米ファイザーは23日、総額1600億ドル（約19兆７千億円）でアラガンとの合併合意を発表し、事実上買収する。
ファイザーは、機能は米国に残こすが、買収後の本社は法人税の低いアイルランドに移すとしている。本社移転による節税効果は年間約20億ドル（約2460億円）に上るという。　
これに先立ち米財務省は19日、両者の合併合意に対して、税率の低い国への本社移転を防ぐため、税率の低い国にある規模の小さな企業を規模の大きな米企業が買収することを制限する追加規制を発表し、ファイザーをけん制していた。米ファイザーは全米に４万人の従業員を抱えている。

ファイザーは、性機能改善薬のバイアグラなどで知られ、アラガンは、点眼薬やしわ治療等美容医療などに強みを有している。
両社の昨年の売上高を合わせると、日本円にして約６兆８４００億円で、スイスのノバルティスを抜いて医療用医薬品の分野で首位になり、合併が実現すると世界最大手になる。
ファイザーなど大手製薬会社の間では、主力の医薬品の特許切れによる収益の減少を補うため、合併や買収によって企業規模を拡大する動きが活発になっているが、かつて護送船団方式だった日本製薬業界は蚊帳の外。

ＩＴ産業の多国籍企業が、節税のため税率が低い国へ主力事業の子会社を設け、税負担を逃れている問題で、欧州委員会は、販売する各国で売上高に見合う税負担をするように、修正する動きとなっている。
アイルランドはかつての金融危機で法人税率を下げており、格好の租税回避地（低額地）となっている。今回は、ファイザーが買収にかこつけ本社そのものを移転するという快挙に出たが、米政府が本社移転を含む買収には反対する可能性が高い。
次期大統領候補のクリントン女史は、米国は世界一高い薬品を買わされ、税金も支払わないとは言語道断としている。

アラガンは今年既に後発医薬品（ジェネリック）のアクタビス（下記表２４位）に６６０億ドルで買収された。アクタビスは新社名をアラガンとしたほか、後発医薬品事業の大半をイスラエルの後発医薬品大手のテバに４０５億ドルで売却した。ファイザーも、同じような込み入った構造の取引を検討しているという。
ＩＴ産業の場合、最終利益が転がり込むアメリカ政府は、ＩＴ大手の低法人税率国での子会社運営を批判こそすれ具体的な動きをせず、それも欧州の動きに対して、積極的な動きをしなかったスキをファイザーがなしたものと見られる。