シニアの新NISA「資産を残すための武器だ」

山口敦雄・経済プレミア編集長
「生活の窓口」のセミナーで新NISAについて説明する蒲谷晃広さん=東京都千代田区で2023年11月25日、山口敦雄撮影
「生活の窓口」のセミナーで新NISAについて説明する蒲谷晃広さん=東京都千代田区で2023年11月25日、山口敦雄撮影

 株式や投資信託で得た利益の非課税枠が大幅に拡充される「少額投資非課税制度(NISA)」の新制度が2024年1月から始まる。シニア世代は相続対策や資産運用で新NISAをどう活用すればよいのか。

 株式や投資信託は通常、売却益や配当に対して約20%の税金がかかるが、NISAを活用すれば非課税となる。

 新NISAでは、投資信託に積み立て投資する「つみたて投資枠」と、上場株式や投信などが対象の「成長投資枠」の二つが設けられる。「つみたて」は年間120万円、「成長」は年間240万円の投資枠がある。この2枠は併用が可能で、非課税枠は合計360万円となる。

新NISAの節税効果

 1人が生涯で投資できる保有限度額は1800万円(このうち成長投資枠は1200万円まで)となり、現行制度の最大800万円から大きく拡充される。「つみたて投資枠」だけで1800万円の限度額まで投資することも可能だ。

 毎日新聞の「生活の窓口」は11月25日に新NISA活用に関するセミナーを開いた。講師は独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)のファイナンシャルスタンダード(東京都千代田区)の取締役、蒲谷晃広さんが務めた。蒲谷さんは相続対策として新NISAの活用を提案。「相続税を下げることよりも、相続税を支払った後の資産が多い状態にすることが重要だ」と訴えた。

 例えば資産運用を全くしない人の資産が100だとして、相続税でその半分が取られたら50しか残らない。一方、運用して資産を2倍にできれば税金で半分取られても100の資産を残せる。

 ただ、運用に失敗して資産を減らしてしまうのは「本末転倒」だ。うまく運用して資産をしっかり残すための武器になるのが新NISAというわけだ。

 新NISAの節税効果は大きく、例えばある金融グループが運用する外国株式の投資信託に対し、08年1月から22年12月まで15年間、毎月10万円を積み立て…

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経済プレミア編集長

 1974年生まれ。明治学院大法学部卒、同大大学院経営学修士。ビジネス誌「週刊エコノミスト」編集部記者、毎日新聞出版図書第二編集部編集長、学芸部記者を経て経済部。経済部ではメガバンク、財界、デジタル庁などを担当。24年1月から現職。著書に「楽天の研究」(毎日新聞社)がある。