ソーシャルゲームへの「コンプガチャ」規制関連のメモ
日本では連休中ということもあり、ちょっとバタバタしておりますけれども、結局読売新聞が出元だったんですね。てっきり別筋のお話かと誤解しておりました。
コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120504-OYT1T00821.htm
私が承知していたお話と、流布されている内容が若干違っていたので、確認を取りつつ現時点での情報を取りまとめてみたいと思います。
● 対象
いわゆる「コンプリートガチャ」と言われるもの。根拠は景品表示法(絵合わせ)で、所轄は消費者庁。
あくまで、業界団体に対する通知をこれから行う方針であるというお話であり、最終判断は連休明け以降、実際の手続きは月末ぐらいからが最速ではないかという見通し。
ただし、現段階で違法性がほぼ確認できる状態であることから、事前に該当するコンテンツの撤去、改修などの猶予期間を用意しているという性質のものであり、通知後、改修が行われていないサービスについては即措置命令となる可能性は高い。
参考) 景品表示法(優良誤認)での事例
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/120228premiums_1.pdf
● アウトの範囲
どうもアウトリストはすでに作成済みであるらしい(未確認)。
措置命令の対象となり得るサービスについては、コンプリートガチャ一式として、例えば「アイドルマスター シンデレラガールズ」および「探検ドリランド」が取り沙汰されているが、一般的なコンプリートガチャ以外にも、法令の範囲で懸賞と類されるサービスは広くアウトとなり得る。
レベルアップガチャなど、「ひいたレアカードに準じて確定リーチ(ただしレベルダウンもあるよ)」というのも、懸賞の限度額(投下する金額の5倍ないし7倍を相当とする程度)を超えますので、懸賞であり、アウトは確実と思われます。というか、現在Appleとも調整中です。
通常の「ガチャ」のみ、すなわち資金を投じて単純に絵柄となるデジタルデータが供出される仕組みそのものは対象外とのことです。
基本的には、ゲームセンターのプライズで許容されている範囲、最大でも投下金額の5倍から7倍までの価値相当のもの以下でない限り、RMTが利用されていようが希少性があろうがアウトってことです。
● 懸賞か?
懸賞です。いままで一年以上スルーされてきたこと自体が異常と思えるぐらい、完璧な懸賞です。
● 業界の自主規制について
もう遅いと思いますけど、あればあったでいいんじゃないでしょうか。
普通は、グルーポンなどクーポンサイトの違法性が問題になった瞬間に業界団体が立ち上がって所轄省庁と交渉をし、猶予措置や期間を融通しながら着地をするものであって、今回のように具体被害だ措置命令だ救済だとなってから自主規制や自粛を言い出してもまったく遅いと思います。
● 広告について
もっぱら汐留方面ですが、12営におかれましては然るべきタイミングでフェードアウトするしかないんじゃないでしょうか。阿吽の呼吸でお願いしますってことらしいです。
グループスも早く止めてね。
● 6月に降雨はあるかについて
猶予を考えているという話は聴かないので、状況はあまり変わっていないのかなと思います。
黒い業者が幾つか見えていることから、摘発に踏み切る可能性は否定できません。
● 違法状態からの救済について
これは消費者庁や警察庁関係なく、そもそも懸賞、絵合わせで違法だったコンプリートガチャは、利用者から、使用金額の変換訴訟を起こされる可能性があります。
戸田泉せんせとか腕まくりしてたら笑いますが。
ただ、ざざっと試算しますと、総額で1,200億円以上、返還対象となるんじゃないかと思うので、絶対に取り返したいと思う方は携帯電話の支払い明細を握り締めて、事実上の違法認定となる改善通知が業界団体に送達された報道があり次第、その方面に詳しい弁護士方面に雪崩れ込んで相談していただければと思います。
● どうせだし、イベントで進行状況を解説するよ
7日に帰国してそのままイベントに参加する予定なんですが、主賓の漆原直行さんのご厚意で、後半でちらっと10分ぐらいこの辺の進捗を解説したいと思います。語れない部分はメルマガでも補足するかもしれない。
【告知】5月7日、阿佐ヶ谷ロフトAで「ビジネス書ぶった斬りナイト2」を開催します!
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2012/04/57a-44dd.html
ビジネス書ぶった斬りナイト2
~パーソナルブランディング乙!~
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/schedule/per.cgi?form=2&year=2012&mon=5&day=7
● 他の業界への波及もあるのでは
オンラインゲーム業界は問答無用で巻き込まれます。サービス停止に追い込まれるところも近い将来出るんじゃないかと思います。私もわーわー通報しますし。
それ以外の業界は、プレイヤー同士でレアカード等の交換が行えたり、RMTのような具体的な換金手段が公認、黙認、未承認限らず用意されていれば危険だというだけで、過剰に制限されるというものではないように感じております。
ここから先は、チクリの世界ですね。然るべき手段で、適切な人を立てて「あそこのビジネスは違法ではないのか」としっかり申し入れをすれば、消費者庁も法令の範囲内で対応してくれる… はずです。
あとは、TCGとかかなあ。いままでは、市場が小さいし被害もなかったそうなので、グレーのまま無視されていたんですけどね。でもまあ、今回の件ではやらんでしょうね。誰か訴えれば話は別かもしれないけど。ただ、各パックのレア度がきちんと固定されていれば、充分逃げられるとは思います。
● それ以外のソーシャルゲームでの影響について
基本は、違法RMTによる換金性、未成年者略取の可能性のあるコミュニティサービスと、運営側の恣意的な確立の変更等による出玉管理です。どっかに引っかかったら、何がしか言われる可能性はあると思います。
● 儲け過ぎ批判とか
儲け過ぎというよりは、デジタルデータにカネを突っ込ませるために作られた、特化した手法だということで、本来の景品表示法の趣旨そのままに過剰な懸賞だということで、まずは一番黒いと思われる景品表示法で取り組みをして5月は経過措置とするという意味だろうと。
本当に怖いのは風適法でゲームセンターの無店舗営業扱いとなることであり、でもまあ、いままでさんざん言ってきて業界が対応をしてこなかったのだから、もう業界団体作って自粛っていうんじゃ収まらないとは思います。
まあ、みんな分かってたことでしょう。
● 業界団体以外のところでの話とか
変な中華ゲーとかもそうですし、いわゆる業界団体に入ってないところがプラットフォーム業者やiTunesとかgoogle Playでコンテンツばら撒いてる状態なんで、消費者庁の仕事してますよアピールのためにも人身御供は幾つか見繕うと思うので、上場を目指してる君もプラットフォーム業者からお金入れてもらってるアイツも問題になりそうなフィーチャーはレッツ手仕舞いの方向でお願いします。
● その他反響とか
【MTG】やっと携帯ゲーのガチャ課金にメス入りそうだけど、パックを嬉々として買う身にとって「違いを説明しろ」と言われたらできない気がする
http://alfalfalfa.com/archives/5463935.html
パックに含まれているレアの確率が決まっていて、貴重なカードの有価交換がおおっぴらに行われていなければ大丈夫… のはず。稀に、MTGなどTCGで故買商の資格もないのに仲介しているアホがいるけど、それはそのアホが犯罪を犯しているだけでござる。
ゲーム関係者、ガチャ規制にブチ切れ 「モンハンも規制しうる考え方、ゲームが破壊される」
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1710896.html
コメント欄でもさんざん指摘されているようですが、問題となるのは換金性なので、モンハンが将来「作成した高級アイテムを友達に売ろう!」とかいうフィーチャーでも入らない限り規制の対象にはならんと思います。
GREE・モバゲーのゲーム別ヤフオク出品数ランキング
http://matome.naver.jp/odai/2133621761598752401
「RMT対策します!」といって、それなりに市場は減ったけどいまなお1億円デイリーの取引ボリュームがあるヤフオク界隈。プラットフォーム業者は「ヤフーに申し入れたんですけど、ヤフーの側が別に違法じゃないってことで、中止依頼に応じてくれないんですよ」と主張していましたが、当のヤフー筋からは「確かに中止要請はあったけど、通り一遍の話が一度二度あっただけです」とのお話。
アイテムごとにIDを振って管理という対策でRMTが止まらないのであれば、プラットフォーム業者の責任として、アイテムトレード機能自体の無期限凍結をお願いしたい所存でござる。
● よく考えたら、優良メルマガのほうに書けば良かったんじゃないのか
まあいいか。
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【カード合わせ】
二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供はしてはならない。(S52.3.1公取告示3号)
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【懸賞】
「懸賞」とは、次に掲げる方法によつて景品類の提供の相手方又は提供する景品類の価額を定めることをいう。
一 くじその他偶然性を利用して定める方法
二 特定の行為の優劣又は正誤によつて定める方法(S52.4.1事務局長3号)
なお、来店又は申込みの先着順によって定めることは、「懸賞」に該当しない(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」その他の告示の規制を受けることがある。)。(S52.4.1事務局長4号)
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コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ
携帯電話で遊べる「グリー」や「モバゲー」などのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる「コンプリート(コンプ)ガチャ」と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する。
同庁は業界団体を通じ、ゲーム会社にこの手法を中止するよう要請し、会社側が応じない場合は、景表法の措置命令を出す方針。
コンプガチャは市場規模2500億円を超えるソーシャルゲームで収益の柱の一つとなっているが、「射幸心をあおる」「子どもが夢中になり高額請求された」などの批判を受けていた。
ガチャは、カプセル入りのおもちゃが出てくる自動販売機をイメージした商法で、1回数百円程度を払うとゲーム内で使うアイテムなどが当たる仕組み。事前にどんなアイテムが購入できるか分からず、くじのように偶然性に左右される。さらに、ガチャで購入できるアイテムのうち一定の組み合わせをそろえると、より希少なアイテム(レアアイテム)を獲得できるのが「コンプガチャ」で、昨年頃からソーシャルゲームで導入され始めた。
コンプガチャが使われる主な人気ゲームには、モバゲーで遊べる「アイドルマスターシンデレラガールズ」やグリーの「探検ドリランド」などがある。
(2012年5月5日19時01分 読売新聞)