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2012.05.06

『進撃の巨人』の作者の方からまさかのマジレスを頂戴したので

 たぶん、周辺の大人からは「目を合わせるんじゃない」と言われておられるものと思料いたしますが、私としては純粋に反応を頂戴できて嬉しかったので、これを最後として、御礼を兼ねてエントリーを書きたいと思います。

 最初に申し上げて起きますと、この作品は面白いです!

 前のエントリー冒頭にも書きましたが、特殊な世界観において成立しているストーリーであり、設定に違和感を感じては始まらない、というのはよく理解しております。単に補給・兵站ヲタとして、歴史的な軍事、兵器技術の知識を援用すると、オーバーテクノロジーを支える個別の技術体系に疑問があり、また補給、索敵の視点がやはり気になりました。

 『進撃の巨人』はたいへん面白く読ませていただいておりまして、作品の勢い、良さ、キャラクターなどなど、物凄くクオリティが高いので、皆さんから高い評価をされているものなのだと思っております。新人として、とかではなく、素晴らしい漫画家さんが出てきたのだなあと純粋に思ったうえでのお話ですので、あまり気になさり過ぎないようお願いしたいと思っております。

今から最高にみっともないことをする
http://blog.livedoor.jp/isayamahazime/archives/7034673.html
http://megalodon.jp/2012-0503-1446-26/blog.livedoor.jp/isayamahazime/archives/7034673.html

 なお、本稿への再度のご反論等は不要です。むしろ、私が余計なことを書いてしまって、創作意欲に傷がついてしまいかねないことについては、お詫びを申し上げるほかありません。作品が完結してから記述するべきでした。申し訳ございませんでした。

 以下、一部反論は残しておきますが、作品そのものにケチをつけるものではありませんし、専門家からするともっと詳しく説明したれよと思われる部分も多々あるかなあと感じた部分であります。ただ、人が作戦によって大勢死ぬという描写は、必ず私たちからしますと作戦評価の対象となり、あれはクソな作戦で隊員が犬死したとか、許されるリソースでまあ許される程度かなとか評論をしておりますことはご理解ください。

 繰り返しですが、『進撃の巨人』はとても面白いです。

● はじめに

 私は軍事オタクの中でも少数民族に位置する補給・兵站ヲタです。兵器や戦記そのものよりも、損耗や充足率、装備率、練度、補給効率、備蓄および補修といったところに強い関心を持っておりまして、補充の利かない前線の維持には反対だけど、それ以外のドクトリンについてはどれであれ興味と関心を持っております。専門は統計です。

 作者の方からの反論で、これは軍事活動ではなく対人作戦ではない、というお話がありましたが、作品の描写を正とするならば、確実にこれは組織防衛であり、軍事の範疇と思っています。なぜなら、兵員だけでなく民間にも損害があり、索敵の失敗により奇襲を受け、自国側の領土に損失を蒙っているからです。軍隊が常備である理由は、奇襲を避けることであり、今回の一連の作品について、作者の方は「相手が作戦行動をとる軍人とかではない」「どちらかというと獣害に近い話」とありますが、敵の性質は関係なく、

 持続不可能な損害を出しかねない作戦はいけない

 という話です。巨人だろうが不審船だろうが未確認飛翔隊だろうが津波だろうが伝染病だろうがサイバー攻撃だろうが、能動対処をする場合の作戦行動で、損害をどう減じるかというのは極めて重要な視点だと思います。

 なお、5月月末に、防衛省、警察OBとジャーナリストの方で、BLOGOSにて危機管理の放送イベントをやる予定です。
 詳細は追ってになりますので、蛇足ですが、宣伝まで。

http://blogos.com/blogger/kirik/article/

● ご指摘の前提について

 一連の前提違いのご指摘を受けましたが、たぶん、前提は間違って認識していません。

> ①壁は現在住む人類が造ったのではなく、その起源も製法も謎とされてる

 城砦建築のイロハですが、城壁を高く積むことそのものにそれほどの高度技術は必要としません。
 アンリ・スティルランの世界の城砦という本がありますが、少なくとも作品中描写されている城壁を建設することそのものには製法上の疑問は存在しないと思われます。

http://books.google.co.jp/books?id=tjFePgAACAAJ&dq=inauthor:%22%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3%22&hl=ja&sa=X&ei=IxyiT82dL4eimQXIg9GICA&ved=0CDMQ6AEwAA

 根拠はいくつかあるのですが、城壁の上に鉄道が敷設され、重量のある野戦砲が固定されています。ご存知のとおり、鉄道を敷設するためには線路を固定するための枕木など必要になるんですけど、要は「城壁に固定するために必要な穴を開ける技術はある」ことになります。

 建設には相応の年月がかかるのと、補修が必要になりますので、作品の所与設定として現在住む人類が建設したものでなかったのは理解できます。ただし、それに類する城壁の建設は可能であり、現在の城壁外に出丸や機動防衛用の兵器を開発できない理由にはなりません。駐屯兵団にも補修の任務がありましたし。

 唯一の可能性は、あの巨大な壁が「一体成型であるならば」とか「自己修復可能な素材であるならば」といった、別の注釈がある場合です。これであれば、完全にオーパーツです。

②飛行技術は未発達

 以下③にも関係しますが、立体機動を行うための推進装置は明らかに化学ロケットです。本作品では揮発性と思われるガスを利用しているが、ガスを高圧で格納する技術はあるものの、液化ガスによる軽量化はできていない段階と考えると、1935年から37年ぐらいの技術体系ではないかと予測されます。
 なお、立体機動に必要な科学ロケットの質量比は、最終速度と推進力(この場合、圧縮された気体ガス)排気速度の比の指数関数なので、相応の最終速度を出すために必要な機動装置の重量は中和剤込みで250kgぐらいになってしまうのではないかと思ったりもしましたが、最終速度が分からないので割愛。

 化学ロケットの技術要素についていえば、ワイヤーで補助的な推力を獲得している装備込み80kg相当の物体の重心を正確に確保し、瞬発的な動力を実現するには、噴出孔で爆発的な高い圧力を実現させる必要があります。そうでなければ、ガスを利用したロケットはゆるゆるとした加速度しか得られず俊敏さが求められる戦闘では用を成さないばかりか、ボンベ自体の重量を考えると足かせにしかならないだろうと思われるからです。
(立体機動の使用に耐えるガス濃度や設備重量についてはロケット工学に詳しい人が補助してくれるでしょう、たぶん。しかし、軽量化のために液化しろといわれて終わる気はします。)

 練習描写でワイヤーで固定した状態で姿勢を保つ内容がありましたが、尾翼なしにロケット推力を目的の方向に向ける目的であり、また同時に高圧力で噴出するガスに足などが当たり千切れて吹き飛ばされることを避けるための練習ではないかと思います。それだけの推力を確保できるのであれば、揚力利用の飛行技術がなくとも、持続的な滑空は問題なく可能です。
(逆に言えば、それだけの高圧噴射ができるのであれば、滑空砲で40kg弾にて15m級巨人の上半身すべてを吹き飛ばす威力にすることは可能かなと思います。)

 消防庁のレスキュー隊でも建物のはるか上部にワイヤーを利用して人力で昇ることは不可能ですし、聴いたことがないので、おそらく相応の化学ロケット技術はあって、しかもコンパクト化、高出力化に成功し、しかも高圧に耐える噴出孔の開発もなされていることを考えると、立体機動を実現している技術だけで充分に制御可能な飛行は簡単に実現できるものと考えます。

> ③滑空砲の有効射程距離とか照準精度の詳細説明

 ライフリング技術がないよというお話だろうと思いますが、ガスを高速に噴出できる技術がありながら、射出砲弾の速度が遅いとか考えられません。
 仮に弾速が遅かったとしても照準精度が悪いというのは単純な練習不足と思われます。

> ④巨人は目視以外にも長距離から人間を探知することができる

 索敵されたかよりも、索敵したかが重要なので、あまり本件は関係ありません。単純に、先方には遭遇戦がないというだけで、人間側の索敵・偵察の重要性が減るわけではありません。

 急襲される可能性については、常識的に考えれば索敵用の出丸を構築することが極めて対策上重要と思います。城砦の外に出て、出丸を構築する時間が稼げないというのはご回答で理解できました。


● 偵察のお話

[引用]「調査兵団」による偵察作戦が酷すぎる件

まずブログのタイトルからですが「偵察作戦」って何の話ですか?
そんな事しましたか?

 え? 偵察しないで機動攻勢かけたんですか?

 「調査兵団」の100人は、偵察や索敵なしに「出たとこ勝負」で抗戦行動に出た、ということでしょうか。
 偵察ではない、とお答えなので、そうなると戦いに逝った、あるいは、特定のポイントまで進出を試みた、という話になってしまうのですが…。

 それは死んでしまうと思います。

 正直、破損した壁の補修以前に、壁まで安全にたどり着く経路が存在していない状態です。
 文中、相手は人ではない、と書いておられましたが、災害出動であっても人命に脅威がある場合は、必ず地勢や状況に関する調査をします。ましてや、単純な救助ではなく出て行く側に損害の可能性がある脅威であるならば、なおさら経路調査をしなければなりません。視界のクリアランスが行えない組織的な作戦活動というのは

 おそらく一番例示として相応しいのはサイバー攻撃への対処だろうと思いますが、死ぬほど長くなるので割愛。

● 調査兵団の目的の話
[引用]斥候出すのに100人で逝くとか、お前らはイナバの物置か

作中では偵察も斥候も描いてません、相手が作戦行動をとる軍人とかではないので…
そもそも、そのブログで書かれてることって、相手が人である事が前提の軍事的な話ですよね?
だから偵察とか、相手が攻めてくるとかの話をされてるんでしょうけど…
「敵の需要拠点」?そ、そんなのあるんだ…

専門的な言葉が並んでいるので一件説得力があるように見えましたが…
どちらかというと獣害に近い話なので、生き物の生態調査とかが需要な話になると思うんです
勝手に戦争を照らし合わせて勝手に呆れられても…困る…というか

誤解の大半は想像された調査兵団の目的を感違いされてる所にあります
そして…それは結局、僕の力量不足の問題なんですよね…

 個人的には、調査兵団の今後の主要な作戦目的は、公には地下室への捜索、しかし実際は人間側にいる内通者の炙り出しかなあと思ったわけですけれども、私どもが気にしたのは作戦の目的だけではなくて、出た損害の大きさにフォーカスしております。
(作戦の目的が現有戦力に比して合理的か? と言う部分もありますけれども)

 生態調査が重要だとしてもですね、偵察、索敵はとても大事なことなのですよ、損害を出さないようにするためには。戦争がどうという話ではなく、災害救助でも状況確認はすべてに優先するのです。

● 地図のお話
[引用]周辺地域の地図ぐらい作れ

何故地図が無いと思ったのかわからない

 地図があるのならば、なおさらですが… 損害を出さずに目的地へたどり着く作戦は考えないのでしょうか。
 100人からの部隊が散開して、索敵をしながら進んでいっておりますが、相手が機動していますので作戦遂行後も帰路に巨人がいたらそもそも帰還できません。帰還しなくても良い、という作戦なのでしょうか。
 登場人物がきちんと認識していない可能性はありますけど、巨人が遠距離で人間の存在をサーチできるのであれば、作戦にかかる時間がかかればかかるほど、周辺にいた巨人が呼び寄せられて、どんどん囲まれていくことになります。

 安全な走破経路を確認せず出撃というのは、ほぼ完全な特攻です。

 獣害対策という観点で読み直したとしても、巨人の出現パターン(主に方向)の確認が行われていれば、常に巨人がすべての城壁にかじりついているという情勢でない限り、出丸の建設や堀の構築が不可能な状況は考えづらいなあと思うところであります。

● 外堀が掘れない話

[引用]壁の外に補助防衛用の施設がまったく建設されていないということはあり得ない
堀を掘ってください… 頼むから

壁外には巨人がいるので建物を建てることも掘りを掘ることもあり得ないって設定です
どうしても掘れません!ごめんなさい!

[引用]城壁を丸く築くな 出丸や塔はどうした

壁の改造・増築を阻止する組織がいます、壁の地下も掘れない、
この辺は人災として描きたい所ですが
作中の後(五巻)になって現れるのが悔やまれる…本当に最初に描くべきだった…

 内堀も地下道も掘れないという形でしょうか。塔や落とし穴も無理ということですか。でも、城壁の上に固定砲がありましたが、あれは大丈夫なのでしょうか。警報用の鐘櫓は建設されていましたが…。

 そのような設定があるのは作中読んでおりましたが、軍部は完全にそれに制約されていたのですね。これは憲兵団や政治中枢側に強く「巨人との抗争に苦戦している状態の継続」を狙う何らかの利害があると考えますね、幕僚は…。ありがとうございました。

● オーバーテクノロジーの話
 
[引用]少なくとも試験飛行程度は100年のうちに終えているはず

この辺には特に言いたいことがある、よく「100年ありゃ何だってできるだろ」って
意見を聞くけど、まったくそうは思わない、
そしたら何故、日本は黒船が来るまで火縄銃なんか持ってたのかと、

これは↑の②~③に通じる話だけど、例えば銃火器の威力を飛躍的に発達させた
技術の一つであるライフリング、あれは時間が経てば必ず誰でも思いつく技術だろうか?
100年早くても有り得たし100年遅くして現れていても不思議じゃないと思う
ましてや、単一文化で閉鎖され戦争もしなかった世界では

 これは「この作品ではそういう設定なのだ」と読者的には甘受すべき内容なのですが、立体機動は非常に優れたアイデアで、ただしそれの実現のためには上記のように実に高い技術力(とりわけ、高圧ガスの圧縮と、噴出孔の超高圧に耐える金属の鋳造技術)が必要で、ロケット工学的には極めて高度な技術、それも各方面の優れた技術が組み合わされてないと実現できない凄い設定なのです。

 普通、この手の推進力を試すとき、人命がかかる防衛技術よりも、先に荷物とか砲弾とかで試し、その後は小動物だの家畜だので試すんですけれども、あの推力があればライフリングがなくとも(むしろライフリングのように回転にエネルギーを使わないほうが)強烈な兵器が開発できるだろうと思います。
 同様に、大型化させれば波動砲ぐらいは作れます。

 で、技術停滞の可能性については作者さんの仰るとおりですが、ただ人が死に得る状態であり、立体機動のように、中世の乗馬よりも習熟に時間のかかりそうな技術を兵士に体得させるよりは、よりアウトレンジで制圧できる簡便で合理的な兵器を開発するんじゃないのかなというのが疑問点です。装備込み80kgの人間を瞬間で時速40kmで稼動させる技術があるならば、8kgの榴弾を滑空砲で射速60km/hで発射するほうがはるかに簡単です。

 あと、ガスで高速移動できるのであれば、水平噴射で加速する技術を獲得するほうがかなり簡単です。機動防御したほうが損害が少ないのでは、というのはそういう理由です。

 ライフリングはない、空は飛べない、滑空砲の能力が上げられないという設定を受け入れたとしても、砲兵の練度は上げられるので、組織化しない巨人を制圧する軍事作戦は結構思いつくんですよね…。

● お願いだから偵察してください。

[引用]壊滅すんな、マジで。威力偵察じゃあるまいし、交戦すんな

ここのくだりはちょっと本作と描写が噛み合わなすぎて…読んでないだけとしか…
まあ…つまんなかったってだけか…

ただ、つまんなくても世に向けものを言うなら最低限は話を理解してないと指摘すら成立しません
存在しないものに腹を立てていても謝ることまできませんし…

索敵陣形(人界レーダー)は視界を広げて交戦を避けるものだと描いたはず!…なんですが
まあ、索敵陣形の設定は都合のいい平地が何キロも続くような地形じゃないと
成立しないアレなので、突っ込むべきはそこでは?

 描写はすべて理解しているつもりです。そのうえで書きますが、あの段階で巨人と交戦しない作戦を考えない軍人はおかしいと思います。索敵陣形はとても珍妙なアイデアですが… 設定をどう好意的に解釈したとしても、長距離で人間をサーチできる巨人ならなおさら、「遠くに逝くほど、時間をかけるほど、どんどん囲まれていく作戦」です。正直、知能を疑うレベルで生還が絶望的な、特攻作戦と判断せざるを得ません。

 これが、主人公をどこぞに送り込む作戦だとしても、囮というのは、釣られた敵を包囲するなどして殲滅できる戦力不均衡を作るために行うものであって、本隊も一緒になって壊滅させられる可能性があるときに取る行動ではないです。死んでしまいます。

● 鹵獲の話

[引用]なんか視界が確保できない森に入って女巨人拘束してるけど、そんな敵地で鹵獲したってしょうがないでしょう、持ち帰れないんだから

女型の巨人の中から人サイズの物を持ち帰ろうって話だったんです!
ここはさすがに読んでけなしてくださいよ!せめて!

 ちゃんと読んでいますよ。

 女型の巨人の中から人サイズだろうがなんだろうが、敵地に向かって鹵獲というのはあり得ない、と言っているんです。囮の意味がありません。通常は、拘束、鹵獲を狙うのであれば、自陣に向けて誘引してからでないと無理だと言っているんです。

 唯一、森の中であるため立体機動が可能であり、地形的な有利を前提に鹵獲を狙っているという理解は可能ですが、作中でもあります通り、対処不能なほど巨人が集まってきてしまいますので、作戦として本当に意味がありません。死にに逝ったようなものです。

 一番拝読していてびっくりしたのは、あれで主人公以下、何名かでも帰還できていることです。帰路は、往路よりもはるかに少ない戦力で、謎の索敵陣形も構築できない状態で帰ってくることになりますよね… 常識的に考えて、あれは森に入って戦力が減少した時点で帰還は絶望的だと思って読んでいました。囲まれるだろ。それでも帰ってくるあいつら凄ぇ! と。

● 作戦準備の話

[引用]地下室に秘密があるらしい、みんな急げー、って小学生のサッカーかよ。準備しろよ

この辺りは調査兵団の作戦目的とかが伝わってない、
いつ壁が壊されるかわからない状況とかは描いたと思うんだけどなー・・・ダメだったか…

 読み返せていないのでアレですが、状況不利でも作戦準備はしないといけません、という話です。実際に、壊滅しちゃって、壁がどうのこうのというリソースの問題でさえなくなっています。

● 中継点の話

[引用]大人数でいくな

目的が伝わってないのは本当に残念・・・力不足です
そもそも壁を塞ぐ事が目的だから大人数が必要で、
調査兵団の主な任務は大部隊が通れるルートの制作、
そのため、荷馬車に物資を積んで点在する廃墟の街に補給所を作っている
っていう設定です

 これは、それなりによく知っている領域なのではっきり書きますが、維持できない補給所は作戦的に価値がないです。
 もっと手前に補給所を作らない限り、意味がありません。通常、補給所は往来が可能な安全な位置に建設しなければなりません。これが、例えば巨人は人間の食べ物やガス等を利用できない、としてもです。

 なので、点在する廃墟のはるか手前に、補給所を作るための作戦が必要で、これを作戦準備としなければなりません。これを徐々に伸ばしていって、廃墟なり地下室なり、作戦上重要な拠点への進出路を確保するほかないと思います。

 蛇足ですが、補給をしに帰る部隊は、基本的に損耗をしている状態です。その補給所が接敵しかねない、というのは戦線を後退させましょうという話でありまして…。
 なので、獣害であれ災害対策であれ、安全を確保できるラインが事実上城壁しかない以上、その安全ラインを拡大できるための作戦を準備段階で練っておかないと、調査兵団は常に玉砕と背中合わせの組織になってしまいます。本当に、死にに逝くようなものです。

 壁を塞ぐ作戦をする前に、やるべき作戦がたくさんある、そういうことですね。

● 人類が勝ったら面白くないだろうという話

[引用]人類側の知恵の足りなさがむかつく

・・・たしかに、巨人は行動が予測しやすいから、考えたことはあるんですよ
落とし穴とか、壁の通路あったら並んでくれると思うから
ギロチン大量に仕掛けて機械的に伐採していくとか…

当時は…考えたけど辞めました・・・何故なら


そもそも人類勝ったらどうすんだよ…
その話面白いのかよ!?

 ですよねー。でも敗戦なり苦戦なり劣勢なりは、合理的であって欲しいのです。

 例えばベイスターズの暗黒は、プロが苦労した結果、惨敗を重ねており、これは合理的であり、面白い。
 あるいは、西武の中継ぎは、戦力を損耗させる采配が何シーズンかにわたって行われ、補充がまともにされないので、崩壊していて面白い。

 問題は、合理的な均衡であって、衝撃的なシーンが劣勢の状況で続いていたとしても「それは作戦的にどうなのか」と疑問を感じてしまうのでは「こら人類はあかんやろ」というお話になってしまう。

 それでも、『進撃の巨人』は読ませる何かがあるので面白いと思うのですけれども。

● 納得性の話

[引用]話の辻褄合わせるために漫画って作られてるわけじゃないよな?
どうやったら打ち切られない漫画を作るかだよな!?

って結論なって、当時は…そんなのは読者には関係ないんですけど…
そしたら巨人の頭を良くするか人類を馬鹿にするかってなったら
後者かな・・・っていう・・・

でも実際に事前の危機を察する事ができないまま、安全だと思い込んだ枠組みの中で
行政側が利己的になって破滅しそうていう国が身近にあると思う、
そんな完璧に物事が進まないもどかしさっていうのはリアルに感じてる部分
なので漫画でも描きたいと思っています

 動機としては良く分かります。設定が、人類サイドに不利な形で構築されているのもよく理解できるところで、安全をむさぼっている人類が平和ボケになり対策を怠った結果として、危機意識を持たせるための何らか策動があってみたり、利己的な人間の集団が結果として人間全体に対する危機を呼び起こす可能性があるというのも分かります。

 そのうえで、それらの設定をすべて理解したとしても「あの作戦はない」という話でありまして、諌山さんがお考えの問題意識や、作品の良さとはまったく別次元の、「ええい、そこまでの技術力がありながら何故アウトレンジしないのだ」とか「帰還可能性が一番低そうな作戦ばかりどうして採用するのだ」などというところで勝手に盛り上がっているのです。

● ストーリーが面白いという話

[引用]ただ、一つ言わせて欲しい!

この作品は世界から優秀な人が集まって作られたハリウッド超大作映画ではなく
どこにでもいる学のない厨二患者の「ウルトラマンがMMAする話描きてえな~」
って妄想が最初の動機で始まった話で…

こんなことを書いてみっともないことはわかっている!

・・・言うな!


わかっているんだ!

 MMAとは総合格闘技のことでしょうか…。

 みっともなくないですよ。『進撃の巨人』は思いっきり楽しんでおります。「他の隊員は殺してるのに、なぜアルミンのときだけフードの中を見て本人確認しているんだ! 蹴れ! 自分のために思い切り蹴飛ばして殺せ女型巨人!」とか思います。

 私に限らず、みんなそういう勢いや流れを物凄く楽しんでいるんだと思いますよ。本当に。無駄な犠牲者が出る作戦が繰り広げられるたびに「なぜ危機管理用の防戦シナリオを用意しておかないのだ駐屯兵団!」などとツッコミを入れながら面白がっているのです。

 私どものほうが、よほどみっともないのであります。フィクションにマジツッコミして何してんの。

● 素晴らしいですよという話

[引用]しかし!

毎月45ページの白紙に何かそれらしいものを埋めるので
いっぱいいっぱいな…

そんな!・・・・・・新人にしては!…


 よくやってる方だろ!? (涙目)

 よくやっておられます。素晴らしいです。最高です。是非頑張って欲しいです。続きが読みたいです。

 かなり本気でそう思っています。

● 作品のストーリーへの批判じゃない件

[引用]と、まあ色々書きましたが空想科学読本とか好きです
作品の批判とは受け取ってません、
貴重なご指摘だし専門的で面白し、これだけの長文をしたためるのは
結構な労力だと思います!勝手に感謝してます!ありがとうございます!

実はただ・・・自分は批判を探すのが趣味です、けなされたい!
正直褒め系よりもそっちの方が刺激されてやる気が出ます!

「物事を騒がせるようなことはしてはいけない」といった風潮がありますが
その程度にもよると思うし、それはただ何となくそう思い込んでる「風潮」では?

こういうの書いてみたら面白いと思ったんですが…楽しんでもらえるのか
正直どう受け取られるかはわかりません

けど
「バカなことやってんなー(´▽`*)アハハ」が理想ですかな…

 こやつめハハハ


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    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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