『戦雲』から平和を願う2024年末
今年も残りわずかです。毎週、土曜か日曜に更新している当ブログですので、今回が2024年に投稿する最後の記事となります。この一年間も、ウクライナやパレスチナでの戦火が消えることはありませんでした。シリアのアサド政権崩壊後、内戦がもたらした国内の爪痕や非人道的な行為の数々も目の当たりにしています。
遠い日本の地からは映像を通して知り得る出来事ですが、79年前には同じような風景が国土に広がっていました。1941年12月8日、日本海軍が真珠湾を攻撃し、太平洋戦争に突入しました。三多摩平和運動センターは毎年、12月8日前後に不戦を誓う集会を催しています。今年も協力委員の一人として参加していました。
この集会に参加し、2年前は「『標的の島』と安保関連3文書」、 昨年は「今年も不戦を誓う集会に参加」というブログ記事を投稿しています。それぞれ『標的の島 風かたか』『沖縄スパイ戦史』という映画が上映されていました。沖縄の米軍基地問題を取り上げ続けている三上智恵監督によるドキュメンタリー映画です。
辺野古の新基地建設、高江のオスプレイのヘリパッド建設、宮古島、石垣島の自衛隊配備とミサイル基地建設など、沖縄では様々な問題を抱え、反対派の住民らによる激しい抵抗、警察や機動隊との衝突が続いています。今年の集会でも三上監督の『戦雲』という映画が上映されています。
集会参加後、私どもの組合の委員長から原稿の執筆を依頼されました。組合ニュースの裏面に今回の集会報告を掲載したいとのことでした。前回記事「『官僚制の作法』を読み終えて」の冒頭に記したとおり「モノを書いて人に伝える」という作業を苦手としていません。協力委員という立場でもあり、あまり迷わず引き受けていました。
毎週長文ブログを綴っているため、短い期限での原稿の締切は気になりません。ただ440字以内という字数の制約には頭を悩ませました。前回記事と同様、組合ニュース用の原稿を意識しながら当ブログの下書きとして書き進めてみました。ちなみに前回記事は引用箇所を除いた内容だけで3000字近くとなっています。
初めから440字という短さを承知した上で引き受けたつもりでしたが、思った以上に伝えたい内容や言葉を選ばなければ収まりませんでした。無記名原稿ですが、組合ニュースを通して久しぶりに組合員の皆さん全体に伝える機会であり、少しでも個人的な思いを託せればと考えながら下記の内容にまとめていました。
12月10日夜、不戦を誓う三多摩集会が催されました。全体で170名、私どもの組合からは9名が参加しています。主催者らの挨拶の後、三上智恵監督の『戦雲』が上映されています。石垣島の抒情詩に「また戦雲(いくさふむ)が湧き出してくるよ、恐ろしくて眠れない」という言葉があり、現在の南西諸島に住む皆さんの思いを表した映画のタイトルです。美しい風景と活気あふれる地元の祭りなども映し出され、あっという間の132分でした。
その美しい島々で、自衛隊ミサイル部隊の配備、弾薬庫の増設、全島民避難計画など有事を想定した準備が進んでいます。戦争を防ぐという目的だったとしても、有事の際は真っ先に南西諸島の皆さんが標的にされていくことになります。
さらに撃ち込まれた1発のミサイルで失った命を取り戻すことはできません。自然災害と異なり、戦争は人間の意思で制御できるはずです。戦雲に脅える島民の皆さんの声を受けとめ、軍事衝突を絶対回避するための外交努力こそ実効ある安全保障の道筋だという思いを新たにした映画でした。
そもそも長文よりも簡潔で短い内容のほうが望ましいのだろうと受けとめています。SNS全盛の時代、小さな画面のスマホで閲覧する際、特に字ばかりの長文ブログは敬遠されがちなことも理解しています。それでも毎回2000字以上の内容となるスタイルは、これからも気負わず、気ままに続けていくのだろうと考えています。
今回「『戦雲』から平和を願う2024年末」というタイトルを付けた記事も、もう少し書き進めていきます。映画『戦雲』の中で、字数の制約がなければ紹介したかった場面がありました。与那国島に航海の安全や豊漁を祈願したハーリーと呼ばれる祭りがあります。
久部良地区の北、中、南の3つのチームの対抗レースがあり、地元の青年らが懸命に船を漕ぎながらゴールをめざします。そのメンバーの中には練習の末、漕ぎ手に選ばれた自衛隊員の姿も映し出されていました。力を合わせて一緒に船を漕ぐ姿から個々の自衛隊員が地元に受け入れられている一端を垣間見ています。
自衛隊員の子どもがカメラに向かって「この島が大好き、ずっといたい」と話す姿なども伝えています。このような日常的な関係性があり、地元住民に対する説明会の中で、ある自衛隊員が「有事の際は島民の方々の安全確保を第一に考えています」と語る一コマも伝えていました。
その自衛隊員の言葉は本心からのものだろうと思っています。しかし、ひとたび戦争に至ってしまえば、軍隊は住民を守ることよりも戦闘に勝つことを優先します。戦闘のマイナス要素を取り除くため、住民が邪魔になれば強制的に排除します。住民の生命や財産は二の次となり、とにかく国家として負けないことが至上命題とされていきます。
これまでの歴史や海外での現状を見た時、日本の自衛隊だけは絶対違うと本当に信じて良いのでしょうか。いずれにしてもミサイル基地を配備するということは敵対する国々からすれば標的にすべき島であることを示唆しています。自衛隊の増強は安心よりも危険度が増していくような危惧を抱かざるを得ません。
一方で、自衛隊の増強に反対することが平和を守ることであり、不戦の誓いであるという図式を強調した場合、それはそれで言葉や説明が不足しがちだろうと考えています。中国や北朝鮮の動きをはじめ、国際情勢に不安定要素がある中で「戦争は起こしたくない」という思いを誰もが抱えているはずです。
その上で、平和を維持するために武力による抑止力や均衡がどうあるべきなのか、手法や具体策に対する評価の違いが人によって分かれがちです。中国や北朝鮮こそが軍拡の動きを自制すべきであることは理解しています。しかしながら「安全保障のジレンマ」という言葉があるとおり疑心暗鬼につながる軍拡競争は、かえって戦争のリスクを高めかねません。
脅威とは「能力」と「意思」の掛け算で決まると言われています。だからこそ戦争に至る前の段階で「双方の言い分」に耳を貸していく外交努力をはじめ、国連という枠組みの中での英知が結実していくことを心から願っています。「標的の島」としないためにはミサイル基地を叩く力よりも、ミサイルを発射する「意思」を取り除く関係性の構築こそ実効ある安全保障政策の道筋だと考えています。
2024年末、南西諸島の皆さんが戦雲に脅える必要のない平穏な日常を取り戻し、さらに国際社会の中で戦火が消えることを祈念しています。このような願いは「平和の話、インデックスⅣ」や「戦火が消えない悲しさ Part2」という記事などを通し、繰り返し訴えてきています。組合ニュースの原稿も字数の制約がなければ、きっと以上のような内容を付け加えていたはずです。
最後に、この一年間、当ブログを訪れてくださった皆さん、本当にありがとうございました。どうぞ来年もよろしくお願いします。これまで曜日に関わらず、必ず元旦に新年最初の記事を投稿しています。ぜひ、お時間等が許されるようであれば、早々にご覧いただければ誠に幸いです。それでは少し早いかも知れませんが、 良いお年をお迎えください。
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