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アナログゲームデザインについてのノウハウ断片「かもしれない」

※これは 「Board Game Design Advent Calendar 2018」 18日目の記事です。

今回出展した「ドラゴンズストーンリバイズド」など自分が制作したゲームのデザインを振り返りつつ、
雑多にデザインや制作についてメモを起こしてみました。
今回は本当に雑な記事になりますが、7点の「かもしれない集」です。



『アナログゲームデザインについてのノウハウ「かもしれない」』



★作りきれるゲーム案とそれ以外の差?
「ドラゴンズストーン」の発案は「MTGのドラフトを短時間で、繰り返し、MTGを知らない人とも遊びたい」というような気持ちからゲーム制作を始めました。
今振り返ると、この発案内容の中にゲームでどんな体験をさせたくて、どの程度の難易度で、どのくらいのプレイ時間を想定しているか。が全て入っていたのでゲームの根幹は制作開始時からまったくブレずに最後まで進むことができました。

以降に発案したものの現実に形になりきらないゲームがたくさんあるのですが、
それらは初期コンセプトの中からどれかが抜けていることが多いような気もします。
・プレイ時間の目安
・ゲームの難易度、どの程度複雑にするのを許容するか
・ゲームが終わった時にどんな気持ち(感想)を持つのを目指すか
ここらへんが「最後まで作りきれるゲーム」を制作するときのコツ。かもしれない。



★だんだんと出来上がってきたゲームをバラバラにしてみる
これは「ひつじとどろぼう」を制作していた時の話になりますが、
初期のルール制作や調整が順調に進んで、さて次はカードのバランスの調整と検証をしてみよう。
と思った途端、どうすれば良いのかわからなくなりました。

「ひつじとどろぼう」は非常にシンプルなカード(道と川とひつじ、どろぼう等しか書いてない)をドラフトして
場に連結していくゲームなんですが、はたして、このカードをそれぞれをどう「評価」したものか。
カードAとカードBは何点くらい評価が違うのか。それは調整すべき程に差が開いているのか。
こんなカードゲームを遊んだことがない(自分で作ってるのにw)自分には、
まず評価方法を考えるところから始めなければいけませんでした。

そして、ザックリと書くと以下のような加点・減点を考えました。
ゲームの大目的は右下方向に道を繋げる事があるため、右か下に道があるものは加点。
ひつじが書いてあるものは得点源になるため、加点。
どろぼうや他の効果マークについても、それぞれの効果による加点。
川が書いてあるカードは得点にもつながるものの、配置制限が辛いため基本は減点。

この評価方法に準じて各カードを2点~3点程度を目指してバランスを取り、
カードのタイプ(川、羊付き、どろぼう付き、各道がどの方向に向いているか)の全体の比率バランスを取り、
カードを決定していきました。もちろん決定後にテストプレイでそれぞれの値から調整をしています。

このように、自分が思いついたゲームのバランスをどう取れば良いのかわからなくなることもありますが(w
そういう時は仕組み全体を通してメリット、デメリット、どう遊んでほしいかを加味して
いちどそれぞれの機能で分解して再評価すると、未知のものでもバランスがとりやすい。かもしれない。



★ゲーム展開のバランスについてのアイデア
ドラゴンズストーンのドラフト後に全員が1枚ずつカードを出して勝負。
というバトル部分は最初から完成までまったく変化がない部分でした。
毎ターン1名しか勝利しないゲームなので、フラット状態でプレイする1ターン目の行動は、システムが最も剥き出しになる選択肢になります。
1ターン目に出す候補としては「ゴブリン」「民兵」「商人」という3種をデザインしたのだけれど、
これは全力で殴る(ゴブリン)/全力で貯蓄(商人)/その中間(民兵)として設計された。
※最終的には派生として「ゴブリンの伝令」や「貿易商人」などが生まれてくる。

このターンではなく、次や、その次のターンに勝ちたい。という理由は
場の財宝の色の組み合わせや手札の他のカードを使用した方が確実に勝てそう。という気持ちなどが
なんとか担保してくれる形になっている。

シンプルに殴り合うタイプの対戦ゲームの場合「全員の勝ちたい気持ちが多少ブレるように」なっていないと
たまたま強い手札を組めた人が、勝負を分けるタイミングで勝つ。という味気ない感触になる恐れが高い。
作ったゲームを遊んでみて、展開が同じ/一方的/運ゲー過ぎる。という感覚があるときは
中間目標や、個々人で違うスコアの伸ばし方などを多少盛り込むと解決の役立つ。かもしれない。



★システム的に、各種獲得リソースはどう「思ってもらわないと困る」のか
「ドラゴンズストーン」は状況や展開がガンガン変化するゲームではあるものの、そこにもルール付けはあって、
誰かが5つ以上獲得してラウンド終了したらゲーム終了(得点計算)に移る「財宝」は
他のプレイヤーが獲得済みのものを操作することは「基本的には」できない。
(唯一「ドラゴンゾンビ」のみが他人の財宝を奪うことができる。)

これは「財宝」の取得数が増えていってくれないと、ゲームが終わりづらくなる(収束性が悪くなる)という理由と、
プレイヤーは獲得した「財宝」をベースに戦略や勝つタイミングを練るので、
もし獲得済み「財宝」が目まぐるしく変わると、もはや戦略を練ることがバカバカしく感じられてしまうため。
「財宝」はシステムからも大事にされるべきで、大事だからこそ狙って取りに行く価値がある。と思わせられる。

一方で「金貨」は通貨なので、貯めこんで高価な傭兵で勝利を目指すの戦法は許容しつつも、
貯めこむアクションが優位な戦略になってしまうと、みんな貯金することが序盤の最適解という面白味にかけた状況になりかねない。
この問題の解決方法はきっといくつかあるのだけれど、ドラゴンズストーンでは「ダークエルフの義賊」という、
全員の4金以上の所持金を奪って自身の戦力にするカードを制作して、カタンの資源(手札)と類似の解決を目指してみた。
カタンで手札を貯めすぎても7が出てバーストする。のと同じように、
ゲームプレイ中に何度か「義賊」が現れるため、消費した方が得と思える状況をシステム側で用意してみた。

ゲーム制作初期は結構適当にいくつかの資源を獲得するようなデザインで初めて構わないと思うのだけれど、
ゲーム中に獲得するそれぞれのリソースについて、それぞれがどういう役割で、
システム的に、プレイヤーにどう「思ってもらわないと困る」のか。
どこかのタイミングで検算して明確にするとバランスの方向性がまとまりやすい。かもしれない。
※「財宝」や「金貨」の位置づけはドラゴンズストーンではかなり初期から決まっていた。ラッキー。



★どんな状況にしたいのか、誘導する
「ドラゴンズストーン」のバトル4ターン目は最も強いキャラクターカード同士がぶつかり合う、怪獣大戦争的なターンに設計されている。
だが本質的には「盛り上がってる感」や「派手なことをしている感」を演出しているだけで、4ターン目も相変わらず勝者は1名しか生まれない。
それでも「計画して」「大きなアクション(戦力な効果)」を使うことは、それだけで快感があるし、楽しい。

そこに、強力カード達の相性が絡んでくるので「計画して」「大きなアクションをして」「それでも裏切られるかもしれない」という
気持ちの高まりを感じられるように、カードの効果やバランスを調整してみた。
「ドラゴンスレイヤー」という、他プレイヤーのドラゴン系カードを強制退場させるカードは4ターン目にしか出せず、
全てのドラゴン系カードも、4ターン目のみに登場できる。そこに逃げ場は無い(笑)ので、ハラハラ感を作り出せた。

特にTCG寄りなゲームだと顕著かもしれないけれど、近しいコスト帯に強力なカードとそのアンチカードをデザインするだけでも
両者が出会う確率が上がり、ドキドキハラハラを誘発しやすいシステムになる。
逆に、特定のアクションAに対抗するにはアクションB。みたいにシステム設計していても上手く機能しない場合は
ターンやフェーズ、コストなどの調整でそれぞれを近づけると案外上手くいく。かもしれない。



★コンポーネント(同梱物)に素敵な小物を?
「ドラゴンズストーン」では、フラッグという小物を同梱していたのだけれど、
これはプラスチックポーンにシールプリントした旗を貼り付けるという細かい手作業が必要になるので大変だった。
自分はどうも「素敵な小物」が入っているアナログゲームが好きで、自作でもそれをやりたい気持ちが強いみたいで、
「ドラゴンズストーンリバイズド」では、フラッグに代わり「呪われた王冠コマ」を同梱した。
これを見つけたのは超ラッキーで、お値段の割にとても素晴らしい見た目で自分的には満足でした(みなさんはどうですかね?)。

さて、問題はこういった小物をどこで探すのか。
最近だともう自作してしまうゲーム制作者さんが多いようで、本当に頭が下がるんですが自分だとだいたい以下のサイト系を探してまわったりします。

・楽天 アクセサリ ハンドメイド
https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89+%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%82%B5%E3%83%AA%E3%83%BC/?scid=s_kwa_2014comb_00&lsid=663894

・AliExpless アクセサリ⇒チャーム
https://ja.aliexpress.com/category/200000117/charms.html?spm=2114.52010108.2.228.3f7f77619E0oQV

・NETSEA ファッション雑貨 (最初に個人事業主的なユーザー登録が必要ですが怖いことはないです)
https://www.netsea.jp/category/4

ただ、いきなり全量オーダーするのは怖いので、最初に10個くらい注文して試してからフルオーダーする事が多いです。

あとは上記サイト以外でも、検索キーワード次第でいろいろ見つかるはず。
例えば「ドラゴンズストーンリバイズド」の財宝コマのようなものを探すのであれば
「アクリル ストーン」とかで探すと結構いろいろなものが見つかるし、
「業務用」のキーワードを入れると100個以上のセット売りが見つかることも多いので便利。かもしれない。



★最終(のつもりの)テストプレイについて
ゲームを作っていってモック(絵とか適当な、とりあえず遊べるもの)を用意したら、
自分は延々と一人で4人プレイなどを行い続けてゲームを試したり、バランスを調整していく。
それが終わったら気心の知れた他のゲームデザイナーの人達がいるテストプレイ会で遊んでもらって、調整や改良を続けていく。

自分がこれまで作ったゲームの場合は、大体「最終のテストプレイ日」を決めて
その日に集まってもらう人には申し訳ないながら、もう、一日中そのゲームだけを繰り返し繰り返し遊んでもらう。
たぶん6~10回ぐらいはぶっ続けで遊んでもらう。
この「最終のテストプレイ日」に調整箇所があったら即座に直して、変更後版でそのまま続けて遊んでもらう。

この「1日同じゲーム漬け」テストは、もしかしたら昨今のゲームの遊ばれ方と乖離してる気もするのだけれど
ゲームの問題点探しと並行して、ずーっと同じゲームを繰り返し「楽しんでくれる」かをチェックして見てる。
参加してくれたみんなが(少なくとも)嫌そうな、もう疲れた辞めたい的な表情になるようであれば要調整だと思っている。

この、最終1日チェックは制作するゲームの内容にもよるものの、ゲーム発売まで、そして発売後も
ゲームデザイナーにほんのりと「このゲームは楽しめるものを作ったぞ」的な自信も与えてくれるので、オススメ。かもしれない。




以上、タメになる可能性がある「かもしれない」雑記でした。何かのお役に立てば、ラッキー。

Power9Games
坂下裕一




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坂下裕一
ボードゲーム制作サークルPower Nine代表。
海外ボードゲームが(一部売却後も)300個以上保有し続けてしまっているボードゲーム好き。
いつも「シンプルでままならない」ゲームをデザインする傾向があります。

公式Twitter:Power_nine

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