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不動産業界の闇「物件の囲い込み」規制強化は機能するか

渡辺精一・経済プレミア編集部
=Getty Images
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 不動産業界で横行する物件情報の「囲い込み」について、国土交通省は2025年から宅地建物取引業法の処分対象とする。囲い込みは、売り主の依頼を受けた不動産業者が情報を公開せず、売り主・買い主双方から手数料を取ろうとする行為。売り主よりも自社の利益を優先する業界の「あしき慣習」として続いてきた。国の規制強化は不動産取引の正常化につながるだろうか。

不動産情報ネットワークに虚偽情報

 土地・建物など不動産の売買を行う場合、売り主や買い主は不動産業者(宅地建物取引業者)に仲介してもらうのが一般的だ。取引のトラブルを避け、相手との交渉や手続き、書類作成などの手間を任せることができるためだ。

 売り主から売却を任された不動産業者は、公的な不動産情報ネットワークである「レインズ」に5~7日以内に物件情報を登録することが、宅建業法で義務付けられている。

 また、物件の取引状況は、公開中▽書面による購入申し込みあり▽売り主の都合で一時紹介停止中――のなかから、ひとつを選んで示さなければならないルールがある。

 囲い込みの手口としては、購入申し込みがないのに「申し込みあり」と偽った情報を示すケースが多いとされる。購入を希望する顧客を持つ他業者の活動を妨げ、物件情報を独占する狙いだ。

売り主の不利益に

 囲い込みが横行する背景には、不動産業者が得る仲介手数料の上限規制がある。手数料は取引が成立した時の成功報酬で「売買価格の3%プラス6万円」を上限とすることが、法律の告示で定められている。

 売り主から依頼を受けた不動産業者は、他業者を締め出し、自分で買い主を見つけて取引を成立させれば、一つの物件の売買で、売…

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経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。