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第110号(2025年2月号)
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“マツキヨPBの立役者”乙幡氏が紐解く 商品ブランド設計術

「激落ちくん」はなぜ価値を落とさずに製品展開を拡張できたのか?レックのブランド戦略から秘訣を学ぶ

 これまでイオンのプライベートブランド(以下、PB)のブランディングや、マツキヨのPB「matsukiyo」の立ち上げ、成功に導いたブランドテーラー代表取締役の乙幡氏が、様々な企業のブランド担当者を訪ね、成功の秘訣や戦略を深掘りしていく本連載。第2回は、発売から25周年を迎えるロングセラーブランド「激落ちくん」を販売する、日用品雑貨メーカーであるレックの西田氏と萩原氏に取材。激落ちくんのブランド戦略を伺う。

後発ブランドとして存在感を出すネーミング「激落ちくん」

乙幡:今回はドラッグストアやホームセンターなどで見かけるロングセラーブランド「激落ちくん」について伺いたいと思います。早速ですが、「激落ちくん」の概要と歴史について教えてください。

株式会社ブランドテーラー 代表取締役 乙幡 満男氏

萩原:激落ちくんは1999年11月に誕生し、2024年で25周年を迎えたブランドです。同製品は、元々ドイツで断熱材や防音材として使用されていた発泡素材を活用した、メラミンスポンジです。

 発売当初、メラミンスポンジは複数のブランドがすでに日本市場で展開していたので、後発ブランドである我々にとっては、市場でいかに存在感を出すかが肝でした。そのため、ネーミングには特に注力し、「非常に良く落ちる」を強調した「激落ちくん」という名前を採用しました。

レック株式会社 本社開発統括本部 ウエルネス部 ウエルネス課 課長 萩原 智之氏

乙幡:今となっては馴染みのあるブランド名も発売当時はかなりインパクトがあったと思いますが、社内での承認を通すのも大変だったのではないでしょうか。

萩原:攻めた製品名であったことは間違いないので、否定的な意見や冷たい目も少なからずあったようです。しかし当社には、おもしろいものに対して「まず、やってみよう」と肯定的に推し進めてくれる文化があり、発売へと進めることができたのだと聞いています。

メラミンスポンジから消しゴムまで、多数のタッチポイントを展開

乙幡:激落ちくんはキャラクターの印象がかなり強いブランドですがが、キャラクター作りの際にどのようなポイントを意識されたのか教えてください。

萩原:当ブランドを認知してもらえるように、眉毛を濃くし目を引くキャラクターデザインにしました。当社は大手企業のように広告に使用する費用が潤沢にあるわけではなく、店頭で目立たせることで効果的にブランド認知を獲得していくことが求められたためです。

 また、人には「見られている」と感じると思わず振り返ってしまう習性が備わっているらしいのですが、当ブランドのデザインにはそれが大いに活かされています。キャラクターの顔である「大きくて丸い目の何か」が店頭でこちらを見ていると、多くの人が思わず振り返り手に取ってしまうという行動を喚起できていたのだと思います。

乙幡:確かに人は視線を感じると振り返りますし、広告物や店頭の販促ツールをつくる上でも、モデルの視線は非常に重要ですよね。そんな印象に残る激落ちくんですが、具体的にはどのようなキャラクターなのでしょうか?

萩原:激落ちくんには実は細かいプロフィールを定めております。永遠の10歳で、性格は「元気いっぱい、正義の味方」です。

激落ちくんのプロフィール

萩原:また激落ちくんにはメラミンスポンジ以外にも液体タイプや布タイプのものもあり、それらは激落ちくんの親戚ということになっています。家族以外にもサイズや用途に応じてキングやライバルなど、様々なキャラクターを登場させています。

2014年ごろに作成された【激落ちくん】ファミリーの相関図(今はない商品も含まれる)

西田:加えて、「激落ち」という言葉の相性から消しゴムも販売しており、こちらもよく売れているんです。ご年輩の方は激落ちくんといえばメラミンスポンジのイメージだと思いますが、若年層ユーザーの間では状況は大きく異なっています。小学生の時に使用した消しゴムが最初のタッチポイントとなっており、彼らにとって激落ちくんといえば消しゴムのブランドになっているのです。

乙幡:それは知りませんでした。様々なカテゴリーで活躍している「激落ちくん」は、会社を代表するブランドであり、もはやコーポレートブランドに近い存在ですね。

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この記事の著者

乙幡 満男(オトハタ ミツオ)

株式会社ブランドテーラー代表取締役
 

 大学卒業後、メーカーにて商品開発を担当。数多くのヒット商品を世に出し、特許も取得。米国クレアモント大学院大学ドラッカースクール卒業(MBA)ののち、米系コンサルティング会社で、イオンのPBのブランディングに従事。2014年マツモトキヨシに入社。同社のPB「matsu...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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