だいぶ旧聞に属する話だが、8/13のコミックマーケット70にサークル参加していた。
これまでの実績からすると、ほとんど無謀とも思える再販30部、新刊30部という大量(笑わば笑え)の持ち込み数を目の前にして、開場までは売れ残りはいくらになるだろうと巨大な不安感が頭をもたげていた。
なんでまたそんなに切羽詰ってから不安に思うのかといえば、本を作成している間は、原稿作成から間がないこともあって冷静な判断力などほぼ皆無なので、よほど無茶な(これまでの倍以上とか)部数でもない限りは、誰かが「これでいいんじゃない?」と言ったが最後、ひとかけらの疑問さえも脳裏には浮かばないのである。
閑話休題。
とにかく、その不安は午後になってもずっと晴れることなく、いつ晴れたのかといえば、最後の一冊がどなたかの手によって買い取られていったその直後だったりする。要するに持ち込んだ本は全て売れたのである。
単なる自慢話(しかも規模がしょぼい)と思うなかれ、2001年から細々とサークル参加を続けた結果、ようやくここまでたどり着くことができたのだ。少しは感慨に浸っても罰は当たるまい。
もちろん、これが私の文章の力であるなどとは2%くらいしか思っていない。コミケ会場で文章を読み、その小説が読むに値するかどうかを判断するのはほぼ不可能に近いことは、自分がやってみて実感している(さすがに、まったく箸にも棒にも掛からないものは選別できるだろうが)。偏に、今回から導入されたイラスト担当やまいしゆたか氏によるカラーイラスト表紙の威力によるものだろう。
それはそれとして、もう一つのタイトルである景気回復の出番である。なぜにここに景気回復などという言葉が出てくるのか。それは、本の売れ方のパターンが変わったことを実感したからなのである。
サークルを立ち上げた2001年から去年の夏コミ(コミックマーケット68)までは、本はほぼ午前中、遅くても午後1時くらいまでしか売れなかった。午後も3時を回ると、本を手に取ってくれる人はおろか、参加しているジャンルである少年向け創作の付近を歩き回っている人さえまばらになってしまっていた。
ところが、今回は、午前中から午後1時までの売れ行きこそこれまでと同様で、私などは明らかに余ると考えていたのだけれども、午後1時を過ぎても同じようなペースで売れ続け、午後3時を回った頃にめでたく完売と相成った。
つまり、本を買う人間が以前よりも長く購買行動を続ける傾向が見て取れたのである。
需要の総量が変わっていなくても、供給側の総量が足りていないが故に、泡沫サークルまで客が流れてきたと見ることもできるかもしれない。が、それは世紀が変わる前のバブルの頃に別のジャンルで参加していた時に味わっている。その場合、午前中に需要が殺到し、午後を待たずに売切れてしまうのである(そして、更なる飢餓感が煽られる結果となる)。
私の狭い経験からの判断なので間違っている可能性は大いにあるかもしれないが、私は、これは需要の総量が増えた結果に思える。どうすれば需要の総量が増えるかといえば、景気が良くなる、という答以外にはちょっと思い当たるものがない(地味な少年向け創作同人誌ブームが来ているなどという話はトンと聞かない)。
次回の冬コミは例年と違って3日間開催であるので、当選率は夏と大差ないだろう。私のサークルは、細々ではあるけれども、一応実績を積み重ねてきているので、落選するとは考えたくない。よって、次回のコミケでも同じような状況が続くようならば、本格的に景気が回復してきていると言ってもいいような気がする。
ラベル: オタク