新しい少額投資非課税制度(NISA)が2024年にスタートすることになり、投資信託をコツコツ買い付ける「積み立て投資」への関心が高い。そこで、投信の運用コストとみなされる「信託報酬」がにわかに注目を集めている。「業界最低コスト」で知られる人気投信の信託報酬の料率を大幅に下回る投信が登場したからだ。
投資ブロガー推し「オルカン」人気の理由
家計の資産形成は「長期・積み立て・分散」投資の効果が高い。投資期間は長いほど収益変動幅のブレが小さく、「利子が利子を生む」複利効果も期待できる。定時定額の積み立て投資や、投資対象を組み合わせる分散投資は、価格変動リスクを抑えることができる。
24年に始まる新NISAは、非課税期間を恒久・無期限化し、年間投資枠360万円、生涯投資枠1800万円と大幅に増やす。長期・積み立て・分散投資の環境は整ってきた。
長期・積み立て・分散投資の合理的な手法には「インデックス投資」が知られる。日本株の東証株価指数(TOPIX)や米国株のS&P500指数など株価指数(インデックス)への連動を目指すインデックス投信を定時定額で買い付ける手法だ。
最近、特に人気の高いインデックス投信のひとつに、三菱UFJ国際投信の「eMAXIS Slim(イーマクシス・スリム) 全世界株式(オール・カントリー)」がある。個人投資家の間では「オルカン」の愛称で呼ばれる。
人気の理由は主に二つある。ひとつは分散効果だ。オルカンは、全世界の市場を対象とする株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」への連動を目指す。つまり、1本で全世界株式にバランス良く投資できる。
もうひとつは、低コストだ。三菱UFJ国際投信は、オルカンを含む「イーマクシス・スリム」シリーズについて「業界最低水準の運用コスト」を目指す方針を掲げている。
投資家は、投信の管理・運用費用として保有残高の一定割合を信託報酬として支払う。イーマクシス・スリムは、他社のライバル投信が信託報酬を引き下げた場合は対抗して引き下げてきた。3月には、オルカンの信託報酬を現在の「年0.1144%以内」から、5月11日に「年0.1133%以内」に引き下げると発表した。
オルカンの純資産残高は22年4月に5000億円、23年4月に1兆円を突破するなど、急速に資金が流入している。個人投資家ブロガーの人気投票「ファンド・オブ・ザ・イヤー」では19年から4年連続でベスト投信に選ばれ、いわば「王者」の座にある。
「オルカンはどう出る?」3日後の回答
ところが、この王者オルカンに真っ向勝負を挑む投信が現れた。日興アセットマネジメント(AM)が4月26日に設定した「Tracers(トレーサーズ) MSCIオール・カントリー・インデックス(全世界株式)」だ。MSCI・ACWIに連…
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