「新潟県産コシヒカリ」に別のコメ混入 首都圏の商品(朝日新聞)
首都圏で販売されている「新潟県産コシヒカリ」の一部で、別品種のコメが混ぜられていたことが、新潟県の初の独自調査でわかった。JAS法違反の疑いがあり、同県は先月中旬に消費者庁に通報した。高価な新潟米と他品種米を故意に混ぜて利益を得ていた可能性もあるという。
調査は今年7月に実施。東京や神奈川、千葉、埼玉の首都圏に住む消費者モニター20人に近所のスーパーなどで購入した「新潟県産コシヒカリ」2袋のうち1袋を送ってもらい、計25点を民間の検査機関でDNA検査した。その結果、25点のうち2点で、新潟コシヒカリと別の品種が5%混ざっていたことが判明したという。2点は県外の別々の業者が袋詰めしたものだった。
同県は05年、産地偽装の防止などのため県内のコシヒカリを「コシヒカリBL」に切り替え、DNA鑑定で他県産のコシヒカリとの判別が可能になった。同県だけの品種で94%がBLになっているが、さらに流通段階での混入の実態を把握し、抑止しようと今回調査を実施した。同県農林水産部は「故意であれば許せない。消費者の信頼も得られない」としており、今後も継続的に調査をする考えだ。(奈良部健、長富由希子)
元々が94%なのに,混入率5%………。ちょっと微妙な感じですね(^^;;;;
こういう状況だと,新潟産コシヒカリが,どの程度厳密なIPハンドリングを行っているのかという部分についても検証が必要な気がします。
昨日も説明しましたが,5%前後の確率でBL遺伝子を持たない米粒が混入していたのは事実だと思います。しかし,同じ新潟県産のコシヒカリであったとしても,最大6%はBL以外の品種が混入する可能性があるわけですから,それが新潟県産以外のコシヒカリ(もしくは別の品種)なのか,新潟産だけれども非BLコシヒカリ(もしくは新潟県産の別品種)なのかはわかりません。新潟県内では,5%以下の混入率が有意差として認められるレベルを確保できるくらい厳密に,BLとBL以外を分別管理しているのでしょうか?
そして,出荷した先の業者で袋詰めされる過程において,どのくらいの厳密さでIPハンドリングが行われているのでしょうか。当然,普通の業者であれば複数産地の複数品種の米を扱っているわけですから,相当厳密なIPハンドリングを行っていなければ,GMOの場合と同様に5%程度の混入は避けられないものであるような気もします。
どちらにしろ,この辺の事情がわからないと,意図的なのかどうなのか,「事故」と言えるレベルなのか,「必然」的に避けられない混入であるのかが判定できないように思います。
もし,そのあたりの情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら,ぜひコメントなどで教えて下さい。よろしくお願いいたします。
ここ3つのエントリーを拝見しますと、どうも農作物の生産がわかっておられないようですね。
94%の田んぼでコシヒカリBLが作付けされていますが、残り6%の田んぼで従来コシヒカリを植えて栽培している、だからそれらは混じってしまうはずだという論理運びがなぜ生じるのかよくわかりません。
コメには奨励品種制度というのがありまして、その都道府県の行政と農業団体とが、奨励品種の種子を供給しています。コシヒカリBLが奨励品種になった新潟県では、従来コシヒカリ種子の供給をしなくなったので、94%ものシェアでコシヒカリBLに切り替わったのです。
従来コシヒカリの種子は、他県の生産した種子を調達するしか無く、従来コシヒカリを栽培したい新潟県農家には不満があるようです。
そういう状況で、わざわざ従来とBLの種子とを混ぜて栽培するようなことはしないでしょう。従来コシヒカリを栽培したい農家は、BLを「別物」と認識してわざわざ県外から種子を買ってきているのですから。
新潟県産従来コシヒカリをうたう通販商品についてぐぐってみると、すべてが「コシヒカリBL”なんか”じゃないよ」と言う点をウリにしています。我こそは従来(プレミア)コシヒカリ生産農家と胸を張る方が、コシヒカリBLと従来コシヒカリの種を混ぜて栽培したり、同じ機械でBLの田んぼと従来の田んぼをはしご収穫したりはしないものです。
http://blogs.yahoo.co.jp/n_matajirou
http://kobayasien.blog65.fc2.com/?q=%A5%B3%A5%B7%A5%D2%A5%AB%A5%EABL
http://blog.goo.ne.jp/sone311-1/e/7ef01aa14514b37db432b16e29822d5a
それと、例外はありますが、コメの品種判別キットは従来コシヒカリとコシヒカリBLとも判別できるものです。
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbbr/8/3/8_79/_article/-char/ja
以下は例外
http://www.visionbio.com/etc/faq_dna.html#q01
一方、コメ販売業者に言わせると、秋は農家が忙しいから混ざっても不思議がない、と認識しているようです。姿も味も、当然収穫期も区別が出来ないコシヒカリBLと従来コシヒカリですから、作業ミスで混じると主張されています。
そうでなければ別品種混入がすべて自分たちの責任になりますから、当然の主張ですね。
私はコメ業者のブレンド行為を商業者の品質管理上尊重していますので、景品表示法・JAS法違反でないブレンドなら有っても良いと思っています、念のため。
たしかに収穫機械を丁寧に掃除して別品種が混じらないようにするのは、時間も手間もかかるでしょう。しかしそれで、2店舗(業者)の米袋のコメに5%も別品種を混ぜることが出来るのか?となると、以上の事情からかなり難しいでしょう。
今回のエントリーのソースを私もチェックしてみましたが、毎日の記事ですと"質問です"さんが書かれたように各ロット20粒ずつx25ロットの検査と読めます。
フォローの試験は行っていないと仮定しますと、20粒中1粒で混入が検出されたらといって、5%の混入率であると断定するのは確率論的に正しくないような気がするのですが。
全てのロットで故意による混入がなく、その上で微量の混入が等しく避けられなかったとしたら、計500粒のうち2粒検出されたので実際には0.4%程度であったかもしれません。
>ほぼ確実に5%程度の混入があったと考えて良いと思います
と断定的な言い方を前エントリーでされているので、ちょっと気になってコメントさせていただきました。
私は確率の実際がよくわかりませんので、すこし教えていただければありがたいです。
サンプルから20粒を取り出して、その1粒が異なる場合、20分の1だから0.05=5%ではないのでしょうか?
お米の売れ筋は2kg袋であるとしますと、中の米粒数は大まかに計算できます。米粒は1000粒あたり20gですから、2kg=2000gなら米粒数1000×100=10万粒ですね。
そこから1粒検出ではなく、一度20粒取り出して、その1粒が異なる品種だと5%という計算は成り立たないんでしょうか?
ご指摘の通り,さすがにこの辺になると私の領域からは離れてきてしまいますので,かなり精度が怪しくなってきますので,詳しい方からのご意見は参考になります。ありがとうございます。
わたしもさすがに同じ田んぼでBLとBL以外を同時に栽培するようなことはしているとは思っていなかったのですが,集荷時点でどの程度厳密に分別して管理しているのかがわからなかったため,あのような疑問を抱くにいたりました。
しかし,よく考えてみれば集荷段階での混入が避けられないのであれば,全ての業者で同程度の混入が見つかるはずですね。ということは,出荷時までは相当厳密に管理がなされていると考えて良さそうな気もしてきます。
また,ほとんどの業者で混入が認められなかったと言うことは,「やればできる」ということを示しているとも言えるかと思います。
ただ,意図的な混入だったのかそうではなかったのかを判断するには情報がまだ少ないですね。お示しいただいた論文もコシヒカリBLか,そうでないかを見ているだけのようです。最低限,今回混入していた異品種がなんだったのかという情報がないと,推測すら出来そうにないです。
ただ,確かに出荷時の管理はかなり厳しいレベルであることは理解できました。他にも,何かありましたらぜひよろしく御願いいたします。
> 今回のエントリーのソースを私もチェックしてみましたが、毎日の記事ですと"質問です"さんが書かれたように各ロット20粒ずつx25ロットの検査と読めます。
> フォローの試験は行っていないと仮定しますと、20粒中1粒で混入が検出されたらといって、5%の混入率であると断定するのは確率論的に正しくないような気がするのですが。
> 全てのロットで故意による混入がなく、その上で微量の混入が等しく避けられなかったとしたら、計500粒のうち2粒検出されたので実際には0.4%程度であったかもしれません。
この辺ちょっとややこしいのですが,「首都圏で流通している新潟県産コシヒカリ全体の中で」ということであれば,まうりぃさんの計算で正しいと思いますが,朝日新聞の記事から推測する限り同一製品25ロットではなく,「25製品」であるようなので,25製品中「2製品において5%混入」と理解するのが良いかと思います。
ご回答になりましたでしょうか。他にも何かありましたら,よろしくお願いいたします。
異なる商品を2袋ずつ買ってもらって、その1袋をサンプルとして持ってきて、分析しています。だから2業者が取り扱う(別々の)商品の1袋に、20粒中1粒の混入があったのは確率5%でよいと理解しています。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091005/biz0910051419001-n1.htm
この記事が「報道された後」、農水省農政事務所も「同じ商品をくれと言って購入して」鑑定を行い、混入はなかったと報道しています。
http://mainichi.jp/life/food/news/20091007ddm041040055000c.html
農水省は事故米(カビ毒米・農薬米)の流通を見過ごし、その取扱業者や関係団体に天下りしていたことは周知のことですから、
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20091105AT3D0500505112009.html
http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/hisyo/071226.html
ただの火消し情報であろうという印象はぬぐえません。
輸入米には厳しい対応をしていますから、
http://www.asahi.com/business/update/0522/TKY200905220357.html?ref=reca
なおさら身内を守ってるという印象があります。
25種の別の商品であることは理解しています。
私が言いたかったのは、今回の調査対象となった新潟県の各業者がどの商品についてもきちんと品質管理を行い、(低)混入率を達成していたとしても今回のような結果は起こりえるということです。
混入率が5%ではなく0.4%程度であったとしても、25回同様の検査をしたら2回程度は一粒が引っかかります。その1回にたまたま当たってしまった袋が2袋あったとも考えられます。
また、分散分析の話になりますが、25群の比較で5%の混入を有意に検出するにはもっと大きいサンプルサイズ(=もっと多い米粒)が必要になるように思います。手許に統計ソフトがないので計算はしていませんが。。
今回のケースでは20分の1の袋と20分の0ではおそらく統計上の有意差はない=「当たり」の2商品が他の23商品よりも混入率が高いとは言えない=でしょう。
あくまで抜き取り検査で全数検査では有りませんから、結果の解釈についても統計解析が必要になりますが、そこが省かれていたので気になりました。
ぷろどおむさんは一貫して定量的な議論をしてきておりますので。。
>この記事が「報道された後」、農水省農政事務所も「同じ商品をくれと言って購入して」鑑定を行い、混入はなかったと報道しています。
フォローアップの検査は行われたのですね。その結果何も出なかったとしても上に述べた理由で何の不思議もありません。
本来ならここまでやって確定してから報道すべき話と思うので、最初の報道ではただ業者と消費者を混乱させるだけだなあ、と感じました。
こちらこそ,意図をくみ取れずにすいません。
また,私の書き方も相変わらず拙かったようで申し訳ありませんでした。
統計処理に関しては仰るとおりだと思います。
私としては,今回行われた検査はいわゆる「スクリーニング」レベルのものであり,当然この後(その気があれば)きちんとした検査が行われるのだろう,とは考えておりました。また,本来であれば,ちゃんと現在どうなっているのかを調べるべきだったのですが,本業が立て込んでいたことや,毎日新聞の記事に憤りすぎていたために,ついついサボってしまっておりました。大変申し訳ありません。
また,「5%」と断言したことに関しては,元々の質問が「分析方法由来による誤認が入り込んでいるのかどうか」という質問でしたので,「少なくともこの検査にかけられた試料の5%が異品種であると識別された」という意味でコメントを書いておりました。今読めば,確かにそんな風な意図が読み取れれるとはとても思えない悪文です。本当に申し訳ありませんでした。
仰るとおり,統計的なことを考えれば,しかも本当に一回だけの検査しかしていないとすれば,元の製品中における混合比を正確に求めるには,あまりにも試行数が足りません。20粒ずつの抜き取り検査が慣例だとしても,一製品につき数回行って平均を取ったり,同じ製品の違う袋についても同様の検査をするなどをすべきでしょう。
というか,検査を行ったのが一般の市民団体とかならともかく県ですから,せめて同一の袋に対して数回の検査を行う位はしていたと思いこんでいた部分もあったのですが,実際はどうだったのでしょうか。判断するには,その辺の情報を集めないといけなさそうですが,なかなか見つかりません。詳細な情報のポインタをご存じの方がいらっしゃいましたら,教えていただければと思います。
> 本来ならここまでやって確定してから報道すべき話と思うので、最初の報道ではただ業者と消費者を混乱させるだけだなあ、と感じました。
同感です。私自身も混乱を広げるような文章を書いてしまったことを反省し,読まれた皆様全てに深くお詫びいたします。まうりぃさん,ご指摘いただきましてありがとうございました。
ただ,まうまうさんは後から行ったこの検査について,かなりの不信を抱かれているようなのですが,事故米を故意に流通させた事件や,中国における偽ブランド問題などとはかなりレベルが違う問題であるように,私には感じられます。疑念を持たれる根拠となった具体的な情報などありましたら,ぜひよろしく御願いいたします。
ざっと見くらいの鑑定で不安をあおる記事ではないか、ということですね。
新潟コシヒカリを扱う業者25中2業者が5%に満たない、例えば0.4%の混入率の商品を売っていても、25業者中2つの商品で20粒中1粒を検出する可能性はゼロでない、ということでよろしいでしょうか?
分散分析は、業者(商品)を25群として、その群に異なるものがあると検出するためのサンプル取り出し数が十分でないということですか。
調査対象の変動係数と目標精度から、必要な米粒数を算出できると言うことですね。
なるほど、情報を探してみます。ありがとうございました。
ぷろどおむさん
私の書き込みも、感情に走ることで根拠(ファクト)から遠ざかっておりました。
ご指摘ありがとうございます。
米サンプルの取り出し方法、鑑定の反復数などの情報を探し直してみることにいたします。ありがとうございました。
>検査を行ったのが一般の市民団体とかならともかく県ですからちゃんと,せめて同一の袋に対して数回の検査を行う位はしていたと思いこんでいた
私も最初はそうしてるのかと思ったのですが、調べたら500検体のPCR検査費用だけでも結構な額になるようなので、予算の問題が出てきそうです。はっきり故意と分かるレベルの混入であれば20粒検査で十分に検出できそうですから、スクリーニングとしては妥当な気がします。
まいまいさん
はい、今回の記事程度の僅かな差をきちんと検出するためには、試行数を増やすしかありません。
遺伝子検査に限らず、抽出サンプルで母集団を評価する類の調査、試験は実に多くの場面で使われるのに、その解釈は実はそんなに簡単ではない上に、本来の意味と違うように(時に意図的に)使われがちなので、注意して読むように気をつけてます。
それでも本ブログの疫学のお話を読んで、自分の想像を遥かに超えた要因がいろいろあり、自分の思う「客観性」がいかに頼りならないかを痛感する自分がいたりするわけですが。