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「ハンディ扇風機をゴミとしてポイ」……は危険行為!正しい処分方法とは

処分方法を誤るとごみ収集車やごみ処理施設の大事故につながりかねないバッテリ入り家電(写真: 製品評価技術基盤機構NITE)

 ここのところ、モバイルバッテリの発火や、ハンディ扇風機のバッテリの破裂など、リチウムイオン電池を内蔵したデバイスの事故が世間をにぎわせている。もともとリコール対象の製品だった場合だけでなく、炎天下の車内での長時間にわたる放置や、落下による破損など、内蔵するリチウムイオン電池の特性に起因する事故が多いようだ。

 こうした状況に備えてユーザーができることの1つが、不要になった場合に適切な処分を心掛けることだ。最近は前述のような事故に加えて、不正確な知識に基づいた処分による、ゴミ収集車や焼却施設の火災が相次いでいる。環境省によると、2023年度だけでこれら発煙/発火事故は2万1,751件と、その数は膨大だ。正しい方法で処分するのは、ユーザーの側でできる最低限のマナーと言えるだろう。

 今回は、いわゆる小型家電に分類される製品の中で、リチウムイオン電池を内蔵した製品を中心に、2025年8月現在の情報に基づき、適切な処分方法を紹介していく。主にモバイルバッテリを想定しているが、これからの季節、夏場に使用してきたハンディ扇風機なども、処分の機会が増えると考えられる。本稿を参考にしていただけると幸いだ。

小型家電の例。多くはリチウムイオン電池を内蔵しており、処分方法が不適切だと発火や発煙といった事故を招きかねない
リチウムイオン電池が高温下で発火するメカニズム(独立行政法人製品評価技術基盤機構NITEの公式Xより)
バッテリ入り小型家電やバッテリそのものを単なるゴミとして捨てるのはもちろんNGだ!(写真提供: 製品評価技術基盤機構NITE)
バッテリがそのまま破砕機などにかけられると火災事故に(写真提供: 製品評価技術基盤機構NITE)
NITEが公開している動画。【事故再現】携帯用扇風機「1.損傷したバッテリーが破裂」
NITEが公開している動画。【事故再現】携帯用扇風機「2.ごみとして捨てて発火」
NITEが公開している動画。モバイルバッテリー「8.異常・発火時はどうする?」

まずはざっと概要をおさらい

 まずはマクロな視点で、家電製品の処分にまつわる基礎知識的なところをおさらいしておこう。

 家電製品のうち、TVやエアコン、冷蔵庫/冷凍庫、洗濯機/乾燥機といった家電4品目は「家電リサイクル法」の対象となり、統一されたルールが定められている。回収方法そのものはいくつかあるが、最終的にすべて同じところに行き着くと考えてよい。TVについては前回記事で紹介しているので参考にしてほしい。

TVやエアコンなど家電4品目は販売店による回収が多くを占める。個人で行う場合は郵便局で入手可能な「家電リサイクル券」を用いるのが一般的だ

 それ以外の小型の家電は「小型家電リサイクル法」でルールが定められている。対象はPCやスマホ、モバイルバッテリ、ハンディ扇風機など多岐にわたり、自治体主導による回収ルートの整備が進みつつある。

 一方、専門性の高い品目は、独自の回収方法が事実上の標準となっている場合もある。代表的なのがPCで、メーカーもしくは一般社団法人パソコン3R推進協会(PC3R)が窓口となり回収を行なっている。

 手順としては、サイト上で型番やシリアルナンバーを入力した上で伝票を取り寄せ、郵便局から発送するスキームだ。事業撤退したメーカーや海外メーカー、自作PCも対象だが、付属品や周辺機器は対象外なので注意したい。モニターの回収にも対応しており、それらの手順は以下の記事で詳しく紹介している。

PCの回収は一般社団法人パソコン3R推進協会(PC3R)のサイトから申し込める。ここから各メーカーサイトへとリンクしている

 また携帯電話やスマホは、各キャリアのショップが窓口となって回収サービスを行なっている。対象のキャリアは問わないので、たとえばSIMフリーのスマホをドコモショップに持ち込んで回収してもらうことも可能だ。

 これらは窓口で申込みの書類を書く必要はあるが、伝票の到着を待って発送するなどの手間を掛けなくとも、都合のよいタイミングで持ち込めばその場で手続きは完了する。キャリアによってはタブレットやスマートウォッチも受け付けている。

携帯電話やスマホの回収は、モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)が各キャリアのショップを通じて行なっている

現在の主流は「リサイクルボックスによる回収」

 さてここまで紹介した以外の小型家電については、どのような方法で回収してもらうべきだろうか。特にバッテリを内蔵する製品は、その扱いが気になるところだ。

 もっとも一般的なのは、自治体による回収だ。各自治体は役所や出張所、図書館などの公共施設に設置したリサイクルボックスに小型家電を投入してもらう、いわゆる「ボックス回収」を行なっている。自治体により細部のルールは異なるが、仕組みはほぼ全国共通と言っていい。小型家電の本体から分離できない内蔵バッテリは、多くの場合、そのままの状態で回収してもらえる。ハンディ扇風機の多くはこれに該当するだろう。

 一方で、小型家電から分離可能なバッテリや充電池、およびそれ自体が電池にあたるモバイルバッテリは、自治体によって扱いが異なる。そのままリサイクルボックスに投入すれば済む場合もあれば、リサイクルボックスではなく併設の電池回収ボックスに投入するよう指示している場合もある。また自治体では回収自体行なっておらず、後述する民間の回収窓口を案内している場合もある。

さいたま市の小型家電回収ボックス。小型家電から取り外し可能な電池やモバイルバッテリは、併せて設置されている電池回収ボックス(画像右)に入れるルールになっている
神戸市も電池の種類を問わず投入可能な「電池類回収ボックス」を市内の公共施設23カ所に設置しており、モバイルバッテリも投入できる。なお膨張/破損した電池類は回収対象外で、区の環境局事業所に相談する必要がある
東京都江東区はモバイルバッテリも小型家電と分けず、区役所ほか区内各施設に設置した「小型家電回収ボックス」に投入する仕組み。なお膨張した製品は対象外で、袋に「膨張」と表示し、燃やさないごみの日に出すよう指示されている

 リサイクルボックスを用意しているのは自治体だけではない。一般社団法人JBRCは、家電量販店などの協力店にリサイクルBOXを設置し、電池類(リチウムイオン電池/ニカド電池/ニッケル水素電池)の回収を行なっている。最近は店頭にリサイクルBOXを直接置かず、店員に渡す方式を取っている場合も多いようだが、事前に申し込んだり、窓口で書類を書く必要はないので手軽だ。モバイルバッテリはおおむねこれに該当する。

 ただしこちらに投入できるのは「JBRC会員企業の製品」に限定される。もともとこれらのリサイクルBOXは、JBRC会員企業が設置およびリサイクルの費用を負担しているので、非会員であるメーカーの製品は対象外となる。ユーザーからすると不便に感じるが、理屈はもっともである。

JBRCの小型充電式電池リサイクルBOX。店頭設置を前提としたデザインだが、実際にはバックヤードに置かれており直接投入できないケースも。ちなみに前述の「自治体がリサイクルボックスと併設している電池回収ボックス」がこれであることも多い

 いずれにしても現在の主流は「ボックス回収」であり、近年は自治体が役所や公共施設に加えて、イオンやイトーヨーカドーなど総合スーパーと連携し、店頭にリサイクルボックスを設置するケースも増えつつある。県庁所在地のある全国47都道府県の自治体をざっと調べたところ、設置先を公共施設に限定している自治体と、総合スーパーなど民間施設にも委託している自治体と、おおむね半々といったところだ。

 ややこしいのは同じ「リサイクルボックス」でも、自治体提供のものもあれば、JBRC提供の電池ボックスもあったりと、複数の種類が存在することだ。ユーザーにとっては投入さえできれば提供元がどこであっても問題ない──となりそうなものだが、ここまで見てきたように、リサイクルボックスの提供元によって回収対象のカテゴリが異なったり、メーカーに縛りがあるので、それらを無視して投入するのは避けたいところ。

 そのためまず行なっておきたいのは、自身が居住する自治体のルールを確認することだ。小型家電の分別はよく「わかりにくい」と言われるが、それは別の自治体の回収方法が、自身が居住する自治体にも適用されると早合点するパターンが、一定の割合を占めると考えられる。一度機会を作って、居住している自治体のルールを確認しておきたい。

 またJBRCのリサイクルBOXを利用する場合は、リチウムイオン電池/ニカド電池/ニッケル水素電池のいずれかで、かつ対象メーカーの製品であることを確認しておきたい。余談だがこのJBRCのリサイクルBOXは、電池が溜まった段階で専用ペール缶に移してJBRCへと発送されるのだが、対象外の製品が混入していると協力店にペナルティが課されるルールになっている。協力店スタッフの目を盗んで対象外の品をボックスに投入するのは厳禁だ。

JBRCが回収を受け付けている電池はニカド電池/ニッケル水素電池/リチウムイオン電池の3つ。なお破損や膨張のある電池は対象外となる

メーカーや家電量販店による回収など、そのほかの方法まとめ

 「ボックス回収」以外で、小型家電を処分するためのポピュラーな方法をまとめておこう。

 排出された不燃ごみや資源から小型家電を手作業で選別する「ピックアップ回収」は、これまで多くの自治体で行なわれてきたが、環境省のデータを見る限り、回収量は徐々に下降線をたどりつつある。分別が広く受け入れられるようになってきたこと、またボックス回収が一般的になることで、今後はさらに減っていくものと予想される。

 一方で、乾電池などと同じくくりで、集積所に出してゴミ収集車が回収する、いわゆる「ステーション回収」を行なっている自治体もあるが、全国的に見ても数は多くない。このほか自治体職員や委託先が家庭を直接訪問して回収するシステムを採用しているケースも存在するが、こちらはさらにレアだ。

 いずれにせよ自治体による分別の場合、そもそもその自治体に自分が住んでいるのが大前提なので、希望する方法を自治体が提供しているとは限らない。従って回収してもらいたい小型家電が手元にある場合、まずは自身が居住している自治体のルールの中で希望する方法を探し、それがない場合にほかの方法を検討するという順序がベターだ。

東京都新宿区は今年(2025年)4月からリチウムイオン電池などの小型充電式電池を週1回の資源の日に資源・ごみ集積所で回収している
大阪市はモバイルバッテリの回収には回収ボックスを用いず、市内10カ所の環境事業センターに申し込むことで職員が家庭を直接訪問し回収している。膨張したバッテリにも対応する

 一部の品目では、メーカーや事業者による直接回収も行なわれている。前述のPCやスマホのように複数のメーカーや事業者が合同で回収スキームを提供しているのではなく、単体のメーカーが自社製品を対象に、個別に回収窓口を設けているパターンだ。

 特に多いのがモバイルバッテリで、たとえばエレコムは修理センターでの有償回収を行っている。またCIOは自社製品に限らず、他社のモバイルバッテリの回収も受け付けており、自社製品の購入に使える割引クーポンの提供も行なっている。これらの多くは宅配便での受付なので、リサイクルボックスが生活圏内にない場合の選択肢として重宝する。

CIOは不要になったモバイルバッテリを回収することで、同社製品を割引価格で購入できるサービスを行なっている。他社製品も対象だがクーポンの割引率には差がつけられている

 また、国指定の認定事業者であるリネットジャパンは、宅配便による回収を行なっている。梱包の中にPCが含まれていれば、その他の小型家電を追加費用なしで一括回収してくれるので、プリンタや周辺機器を併せて処分したい場合には非常に便利だ。ただし電池単体およびモバイルバッテリは対象外で、本体から取り外しできない場合のみ対応する。

認定事業者であるリネットジャパンは、回収する梱包の中にPCが含まれていれば、その他の小型家電製品を追加費用なしで一括回収してくれるサービスを行っている。宅配便での回収を希望する場合はよい選択肢だ

 さらに家電量販店が認定事業者と提携し、独自の小型家電回収サービスを提供している場合もある。こちらは店頭持ち込みを基本としながらも、訪問回収に対応している場合もある。料金は品目によって異なり、有償の場合も多いが、そのぶん対象品目の間口は広い。自治体で対象外とされた小型家電を引き取ってもらえるケースもあるだろう。

 ちなみに前述のリネットジャパンは認定事業者自ら回収サービスを提供しているパターンで、こちらは認定事業者が家電量販店と組んでサービスを提供しているパターンなので、サービスの性質としてはある意味で近いものがある。なお認定事業者であるリサイクル会社が家電量販店と同じグループ企業であるケースも少なくない。

エディオンはグループ企業である認定事業者イー・アール・ジャパンを通じて各店舗で小型家電の回収サービスを行なっている。回収方法は店舗持ち込みで、フランチャイズ店舗は対象外
ヤマダ電機もグループ企業である認定事業者の東金属を通じて回収サービスを行なっている。基本は店舗持ち込みだが、訪問回収にも対応しているようだ。指定ダンボール1箱あたり2,200円での一括回収にも対応する

まずは自身が居住している自治体のルールの確認を

 以上の通りなのだが、本稿執筆中にも経済産業省がモバイルバッテリやスマホ、加熱式たばこを「指定再資源化製品」に追加指定する案を取りまとめるなど、回収体制を強化する動きが見られる。これらは10月の政令公布を目指すとのことで、今回紹介した回収方法にも、変化が生じる可能性がある。

 今回見てきたように、かつてと違って現在は小型家電の処分にはさまざまな選択肢が用意され、ユーザーが選べる状況になりつつあるが、分かりやすいかと言われると話は別だ。また各自治体の取り組みを調べていくと、サービス向上をはかって独自のルールを導入したことが裏目に出て、かえって難解になってしまっている例も少なからず見られる。

 とはいえ、回収方法の分かりにくさを言い訳に、明らかにルールから逸脱した方法で処分を行ない、それによってゴミ収集車や焼却施設の火災を招いている現状は、改善されるべきなのは明らかだ。今後回収方法に変化があっても、主たる選択肢を取りまとめてアナウンスするのが自治体という構図は不変と考えられるので、自身が居住している自治体のルールは、ちょくちょく確認することをおすすめしておきたい。

ちょうど筆者が処分しようとしていた、バッテリ着脱可能な小型電動チェーンソー。処分方法を2つの自治体に問い合わせたところ、ある自治体は「まとめて粗大ごみ」、別の自治体では「本体と充電器は燃やさないごみ、バッテリは有害ごみ」という回答だった。このように回収方法は自治体ごとに異なるのが一般的だ