[アメリカ発] ゾディアック連続殺人事件(カリフォルニア州ベイエリアで1960-70年代に発生)の再捜査については、当ブログでも過去6回にわたりレポートしてきたが、この数ヶ月間、さっぱり音沙汰がなかった。が、CBS13が2日、沈黙を破り久々に新情報を伝えていた。
デニス・カウフマンさん(41)は、今は亡き継父、ジャック・トーランスさん(2006年、78歳で死去)が事件の真犯人ではないかという疑惑を抱き、それを証明するべく8年の歳月を費やし証拠を集めてきた。
その結果、FBIによる事件の再捜査が昨年夏頃スタートしたわけだが、デニスさんは独自にその道のプロに証拠品の筆跡鑑定も依頼していたようだ。CBS13は、依頼を受けた筆跡鑑定人、ナネット・バルト氏に直撃インタビューし、その鑑定結果を聞き出している。
バルト氏は、200時間余りを掛けて、トーランス容疑者の筆跡サンプルを、犯人とされる自称「ゾディアック」が書いた手紙の高画質コピーと比較したという。
「私の意見としては、ジャックは確かにゾディアックの手紙のオーサーですね」とバルト氏は言う。
彼女は、デニスさんの依頼を受けた時、ゾディアック事件のことはほとんど何も知らず、興味が湧かなかったそうだ。結局、鑑定を引き受ける事になったが、他の仕事との兼合いもあり、着手したのはその2ヶ月後だった。
ところが、いったん鑑定を始めてみると、ゾディアック=トーランス説を突き崩すかわりに、彼女が思いもしなかった結論に達したというわけだ。
バルト氏は、図表、手紙、軍隊勤務時に書かれた報告書等、全部で55点にのぼるトーランス容疑者の筆跡サンプルをゾディアックのそれと見比べた。
彼女の見立てによると、ゾディアックは筆跡を偽装しようとした跡が見られるが、途中で自分のありのままの筆跡に戻っているという。
「彼はここの辺りで、疲れてきてますね。そして、この時点で疲れ果てています」と、彼女はゾディアックが書いた手紙を参照しながら説明する。
確かに、文面を見ると、上部と下部で文体が明らかに違う。
バルト氏によると、異なる書き手の筆跡を比べて、2、3の類似点を見つけることは珍しいことではないが、7、8の類似点が見つかれば、ほぼ同一人物が書いたものと見なすことができるそうだ。
このケースでは、彼女は42もの類似点を発見している。類似点の多くは微妙なもので、書き手がそうとは知らず書き残していくものだという。以下は、ゾディアックとトーランス容疑者の筆跡の類似点の例である。
バルト氏は、筆跡鑑定のインターナショナル・スクールで約2年間訓練を受けており、裁判所が公認する鑑定人である。これまでに手掛けた筆跡鑑定は、すべてが裁判にかけられたわけではないが、50件以上にのぼるという。
しかし、彼女の指導者であり、彼女の通うスクールの校長でもあるバート・バゲット氏は、彼女の鑑定結果に同意しない。彼女の鑑定書に目を通した彼はこう反論している。
「私の結論としては、同じオーサーではない公算が大きいですね」
教え子のバロン氏と意見が異なるのは思い出せる限り今回が初めてだと言うバゲット氏は、ゾディアックの手紙については自身も広範囲の研究を行ってきたといい、ゾディアックが筆跡を偽装しようとしたとは考えていないという。
「このケースの場合、確かに文字の構造に類似点はありますが、私から見て、それらは圧倒的なものではありません。一方、相違点はとても大きく、同じオーサーだとするのはさっぱり理解できません」
ちなみに、この反論に対し、デニスさんは自サイトの
掲示板で、バゲット氏が反論するのは、彼がゾディアックについてのドキュメンタリーを製作中で、バルト氏の鑑定結果がそれを中止に追い込みかねないからだと発言している。
一方、師匠の反論にあっても、バルト氏は自分の出した結論を翻すつもりはないようだ。また、ゾディアック事件には今でも大きな関心が寄せられ、犯人説も複数唱えられており、彼女は自分の鑑定が検証され批評されるであろうことも承知している。
レポーターに、トーランス容疑者がゾディアックの手紙を書いたと言うのにどれほどの自信があるのかと聞かれた彼女は、「十分自信があります」と答えている。
バルト氏の鑑定結果をFBIに手渡し、直属の筆跡鑑定人に批評してもらう心づもりもあるようだ。
最後に、DNA鑑定の進捗状況についてだが、FBIは未だ捜査中の事件と言うばかりで、鑑定結果についてコメントを差し控えている。
今回の再捜査は、まだまだ長丁場になりそうである。
ソース
ゾディアック事件シリーズ
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