a flood of circle 「I'M FREE 2022」 @代々木公園野外音楽堂 10/20
- 2022/10/20
- 22:40
7月のLINE CUBE SHIBUYAでワンマンのアンコール時に佐々木亮介が「次にやる場所を決めた」と言って映像内でLINE CUBEから歩いて到着した場所が代々木公園野外音楽堂だった。かつてはミッシェル・ガン・エレファントや9mm Parabellum Bulletも行ったこの会場でのフリーライブである。
この日はセンター街にバンドのPOP UP STOREも出店してこの日のライブを記念した風船も配られる中、代々木公園内のNHKホールのすぐ隣にある野外音楽堂は前方が事前に抽選が行われた優先エリアとなっているのだが、その抽選に外れたためにその外の一般エリアで見ることに。8月の下北沢や新代田もそうだったが、近年のフラッドはファンクラブに入っていても(今回はファンクラブ枠はないけど)チケットが当たりづらくなってきている。それは少しずつ人気が広がってきているのもあるだろうが、ファンクラブに入ったり、ツアーがあれば全箇所行くような深すぎる愛情を持つファンが多いということでもあるだろう。
もうすっかり夜と言っていいような暗さになり、さすがに10月後半の野外ともなると寒さを感じる中で18時になるとこの日のライブのタイトルが背面に掲げられたステージが暗転し、おなじみのSEでメンバーが登場。青木テツ(ギター)が黒の革ジャンであるというのはたまにある出で立ちであるが、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン。だからこそホワイトファルコンのギターがより映えるコントラストになっているのだが、長いことフラッドを見てきた身としてもこの色を着ていたことが今までにあっただろうかと思う。
「おはようございます。a flood of circleです」
と亮介がおなじみの挨拶をすると、間髪入れずに「GO」が鳴らされる。亮介の革ジャンの色もあるし、再現ツアーも終わってからの初ワンマン、こうして代々木公園でフリーライブをするのも初めてということもあって、このタイミングで1曲目にこの曲を演奏するということがバンドにとっての新しい一歩であるかのように響く。テツのコーラスの声も大きいあたりにこのライブへの気合いを感じさせるが、亮介も
「目を開けて見る夢をアンタが見せたんだ
どうしてくれんだよ」
のフレーズで声を張り上げるようにして歌う。ライブハウスでの爆音というわけではないけれど、音の鳴り方、聴こえ方は前方ではなくても申し分ないものになっているというのはメンバーだけではなくチーム全体としてのこのライブへの並々ならぬ気合いが感じられる。
続け様の「ミッドナイト・クローラー」ではイントロで亮介が
「代々木ー!」
と叫ぶと、それを合図にしたかのようにテツもHISAYO(ベース)もステージ前に出てくる。おそらくは無料だから来てみたという初めてフラッドのライブを見る人や、たまたま通りがかったという人もいると思われるが、そうした人にもインパクトの強いギターリフや亮介の早口ボーカル、サビでのメロディの突き抜け方など、昔からの仲であるUNISON SQUARE GARDENの田淵智也プロデュースによって引き出されたフラッドの魅力全部盛り的な曲をここで演奏するあたりからもこのライブで自分たちのカッコ良さを知らしめてやるという強い決意を感じさせる。
しかしながらやはり普段からフラッドを見ている人が大多数であるというのがわかるのは、有線エリア(なんで抽選落ちたのかってくらいにスペースめちゃ空いてた)だけならず、後方の人たちまで「Dancing Zombiez」で手拍子をしていたからで、間奏ではテツが前に出てギターを弾き、ライブならではのセッション的な演奏のアレンジが施されたアウトロでは
「紹介します。ギター、俺!」
と言って亮介もステージ前に出てきてギターを弾きまくる。バンドにとっての現状の一つの到達点と言えるLINE CUBEでのワンマン後も絶えずライブをしまくってきたバンドのライブで鍛え上げ続けてきたサウンドがこの普段とは全く違うシチュエーションでも確かに鳴らされている。
亮介がギターを置いてタンバリンを手にすると、それを叩きながらステージを歩き回り歌うことによって、小さいステージだというイメージがあったこの会場のステージが広いものであるとわかるのは「Sweet Home Battle Field」で、曲中に亮介はテツの首にタンバリンをかけると(すぐに外していたけど)、そのテツと一緒に
「愛すべき代々木」
と歌詞を変えて歌う。直後のアウトロで渡邊一丘(ドラム)の叩き出すビートがどんどん速くなっていき、メンバーがそれに合わせるように演奏するのもライブならではのアレンジである。
タンバリンから再びギターに持ち替えた亮介が
「みんな、月見える?俺の方からは見えないけど(笑)
ここには生きてるやつしかいない。それは生きてる限りはどんな可能性もあるっていうこと」
と口にすると、テツのギターが思いっきり切なさと叙情性を感じさせるように鳴り響くのは「Honey Moon Song」。秋という月がキレイに見える時期の野外だからこその選曲だったかもしれないだけに月が見えないのは少し残念でもあるが、間奏での亮介以外の3人が声を重ねる場面では今この場所でフラッドのライブを見てこの曲を聴いていることの幸せをこの上なく実感させてくれる。次はまた月が見える日にこの曲を野外で聴ける日を作ってもらいたいと思うくらいに、その情景はロマンチックなものになるんだろうなと思える。
さらには
「どんな世の中でも、どんな世界でも、どんな状況でも、世界は君のものだ!」
と口にして実に久しぶりの「世界は君のもの」で客席から手拍子が起こり、亮介は
「羽根を揺すって飛ぶだけ」
のフレーズを思いっきり張り上げて歌う。その直後に来る最後のサビも含めて、亮介の言う通りにいつだってこの曲をライブで聴けば、世界はここにいる我々のものだって思える。久しぶりに聴いたからこそ、こんな広大な場所で聴いたからこそ、より強くそう思うことができるのだ。これからもこの曲を何度でも聴いて、何度だってこの感覚を味わっていたいと思う。
そんな亮介は
「会社作って曲作って出して。これからも今日みたいな好きなことだけをやり続けていきたい」
と言うのだが、それは出来たばかりの新曲である「Party Monster Bop」に込められたメッセージでもある。語弊を恐れずに言えば、THE KEBABSでの亮介が手がけた曲を思い起こさせるような、ギターリフを軸にしたキメと、ヒップホップというよりはThe Mirraz的な言葉数を詰め込みまくる亮介のボーカル。それがサビでまさにパーティー感を感じさせるように一気に開けていく。というかライブをしまくりながらもこうして曲が生まれるペースの凄まじい速さはなんなんだろうかとも思うけれど、この日この後により一層そう思わされる告知が来るとはこの時はまだ知る由もなかったのである。
そして暗い空の下でもこの煌めくようなギターの音こそが星であるというようなテツのギターが光る「北極星のメロディー」のサビで観客が腕を上げている時に周りを見たら、こんなにたくさんいたのかと思うくらいに人がいた。もしかしたら18時には間に合わなかったけれど仕事や学校が終わった後に急いで来た人もたくさんいたのかもしれない。そう思うくらいにこの曲を、フラッドを知っている人がたくさん集まっていた。それはライブハウスでのワンマンはもちろん、フェスでも体感できない、誰でも来ることができるフリーライブだからこそ感じられたものだった。その景色の先でこの曲を鳴らしているフラッドの姿が今まで以上にさらに頼もしく見えた。
そんな「北極星のメロディー」のアウトロを鳴らしながら、メンバーは渡邊のドラムセットの方を向いて合わせるように音を鳴らす。黒と赤に染まる照明がその姿を照らすのは、フラッドのこの日この場所での存在証明と言えるような「プシケ」だ。まさかフリーライブという機会にこの曲が演奏されるとは思っていなかっただけに喜びもひとしおであるが、
「2022年10月18日、代々木公園「I'M FREE」にお越しの親愛なる皆様に俺の大事なメンバー紹介します!」
と言って渡邊から1人ずつその音が重なっていく。そして最後に亮介が自身を紹介した後に叫ぶ
「a flood of circle!」
のバンド名。この曲で口にするメンバーの名前は何度も変わってきたから、そのたびに違うパターンの「プシケ」を見てきた。でもいつもこの曲を聴いて思うのは「今のフラッドが最強だ」ということ。それはテツが加入して以降は不動のこの4人でこの曲を鳴らす姿を見るたびにそう思える。それくらいに強烈なカタルシスをこの曲は我々に与え続けてくれている。
この日がやはり特別な1日としてのライブなんだなと感じたのは、この「プシケ」の後に「花」が演奏されたこと。10周年を迎えた際に描かれた、亮介による
「届け 届いてくれ 叫び続ける声 花になる」
というフレーズは意味合いが強すぎるというのもあってなかなかセトリに入れづらいだろうなと思う曲でもある。そんな曲を様々な代表曲や定番曲を演奏せずにセトリに入れたというところにフラッドが再びその思いを抱いて走り始めたというリスタート感を感じるのだ。でもそれは確実に10周年の時よりもすでに届いている。この日やここに至るまでの景色がそれを証明している。
ワンマンとはいえフリーライブであるだけに、そこまで長い時間はやらないだろうと思っていたのだが、やはり「シーガル」のイントロが鳴らされるともうライブもクライマックスへと突入しているんだなと少し寂しくなってしまう。それはまだまだ聴きたい曲がフラッドにはたくさんあって、まだまだこうしてライブを見ていたいという感情が強すぎるからそう思ってしまうのであるが、それでも亮介の「イェー!」に合わせて観客が一斉に飛び上がると、そんな考えが脳内から吹っ飛んでいくくらいに夢中になってしまう。間奏でテツが前に出てギターを弾くと、亮介は曲中にマイクスタンドごと持ってより観客の近くまで出てきて歌う。亮介のそんなところがやっぱり好きでたまらないのだ。コロナ禍が明けたらきっともっと我々の近くまで来て歌ってくれるはず。その時にまたここでライブをやってくれたらいいなと心から思う。
そんな亮介はこの日のライブが無料であることを口にしてから、命の価値について話す。それは一体いくらで、人によって違うものなのか。保険屋に行けば死んだ時にいくら貰えるのか。でも一つ確かなことは誰もが死んでいくということ。我々も、亮介も、メンバーも。
「でも俺たちのことを好きになってくれた人には生きていて欲しいし、幸せになって欲しいって心から思ってる。願うことしかできないけど」
と言っていたが、フラッドがこうして止まらずにライブをやり続けてくれているから、我々は幸せだと感じられる瞬間がたくさんある。それはきっと他のバンドよりも多い。それだけ会える機会も、リリースも多いバンドだから。と思ったらなんと2月にニューアルバム「花降る空に不滅の歌を」をリリースし、またもツアーをやることを発表した。ほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリースし、ツアーを行う。このペースだからこそ、我々は幸せな感覚が消えそうになる前にまた新しい幸せを享受できる。個人的に「2020」も「伝説の夜を君と」も年間ベストディスクの1位に選んだだけに、早くも2023年の年間ベストディスクの最有力アルバムが出ることが決まったということである。
そのアルバムにも収録されるであろう、LINE CUBE SHIBUYAでのワンマン前に発表された「花火を見に行こう」で亮介はアコギを弾きながら歌うのであるが、特別な演出はなにもなくても、確かにあの日LINE CUBEで見た花火を思わせる照明などの演出が頭に浮かび上がってきた。それはこの日が明確にあの日から連なっているライブだったからであり、おそらくは2022年最後の夜空の下で見るであろうライブだったからだ。またいつか野外でワンマンをやる時にはこの曲を演奏している時に花火が上がる演出が見れたらな…と夢が膨らむのは、こうしてフラッドがどんどんそれまでよりも良い景色を見せてくれているからだ。だからまだまだこのバンドに抱く夢は尽きることがない。
そんな「花火を見に行こう」で終わりかと思いきや、亮介はLINE CUBEのライブの最後にステージに叩きつけて破壊したブラックファルコンのギターを持ち(あれだけ見事なまでに破壊されたのに修復されたということ?)、ステージが真っ暗になるのが不穏な空気を煽る、この日のライブタイトルである「I'M FREE」を演奏する。ああ、確かにこの曲をやらないわけにはいかないよなと思っていると、亮介はフレーズによって抑えるようにして歌ったり、次の瞬間には張り上げて歌ったりというように歌い方を変える。しかし、
「形ないものを爆破しにいく 壊さなきゃ始まんないから」
というフレーズを衝動を剥き出しにしたボーカルで歌う姿からは、フラッドがロックンロールバンドとしての牙を今でも研ぎ澄ませながらこれからも転がり続けていくんだろうなと思った。つまりは「I'M FREE」は今でもフラッドのリアルな曲であったということであり、それはこれから先もきっと変わることはないということ。だからこそまたこのタイトルを掲げたライブをやる日がきっと来るということだ。
演奏が終わると3人はいったんステージから去るのだが、亮介が
「みんなに写真撮ってもらおう」
と言って、明らかに今思い付いたかのような撮影タイムへ。それはアルバムを広めて欲しいという意図もあってのことであったが、やはりその4人が並んだ姿は何よりもカッコいいロックンロールバンドのものであった。
終演後、会場ではこの日演奏された「Party Monster Bop」が視聴できるポストカードが配布された。その配布箇所の全てにたくさんの人が並んでいるのを見て、フラッドを好きな人がこんなにたくさんいるんだよなと改めて思った。ここにいた理由は人それぞれだろうけれど、それでもこんなにたくさんの人が新曲を聴きたいと思っていることだけは共通しているし、このバンドのカッコよさをわかるというだけで、ここにいた人たちを心から信頼できる。それはカッコいいと思う基準がきっと自分と同じ人たちだからだ。そんな人たちと一緒に、フラッドは2023年も新しい作品を持って転がり続けていく。その起点となるフリーライブだった。
1.GO
2.ミッドナイト・クローラー
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.Honey Moon Song
6.世界は君のもの
7.Party Monster Bop
8.北極星のメロディー
9.プシケ
10.花
11.シーガル
12.花火を見に行こう
13.I'M FREE
この日はセンター街にバンドのPOP UP STOREも出店してこの日のライブを記念した風船も配られる中、代々木公園内のNHKホールのすぐ隣にある野外音楽堂は前方が事前に抽選が行われた優先エリアとなっているのだが、その抽選に外れたためにその外の一般エリアで見ることに。8月の下北沢や新代田もそうだったが、近年のフラッドはファンクラブに入っていても(今回はファンクラブ枠はないけど)チケットが当たりづらくなってきている。それは少しずつ人気が広がってきているのもあるだろうが、ファンクラブに入ったり、ツアーがあれば全箇所行くような深すぎる愛情を持つファンが多いということでもあるだろう。
もうすっかり夜と言っていいような暗さになり、さすがに10月後半の野外ともなると寒さを感じる中で18時になるとこの日のライブのタイトルが背面に掲げられたステージが暗転し、おなじみのSEでメンバーが登場。青木テツ(ギター)が黒の革ジャンであるというのはたまにある出で立ちであるが、佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン。だからこそホワイトファルコンのギターがより映えるコントラストになっているのだが、長いことフラッドを見てきた身としてもこの色を着ていたことが今までにあっただろうかと思う。
「おはようございます。a flood of circleです」
と亮介がおなじみの挨拶をすると、間髪入れずに「GO」が鳴らされる。亮介の革ジャンの色もあるし、再現ツアーも終わってからの初ワンマン、こうして代々木公園でフリーライブをするのも初めてということもあって、このタイミングで1曲目にこの曲を演奏するということがバンドにとっての新しい一歩であるかのように響く。テツのコーラスの声も大きいあたりにこのライブへの気合いを感じさせるが、亮介も
「目を開けて見る夢をアンタが見せたんだ
どうしてくれんだよ」
のフレーズで声を張り上げるようにして歌う。ライブハウスでの爆音というわけではないけれど、音の鳴り方、聴こえ方は前方ではなくても申し分ないものになっているというのはメンバーだけではなくチーム全体としてのこのライブへの並々ならぬ気合いが感じられる。
続け様の「ミッドナイト・クローラー」ではイントロで亮介が
「代々木ー!」
と叫ぶと、それを合図にしたかのようにテツもHISAYO(ベース)もステージ前に出てくる。おそらくは無料だから来てみたという初めてフラッドのライブを見る人や、たまたま通りがかったという人もいると思われるが、そうした人にもインパクトの強いギターリフや亮介の早口ボーカル、サビでのメロディの突き抜け方など、昔からの仲であるUNISON SQUARE GARDENの田淵智也プロデュースによって引き出されたフラッドの魅力全部盛り的な曲をここで演奏するあたりからもこのライブで自分たちのカッコ良さを知らしめてやるという強い決意を感じさせる。
しかしながらやはり普段からフラッドを見ている人が大多数であるというのがわかるのは、有線エリア(なんで抽選落ちたのかってくらいにスペースめちゃ空いてた)だけならず、後方の人たちまで「Dancing Zombiez」で手拍子をしていたからで、間奏ではテツが前に出てギターを弾き、ライブならではのセッション的な演奏のアレンジが施されたアウトロでは
「紹介します。ギター、俺!」
と言って亮介もステージ前に出てきてギターを弾きまくる。バンドにとっての現状の一つの到達点と言えるLINE CUBEでのワンマン後も絶えずライブをしまくってきたバンドのライブで鍛え上げ続けてきたサウンドがこの普段とは全く違うシチュエーションでも確かに鳴らされている。
亮介がギターを置いてタンバリンを手にすると、それを叩きながらステージを歩き回り歌うことによって、小さいステージだというイメージがあったこの会場のステージが広いものであるとわかるのは「Sweet Home Battle Field」で、曲中に亮介はテツの首にタンバリンをかけると(すぐに外していたけど)、そのテツと一緒に
「愛すべき代々木」
と歌詞を変えて歌う。直後のアウトロで渡邊一丘(ドラム)の叩き出すビートがどんどん速くなっていき、メンバーがそれに合わせるように演奏するのもライブならではのアレンジである。
タンバリンから再びギターに持ち替えた亮介が
「みんな、月見える?俺の方からは見えないけど(笑)
ここには生きてるやつしかいない。それは生きてる限りはどんな可能性もあるっていうこと」
と口にすると、テツのギターが思いっきり切なさと叙情性を感じさせるように鳴り響くのは「Honey Moon Song」。秋という月がキレイに見える時期の野外だからこその選曲だったかもしれないだけに月が見えないのは少し残念でもあるが、間奏での亮介以外の3人が声を重ねる場面では今この場所でフラッドのライブを見てこの曲を聴いていることの幸せをこの上なく実感させてくれる。次はまた月が見える日にこの曲を野外で聴ける日を作ってもらいたいと思うくらいに、その情景はロマンチックなものになるんだろうなと思える。
さらには
「どんな世の中でも、どんな世界でも、どんな状況でも、世界は君のものだ!」
と口にして実に久しぶりの「世界は君のもの」で客席から手拍子が起こり、亮介は
「羽根を揺すって飛ぶだけ」
のフレーズを思いっきり張り上げて歌う。その直後に来る最後のサビも含めて、亮介の言う通りにいつだってこの曲をライブで聴けば、世界はここにいる我々のものだって思える。久しぶりに聴いたからこそ、こんな広大な場所で聴いたからこそ、より強くそう思うことができるのだ。これからもこの曲を何度でも聴いて、何度だってこの感覚を味わっていたいと思う。
そんな亮介は
「会社作って曲作って出して。これからも今日みたいな好きなことだけをやり続けていきたい」
と言うのだが、それは出来たばかりの新曲である「Party Monster Bop」に込められたメッセージでもある。語弊を恐れずに言えば、THE KEBABSでの亮介が手がけた曲を思い起こさせるような、ギターリフを軸にしたキメと、ヒップホップというよりはThe Mirraz的な言葉数を詰め込みまくる亮介のボーカル。それがサビでまさにパーティー感を感じさせるように一気に開けていく。というかライブをしまくりながらもこうして曲が生まれるペースの凄まじい速さはなんなんだろうかとも思うけれど、この日この後により一層そう思わされる告知が来るとはこの時はまだ知る由もなかったのである。
そして暗い空の下でもこの煌めくようなギターの音こそが星であるというようなテツのギターが光る「北極星のメロディー」のサビで観客が腕を上げている時に周りを見たら、こんなにたくさんいたのかと思うくらいに人がいた。もしかしたら18時には間に合わなかったけれど仕事や学校が終わった後に急いで来た人もたくさんいたのかもしれない。そう思うくらいにこの曲を、フラッドを知っている人がたくさん集まっていた。それはライブハウスでのワンマンはもちろん、フェスでも体感できない、誰でも来ることができるフリーライブだからこそ感じられたものだった。その景色の先でこの曲を鳴らしているフラッドの姿が今まで以上にさらに頼もしく見えた。
そんな「北極星のメロディー」のアウトロを鳴らしながら、メンバーは渡邊のドラムセットの方を向いて合わせるように音を鳴らす。黒と赤に染まる照明がその姿を照らすのは、フラッドのこの日この場所での存在証明と言えるような「プシケ」だ。まさかフリーライブという機会にこの曲が演奏されるとは思っていなかっただけに喜びもひとしおであるが、
「2022年10月18日、代々木公園「I'M FREE」にお越しの親愛なる皆様に俺の大事なメンバー紹介します!」
と言って渡邊から1人ずつその音が重なっていく。そして最後に亮介が自身を紹介した後に叫ぶ
「a flood of circle!」
のバンド名。この曲で口にするメンバーの名前は何度も変わってきたから、そのたびに違うパターンの「プシケ」を見てきた。でもいつもこの曲を聴いて思うのは「今のフラッドが最強だ」ということ。それはテツが加入して以降は不動のこの4人でこの曲を鳴らす姿を見るたびにそう思える。それくらいに強烈なカタルシスをこの曲は我々に与え続けてくれている。
この日がやはり特別な1日としてのライブなんだなと感じたのは、この「プシケ」の後に「花」が演奏されたこと。10周年を迎えた際に描かれた、亮介による
「届け 届いてくれ 叫び続ける声 花になる」
というフレーズは意味合いが強すぎるというのもあってなかなかセトリに入れづらいだろうなと思う曲でもある。そんな曲を様々な代表曲や定番曲を演奏せずにセトリに入れたというところにフラッドが再びその思いを抱いて走り始めたというリスタート感を感じるのだ。でもそれは確実に10周年の時よりもすでに届いている。この日やここに至るまでの景色がそれを証明している。
ワンマンとはいえフリーライブであるだけに、そこまで長い時間はやらないだろうと思っていたのだが、やはり「シーガル」のイントロが鳴らされるともうライブもクライマックスへと突入しているんだなと少し寂しくなってしまう。それはまだまだ聴きたい曲がフラッドにはたくさんあって、まだまだこうしてライブを見ていたいという感情が強すぎるからそう思ってしまうのであるが、それでも亮介の「イェー!」に合わせて観客が一斉に飛び上がると、そんな考えが脳内から吹っ飛んでいくくらいに夢中になってしまう。間奏でテツが前に出てギターを弾くと、亮介は曲中にマイクスタンドごと持ってより観客の近くまで出てきて歌う。亮介のそんなところがやっぱり好きでたまらないのだ。コロナ禍が明けたらきっともっと我々の近くまで来て歌ってくれるはず。その時にまたここでライブをやってくれたらいいなと心から思う。
そんな亮介はこの日のライブが無料であることを口にしてから、命の価値について話す。それは一体いくらで、人によって違うものなのか。保険屋に行けば死んだ時にいくら貰えるのか。でも一つ確かなことは誰もが死んでいくということ。我々も、亮介も、メンバーも。
「でも俺たちのことを好きになってくれた人には生きていて欲しいし、幸せになって欲しいって心から思ってる。願うことしかできないけど」
と言っていたが、フラッドがこうして止まらずにライブをやり続けてくれているから、我々は幸せだと感じられる瞬間がたくさんある。それはきっと他のバンドよりも多い。それだけ会える機会も、リリースも多いバンドだから。と思ったらなんと2月にニューアルバム「花降る空に不滅の歌を」をリリースし、またもツアーをやることを発表した。ほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリースし、ツアーを行う。このペースだからこそ、我々は幸せな感覚が消えそうになる前にまた新しい幸せを享受できる。個人的に「2020」も「伝説の夜を君と」も年間ベストディスクの1位に選んだだけに、早くも2023年の年間ベストディスクの最有力アルバムが出ることが決まったということである。
そのアルバムにも収録されるであろう、LINE CUBE SHIBUYAでのワンマン前に発表された「花火を見に行こう」で亮介はアコギを弾きながら歌うのであるが、特別な演出はなにもなくても、確かにあの日LINE CUBEで見た花火を思わせる照明などの演出が頭に浮かび上がってきた。それはこの日が明確にあの日から連なっているライブだったからであり、おそらくは2022年最後の夜空の下で見るであろうライブだったからだ。またいつか野外でワンマンをやる時にはこの曲を演奏している時に花火が上がる演出が見れたらな…と夢が膨らむのは、こうしてフラッドがどんどんそれまでよりも良い景色を見せてくれているからだ。だからまだまだこのバンドに抱く夢は尽きることがない。
そんな「花火を見に行こう」で終わりかと思いきや、亮介はLINE CUBEのライブの最後にステージに叩きつけて破壊したブラックファルコンのギターを持ち(あれだけ見事なまでに破壊されたのに修復されたということ?)、ステージが真っ暗になるのが不穏な空気を煽る、この日のライブタイトルである「I'M FREE」を演奏する。ああ、確かにこの曲をやらないわけにはいかないよなと思っていると、亮介はフレーズによって抑えるようにして歌ったり、次の瞬間には張り上げて歌ったりというように歌い方を変える。しかし、
「形ないものを爆破しにいく 壊さなきゃ始まんないから」
というフレーズを衝動を剥き出しにしたボーカルで歌う姿からは、フラッドがロックンロールバンドとしての牙を今でも研ぎ澄ませながらこれからも転がり続けていくんだろうなと思った。つまりは「I'M FREE」は今でもフラッドのリアルな曲であったということであり、それはこれから先もきっと変わることはないということ。だからこそまたこのタイトルを掲げたライブをやる日がきっと来るということだ。
演奏が終わると3人はいったんステージから去るのだが、亮介が
「みんなに写真撮ってもらおう」
と言って、明らかに今思い付いたかのような撮影タイムへ。それはアルバムを広めて欲しいという意図もあってのことであったが、やはりその4人が並んだ姿は何よりもカッコいいロックンロールバンドのものであった。
終演後、会場ではこの日演奏された「Party Monster Bop」が視聴できるポストカードが配布された。その配布箇所の全てにたくさんの人が並んでいるのを見て、フラッドを好きな人がこんなにたくさんいるんだよなと改めて思った。ここにいた理由は人それぞれだろうけれど、それでもこんなにたくさんの人が新曲を聴きたいと思っていることだけは共通しているし、このバンドのカッコよさをわかるというだけで、ここにいた人たちを心から信頼できる。それはカッコいいと思う基準がきっと自分と同じ人たちだからだ。そんな人たちと一緒に、フラッドは2023年も新しい作品を持って転がり続けていく。その起点となるフリーライブだった。
1.GO
2.ミッドナイト・クローラー
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.Honey Moon Song
6.世界は君のもの
7.Party Monster Bop
8.北極星のメロディー
9.プシケ
10.花
11.シーガル
12.花火を見に行こう
13.I'M FREE
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