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70歳で「親の相続やり直し」兄妹平等はトラブルの種

広田龍介・税理士
 
 

 東京在住のKさん(70)は3人兄妹の次男だ。Kさん、兄(73)、妹(67)の3人とも親から相続した土地を自宅敷地にして暮らしている。ただし、親が亡くなった際「相続は平等に」と考えたため、それぞれの敷地はすべて「3人が3分の1ずつ」の持ち分がある共有状態となっている。

交換の特例の条件とは

 Kさんは、そろそろ自分の相続対策を進めたいと考えている。だが、3人の自宅敷地が共有状態のままでは、その権利を引き継ぐ子どもたちに面倒をかけてしまうことになる。そこで、兄妹に共有状態の解消を提案した。

 3人が親から相続し、共有している土地は計1005平方メートルある。

 兄の自宅敷地は、もともと両親が暮らしていた実家があった場所で、面積も最も広く330平方メートルある。Kさんの自宅敷地は210平方メートル、妹は165平方メートルだ。それぞれ自宅の建物は、相続後に建て替えたりしているため、本人名義になっている。

 このほか、300平方メートルの駐車場もあり、駐車場収入は3人で分け合って申告している。

 Kさんの提案には兄と妹も賛成してくれた。持ち分を調整するには、共有者間の売買、贈与、交換などの方法があるが、コストを考えると「交換がいいだろう」ということになった。

 交換とは、土地や建物などの固定資産を、同じ種類の固定資産と交換した場合に「譲渡がなかった」とみなす特例制度だ。

 土地や建物などを交換する場合は、金銭のやり取りがなくても、税制上は「固定資産の売却と購入が行われた」とみなして所得税を課すが、交換特例の要件を満たせば、所得税を課さない。ただし確定申告は必要になる。

 適用を受ける要件はいくつかあ…

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税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。