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64歳の老後不安「将来の年金額が減る?」の思い込み

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 A助さん(64)は定年後、再雇用で働いてきましたが、65歳で引退し、近く公的年金を受け取り始めるつもりです。しかし、年金の給付水準が引き下がる見通しと知り、将来の老後設計に不安を感じています。「年金の額はどれぐらい減ることになるのでしょうか」と相談に訪れました。

年金額を決める二つのルール

 公的年金は原則として65歳から受給できます。具体的には、年金を受け取る権利(受給権)が「65歳になる誕生日の前日」に発生し、その翌月から受給できます。

 ただし、受給権が発生したからといって自動的に受け取れるわけではありません。受け取るには、年金の請求手続きが必要です。

 年金額は、経済や社会の変化に応じて、決まったルールに従い、年度ごとに改定しています。ルールはやや複雑で「本来のルール」と「マクロ経済スライド」の二つがあります。

 本来のルールは、賃金(名目)や物価(消費者物価指数)の水準が変動しても、実質的な年金水準が変わらないようにするものです。

 原則として、67歳以下の人は賃金、68歳以上の人は物価の変動率に応じて改定します。賃金の変動率が物価の変動率を下回る場合は68歳以上の人も賃金に応じて改定する特例もありますが、2023年度は原則通りになりました。

 もう一つのルールであるマクロ経済スライドは、少子高齢化に合わせ、年金の給付水準を自動調整する仕組みです。

 年金の支え手である現役世代が減り、受け取る引退世代が長寿化すると、年金財政は悪化します。そこで、現役世代人口と平均余命の変動を加味した「スライド調整率」を、本来ルールで決めた改定率から差し引くものです。

 この二つのルールによって、…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。