会社員のA助さん(58)は資産運用の相談で訪れた銀行の窓口で「今の保険にはいつ加入されましたか?」と聞かれました。担当者は「医療保険を見直すことで、保障がさらに充実します。保険証券を持参してもらえれば、より具体的な提案ができます」と言います。A助さんは「本当に見直しが必要なのか」と悩んでいます。
民間の医療保険は病気やケガをした時など保険会社の決めた要件に該当すれば、契約内容に応じて給付金などが支払われます。生命保険会社はさまざまな商品を販売しており、保障内容や保険期間、保険料などが異なります。
しかし、医療技術は日進月歩です。若い時に入った保険の保障内容が今の状況に適さなくなることもあります。例えば、がんの治療はかつて入院が主流でしたが、今は通院治療が増えています。このため従来の「入院日額いくら」という保障では給付金が受けられません。
がん保険の保障内容は様変わりし、会社によって様々です。がん保険に限らず、セールスの現場では「古いタイプの保険は見直すべきだ」「現在の保険を転換して、保障を充実させよう」といった調子で「新商品」への乗り換えを勧めているようです。
保険契約の「見直し」とは
保険の見直しや乗り換えは、どう考えればよいのでしょうか。
A助さんが現在加入している保険は、それまで持っていた終身保険を「契約転換」したもので、アカウント型(自由設計型)保険と呼ばれるものでした。
契約転換とは、既存契約を解約しないまま、その契約の責任準備金(生保が保険料や運用収益などを将来の保険金支払いのため積み立てておくお金)を利用して、同じ会社の新しい保険に加入することです。
生命保険会社が1990年代以降、契約者に転換を勧めた背景には、バブル崩壊後の金利低下によって、生保の予定利率(契約者に約束した利回り=生保が負担するコスト)が実際の利回りに届かない「逆ざや」問題がありました。国内の生保は逆ざやを解消しようと、既存契約の転換を…
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