5月のある日、M子さんの元に、金融機関の代理人だという弁護士事務所から、債務弁済に関する文書が郵送されてきた。心当たりもなく、封を開けると、M子さんはそこに書かれた内容に驚いた。
すっぽり抜け落ちた「妻の存在」
M子さんには、2月に亡くなった伯父がいた。文書には、その伯父が金融機関から残債1億円強の借り入れをしており「相続人であるM子さんと妹の2人に、その弁済を求めたい」とあった。伯父所有の担保物件を任意売却すれば返済は可能だという説明があり、その不動産登記簿謄本も添付されていた。
この伯父は、30年前に亡くなった母の兄で、ほとんど付き合いはなかった。伯父には子がなかったが、長年一緒に暮らす妻C子さんがいた。実際、伯父が2月に亡くなったこともC子さんからの手紙で知ったのだ。手紙には「葬儀はすでに近親者で済ませた」とあった。
だが、弁護士事務所からの文書には、伯父の相続人は、母の代襲相続人であるM子さん姉妹だけのように記述されている。配偶者のC子さんの存在がすっぽり抜け落ちているというのは一体どういうことなのか。高齢の父にたずねてみたが「親戚づきあいもほとんどなかったので、よくわからない」という返事だった。
内縁の妻に全財産残すには
M子さんは、C子さんと伯父は法律上の婚姻関係ではなかったのかもしれないと思い当たった。そこで、弁護士事務所に問い合わせると、案の定、C子さんは内縁の妻だという。伯父の出生から死亡までの戸籍謄本を集めたが、確かに、相続人はM子さん姉妹だけだった。
伯父の財産がどれくらいあるかは分からない。伯父は事業を行っていたが、一時期は経営が厳しく、税金の滞納…
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