高齢化時代の相続税対策 フォロー

先祖の土地を守りたい 84歳「人生2度目」の相続対策

広田龍介・税理士
 
 

 地主の家系で、不動産業を営むAさん(84)は相続対策を検討している。40年近く前、今は亡き父の相続対策をAさんが立案し、結果的に成功させた経験がある。自分の相続でも子どもたちへの負担をできるだけ軽くさせたいと考えている。

「相続は土地を売るチャンス」

 Aさんの父は農業を営んでいたが、農業収入だけでは土地の維持管理費用を捻出できず、所有地にアパートや貸家を建て、次第に不動産賃貸業に転換していった。

 高度成長期、地価は右肩上がりだったが、近隣には親戚一族がいる手前、理由もなく土地を手放すことはできなかった。地価が上がっていても、土地を売らなければ、その恩恵を受けることはできず、むしろ固定資産税が上がって負担だけがのしかかる。地主とはいえ、生活は楽ではなく、父は爪に火をともすように土地を守っていた。

 そうしたなか「相続は土地を売るチャンス」というのが常識だった。当時、土地の相続評価は公示価格の5割程度。地価が上昇しているため、実勢価格からみれば3割程度と低い。相続が発生すれば、納税の原資を口実に土地を一部売れば、十分な現金を手にすることができるというわけだ。

 実際、同じような事情を抱える周囲の地主たちは、相続のタイミングで土地を売却していた。

建物を法人所有に切り替え

 しかし、Aさんは先祖からの土地を手放さず、父の相続を乗り越えたいと考えた。そこで、父が70歳になった1980年代前半、Aさんが父の相続対策のプランを立てた。

 父はまだまだ元気で、少なくとも80歳になっても元気でいてくれると思っていたが、早くから手を打っておいたほうがいいと考えたのだ。

 まず、父所有の敷地に建ててい…

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税理士

1952年、福島県いわき市生まれ。85年税理士登録。東京・赤坂で広田龍介税理士事務所を開設。法人・個人の確定申告、相続税申告、不動産の有効活用などを中心に幅広くコンサルティング活動を続けている。相続税に関する講演やセミナーも開催している。