中に涼しい風を吹かせると、近年は短い尺のライブではあまり演奏されなくなった「YES/NO」のサビで大胡田がマイクを客席に向けると大合唱が起こる。意外なほどに女性の声が大きく、これまでの年齢層高めの男性中心というファン層から広がりを見せているのを実感する。それはメンバーがついに顔を公開したという要素もあるのかもしれないが。
「ユニゾンずるいわ~(笑)
あんだけパスピエ上手すぎて~とか言ってるくせに、ライブ前の声出しで「パスピエ潰す!」とか言ってるんだもん(笑)」
と成田ハネダが暴露し、ライブならではのイントロアレンジがなされた「チャイナタウン」で踊らせると、成田のリフに合わせて大胡田が頭を振る「つくり囃子」、東京らしさをあまり感じない新木場であっても、今この場所が東京であることを実感させる「トーキョーシティー・アンダーグラウンド」と新旧の曲が並び、「術中ハック」では三澤がツインネックギターを弾き倒す。このご時世にこんなに重そうかつ弾きにくそうなこのギターを弾いているギタリストはそうそう見れるものではない。
大胡田のボーカルとピアノのメロディだけでも成立しそうだが、歌の邪魔にならないギリギリのバランスでバンドサウンドがなる美しいバラード「花」を演奏してこのバンドの楽しいでも踊らせるでもない面に浸らせると、
「さっきユニゾンが来月アルバムが出るって言ってましたけど、私たちも7/27に久しぶりに両A面シングルを出します」
と言って、この日のライブで初披露されたのは、両A面の一曲にして、やおたくやのドラムのリズムが否が応でも「和」の要素を強く感じさせる「永すぎた春」。「娑婆ラバ」で突き詰めた「和」の要素の強いバンドサウンドのさらに先を示すような曲。
そしてラスサビ前のコーラス部分で大合唱を巻き起こした「裏の裏」からはクライマックスへ向かっていく。
大胡田が独特の振り付けで踊りながら歌う「MATATABISTEP」で観客を飛び跳ねさせると、
「続きはまた今度」
という最後のフレーズが次にこうして顔を合わせる約束のように響いた「トキノワ」で終了。「娑婆ラバ」収録シングル曲が終盤に集中したが、それはそれだけこれらの曲がクライマックスを彩る曲になっていることの証明であり、タイアップというお題に応えつつ、さらに曲のクオリティが上がっていることの証明でもある。
アンコールではメンバーがイベントTシャツに着替えて再登場すると、成田が冬に東名阪のホールツアーを行うことを発表。
「それに合わせて曲もいろいろ考えている」
と言っていただけに、去年の武道館のようにアルバムを出してから、ということになるんだろうか。(シングルが7月となるとかなりツアーまで空くし)そうなるとかなりのハイペースなリリースになってしまうが。
そして毎年開催してきたこの「印象」シリーズを今回でいったん最後にすることも発表。いずれまた対バンをやりたくなったりしたら復活させるらしいが、さすがに毎年開催するのはもはやなかなか厳しいだろう。
すると「印象」シリーズの恒例企画、対バン相手の曲のカバーの披露へ。今回ユニゾンの曲からカバーしたのは、この日ユニゾンはやらなかった「場違いハミングバード」。
完全に原曲を知らない人が聴いたらパスピエの新曲にしか思えないであろうくらいに、キーボードを主体にし、リズムも完全に再構築した、パスピエの曲でしかないアレンジに生まれ変わっており、これは実に貴重な瞬間。斎藤のキーが高いのもあり、大胡田のボーカルも違和感は全くない。
しかし、わずか1回、今回だけのためにここまで完璧にアレンジしてくるというのは本当に恐れ入るし、ユニゾンが「パスピエは演奏が上手すぎる」というのも納得である。
そしてラストに演奏されたのは、最後にもう一盛り上がりしようとばかりに「S.S.」。てっきり「最終電車」をやるものとばかり思っていたが、この熱量とメンバーの演奏の躍動感は、この「印象」シリーズを締め括るのに実に相応しかった。
演奏を終えるとメンバーがステージ前に揃って一礼し、この日も堅実ながら力強いプレイでバンドの土台を支えた露崎が客席にタオルを投げ込むという大盤振る舞いを見せてステージから去って行った。
ユニゾンが言うのも納得だし、もはや言うまでもないくらいにパスピエは演奏が上手いし、さらに上手くなっている。しかしその上手くなっているのが全く難解な方向には行かず、さらに曲自体はポップになっているという、通常のバンドとは全く違う方向への進化を果たしている。
ロックフェスに行ったことをきっかけに結成されたバンドなだけに、これまでは武道館以外はスタンディングのライブハウスにこだわるような活動をしてきたが、成田の言うように、ホールツアーからはこれまでとはまた違う景色を我々に見せてくれそうだ。毎作クオリティが上がっているアルバムも、次回作が楽しみで仕方がない。
今回でひとまずは最後になるというパスピエの印象シリーズ。これまでは意外なバンドが名を連ねたりしていたが(初期はThe SALOVERSやFRONTIER BACKYARDが出たりしていた)、今回のユニゾンは両者ともものすごく演奏が上手いのに徹底的にポップ、エゴはないけどバンドの主張は確かにあるという、これまでで最も近い位置に感じる組み合わせだった。ワンマンは行き続けるが、またいつか対バンでも。
1.ヨアケマエ
2.七色の少年
3.YES/NO
4.チャイナタウン
5.つくり囃子
6.トーキョーシティー・アンダーグラウンド
7.術中ハック
8.花
9.永すぎた春
10.裏の裏
11.MATATABISTEP
12.トキノワ
encore
13.場違いハミングバード (ユニゾンのカバー)
14.S.S.
Next→ 6/18 フルカワユタカ × Base Ball Bear @下北沢GARDEN
毎回規模を拡大しながら続いてきたこのシリーズ、ついに東名阪での開催で東京の会場は新木場STUDIO COASTになり、ゲストはUNISON SQUARE GARDENを迎えるに至った。
・UNISON SQUARE GARDEN
2年前、このバンドの自主企画ライブにパスピエが出演しており、いわばお返し的な出演となる、UNISON SQUARE GARDEN。
会場の中に入った時にはすでにメンバーが登場しており、セッション的な演奏から斎藤が
「UNISON SQUARE GARDENです!」
と一言挨拶すると、このバンドがメジャーデビュー当時からスリーピースロックバンドのダイナミズムの限界に挑んでいたことを実感させる「マスターボリューム」でスタートし、聴いていると思わず心と体がウキウキしてくるような大ヒットシングル「シュガーソングとビターステップ」ももちろん演奏されるが、ゲストという立ち位置でアルバム曲も多数演奏されているのに、アウェー感が全くない。もちろんユニゾンを見に来たというユニゾンのファンもたくさんいただろうが、ヒットシングルだけでなくアルバム曲までもが現在のロックシーンのアンセムと言えるような存在になりつつある。それはまるでRADWIMPSが「3」~「4」を出して、一気にロックシーンの頂点まで駆け上がった頃のように。
「君が残像に」
のフレーズの3人のハモりとともに打ち込みも使ったサウンドで踊らせる「MR.アンディ」ではサビのフレーズに合わせて手拍子も起こるが、このバンドにおいては全く煽ることも強制することもなく、ただただやりたい人だけが手拍子をするという状況が貫かれている。
ピアノの音色が美しい、斎藤の声の伸び具合を存分に堪能できる「harmonize finale」を終えると、ここまで全くMCをするような雰囲気ではなかったため、斎藤が口を開くと場内がざわつき、
「なんでざわつくの?(笑)俺だって喋っていいでしょ(笑)」
と完全に掴むと、
「パスピエとは2年前に僕らの自主企画ライブに出てもらってからの付き合いなんだけど、一緒にやりたくないバンドだなぁって(笑)
だって演奏めちゃくちゃ上手いじゃん?それでその演奏めちゃくちゃ上手いバンドを聴いてるファンの人たちは絶対耳が肥えてるんですよ。だから僕らは運動量とか顔の表情作ったりしてなんとかやってるけど、全部見抜かれてる気がする(笑)」
と、パスピエのメンバーとファンに最大級の賛辞を送り、来月発売のアルバムからの新曲「パンデミック・サドンデス」を演奏。すでにライブではおなじみとなりつつあるだけに、新曲とは思えない盛り上がりぶりとなったが、タイプ的には次に演奏された「天国と地獄」のような、いろんな意味で情報量が多いタイプの曲。この辺りから自らのバンドの持ち味を「運動量」と斎藤が言ったように、田淵がステージを所狭しと駆け回りまくる。もちろんベースを演奏しながら。
するとここで長尺ライブならではの、鈴木のドラムソロコーナーへ。斎藤と田淵がいったんステージから姿を消す中、同世代のかみじょうちひろ(9mm Parabellum Bullet)やピエール中野(凛として時雨)という超人ドラマーたちに負けないくらいの凄まじいソロを見せる。スティックで空中を叩きまくる=バスドラしか鳴っていないのに音が凄まじいと思えるのはなんなんだろうか。斎藤がパスピエは演奏が上手すぎると言っていたが、このソロを見ると、「いやいや、あんたらもめちゃくちゃ上手いじゃないですか!」と突っ込まざるを得ない。
鈴木はデビュー当初からこんなに上手いドラマーじゃなかっただけに、これは積み重ねてきた努力の結晶と言える。
斎藤と田淵がステージに戻ってそれぞれ音を鳴らすと、
「今日を行け 何度でもメロディ」
というサビの最後のフレーズがバシッと決まる「リニアブルーを聴きながら」へ。ユニゾンは決して難しい言葉を多用する歌詞のバンドではなく、むしろ誰もが知っている、使っている言葉を組み合わせて歌詞にするバンドだが、そんな言葉を使っていても、このメロディへの「ここにはこのフレーズしかない!」というハマり具合によって、田淵の作詞家としての唯一無二さを際立たせている。その田淵はステージを飛び跳ねまくっており、とてもこんな歌詞を書くような人には見えないのだが。
「ラスト!」
と言うと「ガリレオのショーケース」では鈴木が上着を頭にかけて、前が見えない状態でドラムを叩き、田淵は寝転がって足だけを上げたり、どうやってベースを弾いているんだろうかという動きばかりで、この曲においてのリズム隊はお笑いコンビのコントのようですらある。
そんな中、キメでギターをジャジャッと鳴らす斎藤の背後に田淵が近寄り、後ろから手を伸ばして斎藤のギターを弾く、後ろから抱きしめるという、いつにも増してやり過ぎなんじゃないかというアクションを見せ続け、
「またね!」
と斎藤が言うと、鈴木がスティックを投げ込みながらステージを去って行った。
「演奏が上手すぎる」というパスピエに絶対負けたくないという、先輩の意地を多いに感じたライブ。来るべき来月のアルバムもとんでもない内容の名盤になりそうで、ユニゾンの勢いはまだまだ止まりそうもない。
あまり大きいステージに意欲を見せるバンドではないが、状況的に今年の夏は1番大きいステージで見れるだろうか。
1.マスターボリューム
2.Kid,I like quartet
3.シュガーソングとビターステップ
4.ため息Shooting the moon
5.MR.アンディ
6.harmonize finale
7.パンデミック・サドンデス
8.天国と地獄
9.リニアブルーを聴きながら
10.ガリレオのショーケース
・パスピエ
意外なほどにスムーズな転換ののち、パスピエのメンバーが1人ずつステージに登場。赤と緑という「幕の内ISM」のジャケットのような色合いの衣装を着た大胡田なつきが現れると一層大きな歓声が上がる。
するといきなり現状の最新シングルである「ヨアケマエ」からスタート。
「革命は食事のあとで」「正しい夜明けを迎えませんか」
と、明らかに「武道館以降」の新章突入を感じさせるフレーズが並ぶ歌詞はもちろん、ライブでは間奏で、今まで一切楽器を弾くことのなかった大胡田がキーボードを弾くという場面も必見。
これからの季節=夏の到来を感じさせるようなきらめくポップス「七色の少年」でCOASTの中に涼しい風を吹かせると、近年は短い尺のライブではあまり演奏されなくなった「YES/NO」のサビで大胡田がマイクを客席に向けると大合唱が起こる。意外なほどに女性の声が大きく、これまでの年齢層高めの男性中心というファン層から広がりを見せているのを実感する。それはメンバーがついに顔を公開したという要素もあるのかもしれないが。
「ユニゾンずるいわ~(笑)
あんだけパスピエ上手すぎて~とか言ってるくせに、ライブ前の声出しで「パスピエ潰す!」とか言ってるんだもん(笑)」
と成田ハネダが暴露し、ライブならではのイントロアレンジがなされた「チャイナタウン」で踊らせると、成田のリフに合わせて大胡田が頭を振る「つくり囃子」、東京らしさをあまり感じない新木場であっても、今この場所が東京であることを実感させる「トーキョーシティー・アンダーグラウンド」と新旧の曲が並び、「術中ハック」では三澤がツインネックギターを弾き倒す。このご時世にこんなに重そうかつ弾きにくそうなこのギターを弾いているギタリストはそうそう見れるものではない。
大胡田のボーカルとピアノのメロディだけでも成立しそうだが、歌の邪魔にならないギリギリのバランスでバンドサウンドがなる美しいバラード「花」を演奏してこのバンドの楽しいでも踊らせるでもない面に浸らせると、
「さっきユニゾンが来月アルバムが出るって言ってましたけど、私たちも7/27に久しぶりに両A面シングルを出します」
と言って、この日のライブで初披露されたのは、両A面の一曲にして、やおたくやのドラムのリズムが否が応でも「和」の要素を強く感じさせる「永すぎた春」。「娑婆ラバ」で突き詰めた「和」の要素の強いバンドサウンドのさらに先を示すような曲。
そしてラスサビ前のコーラス部分で大合唱を巻き起こした「裏の裏」からはクライマックスへ向かっていく。
大胡田が独特の振り付けで踊りながら歌う「MATATABISTEP」で観客を飛び跳ねさせると、
「続きはまた今度」
という最後のフレーズが次にこうして顔を合わせる約束のように響いた「トキノワ」で終了。「娑婆ラバ」収録シングル曲が終盤に集中したが、それはそれだけこれらの曲がクライマックスを彩る曲になっていることの証明であり、タイアップというお題に応えつつ、さらに曲のクオリティが上がっていることの証明でもある。
アンコールではメンバーがイベントTシャツに着替えて再登場すると、成田が冬に東名阪のホールツアーを行うことを発表。
「それに合わせて曲もいろいろ考えている」
と言っていただけに、去年の武道館のようにアルバムを出してから、ということになるんだろうか。(シングルが7月となるとかなりツアーまで空くし)そうなるとかなりのハイペースなリリースになってしまうが。
そして毎年開催してきたこの「印象」シリーズを今回でいったん最後にすることも発表。いずれまた対バンをやりたくなったりしたら復活させるらしいが、さすがに毎年開催するのはもはやなかなか厳しいだろう。
すると「印象」シリーズの恒例企画、対バン相手の曲のカバーの披露へ。今回ユニゾンの曲からカバーしたのは、この日ユニゾンはやらなかった「場違いハミングバード」。
完全に原曲を知らない人が聴いたらパスピエの新曲にしか思えないであろうくらいに、キーボードを主体にし、リズムも完全に再構築した、パスピエの曲でしかないアレンジに生まれ変わっており、これは実に貴重な瞬間。斎藤のキーが高いのもあり、大胡田のボーカルも違和感は全くない。
しかし、わずか1回、今回だけのためにここまで完璧にアレンジしてくるというのは本当に恐れ入るし、ユニゾンが「パスピエは演奏が上手すぎる」というのも納得である。
そしてラストに演奏されたのは、最後にもう一盛り上がりしようとばかりに「S.S.」。てっきり「最終電車」をやるものとばかり思っていたが、この熱量とメンバーの演奏の躍動感は、この「印象」シリーズを締め括るのに実に相応しかった。
演奏を終えるとメンバーがステージ前に揃って一礼し、この日も堅実ながら力強いプレイでバンドの土台を支えた露崎が客席にタオルを投げ込むという大盤振る舞いを見せてステージから去って行った。
ユニゾンが言うのも納得だし、もはや言うまでもないくらいにパスピエは演奏が上手いし、さらに上手くなっている。しかしその上手くなっているのが全く難解な方向には行かず、さらに曲自体はポップになっているという、通常のバンドとは全く違う方向への進化を果たしている。
ロックフェスに行ったことをきっかけに結成されたバンドなだけに、これまでは武道館以外はスタンディングのライブハウスにこだわるような活動をしてきたが、成田の言うように、ホールツアーからはこれまでとはまた違う景色を我々に見せてくれそうだ。毎作クオリティが上がっているアルバムも、次回作が楽しみで仕方がない。
今回でひとまずは最後になるというパスピエの印象シリーズ。これまでは意外なバンドが名を連ねたりしていたが(初期はThe SALOVERSやFRONTIER BACKYARDが出たりしていた)、今回のユニゾンは両者ともものすごく演奏が上手いのに徹底的にポップ、エゴはないけどバンドの主張は確かにあるという、これまでで最も近い位置に感じる組み合わせだった。ワンマンは行き続けるが、またいつか対バンでも。
1.ヨアケマエ
2.七色の少年
3.YES/NO
4.チャイナタウン
5.つくり囃子
6.トーキョーシティー・アンダーグラウンド
7.術中ハック
8.花
9.永すぎた春
10.裏の裏
11.MATATABISTEP
12.トキノワ
encore
13.場違いハミングバード (ユニゾンのカバー)
14.S.S.
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フルカワユタカ presents 「play with B」 ~with C2~ 出演:フルカワユタカ / Base Ball Bear @下北沢GARDEN 6/18 ホーム
Mrs. GREEN APPLE Mrs. TWOMAN TOUR ~初夏とリンゴとロックバンド~ GUEST ACT:SAKANAMON @渋谷CLUB QUATTRO 6/16