高齢化時代の相続税対策 フォロー

中小企業2代目社長「両親の土地と株式」の相続対策は

広田龍介・税理士
 
 

 Kさん(58)は、両親から引き継いだ中小企業の2代目社長だ。両親は50年前、個人で子供服の製造販売業に乗り出し、会社を設立して事業を拡大させた。だが、バブル崩壊後の景気低迷と少子化のあおりから、経営に行き詰まり、20年前に会社を不動産賃貸業へと衣替えした。

賃貸マンション業に事業転換

 長男であるKさんは小さいころから両親とともに会社の栄枯盛衰を見てきた。子供服の製造販売が好調のころは従業員30人を超え、工場や事務所はにぎやかなものだったが、今では会社を担うのは、Kさん夫婦と創業者の父(85)、母(82)の家族4人だけだ。

 バブル崩壊後、会社は経営に行き詰まり、リストラを余儀なくされた。東京都内に複数あった販売店舗はすべて売却し、従業員の退職金の支払いに充てた。

 父が個人所有する土地500平方メートルにあった会社の工場・事務所は取り壊し、20年前に会社名義の13階建て賃貸マンションを建設した。今ではその賃貸収入が会社を支えている。

 マンション住戸のうち2戸は「社宅」とし、Kさん夫婦、両親がそれぞれ暮らしている。両親はまだ元気だが、最近は「若いころのようには自由が利かなくなった」とぼやきが多くなった。認知症の心配も今のところないようだが、この先はわからない。

 Kさんは、両親の相続があれば、相続税がどのくらいかかるのか、何か節税対策で手を打っておくべきなのかが、気になっている。

老後資金と大規模修繕が不安材料

 万一、父が亡くなった場合、相続人は、母、Kさん、妹の3人だ。父の主な相続財産は、賃貸マンションが建つ500平方メートルの土地▽会社の株式▽現預金1億円――の三つだ。

 会社設立時に、父は会社との間で土地賃貸借契約を結んでいたが、将来、土…

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税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。