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岸田政権「退職金税制見直しへ」老後資金にどう影響

渡辺精一・経済プレミア編集部
 
 

 政府の「新しい資本主義実現会議」は5月16日、成長分野への労働移動を円滑に進める労働市場改革の指針を公表した。リスキリング(仕事のためのスキルの学び直し)の支援などとともに、同じ会社で長く働いた人の退職金を優遇する税制の見直しを盛り込んだ。この見直しは、老後資金計画に影響するため、近い将来の退職が視野に入るシニアは気がかりだろう。その狙いと今後の方向性を考える。

労働市場「三位一体」の改革へ

 日本では賃金水準が低迷し、1人あたりの実質賃金は30年間ほぼ横ばいだ。世界ではデジタル化やグリーン化など成長への新潮流が生まれているのに、日本はうまく対応できていない――。岸田政権はこうした問題意識を示し、背景に日本型雇用システムがあるとする。

 日本型雇用システムは、終身雇用を前提としており、職種や職務を限定しない。このため仕事のスキルや評価が不透明で、転職がしにくい。そこで政府は、リスキリング支援▽職務を明確化し成果で評価する「職務給」の導入▽成長市場への労働移動の円滑化――という「三位一体」改革を進める方針だ。

 新しい資本主義実現会議は5月16日、その指針を示した。政府は6月に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映する。

 日本の賃金は先進国の同じ職務より低く、転職すると賃金が減りやすい。指針はその解消を目標に掲げ、三位一体の改革を進めるとした。

 ただし、具体策となると画期的な内容はあまり見当たらない。

 例えば、職務給の導入といっても、実行するのは企業だ。政府にできるのは先進的な導入事例の紹介などにとどまる。

 もちろん、制度改革も進めるという。だが、リスキリングの支援主体を企…

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経済プレミア編集部

1963年生まれ。一橋大学社会学部卒、86年毎日新聞社入社。大阪社会部・経済部、エコノミスト編集次長、川崎支局長などを経て、2014年から生活報道部で生活経済専門記者。18年4月から現職。ファイナンシャルプランナー資格(CFP認定者、1級FP技能士)も保有。