「もはや昭和ではない」制度改革の行方(3)
公的年金制度では、「サラリーマンの妻」は一定年収以下なら保険料を支払わなくても基礎年金を受給できる。保険料負担のある自営業者らに対して不公平であるうえ、女性の就業を抑制する問題がある。問題点は30年前から議論されてきたが、いまだに枠組みは変わらない。なぜ、見直しが進まないのか。
なに一つメリットなしの「130万円の壁」
税や社会保障には優遇措置を受けることができる年収水準がある。サラリーマンの夫を持ちパートで働く女性の多くは働く時間を調整し、その水準を超えないようにする「就業調整」をしている。
社会保険では「130万円の壁」がある。
健康保険や公的年金などの社会保険は、生計を担う人(扶養者)と生計を一にする家族の年収が原則130万円未満で「扶養者の年収の2分の1未満」なら扶養にできる。
サラリーマンの健康保険(組合健保、協会けんぽなど)は扶養になれば保険料負担なしで加入できる。
年金では、サラリーマンら厚生年金加入者に扶養される配偶者は国民年金の「第3号被保険者」として、保険料負担なしで基礎年金が受給できる。第3号被保険者の98.5%は女性で、事実上「サラリーマンの妻」を優遇する制度だ。
パートで働く妻は年収130万円を超えると夫の扶養を外れ、週労働時間が30時間未満のままであれば、国民年金と国民健康保険(国保)に加入して、自分で保険料を払わなければならない。厚生労働省によると、年収130万円の場合、国民年金と国保の保険料は計年約27万円。年金や健保の給付は増えないのに、そのぶん手取りが減る。
また、第3号被保険者なら将来離婚しても、夫の厚生年金(標準報酬)の半分を得ることができる。だが自分で国民年金に加入している期間は除外される。
つまり何一つメリットがない。これが就業調整をもたらす「1…
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