東京都23区内の住宅地に1400平方メートルの土地を所有する大地主のAさん(86)が亡くなった。妻は5年前に先立ち、相続人は長男(55)と次男(51)の2人だ。Aさんは長年、広い土地の評価額をいかに下げるかに苦心していたが、ようやくそのメドを立て、相続対策に区切りをつけたところだった。
相続税の納税資金にはメド
一般的な建売住宅なら14戸分にあたるAさん所有の土地には、5階建て賃貸マンションが建つ。もともとAさんの自宅と木造アパートがあったが、老朽化が進み、1990年代初めに、敷地を効率よく活用しようと建て替えたものだ。
当時はバブル崩壊後で、建築費は今ほど高くなく、家賃相場も安定しており、金融機関からの融資もスムーズだった。
マンションは、Aさん個人名義で建てたが、10年前に法人名義に切り替えた。
法人化の狙いは二つあった。
まず、所得税対策だ。建築から15年後、借入金の元本返済額が利息返済額を上回るようになった。不動産投資の支出のうち、利息部分は経費として所得から差し引くことができて節税になるが、元本部分は経費にならない。所得税の負担が大きくなったため、その対策という意味があった。
ただし、それよりも大きかったのは、将来かかる相続税の納税資金準備という側面だった。所得税の軽減分を納税資金の確保に役立てることができるからだ。また、将来、法人が建物を担保に銀行融資を受けて土地の一部を買い取れば、資金が捻出できるという道も開けた。
「面積が広大な宅地」の評価ルール
法人化によって納税資金にはメドがついたため、相続対策の焦点は、広い土地の評価額をいかに引き下げるかに移ったが、これは難問として…
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