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足跡

 とある国では砂浜に足跡を付けながら泳いでいる人がいる中で、とある国では雪原に足跡を付けながら手製の雪玉を投げている人がいた。 とある国では老後の為にお金を貯めている人がいる中で、とある国では今日を生き抜く為にお金を得ようとする人がいた。 とある国では純粋な気持ちを持って寄り添い合う二人がいる中で、とある国では邪な気持ちでお互いの懐へと囁きかける二人がいた。

 それらのニュースをテレビ越しに見つめながら、溜息と共にリモコンのボタンを押す。 テレビを見ても暗いニュースか人々のゴシップ話だし、パソコンを付けた所でそこにあるのは罵詈雑言の嵐だ。 砂浜や雪原の風景を見ているとふと考え込んでしまう。

 足跡という二文字には色んな意味がある。

 地面に付ける足跡があれば、人生という道を歩んできた軌跡でもあるし、その足跡を辿ってその人を――その人の気持ちを探すという意味もあるのだから。 それが良い意味だけで表わされれば何の問題も無いのだが、その日暮らしの足跡を付けている人や、悪意を持って相手の足跡を辿る人だっているのが現実であり、真実だ。

 気晴らしに見ていたはずのニュースや掲示板に打ちのめされてしまう。 頭を抱えてソファに頭をうずめていると、待ち望んでいた着信が来た。
「今、空港に着いたよ」
 名前を呼ばれた犬のようにぴょんと飛び上がって出かける準備をする。 似合っていると言われたコートを羽織り、プレゼントしてくれたマフラーを首に巻く。 外の寒気に身を震わせながらドアのカギを閉め、まっ白い息を空へと吐き出した。 ふわっと白い息はかき消え、今度は車の排気口から特大の息が噴き出される。

 タイヤのマークを雪化粧のアスファルトに刻み付けながら目的地へと走っていく。言うなればこれも足跡だ。 人はどこから来てどこに向かうとか、人生の意味や意義とか、お互いの腹の探り合いとか、そんな事を考えていたらきりがない。 今足跡を付けながら向かっている先はもっと単純で、純粋な気持ちだ。たった二文字の感情だ。

 空港側の駐車場に車を停め、携帯の画面に到着と打ち込んでボタンをピッと押す。 そこから小走りで空港のロビーへと向かっていった。溢れ出る気持ちを抑えながら。君への足跡を残しながら

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仕事くれと思ったり、仕事辞めてぇと思ったり、ニート最強と思ったり、そんな有意義な事を考えつつちまちま更新(?)していくブログです。

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