【
中村佑介 先生】
【作品寸評①】 まず良いところは、可愛いモチーフや豊かな色彩から
音楽の楽しさが伝わってくる点。
そしてそれによって結びつく男女の物語も
想像力をかきたてられますね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評②】 プロを志望されている方なので、ここからは個人の好き嫌いの話ではなく、
プロのイラストレーターの仕事としての話をしますね。 色々お話しますので、どこか出来そうな部分から手をつけて、
あとは聞き流して下さって結構です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評③】 先程言った通り賑やかさは伝わって来るものの、
パッと見た感じ、
ごちゃごちゃした印象があり、見にくい。 これはイラストレーションに取って致命的です。 例えば車窓から見える駅に貼ってあるポスター、ジーッと見れないけど、
何を言ってるかはわかりますよね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評④】 現実に例えるなら、ayamickさんのこの作品は、
可愛いものがいっぱいあるんだけど、
片付けるのが苦手な部屋、
そして一番大切にしているものをなくしちゃった、 そんな印象です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑤】 さてそれではこのままのタッチ、モチーフで
どうやったら見やすいお部屋になるのかご説明しますね。 まずは参考としてこのキキララちゃんのイラストをご覧ください。
モチーフも似ているものから択びました。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑥】 ayamickさんの作品と比べて見やすいですよね。
シンプルな線で描かれているので、
「誰でも描けそう」 と思われがちなこの絵にも、
プロの仕事ならではの
たくさんの技術が入っています。 それは構図です。
良い構図は必ず大・中・小を使い分けております。
【
中村佑介 先生】
分かりやすく簡略化してみました。
どうでしょう。
【大(主役)…2つ】
【中(脇役)…5】、
【小(その他)…無数】 という風に分けることによって、
とても見やすい画面作りをしているのがわかります。
全体を同じトーンで塗る方は、この方法が便利です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑦】 それを踏まえayamickさんの作品を分けるとこんな感じです。
大が6つ、中も6つあります。
だからゴチャッと見えてしまっていた訳ですね。
では次に小さいものでも主役に出来る方法をお教えします。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑧】 ではこの作品をご覧ください。
鳥山明作『ドラゴンクエスト4』パッケージイラストです。
先程の手法で行けば大きいものが主役のはずが、
この絵では
一番小さいものが主役で
最初に目に入ってきますね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑨】 今回も解りやすく、
さっきと同じやり方でモチーフを簡略化させてみると、
こんな感じです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑩】 では少し色を変えてみましょう。
右だと小さいものが一番最初に目に飛び込んできますね。
これは色の効果を利用した"見やすさ"の作り方で、
目立たせたいもの(主役)に彩度の高い色を使います。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑪】 それを踏まえ
『ドラゴンクエストⅣ』のパッケージイラストにもう一度戻って来ると、
手前に行くに従って、
彩度(鮮やかさ)と色の幅(コントラスト)が
段々増えていることがわかりますね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑫】 以上、大体この2パターンの手法を用いて、
プロのイラストレーションとは、
一瞬で目に飛び込んで理解出来る つまり
"誰でも見やすい"画面作りをしています。
僕も例外ではありません。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑬】 最後にayamickさんの
長所をもうひとつ。
積極的に僕に絵を見せてくれたこと。 実はこれが一番、
プロのイラストレーターにとって必要な部分です。 また見せて下さい。
アドバイスの成果、期待していますね。
皆様もご静聴ありがとうございました。(おわり)
【
ayamick さん】
昨夜は本当にありがとうございました(^^)
独学でやってきた私にとっては本当に貴重な体験です!
美術学校の授業を受けているようで、とっても楽しく学べました(^^)
またこの様な講習会を是非お願いします!
先生から学びたい方はたくさんいらっしゃると思います!!(^^)
【
中村佑介 先生】
こちらこそ昨夜はお付き合い、
どうもありがとうございました。
あなたはスポンジのように素直だし、
描きらい事がきちんとあって、
あとは一般の方に伝える為のちょっとしたワザの問題なので、
年数はわからないけど、コツコツやれば大丈夫。
これからも一緒に頑張りましょう。
【
ayamick さん】
はい!先生!!(^^)
この事をバネに年数はかかっても私は前に進んで、
プラスにしていきます!!(^^)
【デザインの基礎とは】
【
すなつ さん】
こんばんは!
webデザインを学んでいる専門学生1年です。
ふんわりとした絵を描きたいのですが、
上手に着彩ができません。。
よろしければ中村さんに、
私の手書きのほうの作品についてアドバイスをいただきたいです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評①】 デザイン専門学生に通うすなつさんの作品。
この作品は
"ロハスについて"という学校課題で
「生き物と共に過ごせる環境」 をイメージしたとの事。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評②】 なるほど。
アイデアもユニークで、キャンソン紙に色鉛筆を使うことによって、
自然に対するすなつさんの優しい考え(=ロハス感)もよく出ています。
また画面を横長に使う事により背の高い建物も威圧感を与えず、
ノビノビとした印象になっていますね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評③】 学校からは
「選んだモチーフはおもしろいが、動物はもう少し丁寧に書いた方がいい」 との事。
その通りですね。
パプリカというマニアックな野菜を択ぶセンスがあるのに、
この動物の形の曖昧さは実に惜しいです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評④】 さてそれでは、
今日は学校では言われなかった事をいくつかの項目に分けて、
このすなつさんの作品を
もっと良く(おもしろい、綺麗など)する方法 をご紹介します。
まずは『アイデア』。
"人間と自然との共存" をテーマにしているのに、
人自体は描かれていませんよね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑤】 それではこのイラストをご覧ください。
これは僕が最近描いた書籍表紙なのですが、
"アメリカ"と"女性" というテーマで、
自由の女神がモチーフに択ばれることはよくありますね。
ここでポイントなのが、
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑥】 ポイントは女神の台座に、
どんなに小さくてもきちんと人がいる点。 そうすることによって、
この大きな女神とライオンという空想上のものにリアリティが出て、
絵を見た人も
すんなりこの世界に入り込みやすくなります。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑦】 では、すなつさんの作品に
少し人を描き加えてみました。 いかがでしょう。
さっきより少しだけ、
この世界に遊びに行きたくなりませんか?
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑧】 次は『色』についてお話します。
さてここで皆様に質問です。
この3色のうち、
いちばん"ロハス"らしいのはどれでしょう。 『赤』『緑』『青』でお答え下さい。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑨】 正解は『緑』です。
ロハス系雑誌は大体こんな色が多く、
一番右の海外物でもイメージは同じようです。
ただ赤、また青と答えた方も不正解ではありません。
色の捉え方は人それぞれなので、これはただの多数決の結果です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑩】 アート作品であれば作者個人の見解でOKなのですが、
イラストやデザインの場合は、
不特定多数の消費者を納得させる必要があるので、
正解を『緑』としました。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑪】 そこですなつさんの作品をもう一度見てみると、
確かに大きな植物に緑は使っているものの、
最初にトマトの赤が目に飛び込んできて、
観終わって目を閉じると、
一番面積の大きい空と水面の水色が胸に残ってしまいます。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑫】 それではこうして少し色を変えてみるとどうでしょう。
あくまで
主役の緑を引き立てるように、
その他の色を少し変えたり、押さえたりしてみました。 また少し
"ロハス"感が増してきましたね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑬】 もう少しわかりやすく、色の整理をご説明します。
ここでまた質問。絵を描かない方もどうぞご参加下さい。
「デートの日、彼の好きなお気に入りの赤いセーターを着る事にしました。
さてスカートと靴は何色にしますか?」
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑭】 たくさんの解答ありがとうございます。
皆様の中から一番多かった色で、自分のイラストに色を塗ってみました。 白系スカートに、茶色のタイツ、グレーの帽子。
こうするとパッと赤が目に飛び込んできて綺麗ですね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑮】 ではこんな組み合わせはどうですか?
僕は彼女の個性、決してきらいじゃないですが、
友達に「昨日お前の彼女、何色の服着てた?」と聞かれたら、
的確に説明できる自信はありません。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑯】 つまりこれが、
『色のバランス』というヤツの正体です。
みなさん絵やデザインだと難しく考えちゃいますが、
さっきみたいな色の組み合わせの服を着てる子、
滅多に街でみかけませんよね。
つまりみんな実はセンスなんて元々、持ってるのです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑰】 ではすなつさんの作品を見返してみると、
前者と後者の女の子、どっちに似ているでしょう。 後者ですね。 なので今度からは緑色のセーターを着る時、
ズボンや靴に何色を択ぶかで、絵の色も決めたら、
うまくいくはずです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑱】 それでは次は
『色の塗り方』についてご説明します。
彼女の作品を見ると、
色がとても単純で子供用12色セットの色鉛筆だけで塗ったように見えます。 先程の話でいうと、
服はたくさん持ってるに越したことないですよね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑲】 それではたくさんの色鉛筆を用意したとして、
塗る前にちょっと本物のトマトを見てみましょう。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評⑳】 すなつさんの作品のトマトも、少し黄味がかった赤の色や、
形も非常にうまく捉えていますね。
素晴らしい点です。
「でもなんかちがう…印象が軽い」 そんな気もします。
それでは写真のトマトの影の部分にズームイン!
【
中村佑介 先生】
【作品寸評21】 あれ?赤いはずのトマトなのに、これは
茶色ですね。
そう、
物の影とは、光の色や他の物との反射によって、
とても複雑な色の組み合わせによって出来ています。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評22】 同様に少し明るい部分、少し暗い部分を採取すると、
大きく分けてもこれだけの色の構成によって、
トマトの影は出来ているようです。 赤や茶の他に、黄土色や赤茶色もありますね。
もう12色セットでは収まりません。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評23】 それと比較すると、
すなつさんのトマトは
ほぼ赤鉛筆1本のグラデーション(濃い・薄い)だけで
トマトの立体感を表現しており、そのせいで
「あれ?なんかちがう…」 ってなっちゃった訳ですね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評24】 またまた絵の話だと
「う~ん、難しい…」
と思われるかもしれませんので、もう少し噛み砕いて説明すると、
みなさんメイクの時に、
素肌の上にいきなり口紅やアイシャドーを塗るでしょうか?
【
中村佑介 先生】
【作品寸評25】 男性はちょっとわからないかもしれませんが、
例えば出掛ける前に母親や恋人、また奥さんが化粧だけなのに
「なんでそんなに遅いんだ!?」
と思ったことはありますよね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評26】 女性のメイクは通常、
まず洗顔、
そして化粧水や乳液、
更に化粧下地で、
ファンデーションと来て、
ようやくその後、
僕らも知っているアイシャドウやチーク、口紅をようやく塗ります。
そりゃ時間かかりますよね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評27】 そうやって時間をかけて、
油絵のように色んな色を塗り重ねる事によって、
美しく深みもあり、立体的な顔に仕上がる訳です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評28】 それを踏まえ、すなつさんのトマトを赤鉛筆1本ではなく、
赤の下字を塗ってから、茶色い影を入れてみました(図:左)。
そして光沢を入れ、緑は抑えめに。するとどうでしょう
元(右)よりグッと深みが出ましたね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評29】 これで
『アイデア』、
『色のバランス』、
『塗り方』
と来ましたので最後に
『テーマと構図』のお話をします。
今日はファッション関係の例え話が多いので、
最後の例題もファッション誌にしましょう。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評30】 石原さとみさんはお美しくいつまでも見ていたいですが、
今回は例題として明快にする為に、
文字以外は消させてもらいます。さとみ!ゴメン!!
【
中村佑介 先生】
【作品寸評31】 これが最も簡略化した雑誌のデザインです。
文字の大きい順に、
『タイトル(anan)』>『今号のテーマ』>『値段』>『その他』 という風に
小さくなっていることがわかりますね。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評32】 コンビニで雑誌を見つけ→内容を判断→お財布と相談。 つまり、
消費者の行動にとって必要な情報ほど、
先に伝わるよう工夫してある訳です。 "デザイン" と聞くと
「かっこいい、かわいい」
という印象ばかりが先行しますが、
これが
本来の正しいデザインの基礎です。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評33】 そこですなつさんに出された課題を考えると、
重要度は
『ロハス(大きなテーマ)』>『生き物と~(自分の考え)』>『作者の個性』 という順番になります。
雑誌の表紙に直してみると、こんな感じです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評34】 さて、再びすなつさんの作品に戻りましょう。
目に飛び込んでくる順を文字にして、
雑誌デザインに置き換えると…
【
中村佑介 先生】
【作品寸評35】 こんな感じだと思います。
特集内容は見やすく、とても面白そうなのですが、
一番重要な雑誌タイトルが小さいので、
本屋さんで見つけられそうにありません。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評36】 つまり"ロハス"を感じさせる役割の緑色の面積が、
画面に対して小さすぎるんですね。 ならどうしよう…
お!
せっかく画面の右も左も空いてますね。 ちょっと描き足してみます。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評37】 これでどうでしょう。 ほんの一例ですが、
両サイドの空きスペースを利用して、
画面の手前に林を描く事によって、
緑色の面積(=ロハス感)が増え、 同時に
「向こうに遊びに行ってみたい」 というワクワク感も出ました。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評38】 今日お話した
『アイデア』
『色のバランス』
『塗り方』
『構図』 の4つすべてを踏まえ、
すなつさんの元の絵(左)をアレンジするとこんな感じ(右)です。
どちらの方に
"ロハス感"を感じるでしょうか。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評39】 こんな風に、
何も練習に膨大な時間をかけなくても、
考え方や視点を少しだけ変えて、ちょっと工夫するだけで、
グンと見やすく、面白くなるのが、
イラストやデザインの特徴なのです。
【
中村佑介 先生】
【作品寸評40】 すなつさんのモチーフ択びに見る個性的な部分や、
野菜の形の正確さに見る正直な性格。
それを大切にしつつ、服選びやお化粧のように丁寧に辛抱強く、
これからも頑張って下さい。
以上、作品寸評でした。
長い時間お付き合い有難うございました。おやすみなさい。
【記事元】
この他にも様々なアドバイスをされています。
こちらもご覧になってください。
perorincho_123さんが非常にわかりやすくまとめてくれています。
【イラストレーター・中村佑介氏による『イラスト講座』】
今回紹介したように、中村佑介先生はツイッターでアドバイスをしていますが、
好評なため
中村佑介 先生にアドバイスを求める方が
非常に多くなっているそうで
現在は、締め切っているようです。
またお時間が出来たときに
今回のように公開アドバイスがあるかもしれません。
イラストレーターを目指す方は
定期的に中村佑介 先生のツイッターをチェックしておくのも良いと思います。
今回の記事で、中村佑介 先生に興味を持たれた方は
公式HPやツイッターをご覧になってみてはいかがでしょうか。
【YUSUKE NAKAMURA.net】
【中村佑介 先生のツイッター】