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2010.10.08

ノルウェー、ノーベル平和賞を中国人民主化運動家に与える

 楽しいことになってまいりました。

ノーベル平和賞に劉暁波氏
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010100800750

 さすがバイキングの国、喧嘩の売り方には芸を感じます。なにせ、中国政府にとっては逮捕拘留中の犯罪者ですからねえ。それが国際社会からは「よっ、ノーベル賞!」と言われるわけですから愉快すぎます。ある意味、スーチー女史が平和賞貰っちゃって旧ビルマの軍閥の皆さんも殺すに殺せず海外にも出せないという不思議状態になったのと同じ効能の泉質であります。

ノーベル平和賞:劉氏に授与なら悪影響 中国が警告
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20100929k0000m030154000c.html
ノーベル平和賞に劉暁波氏 服役中の受賞は初
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE2EAE2E2E38DE2EAE3E2E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL

 劉氏の発言や活動にノーベル賞が箔をつけることになるならば、それはすなわち共産党独裁の廃止が平和に貢献すると墨付きを与えることになり、文字通り中国政府に対してノルウェーは支持してないよバーカというに等しい結論に陥るものであります。

 もっとも、ノーベル平和賞は他の賞と違って、業績の評価を巡っては極めて議論の余地の多い代物であることは論を俟たずといったところです。いままでも、ノーベル平和賞を受賞したけど、その後の活動からすると疑問符の付く人物はおります。ノルウェーの立場もさることながら、いわゆる北欧⊆欧州の価値観、判断というものがその時代に都度都度かなり色濃く反映される部分が大きいわけです。

 だからといって、ノルウェーが意を決して中国政府の意向・警告を無視して劉氏にノーベル平和賞を与える判断をした意味を考えるに… というところなんですが、その後、ノーベル平和賞を中国国内でどう扱うのかという課題は残ります。何せ、国威高揚を目的として中国は国を挙げてノーベル賞の獲得のための強化プログラムやある種のロビーを積み重ねてきたことは、外交や情報を扱う人たちであれば誰もが知っていることのひとつだからです。

 これで、少し先に、例えば中国系アメリカ人がノーベル生理学・医学賞など権威ある賞にノミネートされたとき、過去の受賞歴で文字通りノーベル平和賞で劉氏が受賞していたことも広く知られかねないものとなります。ノーベル平和賞と他の自然科学での賞との権威の差は歴然とあるというのは常識ですが、中国人にとっては全部ノーベル賞ですから、その偉大なノーベル賞を中国政府の反体制活動家、それも逮捕中の人だということになると、威信は大きく揺らぐことになると思うんですよね。

 当然、中国国内ではBBCやCNNでの放送は取り止めとなり、一切のノーベル平和賞関連の国内報道は行われないことでしょう。厳重な報道規制による統制下に置かれるのは間違いありません。しかし、知識人層においては中国政府の対地方や対軍閥における地位の一層の低下に伴う国内の混乱に歯止めが利かなくなりかねないほどのインパクトのあるネタであることは分かっているでしょう。

 どうも、中国政府自体はことここに及んで国際社会の中でのBad Boy Ratioが上がっていることに気づくのかなあというところなんですが。さて、どう転がりますか。


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ノーベル平和賞に劉暁波氏
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2010100800750

 【ロンドン時事】ノルウェー・ノーベル賞委員会は8日、2010年のノーベル平和賞を中国の民主活動家、劉暁波氏に授与すると発表した。賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億2300万円)で、授賞式は12月10日にオスロで行われる。(2010/10/08-18:04)

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ノーベル平和賞:劉氏に授与なら悪影響 中国が警告
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20100929k0000m030154000c.html

 服役中の中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授与の可能性が取りざたされていることをめぐり、ノーベル研究所のルンデスタッド所長(ノルウェー・オスロ)は、中国の傅瑩外務次官から授賞は「中国とノルウェーの関係に否定的影響を及ぼす」と関係悪化を警告されたと明らかにした。28日のAP通信などが報じた。

 受賞者選考はノルウェー議会が任命する同国ノーベル賞委員会が行い、同研究所はノーベル平和賞選考の事務局を務めるため、中国政府は外交的圧力をかけ、授賞阻止を狙った形だ。中国側は圧力を否定している。

 所長によると、傅次官が6月、オスロを訪問した際、同所長に中国大使館での面会を要請。傅次官は反体制派への授賞は「非友好的行為」とも述べた。中国高官と同研究所幹部の面会は初めて。

 一方、中国外務省の姜瑜副報道局長は28日の定例記者会見で「(劉氏は)中国の法律を犯し刑罰を科された人物。その行為はノーベル平和賞の趣旨に反するものだ」と不快感を示した。

 傅次官も同日の記者会見で「毎年この時期は大量の報道があり、中国への圧力になっている。昨年も同様の報道があったが、違うリーダーが受賞した」と皮肉った。

 劉氏は共産党独裁の廃止を呼び掛け、今年2月に懲役11年が確定し、服役している。(ロンドン、北京・共同)


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Comments

文学賞みたくノーベル平和賞も「該当者無し」の年を作らないと。そんな毎年毎年、受賞に相応しいと誰もが認めるような人は現れないと思う。

>ノーベル平和賞:劉氏に授与なら悪影響 中国が警告

こんなこと言われたらメンツの問題になっちゃうから余計に授与せざるをえなくなって、逆効果だったのではないかと。

文学賞みたくノーベル平和賞も「該当者無し」の年を作らないと。そんな毎年毎年、受賞に相応しいと誰もが認めるような人は現れないと思う。

>ノーベル平和賞:劉氏に授与なら悪影響 中国が警告

こんなこと言われたらメンツの問題になっちゃうから余計に授与せざるをえなくなって、逆効果だったのではないかと。

僕のノーベル賞も爆発寸前です

それはそうと、温ちゃんわざわざEU詣でして金ばらまくと言って廻ったのに、可哀想に。
脅しがきくのは日本政府だけってことを支那人もぼちぼち学習するべし。

在中ノルウェー人に危害が加えられないか、すごく心配。フジタ社員の一件どころか、リオ・ティント社の社員のように、いきなり懲役10年とかやりかねないからなぁ。

在中ノルウェー人に危害が加えられないか、すごく心配。フジタ社員の一件どころか、リオ・ティント社の社員のように、いきなり懲役10年とかやりかねないからなぁ。

日本人も脅しに屈してるのが日本政府だけだってことに気付くべし

o...rz

尖閣諸島で中国政府にはムカついてたので、「チベットかウイグルで暴動でも起きてしまえ」と願っていたところ、今回の平和賞授与騒動w
民主化の嵐に巻き込まれて一度ズタズタになればいいのに。

ある意味、期待してたとおりの展開にw
地政学的にも経済的にも某国の影響の少ない国ではのなせる技かとw

てか、「ノーベル賞」みたいに世界に有無を言わせない特権を日本も持てると良いのにね、って思いましたw

では植民地を独立させてBBRを減らさないと。
チベットとか。

 どうなんですかね。
 公共放送のニュースの同時通訳映像見てたら、「ノーベル財団は政府や王室とは無関係の独立組織なんでそこんとこよろしく(はぁと)」って委員長氏が予防線張ってましたけどね。

これ、日本が追突船長を強制退去せずに
なんやかんややって、それに対して
中国がなんやかんややったから、
こんな結果になったんだろうね。

私の知る限りですが、劉氏は権力者というわけではないし、非暴力で運動を行ってきた立派な方で、この賞の常連職業である政治家連中より、はるかに名誉に値する人物だと思います。

08憲章にある自由・民主・人権・平等・環境は、欧米が先駆けてまとめた価値観であるのは確かです(欧米に固有というのは文化相対主義の過ちで根拠がないと思いますが)。また、人権無視+市場経済+軍備増強+独裁(あるいはナショナリズム)というのは、「国家」の勢力を伸ばすのに有効というのはあるのでしょう。しかし、それは国内での人権侵害や環境破壊による不満を、海外拡張による国威発揚でごまかすような事態に容易に陥りがちで、(周辺諸国にとってだけではなく)中国人にとっても不幸なこととなるでしょう。そう考えると、まさしく平和のための賞に値すると思うのです。

くすくす(笑)
ttp://diary.china-stock.fool.jp/?day=20101006
ttp://diary.china-stock.fool.jp/?day=20101007
ノーベル賞はアメリカを中心にした組織票できまる。
日本人受賞者もほとんどがアメリカがらみ。
留学者もしくは原爆開発に貢献のあった論文など。
例外は少ない。
サラリーマンの田中さんも遺伝子組み換えのための…。
川端康成も受賞公演はハワイで行ったのでは?
純日本的な三島由紀夫がとれなかった理由でもある。
…で中国なんだが…
ttp://diary.china-stock.fool.jp/?day=20101009

はてブにまた変なのがいるぞ。

>>nisoku2 ノーベル賞 「ノーベル平和賞と他の自然科学での賞との権威の差は歴然とあるというのは常識」 そんな常識はない。自然科学系の選考にも批判はあるし、疑問符の付く授賞も色々ある。/自分の立場を「常識」と言いたがる人は面倒

いわゆるノーベル賞3賞(自然科学三賞)と平和賞は別物というのは、選考の方法やスウェーデン政府の関与のあるなしを考えても当然のことだろ。

平和賞そのものは、いわゆる活動の期待値を含む場合も多いのでオバマが受賞しちゃったりする。自然科学三賞はありえないことぐらい知ったうえで書いて欲しい。

去年、オバマにノーベル平和賞を与えたのは、劉暁波氏にノーベル賞を与えたときにノーベル賞の権威を中国が批判することを読み切っての布石だったんだな。アメリカトップがもらっている賞をないがしろにできないよなあ

あのときは悪手にしか見えなかったんだが、今回の件で好手になっている。おそるべし、ノルウェー

ノーベル賞を政治道具に利用するじゃないよ欧米人ヤロー、かかってこいよ、中国はこれぐらいのことで動じる国か、劉氏一家を海外へ出すから、受け入れてくれよノルウェー

 親愛なるわが中国国民に告げます、ノーベル賞は西側の政治道具にすぎず、この賞に囚われることもない、いままで受賞者の国籍を参考にして下さい、9割欧米人か同じ価値観をもつ国の人たちだ、社会主義の国に与えるはずがない。
 わが国の成長と発展ぶりで証明されるように正しい道を歩んでいます、社会主義の国が世界一になることは、西側にとって悪夢だ、いままでのようにわが国を崩そうと仕掛けてくるに違えない、準備しておく必要がある。
 ノーベル賞もひとつの賞にすぎず、こだわる必要はなく、動じることもない、ましていまノーベル賞の価値が疑われてる時。

結論から言えば三国人死ねということですな。

このノーベル賞のバックにはアンクルサムの圧力があるように感じます
中国はこの平和賞は不当だと圧力をかけましたが、そもそも平和賞を決定する際、こんな政治色の強いテーマに対してヤンキーの圧力があったと考えるのが自然だとお思います
朝日の天声人語と関連させて私見に基づいてブログで記事を書いてみました

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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